最後に見えたのは、空中から自らを見下ろす黒い異形だった。旧レイレナード、自分が十数年前に潰した軍事企業の傑作機である、
『03-AALIYAH』。過去に交戦したことのあるNo.1、『ベルリオーズ』はこれに乗ってたなと過去の記憶が蘇る。急速に落下していく加速度を感じ、衝撃。海面に着水したのだろう。機体のAMSが壊れたのだろうか。徐々に視界が朧げになり、世界が輪郭を失う。リンクス戦争の英雄とまで言われた私も、ここまでか。いや、もう死んでいたのかもしれない。レイヴンとして敗北し、少女に拾われたあの時にはもう。自分を見下ろすアリーヤが、記憶の中のシュープリスと重なり、消えて、視界は暗転した。
世界が赤く、地面は黒い。日が天空の頂点にあることから、かろうじて昼間だと確認できる。セピア調に染まった視界に映るのは、瓦礫と化して炎と煙に包まれた市街地、「コロニーアナトリア」。守ると誓ったその街の姿に衝撃を受けるが、耳に入ってきた声に全てが吹き飛ぶ。
『遅かったな、言葉は不要か』
戦友であり、同じく人々を守るという心同じくした同志の成れの果て。
アナトリアの瓦礫の上に奴はいた。
「00-ARETHA」彼女の、フィオナの父親だったイェルネフェルト教授が試作した、プロトタイプ・ネクスト。それが指し示すところは、私が知っている「アスピナの閃光」は死ぬと言うこと。
「オーメル・サイエンス社」。十中八九あの陰謀屋の仕業だろう。だが考えている暇はない。今はただ、目の前の彼を。
暗転。
緋、黒、日。目の前に聳え、燃え盛る異形の巨人。首を垂れて動かない。なぜか無性に近づきたくなる。一歩、また一歩と重い足を進めていき、彼の亡骸に触れ…光に包まれる。
あまりの光に手をかざす。指の隙間から溢れる光はアサルトアーマーを想起させた。ここはどこなのか。視線を四方にめぐらせると、大きなディスプレイと操縦桿。あぁそうだ。ここは愛機である「ホワイト・グリント」のコア内部。詰まるところはコックピットだ。確かイレギュラーに落とされて…自分は生きている。強い光は日光のようで、目はコックピットの外にいる数人の影を見る。
「動いた!生きてるぞ!」
「こちらズールー3-6、彼は、閃光のリンクスは生きています!」
どうやら救助部隊らしい。彼のところへはまだ行けないようだ。
『白い閃光』。あなたの真似事をする私はどう見えているだろうか。それから、彼女には…謝罪とランチを誘わねばまたヘソを曲げてしまうかもしれない。そんなことを考えながら、ラインアークの海上で少しの間休息をとった。