今回の反応どう出るか…。悩んだ結果ですけど、荒らさないで…。
ミシリスインダストリーのCEO室に通信のコール音が鳴り響く。本来CEOという立場上、秘書を挟む過程を経て通信することが通例となるが、そう言った行為が一切行われることなく、直接回線でのコールとなり、なんらかの厄介ごとを感じたミシリスインダストリーのCEOシュエンは顔を顰めた。
厄介ごとの相手は、巷で持ち上げられている平和の象徴、ピースメーカーであったからだ。
シュエンはピースメーカーのことをよく思っていない、いやむしろ嫌いとも思っている。
理由としてはひとえにミシリスの最強部隊、メティスの活躍が『ピースメーカーのおかげ』などと吹聴され、割りを喰らう展開が多々発生している点もあるが、純粋に人間として信用できていない点が強いからだった。
中央政府の上層部に取り入り、一定の地位を築いたまではいい、富と名声に目が眩んだ愚か者と一蹴できるからである。
しかし、得た力も名声も結局のところ地上奪還という夢物語にしか費やしていない…見えている部分では身の潔白こそあれど、後ろ暗いところは見せていない…そう見せていないだけで、アウターリムに溢れた技術者や研究者を独自に抱えるような不審な点や、意味の薄い地上探索など、注目すれば不可解な点はいくつか見られるからだった。
わかる人なら、裏で何かをやって企んでいると憶測するには十分すぎる印象を持っていた。
そんな相手からの直接の通信、厄介じゃないはずがないとため息が入りながらも、シュエンは五コール目で通信に出る。
『ごきげんよう、シュエンCEO、息災かな?』
「直通回線を誰から聞いたのか知らないけど、今度からやめてくれる?私も暇じゃないんだから」
『おや、ご機嫌斜めだね。先日の作戦で株価を20%も上げさせたのだから感謝こそされても、憎まれ口を言われる筋合いはないように思うが』
「ふざけないでくれる?ヘレティック討伐作戦のことを言ってるなら、メティスだけなら32%は上がっていたわ」
『メティスだけなら確実に失敗していると、シミュレーション結果で分かりきっていたはずだが?まぁいい、要件だけ言おう。君のところのワードレス部隊を派遣してもらいたい、もうロールアウトはされていたと聞いている」
「…相変わらず耳が早いわね」
ワードレス部隊、特殊個体のラプチャー捕獲用に開発した最強部隊メティスに次いで開発された特殊部隊。
その特殊性故に、機密保持のため関わった人員は限られた研究員や技術者であったにも拘らず、ロールアウトからほとんど数日しか経っていないはずの段階で知り得たピースメーカーに、シュエンは内心舌打ちをした。
『唯一の取り柄だからね、それでどうかな?』
「特殊なラプチャーでも発見したら…派遣してやらないことはないかしら」
『それなら問題ない。人語を操り、人のように思考するラプチャー、君が追っていたと記憶していた"奴"だよ』
「ッ!…個体名トーカティブ、近くにいるの?」
『ワードレスさえ来てくれるなら、"いつでも"捕獲できるような状態で現状維持している』
「分かったわ、すぐにでもワードレス部隊を派遣させる…それで私に恩を売った目的は何かしら?」
『はは、どうやら信用されてないようだね。貸し一つと考えてもらって構わない、三大企業の一人のCEO相手に貸しを一つ作れる…その重要性は計り知れないからね』
一見無欲にも思えるこの行為は"牽制"と"脅し"であり、この程度の手柄くらい誰にあげても構わないという胆力と、貸しがある現状でこちらになんらかの手を出した場合メンツに関わることになり、手出しさせないための警告でもあった。
「相変わらずの腹芸ね」
『私は何も言っていないよ、他の人が勝手に
プツリと一方的に切られた端末からシュエンは顔を離し、ワードレス部隊の出動に取り掛かった。
「あの男の指示に従ってるようで癪に障るけど、会社の利益には繋がるのよね…」
今後とも、嫌々ながらビジネスライクを続けようかとほんの少しシュエンは思考した。
◆◆◆
ワードレス部隊が派遣されるまでの時間で、虫の息のトーカティブを移動させる。
ラプチャーを仕切っていたトーカティブが虫の息となったことで、戦場のラプチャーは統率を失い、各個撃破をするまでそこまでの時間は掛からず、思考に時間を費やせる。
トーカティブの生存の重要性は、トーカティブ死亡の"その後"の不確定要素を考えると、未来の情報を活かせる現段階において確実性に乏しくなるため、あえて生かしている。
ついでに『ワードレス部隊にトーカティブを捕えさせる』ことにより、巡り巡って未来で登場するアンチェインド弾を確実に一つ確保でき、トーカティブが捕えられている現状であれば、マリアンが犠牲になるような事態は低くなる。
仮にマリアンがモダニアとなった場合でも、原作では解決した事柄であるため、心配するようなものでもない。
もっとも、別の意味で心配することが目の前で起こってはいるのだが、私が口を出すことでもない…本人たちで解決してくれるのが一番である。
「その…久しぶりですね…ヘンゼル、グレーテル」
ヘンゼルとグレーテルに前提として、レッドシューズが生存していたところを説明したその後、レッドシューズがヘンゼルとグレーテルに話を切り出した。
「ヘンゼルとグレーテルは…レッドシューズにお別れができなかったことが心残りだったわ」
「唐突にお別れしちゃいましたからね…」
「ヘンゼルはレッドシューズに会えて嬉しいと思うの、グレーテルはレッドシューズにシンデレラの事を謝って欲しいと思ってるわ」
「シンデレラに、みんなにもう一度会ったら…みんなに謝って、罪を償って…」
グレーテルが喋った…。
「グレーテルは、みんなが許してくれたら…レッドシューズを許してあげる」
レッドシューズは深々と頭を下げ、顔を上げた。
「ごめんなさい、昔の私はどうにかしてたと思う。間違っていた…と言って許してくれるとは思えないですけど、人類のために戦う指揮官様の元で贖罪します…。ヘンゼルとグレーテルには怖い思いもいっぱいさせちゃって本当にごめんなさい」
長い沈黙の後、ヘンゼルが口を開いた。
「…ヘンゼルとグレーテルは、とりあえずシンデレラとエイブとセイレーンに会ってから、決めると思うわ…でもヘンゼルとグレーテルはレッドシューズにもう一度会えて嬉しい」
和解…とは言いづらいが、納得はしてくれたようなので、少し口を挟む。なんというか、女の子同士の間に口を挟むのは忍びないな…。
「結局のところ、レッドシューズの思考が狂ったのはラプチャーが存在しているからだ…我々は地上からラプチャーの殲滅を掲げている。君たちも協力してくれるかな?」
私はヘンゼルとグレーテルに握手を差し出した。
「ヘンゼルとグレーテルはその返答にどう返すか決まっているわ…勿論!」
ヘンゼルは左手を、グレーテルは右手を握り握手を交わす。
「さて、トーカティブを回収する部隊がしばらくすると到着する。君たちはアークは当然、それ以前からも未認可のニケということもあるため、とりあえずはアンリミテッド部隊の人達と行動を共にしてもらおうと思う」
「ヘンゼルとグレーテルは、やっぱりお兄さんが何者か知りたいと思うわ」
「一般的な指揮官だよ…それ以上でもそれ以下でも無いけどね」
お疲れ様でした。
自分が間違っていた→ラプチャーよりもっと上位の存在を見つけた。
あの時の自分はどうにかしていた→今は別の上位の存在を認識してるから、当時ならまた変わってる可能性を否定していない。
怖い思いをさせた→これは本当にそう思っている。
贖罪したい→贖罪こそが神に近づく一歩だとピースメーカーの言葉から読み取った(ピースメーカーがそう誘導した)。
すごい制御できてる気がする(小並感)。
レッドシューズのキャラを崩さないように和解させるの難しい…悪役なら悪役のままの方がどれだけ楽だったのか…まぁ赤い靴の原作ハッピーエンドだから、この様な形になったんですけどね。
あとちゃっかりワードレスの運命も変えてそうなんだよね。
あとピースメーカーがシュエンから嫌われてそうなのは解釈一致そう。