異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-死者の都-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第14話『……千里眼か』

(瞬視点)

 

 

 

ミラが黒人形の前に一瞬で移動したかと思えば、その体の中に取り込まれてしまい、オーロもミラを助ける為にそのまま中へ飛び来んでしまうのだった。

 

咄嗟に俺は上半身と下半身を両断し、二人が取り込まれたと思われる場所を露出したが、そこには何もない。

 

「無駄ですよ」

 

「……お前、何をした」

 

「前も言った通り、救っていただきたいのです。アマンダさんを」

 

俺は国連の少女を問い詰めようとしたが、上半身と下半身が合体し、再び動き出した黒人形の攻撃をかわす為に、一度話を中断する。

 

そして、振り下ろしてきた腕を切り落としながら、その切った腕を足場として国連の少女の傍に跳んだ。

 

「それで? 救うというのはどういう意味だ。このまま黒人形を消してから何とかするんじゃないのか?」

 

「いえ。残念ながら、黒人形とアマンダさんは深い位置で繋がっており、どちらかを滅ぼせば、もう片方も滅びます」

 

「なんだと……!?」

 

「だから彼女を救うためには、生きている黒人形の中に入る必要がありました」

 

再び黒人形の腕が落ちてきて、家を破壊するが俺は既に空へ跳んでおり、空から天斬りを地上に向けて放つ。

 

その斬撃で黒人形の腕は肩から地面に落ちるが、やはりそれも再び元の体へ吸収され、元の姿に戻ってしまうのだった。

 

「っ」

 

「この黒人形は、アマンダさんの意思に従って動いています。止めるには二つしか方法はありません!」

 

「その方法は!?」

 

「一つはアマンダさんを再び殺す事」

 

「それは」

 

「はい。無論出来ません。ですので……ミラさんにあの方を呼んでいただく必要がありました!」

 

「あの方……?」

 

どこの誰だと言おうとして……俺はその圧倒的な気配に、思わず視線を蘇生魔術があった場所へと向けた。

 

「なんだ……アイツは」

 

見ているだけで全身がざわつく。

 

しかし、嫌な気持ちはない。

 

ただ、戦いたいという純粋な戦闘本能だけが強く刺激される。

 

「非公式ではありますが……かつて光の聖女アメリアが世界に光をもたらした際に生まれた魔王なる存在を打ち破り、その後、魔王を復活させようとした闇神教の者たちをほぼ全滅させた方」

 

その男は酷く自然な仕草で地面を蹴り空へ跳ぶと、俺たちのすぐ傍に降りてきて……腰に下げた剣を右手で握り鞘から抜く。

 

「初代勇者……『あー。申し訳ない。その名前は忘れてくれると嬉しいな』」

 

男は酷く自然な仕草で国連の少女の言葉を止めると、黒人形を見上げながら呟いた。

 

『僕はもう勇者じゃない。ただのルーク……もしくは旅人ルークさ。ただそれだけだ』

 

「……」

 

『でも、託されたからね。師匠に、親友に、愛する世界の人たちに。だから!』

 

ルークと名乗った男は両手で握りしめた剣を正面に構えて、その剣を輝かせる。

 

その光は膨れ上がり、周囲を光で染め上げたが、ややしてから剣に染み込む様に収まって行く。

 

だが、光は小さくなっても、その中に秘める力は膨れ上がるばかりだ。

 

『この世界を闇に染めようとする者達が居るならば、何度でも僕は立ち上がり、この剣を振り下ろす!』

 

ルークの力に怯えた黒人形が、せめてもの抵抗をしようと振り下ろしてきた腕を俺は天斬りで切り飛ばし、両腕を使えない様にした。

 

そして……。

 

『ありがとう。遥かな未来の戦士……。では君たちの願いに僕も応えよう!! 希望よ世界を照らせ!!』

 

ルークは己の魂を叫びながら剣を振り下ろし、それは先ほどまでとは比べ物にならない程の熱と輝きを以って、黒人形へと放たれた。

 

天斬りにもよく似た光の斬撃は、空に浮かぶ雲を切り裂き、黒人形を縦に両断する。

 

しかも、俺たちが斬った時とは違い、その断面は復活する事なく、空に輝く光の粒子と共に淡く輝いて消えてゆくのだった。

 

『うん。これで問題無いかな』

 

「ありがとうございます。ルークさん」

 

『いや、構わないよ。何かあったらまた呼んでくれ。僕はいつだって光に生きる者達の味方だ』

 

「……はい」

 

『では、これでお別れだ光の戦士たち。僕はこの世界に未だ光がある事を誇りに思うよ。オリヴィア。イザベラ。君たちの願いは、今もまだ世界を照らしている』

 

ルークは黒人形を崩壊させてから、満足気に笑い、光の粒子と共に何処かへ消えていった。

 

いきなり現れて、やるだけやって消えていった奴に、何を想えば良いかもわからず、俺はとりあえずルークの事を忘れる。

 

「それで? 話はまだ終わっていないが」

 

そして、とりあえずは先ほどの話を詳しく聞こうと国連の少女に語り掛ける。

 

「そうですね。はい。黒人形を消していただくのはルークさんに頼む必要がありました。本当は、この時代の勇者に頼めば良いのですが、あの子は、色々と難しいので」

 

「そうか。まぁ、そっちは良い。問題はミラとオーロの方だ。これで消せるなら、消してからアマンダを復活させて助ければ良かっただろう?」

 

「そうですね。ですが、その場合はアマンダさんがミラさんの声に応えない未来が待っていたので」

 

「未来……?」

 

「はい。先に黒人形を消した場合、アマンダさんは深い恨みを抱えたまま地の底に沈み、やがてそれは世界の破滅へ繋がる大破壊を生み出しました」

 

「……」

 

「しかし、ミラさんとオーロさんが先にアマンダさんへ接触した場合、その未来は消えます」

 

俺は、国連の少女の物言いに、母国のお方を思い出していた。

 

遥かな未来、遠い過去、そしてどこか知らない場所で起こる出来事を知る事が……視ることが出来る力。

 

「……千里眼か」

 

「いえ。私の力はヤマトの巫女姫様の物とは違います。未来視という未来を視る事が出来る力ですよ」

 

虹色に輝く瞳でそう語る国連の少女に、俺はなるほどと頷きながら、何故こうなったのかを理解した。

 

全ては未来が視えていたからこそ、破滅の未来を回避する為にミラや俺たちをこの地へ呼び寄せ、アマンダを救う為にミラとオーロを黒人形の中へ放り込み、さらには先んじてミラに呼び出させていたルークに黒人形を始末させたのか。

 

最も良いタイミングは視えているからと。

 

「なるほどな」

 

「ご理解いただけましたか」

 

「あぁ。理解はした。だが……正直な所やり方は好かんな。こちらの助力が欲しいのなら、素直にそう言うべきだ。お前の言葉をオーロもミラも無下にはしない」

 

「でしょうね」

 

「分かっていてなお……か」

 

「はい。申し訳ございませんが、未来は視えても人の心は視えませんので」

 

苦笑する国連の少女……ミクに、俺はため息を吐きながら特に感情の乗らない視線を向ける。

 

俺個人として考えるのであれば、敵でも味方でもないという所だ。

 

しかし、この少女が行った事は間違いなくオーロとミラを救う行為だった。

 

「……では、私はこれで」

 

「ミク」

 

「っ!」

 

「どうした?」

 

「い、いえ。貴方に名前で呼ばれるとは思っていなかったので」

 

「そうか。未来でも変わったか」

 

「……いえ。個人的な事で力は使わない様にしているので」

 

「そうか」

 

「えと、はい」

 

俺はミラを抱きかかえながら黒人形の崩れた場所に降り立ったオーロを見ながらミクへ言葉を向ける。

 

「ミク。次に何かあった時には正面から来い。話くらいは聞いてやる」

 

「……よろしいのですか?」

 

「あぁ。構わない。それに……オーロとミラもおそらく同じ事を言うだろう」

 

「……」

 

何処か晴れやかな顔で歩くオーロと、満足気な顔で寝ているミラを見て、俺は目を伏せた。

 

「オーロとミラに代わり、俺から礼を言わせてもらう。アマンダを救ってくれて、ありがとう。ミク」

 

「っ! い、いえ! では、私はこれで! ルーナ・リダ・サクハーラは連行してゆきますので! ご安心を!」

 

ミクは溢れた涙を振り払い、そのまま転移で何処かへ消えていった。

 

俺は、オーロに向かって歩き話しかける。

 

「帰ったか」

 

「あぁ。どうにかなった。ミラのお陰だ」

 

「そうか」

 

「あの少女はどうした」

 

「さぁな。もう何処かへ行ってしまった」

 

「そうか。せわしない事だな」

 

「あぁ、そうだな」

 

俺はオーロと共に晴れ渡る雲一つない空を見上げて、戦いの終わりに頷くのだった。

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