そのリンクスは夢を見る   作:あーねむ 草の民

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『最後に殊勝とは、らしくもないな。ロイ・ザーランド』
 ORCAルート最終ミッション アルテリア・クラニアム襲撃
   ウィン・D・ファンション


そのお調子者は夢を見ない

 BFF本社内にある一室。机と席が一つあるだけの薄暗い部屋に、3人の人間がいた。1人は顔に深く皺が刻まれた老人。1人は気品を漂わせる美しい少女。そしてその場にそぐわないラフな格好の男が1人。

 

「久しぶりだな爺さん。これまた随分と老け込んじまって」

 

「その達者な口も変わらんようだな、ロイ・ザーランド。まずは挨拶をすると言う礼儀を身につけておけ」

 

 ロイ・ザーランドは肩をすくめ、おちょくるように「おぉーこわい」と言う。老人は深くため息をつき、背後にいる少女に目を向ける。少女の目はロイを捉えて離さない。そのじっとりとした視線に気づいたのか気づいてないのか、

 

「んで爺さん。そっちのジト目の嬢ちゃんはどうしたんだ?まさか遂に年下に手を出したってか?でも流石にこの差はな…」

 

「勝手に1人で話を進めるでない。『リリウム』、自己紹介をしておけ」

 

 老人の斜め後ろで立っていた少女は一歩前へ出て、端末を保持する手を下ろしてから礼をする。蛍光灯の白い明かりに照らされた顔は、年相応の幼さを残しながら、美人と形容できるものだった。

 

「はい、王大人。先ほどは失礼しました。大人の秘書として、そしてBFF社のリンクスとして活動している『リリウム・ウォルコット』と申します」

 

 角度は30°。どうやら王小龍に相当良い教育を受けているらしい。最近聞いていた『BFFの王女』とは彼女のことかと、ロイは1人納得する。

 

「しかし、性懲りもなく女王の次は王女とはな。彼女の件で学んだと思ったが」

 

 『メアリー・シェリー』。オリジナルナンバー5。BFFの女王とまで呼ばれた彼女は、狙撃特化型のネクストで多くの敵を葬った。そして、彼、『アナトリアの傭兵』に墜とされた。さっきよりもリリウムの視線の鋭さが増す中、王小龍が忌々しげに口を開く。

 

「黙ることだな小僧。次余計なことを言うと頭が吹っ飛ぶぞ」

 

「おおっと、部下の首輪はしっかりと繋いでおけよ。首輪と言えば、マザーウィル。やられたんだってな」

 

 数ヶ月前、突然カラードに登録された1人のリンクス。ネクストは「ストレイド」、年齢や性別は不明。最近の戦果は目覚ましく、直近ではBFF所属の地上最強と目されるAF、「スピリット・オブ・マザーウィル」をVOBを用いた強襲により撃破していた。突如発生したルーキーによるジャイアントキリングで、カラード内部は一時騒然となった。軍事雑誌はそのことで持ちきりになり、ジャーナリストや評論家は挙って分析をしている。

 

「時代遅れの産物だ。ルーキーにやられると言うのも風流だろう。この辺で要らないものを切り捨てられたんだ。悪いことでもあるまい」

 

「ご老体に似合わぬ強がりかい?爺さん」

 

「大人へのそれ以上の侮辱行為は許しません」

 

 我慢できないと言った様子でリリウムが声を荒げる。瞬間、ロイ・ザーランドは目を丸くし、続いて楽しげに笑う。

 

「おぉ、ははは。いい弟子を持ったじゃないか、王小龍。今日は会えて良かった。貴女はその限りじゃないかも知れないが。それじゃあ。依頼があれば連絡をくれよ」

 

 それ以上はリリウムの機嫌を害すと判断し、ロイは退出する。扉を閉めて歩き出した廊下は延々と続いているようで、これから歩む世界の道とも見えた。ポケットが震える。どうやら携帯に着信が来ているらしい。画面を確認すると、『ウィン』の文字。

 

「よ、どうした?ウィン」

 

『リリウムは美人だったか?』

 

 思考を巡らせ、回らせ、廻らせ、囲らせる。どの『答え』が自らの身の保証へ繋がるか。辿り着いた結論。

 

「あぁ、すげぇ綺麗だったぜ。特にあの顔立ちが_」

 

『覚悟しておけ』

 

 それだけを言われると、電話が切れた。見えもしない空を仰ぐ。きっとどこまでも透き通った癖に汚いんだろう。

 




その後帰りたくなさそうに廊下を歩いていたロイ・ザーランドは、突然現れた女性に電光石火で連行されていった。BFFの社員は呆気に取られていたと言う。
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