異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-死者の都-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第9話『どうやら第二ラウンドの始まりらしい』

(オーロ視点)

 

 

 

際限なく増え続ける黒い人形を切りながら、俺はどうやってアマンダの偽物を切ろうかと考え続けていた。

 

しかし、人形は無限に増え続けるし、飛び道具を使っても、人形が邪魔をし女自身も魔術を遣う為、決定打にはならない。

 

非情に厄介だ。

 

だが、だからと言って止まる理由は何も無いのだ。

 

「っ! 邪魔だっ!」

 

「ふふ。無駄な抵抗を続ける事に意味があるのかしら」

 

「……」

 

「貴方の記憶に残るあの子だって、光聖教なんて信じないで闇の神を信じていれば、今も平和に生きていたでしょうに」

 

俺は近くの人形を力技でなぎ倒しながら、開けた視界の中、女に向かってナイフを投げつけた。

 

しかし、そのナイフは射線に割り込んできた人形によって阻まれてしまう。

 

「愚か。そう言う他無いわ。貴方も。貴方の大事なアマンダちゃんも、ね」

 

人形どもを巻き込みながら大剣を振り上げて、人形で視界を塞ぎながら女に向かって飛び込み、大剣を振り下ろす。

 

だが、女が居た場所には数体の人形が居るばかりで、女の姿は無かった。

 

咄嗟に女の姿を探そうとした瞬間、背後から女の声と同時にナイフが突き立てられた。

 

「下らない! 本当に下らないわ! 貴方も! 天霧瞬も! 下らない過去に囚われて、こうして自ら罠に飛び込んで、追い詰められている! ここに来なければ、あの子を失う事もなかったでしょうに!」

 

「……」

 

「でも、そうね。もしかしたらこれが運命だったのかもしれないわ。そう。これが闇の神の導き」

 

女は両手を天に掲げ、狂気に染まった顔で笑う。

 

「そう! では貴方と天霧瞬は闇の神への供物としましょう! ミラ・ジェリン・メイラーの力を闇に染め上げて! 本来の聖女として目覚めさせる! アメリア様の遺した意思を受け継ぐ器として! 神をその身に宿す! その為に「天斬り……!」っ!!?」

 

女が気分よく叫んでいる背後に、音もなく着地した瞬は、いつ抜いたのかも分からない速度で神刀『島風』を抜刀すると、それを振り上げ、即座に納刀する。

 

瞬きの間に行われたソレは、確かに目で見る事は出来ないが、瞬の正面にある物を女含めて全て両断し、空に浮かんでいた暗雲をも切り裂いていた。

 

まさに絶死の技であった。

 

「……助かった。瞬」

 

俺は女が両断された事で崩れていく人形共の中を歩きながら、一応警戒している瞬に近づき礼を言った。

 

が、瞬は特に気にした様子も見せず、平然と応える。

 

「気にするな。別にお前一人でもそこまで問題は無かっただろう?」

 

「あぁ、まぁな。だが、奴がアダラードの仲間である以上、手の内はあまり見せたくなかったんでね」

 

「そうか。なら、失敗したな」

 

「ん?」

 

「アダラードの仲間という事は、天霧宗謙の仲間でもあるのだろう? ならば奴の情報を吐かせてから斬るべきだった」

 

「あぁ、確かにな。だが……ミラの前で拷問は出来んだろ?」

 

「……それも、そうか」

 

瞬は納得した様に僅かな笑みを作りながら頷き、俺もミラと会う前に空気を入れ替えようと笑う。

 

だが、そんな和やかな空気はすぐに壊された。

 

何故なら、女が倒れた事で崩れ去った黒人形から生まれた黒い煙が空中で集まり一つの巨大な悪意へと変わろうとしていたからだ。

 

「オーロ」

 

「あぁ。どうやら第二ラウンドの始まりらしい」

 

【あぁ、よくも私のお人形を壊してくれたわね。天霧瞬。お前に差し向けた人形も壊された様だし。天霧宗謙に聞いた通り、本当に人を斬る事に何の抵抗も無いのね】

 

「なるほど。コレも人形か」

 

瞬は地面に転がった女を蹴り、それが土くれの様に壊れるのを見ながら温度を感じさせない言葉で呟く。

 

その言葉の裏にある感情は怒りか、憎しみか。

 

まぁ、両方だろうな。

 

何せ俺も同じ気持ちだ。

 

【でも、そうね。流石という所かしら。アダラードと天霧宗謙からの報告が無ければ私も危なかったわ】

 

女はどこにも姿を見せず、声だけで淡々と語り掛ける。

 

【ホントに、どこから聞きつけたんだか。しかもよりによって私の所を狙うなんて。最悪だわ。よほど良い目を持っているのかしらね。ヤマトの巫女様は。まさかこんな辺境の地で行われている作戦を見つけるなんて】

 

女の言葉に妙な違和感を覚えながらも、俺は女の姿を探し続けた。

 

しかし、やはり声は聞こえても姿は少しも見えないのだった。

 

【でも、不幸中の幸いなんて言葉があるけれど。今回の件はまさにソレだわ。貴方たちという神敵の襲撃を受けながら、私は生き残る事が出来た。しかも、神の器となり得る聖女まで連れてきてくれるなんてね。私は本当に運が良いわ。ふふ、そうよ! 私は運が良い! 神が私にお味方くださっているんだわ!】

 

女の声が感情の込められた叫びに変わった瞬間、一つに集められていた黒い煙が球体となり、そこから巨大な一つの人形が生まれた。

 

【さぁ。私の可愛いお人形さん。アイツらを倒して!】

 

「……来る」

 

「あぁ」

 

黒い人形は頭と手足が胴体から生えているという以外には特徴らしい特徴はなく、顔もない。

 

頭は、胴から出ている部分が頭だと認識出来るだけであり、そこに表情などは一切無かった。

 

簡単に作られた人形と言えば分かりやすいが、込められている悪意はそんな物ではない様に思う。

 

そして、俺の予想は正しいらしく、人形は大きく右手を振りかぶりながら、俺と瞬が居る教会の中庭に振り下ろした。

 

見上げる様な人形の腕は当然ながら俺たちの体よりも大きく、腕の先がそのまま教会の中庭と同じくらいの大きさである。

 

「デカいな。瞬。やれるか?」

 

「無論だ。問題はない」

 

「分かった。なら隙は俺が作ろう。これを処理して、すぐにミラを探すぞ」

 

「あぁ」

 

俺は大剣を両手で握り、教会の屋根に逃げた俺たちへ再び拳を向けた巨大な黒人形へと立ち向かう。

 

そして、屋根を破壊しながら空へ飛び、こちらへと拳を振り下ろしてきた人形の腕を跳ね上げるのだった。

 

「っ! 重いな……! だが、まだ終わりじゃない」

 

俺は鎧に魔力を通し、空中に足場を作ると、それを蹴りながら拳を跳ね上げられてバランスを崩している人形へと飛び込み、その頭と思われる場所に大剣を突き刺した。

 

「瞬!」

 

鎧に刻まれた拡声魔術を使って叫んだ俺の声は確かに瞬へ届いたらしく、屋根の上から先ほど女に向けて放った物よりも威力のある天斬りが人形に向かって放たれた。

 

俺は咄嗟に人形から離れて空中へと体を投げながら、ヴェルクモント王国で見た山の様に巨大なドラゴンをも両断したソレを見て、勝ちを確信する。

 

だが……。

 

「何!?」

 

両断された人形は、その斬られた場所が蠢きながら混ざり合い、合わさり、何事も無かったかの様に一つへと……元の姿へ戻るのだった。

 

そして、復活した人形は空中を飛んでいる俺に腕を振り下ろし、俺はそれを受け止めながら教会の屋根を破壊しつつ教会の中へと突っ込んでいった。

 

「オーロ!」

 

「ぐっ、あぁ。すまん。瞬」

 

「俺もすまない。まさか仕留めきれないとは」

 

「いや。おそらくはそういう類の化け物なんだろう」

 

俺は瓦礫をどかしながら、起き上がり、追撃の攻撃が来る前に屋根から教会の中に降りて来た瞬と共に教会の外へと離脱する。

 

巨大な人型の攻撃は俺たちが教会を出た直後に教会へ突き刺さり、その全てを崩壊させた。

 

まさに間一髪という所だ。

 

「どうする。オーロ」

 

「どうもこうも。あの再生力じゃどうにもならん。援軍を呼ぶしかないな」

 

「なら、まずはミラを助ける所からだな」

 

「そういう事だ」

 

俺は瞬から話を聞きつつ、魔力探知を街の辺りに絞ってかけた所、ミラの魔力が膨れ上がったのを確認し、そこへ向かって走るのだった。

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