【本編完結】アークの一般指揮官   作:山吹乙女

16 / 36
 お疲れ様です。
 本編の続きはセイレーン辺りの情報が揃ってから書きたいと思うので、今回はピースメーカーの過去編をサイドストーリー風に


『番外編』サイドストーリー風『PEACEFUL WORLD』短編

 PART-1

 

 私が生まれ落ちたこの世界は、ひどく醜く写っていた。

 名前も感情もあるニケの彼女たちを人間と扱わず、道具のように使い潰す。私たちと同じように思考し、同じように感情があり、同じ見た目をしている彼女らには人権と呼べるものがなかった。

 

 そんな彼女たちはいつしか『仕方がない』と諦め、嫌々でもその境遇を甘んじるしかない現状だった。

 そんな光景を幼い頃から見せられ、それがある種の"当たり前"だと言われても自分の中で消化できないチグハグさから、幼少期にはよく周りから反発された。

 

 いつからか私の中で間違っているのは自分ではなく、"世界の方"であると考えるようになり、アークにおける組織改革を考えついた。

 すでに完成された腐敗した社会構造の改革は、至難を極める。そこでまず幼少期から、心を同じとする同士を見つけ、時には作り、私の思惑を周りにバレない範囲で広め、徐々に浸透させるように画策した。

 

 子供というのは単純なもので、「親には内緒で」や「ちょっと悪いことかもしれないけど、結果的には良い事」だと印象付けるとすぐにやる気を出した。親にも秘密を持つという罪悪感のスパイスと、その秘密を共に共有しているという優越感は幼い子供心に火をつけ自分自身怖いくらいに物事がうまくいった。

 そんな中で幼少期である私でも、すでに人心掌握のノウハウが備わっているように感じるが、"自分が異常であるということを自覚しているなら、そのことを隠すのは容易なことだった。"

 

 最初は私から始まり、三人に増え、十人に増え、三十人に増えと、アークの組織改革に力を貸してくれる友人は日に日に増えていき、十五の年齢辺りになると、頭の良いものほどその恩恵の意味を理解して中央政府の官僚や閣僚になる為、好成績を残すことになり、中には未来で中央政府の副司令にまで上り詰める者も抱きかかえる事に成功した。

 

 私自身はフットワークが軽い方が動きやすいこともあって、現場のニケ達の指揮官を目指し、それ以外の者は中央政府の官僚や秘書に上り詰め、その者達と裏で繋がることでそのネットワークをより強固な物に変えて行った。

 

 

 

 

 PART-2

 

 

「初めまして、私は今日より配属されることとなったこのピースメーカー部隊の指揮官だ。私のことは好きに呼んでもらって構わないが、その前に君たちの事について教えてくれないかな?」

 

 新人指揮官が開口一番にそう言った。普通の指揮官であるなら、私たちの事に対して何も関心を持たず、良くて弾除け、悪くてデコイとしか思ってない風潮すらあった。

 そんな中で、自分を蔑ろにしてでも私たちに興味を示し、聞こうとしてくれる姿勢に戸惑いはあったが、少なからず好感を持てた。

 

「私はオズです。指揮官」

 

「グリム…」

 

「ゴーテルだよ」

 

 何度か同じ戦場を渡り歩いた少し顔馴染みであるグリムとゴーテルは、私のようにやや警戒気味な対応だった。

 

「ではまずは、グリム。命令無視による独断行動と、独断専行。たらい回しのように除隊と入隊を繰り返す問題児である…か。私は前もって君たちの資料と私個人で調べさせてもらったデータを元に、客観的に判断する場面もあるが、君の行動を理解できないものにとっては確かに扱いづらいとも言える。君の行動はその場における最適解を常に選択した結果起こる指揮官としての嫉妬と、その無能が癇癪を起こした結果であると私は判断した。この隊では君の考えた最適解をより良く実現できる君の望む場所にするつもりだ」

 

 戦場にいてグリムと肩を並べたニケなら、指揮官達による彼女の過小評価は、歯痒さを感じたこともある。しかしそれは共に戦うニケであるからであって、前線であっても"今の"アークの指揮官が理解できるものではないと諦めていた。

 それをこの指揮官は十数枚程度のデータで完全に把握していた。実際、グリム自体も予想していなかったようで口が半開きになっている。

 

「続いてゴーテル。私語が多く、戦場に似つかわしくない浮ついた言動が身にあまり、隊の中でも孤立気味。同じ部隊でも自分だけ待機命令を受けることもしばしばあり、作戦に出ようとしない怠け者…と前もってもらった資料に書いてあるが、私からしてみれば、隔絶された実力とそれに裏付けされる余裕、周りの生存能力を上げるためのムードメーカーになっていると、判断した。待機命令を幾度か受けていても、この中でも最多稼働時間とそれに裏付けされる生存能力。私は君を蔑ろにしないと約束しよう」

 

 実力はあっても隊の規律を乱す人は厄介に見られるが、彼女はその典型例だったのかもしれない。

 その隊の指揮官がニケに興味がなく、また部隊のニケ達も彼女に構うほどの余裕も実力もなかったから、彼女の意図を汲み取れず孤立していった。そう言った経緯を彼女の表情から見て取れてしまった。

 

「そしてオズ、量産型ながらも戦場におけるセンスと戦術眼、それに見合う生存能力と安定した思考。元の部隊では絵に描いたような優等生とも取れるね。前もって調べたデータでは欠点らしい欠点はなかったが、この隊の中ではそう畏まらず、肩の力を抜き給え。君が無理に頑張らずともこれからは私が居るよ」

 

 あぁ、そうか…この指揮官は_この人は、その人の望む言葉を分かって、理解して言える人誑しなんだ。でも…。

 

 

 

 

 

 

 

 PART-3

 

 

 

 初陣に伴い部隊員とのメンタルケアと親睦を深めた三日後、大群のラプチャーに周囲を囲まれていた。

 見える範囲にこそ居ないが、続々とこちらに集まって来ている危機的状況下。司令部から応援を呼ぼうにも端的に言って仕舞えば『新人指揮官に出せる戦力はこれ以上無い』という無慈悲なものだった。尤も今から応援に駆けつけたところで、普通なら間に合わず死体が増えるだけだろう…そう普通なら。

 

「私たちは運がいい」

 

「この状況で世迷言を言う暇はありません。弾丸の残りも少なく、応援は絶望的、ラプチャーにはこちらの大まかな位置が知られていて、網を張るように徐々に逃げ場を失いつつあります!今は、指揮官だけでも生き残れる道を模索するだけです!!」

 

「囮は私が行く…その先にオズとゴーテルは指揮官を連れて撤退を」

 

「囮役は一人より二人の方が可能性は上がるよ!オズは指揮官様を連れてこの戦場から速やかに脱出して」

 

 グリムもゴーテルも自分の身を鑑みずに私を逃がそうとする。

 

「いいや違う、間違っているよオズ、グリム、ゴーテル。生き残るのはピースメーカー隊全員だ」

 

「またそのような世迷言をッ…」

 

 オズから目を離し、今陣取っているショッピングモールのガラス張りから下を覗く。

 

「建物の下に見える開けた十字路の交差点があるだろう、その下には旧時代の地下鉄が密集している。そこにあえてこちらから場所を知らせるように音を鳴らし、大量のラプチャーを集め、デコイに使う爆薬と今ある分全ての爆発物を投入して集まったところで爆破させ、地面を崩落させラプチャーを一網打尽にする」

 

 私の作戦内容と目線に釣られ、オズ、グリム、ゴーテルがガラスに張り付き下を伺う

 

「そんな…無茶です。地下が崩れるほどの爆薬が今あるとも限りません。計算もせず崩落させるなんて、奇跡でも起こらない限り…」

 

「それなら、起こすしか無いね…旧時代では宗教に出てくる救世主(メシア)でさえ、奇跡を起こさなければ認めて貰えなかった…だとすれば、私たちにも奇跡が必要だろう」

 

「でも…」

 

「…私は賭けてもいいと思う」

 

「私も!まだ三日間の付き合いだけど、この隊すごく居心地がいいもんみんなで生き残ろうよ!」

 

「オズは…どうかな?」

 

 オズは悩みに悩んで決心がついたのか私に強い眼差しを向けた。

 

「みんながやるなら賭けてみましょう。もし失敗したなら、私が指揮官の枕元に化けて出て来ますから」

 

「はは、それは困る…なら、成功させるしかなくなってしまったね」

 

 私たちは顔を見合わせ、行動を開始した。

 

 

 

 

 

 PART-4

 

 

「指揮官、作戦予測時間まであと1分を切りました」

 

「タイマーカウント。全隊員、行動準備」

 

 59、58、57、56、55、54、53、52、51、50。

 

 全員が固唾を飲む。キャリアそのものが一番若いオズが一番緊張しているかもしれない、銃にかける手が少し強張っている。

 

 30、29、28、27、26。

 

 グリムはフーッと息を吐き銃のスコープを覗く、ゴーテルは微動だにせず仕事モードを維持。

 いよいよだ………。

 

 3、2、1…。

 

「爆破ッ!」

 

 カチっとボタン式の爆弾が作動し、一番近くにいたラプチャーが爆ぜ、連鎖爆発を起こしラプチャー達のいた足場が徐々に亀裂を作っていき、崩落していく。

 

「爆破成功確認!」

 

「掃討作戦に移る」

 

 作戦は成功し、後に大群のラプチャーを一網打尽にして当初の作戦を遂行した功績を中央政府からいただくことになったが、アークに戻り中央政府に向かう途中、別の部隊の量産型や私の部隊のオズやグリムは石を投げられた。

 中央政府に対しては有用な部隊であると足掛かり的な証明が出来たわけだが、アークの民間人からしたら自分たちの住む空間がニケ一人分でもなくなるかもしれないと言う、言わば"口減し"じゃなかったと言う逆恨みから謂れの無い反感を受けた。

 

 

 

 そして十年の月日が流れ、大規模な作戦終了時には凱旋が行われることがしばしばあり、その時には住民から花束を渡されることもあった。

 

 思えば決して短く無い道のりだっただろう。友人達の力を借り、オズ、グリム、ゴーテルのマシンスペックを向上させ、私たちの間柄だからできた信頼から思考転換は起こらず、部隊の死亡率は初任務から今まで0%を記録したことから、私たちはいつしか"平和の象徴"と呼ばれることとなった。

 

「ああ…私はもう…」

 

 私ができる下地は終わらせた。あとは、後に台頭してくる"彼"に任せても大丈夫だろう。

 私は自分の体が動くまで、戦おう。地上を奪還するその日まで…。

 

 

 

 

 

 PEACEFUL WORLD END

 

 

 

 

 

 

 




 お疲れ様でした。
 ちょっと諸々のピスメの設定が変わったような…。
 まぁ、ピスメ自身が説明するとこう映るからこのように喋っていると言っているような…転生者って描写もほとんど出してないけど、本編もほとんどそれらしき描写が未来の情報を知ってる云々くらいだから

 多分、このストーリーは出版社の取材で作ったピースメーカーの武勇伝みたいな本の内容だと思ってください(笑)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。