「この車いす、自爆装置は付いていませんよね?」
"さすがにエンジニア部も自重してくれたんじゃないかな"
「私のためにと調月リオが作成した遠隔操作用のロボット、あまりにも独創的な形ではありませんか」
"う、うーん……。か、かっこいいんじゃないかな"
「本気で言っていますか?」
扉の外から騒がしい声が聴こえて起きる。
目を開ければ、揺れるカーテンから差し込む光は優しいオレンジ色だった。たしか私が覚えている限りだと朝にアリスを見送ったあとに奥空アヤネから届いていたメールを確認して、そのまま眠ってしまったのだと思う。つまり、またアリスが学校へ行っている時間をずっと眠って過ごしていたのだろう。
「今日は、部室を掃除しようと思ったのですが」
アリスと才羽モモイは騒がしく遊んだあとに後片付けをあまりせず出かけていく。毎回昼間に私が片付けているのだが、気づいているかは謎である。なんだか世話係になったというか、ハウスキーパーのような存在になってしまった。
「たっだいま~!」
「ただいまです!ケイ!」
「ただいまケイちゃん」
「おかえりなさい」
そうこう思っている内に帰ってきた。今日この後は月雪ミヤコとの約束であるゲームをするということで駅まで花岡ユズが迎えに行っている。最初は才羽モモイが迎えに行くという話だったが、花岡ユズが部長らしいことをしなければと一念発起し外へ出た。夜になったら褒めなければ。
外部生徒がくるのと、PCの数が足りない為ヴェリタスに借りに行った際に小塗マキ、話を聞きつけた早瀬ユウカが部室へとやってくる予定だ。
なので昨晩全員で部室内を整理し配置換えを行った。最終確認も込めてゲームをした状態がそのまま残っている為またしても片付けないといけなくなってしまったというのが経緯である。
「才羽モモイ、とりあえず貴女は夜食に食べたお菓子のゴミやらを片付けてください。私は配線周りを今一度確認しますので、才羽ミドリは机の上を清掃してください」
「アリスは何をしますか?」
「アリスは来客用の飲み物を準備しましょう。冷蔵庫に入っています。コップは今朝洗浄しましたから棚に戻っていますよ。わからないことがあれば私に聞いてください」
「わかりました!」
全員で来客の準備をしていると、ノックが聴こえてきた。
「んー、多分ユウカかな?」
ゴミを片付け終わった才羽モモイが扉を開けると「やっほ~」と元気な挨拶の後に小塗マキがやってきた。
「モモ、準備終わってるじゃん。珍しいね?」
「ふっふ~ん。今日は学外の人もくるから、しっかりおもてなししようってみんなで決めたんだ!」
「マキちゃんはこっちの席だよ」
「ありがとミド」
「マキってRTSっやったことあるっけ?」
「いやあFPSとかアクションゲームはやるけど、RTSだっけ?そのジャンルはやったことないなあ」
「そっかあ。なら後でミヤコと一緒にケイに説明してもらった方がいいかな?」
「あれ、こういう説明はモモが担当だと思ってたけど、今回はケイちゃんなんだね?」
「えっと、今度のミレニアムEXPOでケイちゃんがゲームの説明を担当することになって、それの練習も兼ねてるんだよね」
「今はユズと一緒にプログラミングか、アリスとデバックを担当してもらってるんだけど……EXPOだと列整理とか案内とか、結構動かないといけないでしょ?ケイにそれは厳しいかなって話になって、マイクを使った全体説明とかしてもらおっかなって」
そう、あれだけエリドゥが中心とはいえミレニアムで大騒ぎを下直後だというのにミレニアムEXPOは開催するそうだ。
ミレニアムEXPOは、ミレニアムサイエンススクールで行われる技術披露の場である。ミレニアムプライスが品評会であるのに比べ、ミレニアムEXPOは試作段階の物や構想段階の技術なども展示および発表する場であるため、私たちゲーム開発部も新作ゲームをブースで出すことにしたのだ。
才羽モモイが言うように、私は長時間の稼働ができないのでブース内での説明を担当することになった。
「そんじゃあ、そのミヤコさん?が来るまでは待たせてもらおっかな」
「ちょうど来たみたいですよ!」
元気にアリスが部室の扉を開ければ、月雪ミヤコと花岡ユズ……そして早瀬ユウカに生塩ノアがいた。
「いらっしゃ~い……って、ノア先輩もいるじゃん!どしたの?」
「こんにちは、モモイちゃん」
「お誘いいただきありがとうございます。皆さん、お久しぶりですね」
早速、月雪ミヤコにアリスが挨拶しにいった。私と似ている為一瞬驚いているようだったが、今の私の身体が小さくなっていることを思い出したのか納得したようにアリスに挨拶を返した。
「うさぎ隊長とゲームするのは初めてです!」
「う、うさぎ隊長……たしかに私はRABBIT小隊の隊長ではありますが……」
「あああ!アリスちゃんまた勝手に変なあだ名つけて!」
「や、やっと部室に戻ってこれた……」
「ほら、入り口で騒いでないで席に案内してあげなさい」
「わかってるよユウカ!今しようとしてたの!」
いつもいじょうに騒がしくしながら各席に座っていく。先生が後からくるかもしれないとアリスが言っていたので、一応8人分席を用意していたのが功を奏した形だ。
席としては、チュートリアル以降は経験者であるゲーム開発部が各自教えられるようにペアにさせてもらった。
月雪ミヤコの要請で花岡ユズと、早瀬ユウカは才羽モモイでいいだろう。小塗マキは才羽ミドリ、アリスは先生が来たら一緒に遊びたいだろうと思っていたが生塩ノアがいるのであれば参加してもらおう。
☆
「それでは早速ですが、ゲームの説明に入らせてもらいます。と、その前にRTSというジャンルをそもそもにご存じでしょうか」
「すいませんが、私はそもそもにゲームをほとんどしたことがありません。せいぜいコマーシャルでやっているような有名なゲームしか分からないでしょう」
「ユウカとマキは一緒にゲームしたことあるし、どれくらいの知識もってるかは知ってるから……ノア先輩は?」
「私も嗜む程度、といったところでしょうか。とはいえそういったゲーム用語、というものは知らないものと思ってください」
「なるほど。では、月雪ミヤコと生塩ノアのために最初から説明します」
RTS――Real-time Strategyとは、その名の通り、現実の時間と同様にゲームの時間が進みつつ目標を達成する、というゲームだ。戦略性と素早い判断力が求められるため、全体を把握する能力と場面を同時に処理する能力が必須である。
「リアルタイムで複数のコマを動かす……小隊規模の戦闘から、規模が大きくなれば大隊規模の戦闘にまで至ります。問題はこれが同時に起き、さらに内政――コマを増やす作業や素材集めを同時進行する必要があるということです。簡単ならRTSであれば、攻撃と防御を同時に行いながらコマを制作するという3つの作業を同時に行います」
そういって用意していたスクリーンにゲーム画面を投射する。
「このゲームは相手の塔を破壊すれば勝ち、自陣にある塔を破壊されたら負け、という簡単なゲームです。テーブルゲームであれば将棋でいう王、チェスでいうキングを取り合うものと何ら変わりません。しかしながらテーブルゲームと違うのは、これがリアルタイムで進行することです。才羽姉妹に実際にプレイしてもらいましょう」
無人島ゲームのときに作った各学園の生徒がもったいなく、ゲームのキャラクターは学園毎にわかれている。
三大校を選択するとコマが多すぎて理解しづらいだろうと、アビドス高等学校とSRT特殊学園を使うことに決めたようだった。
「ホシノ会長は禁止だからねお姉ちゃん。強すぎてゾンビアタックしなきゃいけなくなるし」
「おっけ。キヴォトス大戦は勝率も五分五分だからね!決着を付けてあげよう!」
「も、もしかしてこのキャラクター、私ですか?」
「よくできていますよね!ケイがいろんな学校へ行ったときに撮った写真を参考にミドリが作ったんですよ!」
「たしかに、特徴を捉えてるわね……ん……?あれ、私前にキヴォトスを題材とした戦争ゲームは作るなって言わなかったっけ?モモイ?」
「こ、これは戦争ゲームじゃないから!晄輪大祭をモチーフにしたんだって!」
才羽モモイは攻撃力は高くないが素早さがある黒見セリカを連打して初期のリソースを全て使用した。
それに対して才羽ミドリは月雪ミヤコを数人作りつつ、霞沢ミユを並べ始める。
いわゆるアグロ戦術というもので、才羽モモイは速攻で試合を畳むつもりなのだろう。
「な、なんだか私が動いてると少し恥ずかしいですね……。ええっと、私が防御役でミユが遠距離から相手キャラクターを倒していますね」
「才羽モモイが取っている戦術は『アグロ』と呼ばれる速攻戦術です。対する才羽ミドリは防御しつつも盤面を固める、戦略的な遅滞戦闘です。わかりやすい戦い方になりましたね。リソースを使い切っても倒しきれなければ才羽モモイの負け、防ぎきって反撃できる盤面を作り終われば才羽ミドリの勝ちです」
「も、モモイは思いきりが良いからアグロが合ってるんだよ。嵌れば最速で、相手に何もさせずに勝てるアグロは、コストが低いキャラクターを効率良く動かすことができれば比較的高い勝率を維持できる」
「対するミドリはどっしり構えるタイプです!モモイのようにアグロはあまりしませんが、時間をかけるほど強くなります!」
少しずつ侵攻していく才羽モモイの黒見中隊に砂狼シロコが混ざり始める。拠点破壊能力が高い砂狼シロコを後続として送ることで、前線が進んだ際に一気に拠点を破壊するつもりなのだろう。
対する才羽ミドリは月雪小隊がやられつつも霞沢中隊が黒見中隊を打ち抜く。どんどん縦長な戦場になっていき、だんだんと殲滅スピードがあがっていく。
才羽ミドリも余裕ができてきたのか、拠点破壊のために風倉モエを作り始めた。
「むむむっ、防衛にノノミ先輩を……いや、でもホシノ会長が使えないから攻めきるしか……ええい!いけシロコ小隊!」
嬉しそうにミサイルを放ち続ける風倉モエを無視するように砂狼シロコが突っ込んでいく。月雪ミヤコの横を抜け、砂狼シロコが霞沢ミユを襲っていく。霞沢ミユは火力はあるが攻撃速度が遅く、だんだんと砂狼シロコが無双しはじめる。
「あ、アビドスが強すぎる……!」
「あぁ、私が……いえ、私たちがどんどんやられていきますね……」
「でも、お姉ちゃん自陣ががら空きすぎるよ!」
「ぐぐっ……倒しきれ!」
「キヴォトス大戦はRTSというよりはタワーディフェンスに近いゲームですが、このようにリアルタイムで攻防が同時進行するというゲームシステムを総称してRTSというジャンルで呼んでいます」
今回、月雪ミヤコに遊んでもらうゲームはAggression of EmperorというRTSでは有名なゲームだ。
プレイヤーは国を選択し、それぞれの国を反映させながら世界統一(他プレイヤーの殲滅)で勝利が確定する。
ゲームのチュートリアル的な要素としてストーリーがあり、それを体験してもらった後にペアで協力――助言してもらいながら対戦してもらうという形だ。
「各プレイヤーには町の中心と呼ばれる、言わば村長の家が最初に存在します。ここで村人を作成し、畑を耕したり木や石を集めたりします。これらを材料に家や牧場などの建物を作り繁栄させていきます」
「箱庭ゲームみたいね?街を作って貢献度で勝負するのかしら?」
「いえ、町を作る中で訓練場を作成することができます。そこで兵士や騎士、弓兵といった戦闘特化のキャラクターを作成できるようになります」
「なるほど。つまり町を繁栄させながら兵士による攻防を行い、各プレイヤーの町を壊滅させれば勝ちという戦争ゲームなんですね」
「その通りです生塩ノア。このゲームで難しいのは、攻勢中に防衛をしなければならないので、全体の指揮を常にし続けなければならないところです」
「ああ、もしかして攻勢しているキャラクターを放置すると、相手の目の前で止まったりします?」
「自動反撃はしますが、概ねその認識であっています。村人も放置しすぎるとやれる仕事がなくなり立往生しますね」
そう、初心者はとくになりがちなのだ。攻めが緩むか、守りが疎かになるか、村人が仕事をしなくて生産ができなるなるか。焦って何かしようとすると違う場所ができなくなり、落ち着いてやろうとすれば操作が遅くなってしまう。
「槍は安くて剣が高いんですね。槍は木が、剣は鉄が必要……村人に集めさせる資材も調整しなくてはいけないんですね」
「全部同時進行だね!」
「RTSは実力差というものがほんとうに大きくでてきます。初心者では経験者が30分放置するハンデをもらったところで勝てないでしょう」
だからこそ実力がでて面白いゲームであるともいえる。1対1ではなく、最大8人同時に戦うため戦況がかなり複雑になる。市場を利用して貿易することも可能で、他プレイヤーとは同盟を結ぶこともできる。暴れすぎると全員から集中狙いされたり、町の発展が遅いと小隊規模の編制をしたあたりで大隊規模の戦力が攻めてきたりする。
「では、早速ペアにわかれてやってみましょうか」
☆
「敵を倒すための編制、町を破壊するための編制、索敵や防衛と色々なパターンを想定して軍隊を作っていくのですね」
「う、うん……。あ、この町の人が近くの木を伐採し終わって暇そうにしてる、よ?」
「むむっ……見きれていませんでしたか。たしかにこれはマルチタスクで処理する練習に……あっ、こっちで戦闘が……!」
「と、とりあえず村人は……放置して、戦闘中の部隊に、指揮をだ、ださないと」
「そうですね。騎士1人だけですから、斥候が引っかかっただけですか。いや、こっちの城壁に相手部隊がきて、あ、とこっちの……」
「この部隊は横陣で大丈夫、です。相手斥候が逃げた方角にこちらも騎士を巡回させて城壁の方を……うん。こっちは城門で前で止まってるから、鋒矢で大丈夫だと、思う」
「鋒矢というと、矢印の形ですね。攻撃に特化した陣形ですが、側面に周られると弱い――いえ、城壁が弱点を消しているのですね。門を破壊しようとする部隊に対して攻勢に……なるほど。こちらは――」
月雪ミヤコと花岡ユズのペアはとても順調にゲームに馴染んでいる。もともと小隊の隊長として戦術に明るい月雪ミヤコに、ゲームの知識とはいえ戦略も戦術も一通り知識を持つ花岡ユズが実戦を通して教えていく。
月雪ミヤコは先生が戦闘指揮を任せるほどに信頼されている生徒のひとりだ。指揮を任せるという意味では美甘ネル、空崎ヒナと並んでいるといえばその信頼度がわかるというものだ。
その月雪ミヤコが小隊規模の戦闘指揮だけでなく、戦術や戦略を覚えることになれば各学校の生徒会長と並ぶほどの統制が可能になる。3年生になる頃には最強の一角を担うだろうと予想できる。
「ユウカこっち!こっちから敵がくるから守んないと!」
「え、え?なんで分かるのよ……あ、本当にきた。モモイ?ヤジを飛ばすだけじゃなくて説明して!」
「ええ!?だって、さっき斥候がそっちからきたじゃん!んでユウカはこっち側の安全は確保してるんだから、次くるってなったらそっち側でしょ?」
「……モモイ、ゲーム中だと頭が良く見えるわね。いえ、対戦ゲームだと攻めっ気が強いと思っていたのだけど、RTSだと全体の動きも見えるのね?」
「ふっふ~ん!あ、ほら!さっき用意しといた部隊が倒してくれてる!よっしゃ反転だ反転!ごーごー!」
「いきなり頭悪いこと言うんじゃないわよ!」
早瀬ユウカと才羽モモイはいつも通りといったところか。騒がしく、それでいて楽しそうにゲームをしているので問題ない。
早瀬ユウカは来年には生徒会長になる。彼女は情に厚いが弱いところもあり、冷静で合理的な判断をするというミレニアムサイエンススクールの生徒会長に必要な場面がきたときに対応できるのか……そこは生塩ノアがカバーするのだろうか。ゲームを通してでもいいのでその辺りの判断材料を増やしてほしいとは思う。
「このキャノンガリオン船は超遠距離から相手の船を一撃で倒せる最強の船なんです!」
「う、うーん……アリスちゃん?強いのはわかりましけど、船でわざわざ兵士を狙う必要はないのでは?」
「こうやって大砲をたくさん飛ばせば相手は何もできません!我々の勝利です!」
「あれ、アリスちゃん小さい船がこちらへ来ますよ?」
「うわぁん!爆破工作船ですっ!アリスたちの砲撃中隊が一撃で全滅しました!」
「ああ……爆発が連鎖してすごいことに……」
アリスは――うん。生塩ノアは頑張ってルールを覚えてほしい。なぜいきなり決戦兵器を作りはじめるのか、相手の状況しか見ずに爆破工作船を近距離まで気づかなかったのも……まあ、アリスが楽しそうであれば構わない。
才羽ミドリと小塗マキは昔馴染みなだけあり順調に教えているので問題なく、ミレニアムEXPOでも簡単なFAQさえ作っておけば大丈夫そうだ。
☆
そして始めた4人対戦だが――
「ユウカちゃん、次いきますよ~」
「ま、待って!もうリソースがないの!ノア!ぐぐぐ、モモイ!?どの兵種がここから効率よく作れるの!?」
「え?えっと石がなくて鉄だけ多いから……重騎士?でも食料が少なくて……えっと、」
「マキちゃんまずいよ、ノア先輩の兵がこの道を通ってる」
「えぇ!?なんでそんなに兵士が多い――なんか私の兵寝返ってるんだけど!?」
「この場合は敵の攻撃が届かない位置からの封殺が……弓兵を多くして、塔の建設を――投石器!?防御力が高い重騎士を中心として陣形を組みなおして……」
「えい♡」
「N方向から!?そちらはユウカ先輩の町があったはず――抜けてきたのですか!?」
「さすがですノア先輩!これぞロマン戦法のひとつ『宗教戦争』です!」
――初心者しかいないためゆっくりと進行していたゲームに聖堂を建設し、他国の兵士を寝返りさせ続け限界キャパを超えたゾンビアタックをはじめた生塩ノアの国が全てを崩壊させた。
聖職者の能力のひとつである洗脳――寝返り能力により同士討ちを繰り返され、リソースがなくなった早瀬ユウカが最初に落ちた。その反乱軍とも呼べる兵力で小塗マキを撃破。純粋な自国の兵力で正面から、側面から反乱軍が雪崩れ込み月雪ミヤコもやられた。
RTSあるあるではあるが、時間を与えすぎた結果一番規模が大きくなった軍隊を持った生塩ノアが勝利した。蹂躙である。
「な、なかなか難しいわねこのゲーム」
「そうですね。思考するにしても時間が足りず、攻められると脳のキャパシティが足りずに段々と後手に回ってしまいます」
「いやあ、ひとりで操作する量じゃないよこれ」
「面白いゲームですね?このゲームであれば私は得意かもしれません」
ロマン戦法というよりは初心者殺しともいえる戦法で決着がついたが、アリスはとても満足そうだ。ゲーム開発部は全員負けず嫌いなので途中から口を出して花岡ユズが蹂躙する可能性も考えていたのだが、しっかりと楽しめるようにとアドバイスだけに留めていた。
「み、ミヤコちゃんは軍隊じゃなくて、小隊指揮の経験しかない、と思うの。だからこういうゲームは新鮮でいいかな……って。虚妄のサンクトゥムのときも、エリドゥのときも、先生の指揮をみて、色々メモをとっているのが、見えたから」
「……ユズさん、見ていたんですね。私は先生と初めて出会ったときに、指揮力で負けてしまいましたから。少しでも参考になることがあればと近くで指揮している姿を見る機会があれば参考にしています」
「う、うん。先生は色んな学校の生徒の指揮をとったことがあるけど、大隊規模――学校全体を指揮するのはさすがに少ないから。RTSみたいなゲームで、基本的な知識と全体をどう見るのかさえ分かれば、ミヤコちゃんなら指揮、できるかもって」
「いえ、はい。そう言っていただけると、とても嬉しいです。ユズさんは現状でもそういったことの知見があるでしょうし、とても参考になります」
「そ、そう……。つ、次はこのゲームやろう」
「……ユズがこんなに他校の生徒と仲良くしているだなんて」
少しぎこちないながらも月雪ミヤコと話す花岡ユズを見て、なぜか泣きそうになっている早瀬ユウカ。ゲーム開発部をいつも構っているからか、親目線のようになってしまっている。
そのあとも4対4の爆弾解除FPSやインクを塗り合うシューティングゲーム、協力といいながら蹴落とし合うアクションゲームなどを遊んだ。
いつしか月雪ミヤコとゲーム開発部の壁もなくなり、とても楽しそうに夜通しでゲームをしていた。
☆
「それでは、ありがとうございました。またお邪魔させていただきます」
結局ゲーム開発部と一緒にパジャマパーティーならぬゲームパーティーをし、次の日の夕方まで遊び続けた月雪ミヤコが帰る時間がやってきた。
「またねミヤコ!次はそっちの仲間も連れてきてよね!」
「また遊びましょう、ミヤコさん。私たちも楽しみに待ってます」
「ミヤコちゃん……ま、またね」
「ウサギ隊長に敬礼です!」
「……敬礼、です」
アリスと私の敬礼に苦笑いをしながら敬礼してくれた月雪ミヤコは、そうして帰っていった。
「いやあ、RABBIT小隊の隊長さんだからお堅いイメージだったけど、ノリもいいし良い人だったね!」
「誰かというとノア先輩に似てるかも。優しいし、しっかりしてるんだけど、怒らせちゃいけなそうな人というか」
「み、ミレニアムにきてもすぐ馴染みそうな感じだったね」
「アリスも今度はウサギ隊長の基地に遊びにいきたいです!」
「では、今度シャーレの当番がある日に公園に寄ってみましょうか」
「楽しみです!」
少し前では考えられなかったこの光景。私がアリスの役に立つ、ということはほとんど出来なくなってしまったが、アリスの話を聞いて、アリスが楽しんでいるのを見ていることが私にとっての日常になっていく。
もう少しすればミレニアムEXPOも始まりトリニティ総合学園の生徒がミレニアムサイエンススクールへとやってくる。ティーパーティーからは桐藤ナギサではなく百合園セイアがやってくるそうだ。正義実現委員会などもくるという話を早瀬ユウカから聞いているので、また新しい出会いがやってくるのだろう。アリスが、ゲーム開発部がまた変な事件を巻き起こしセミナーやCleaning&Clearingに怒られる姿が想像できる。それを抑えることを早瀬ユウカに依頼されたが、私としてはアリスは好きに遊べばいいと思う。さすがに犯罪行為になってしまうだろうことは止めるつもりだが、襲撃や器物破損程度であれば止めるつもりはない。
黒崎コユキのように度が過ぎたことをするのであれば何かしら対策をとろうとは思っているが……あちらは生塩ノアが見張っていることは知っているので大丈夫だ。ゲーム開発部もカジノ大会はもうしないと思いたい。
【 報告は以上です、先生。 】
冒険をしていた頃のように、日記のようなものを先生へ送る。アリスが戻ってきて止めようとしていたのだが、先生が続けてほしいの願ったので止める機会を失ってしまった。
【 "お疲れさま。昨日は仕事が忙しくていけなくなっちゃってごめんね。楽しかった?" 】
【 月雪ミヤコは楽しそうにしていました。アリスも満足そうなので私としても良い日であったと思います。 】
けれど、もう少しだけ続けさせてもらおうと思う。
【 きっと、明日も良い日になるでしょう。アリスと一緒にいるのが、私の日常ですから。 】
公式からの供給がきたという話。もう何も言うまい。ありがとう。
やっぱりケイはツッコミ担当になるんだなあって。解釈通りで大満足です。
そして妄想が現実になった形で実装されてしまったので、この話も終わりです。最後まで読んでくださりありがとうございました。頭の中に次の妄想話が形になった時にまたお会いしましょう。次はプレイアブル化を夢見てブルアカを続けていこうと思います。