【本編完結】アークの一般指揮官   作:山吹乙女

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 お疲れ様です。
 続きます。


一般指揮官と主人公指揮官のありふれた会合

 『マリアン奪還作戦』

 そう命名された作戦は、かつてカウンターズの指揮官の元で活動していた死亡したはずのニケがヘレティックになって現れ、ヘレティックから再びニケに戻す為の作戦とされ、アーク全部隊に招集がかかった。上層部的にはアークに敵対するヘレティックの数が減る可能性、作戦が成功した時のリターンが計り知れない点、あとはアンダーソン副司令の後押しが大きな要因となり、カウンターズの指揮官のための作戦が決行された。

 

 もちろん我々ピースメーカー隊にもその招集に声がかかり、戦場における全面的なバックアップが主な立ち回りとなった。

 

 「前もってブリーフィングで知らせた通り、我々はカウンターズが突入する為に先陣を切る…皆の言いたいことはわかる、さながらファーストペンギンとも言えるね。しかし安心したまえ、全ては我らの手の中だ。戦場を完全掌握し、犠牲者を出さない最も安全な部隊、それが我々ピースメーカー隊だ…平和の象徴を改めて、アークの上層部に見せつけようじゃあないか」

 

 現在の途中加入から、部隊に組み込めるまでに調整出来た者を合わせて、全部隊員総勢74名が拳を上げ、鬨の声を上げる。三魔女とカーレンを除けば、全員が多少のカスタマイズを施されている量産型ニケだが、その練度と技巧は一人一人がネームドニケにも引けを取らない。

 

 機体性能が勝敗を分つ絶対条件ではないと誰かが言っていたが、適切な運用と事前準備、常に士気の高さを心掛け、足りない部分を数でカバーをすれば兵隊ですらない野生動物のような一般的なラプチャーはもはや相手にすらならない。

 

 それに、今回は念のため作戦領域外にヘンゼルとグレーテルにも待機してもらっている上に、パイオニアのメンバーはカウンターズの指揮官が口説いて援軍としてきてくれるだろう。

 

「私の神…今回は珍しく気合いがお有りですね?___もしや運命を変えるおつもりで?」

 

「鋭いねカーレン。そろそろ傍観者ではなく、私も決められた運命に手を出してみたくなったのさ」

 

 三魔女とカーレンには前に私が未来を知っていると言っている。

 レッドシューズが生存している点、現状トーカティブがアークに捕えられている点、数えるとキリのない数の改変を行なって来たが、今回はモダニアをマリアンに戻すために動く事とする。

 

 原典ではトーカティブの介入によって、アンチェインドを撃たれたモダニアは一時的にマリアンに戻るも、再び侵食されてしまい侵食区画を取り除くために脳の洗浄を行なって赤ちゃんのような精神だけ幼女になってしまった。もし仮にこのままトーカティブの介入がなければ、モダニアはマリアンとなるのか、はたまたモダニアのままになるのか…検証してみたくなった。

 

 しかし問題点はある。トーカティブの介入により、マリアンは再度侵食されたが、どういうわけかモダニアはクイーンとして覚醒した…トーカティブの介入で、モダニアのクイーン因子の有無が変わるかどうかは定かではない。

 しかしトーカティブ自身が、我らがちしかんの失敗作である可能性もあるので、クイーン因子が存在していてもなんら不思議ではない。まぁ、モダニア自身にクイーン因子がある可能性が一番現実的な説だろう。

 

「それでは出陣するとするか…安心し給え___ラプチャーだろうと、ヘレティックだろうと、その悉くを無に帰せばいい」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 アークのモニタールームでは、アークの三大企業エリシオン、ミシリス、テトラのCEO、イングリッド、シュエン、マスタングの3人と副司令官アンダーソンが、マリアン奪還作戦の戦場をモニターしていた。

 

「状況は?」

 

 一時離席していたイングリッドがモニター室に戻ると、マスタングが口を開いた。

 

「一言で言えば圧倒的DESU」

 

「ふむ…やはり平和の象徴と言えど、大多数のラプチャーには手を焼いているか」

 

「いえ、圧倒的なのはその逆ですYO、Mr.ピースメーカーは三時間足らずでマリアンまでのROADを形成してMASU。この調子ならカウンターズがいなくても一人で辿りつきそうですNE!」

 

 "HAHAHA!"と呑気に笑うマスタングだが、戦況は圧倒的ピースメーカー有利であった。

 

「ピースメーカー、平和の象徴と呼ばれる存在は伊達ではなかったか…ラプチャーを歯牙にもかけない電撃戦。しかし彼の部隊はこれほどの組織力だったのか…」

 

「しかもウチのガラクタ達も合わせた三大企業の量産型を満遍なく採用した部隊。一部改修は施されてるようだけど、それでも一人一人はハイエンドには遠く及ばないかしら」

 

 ピースメーカーの異常性を肯定するかのように、シュエンが口を出した。原典の通り、ミシリス最強部隊メティスが侵食に遭い、今回の作戦に出られない苛立ちも混ざってるが場所が場所であるので、事実のみを淡々を喋っていた。

 

 シュエンに続いて、口を開いたのはアンダーソン副司令だった。

 

「一人、アーク建設当初に封印指定されていたハイエンドスペックのニケがいるが、それでも一人で戦局をひっくり返す力はないだろう」

 

「確かカーレンだったか___私も調べたが、出所不明でコアが破損していたオーバーテクノロジーのニケらしいが、どうして封印処置されていたか判明されていない代物だろうに、ピースメーカーはどうして戦力として組み込んだ?奴の常に危険性を排除する思考からは些か考えられない行動に思えるが」

 

「答えは簡単だ。知っていたんだ、元々な」

 

 イングリッドの疑問にアンダーソンは淡々と答えた。

 

「知っていた?それでは妙だ、アーク建設当初は凡そ100年も前のこと、奴の年齢的にそのことを知っているわけがない」

 

「それについては…今は関係がない事だ。本作戦が終了した時にまた時間を取ろう」

 

「…そうだな。こちらも時間を取る」

 

 アンダーソンとイングリッドは再び戦場を俯瞰したモニターに目を落とした。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

『指揮官、前線部隊に間も無く到着します!』

 

 オペレーター担当のシフティーからインカムで通信が入る。

 

「指揮官、こちらでも目視で確認できました。あの部隊は___」

 

[ッ!…ピースメーカー隊だ]

 

 ピースメーカー部隊。現在のアークにおいて、最も多くの前線に立ち、最も危険な場所に立ち…そして、最も安全な部隊。

 彼の指揮はまるで未来を見通してるかのようで、その手腕はさながら魔法使いと揶揄される…私の最も尊敬する指揮官。

 

 マリアンを失ってからというもの彼の論文を読み漁り、指揮官としてのノウハウを詰め込み、もうこれ以上仲間を失わない為に寝る間も惜しんで、彼の提唱する作戦シミュレーションをデイリークエストの様に消化した。

 

「こんなに前にまで来てるなんて…ッ!指揮官様!5時の方角から射撃が!」

 

[全員ハイド!あのタイプのラプチャー群の行動パターンなら射撃は平均約2秒後に収まる。1・2_今だ!射撃集中!]

 

「うぉぉぉ!!!火力ぅぅぅぅ!!」

 

「素晴らしい指揮です、指揮官」

 

『指揮官!後方より大型のラプチャー…ッ!マザーホエールの大群です!』

 

「うそでしよ…あの数は流石に_」

 

「師匠…どうするんですか?」

 

 また、私は失うのか?仲間を…マリアンを…。

 

殿(しんがり)は私が引き受けよう」

 

 マザーホエールの大群を前に為す術なしかに思われた時に、背中から声が聞こえた。

 

「ピースメーカー指揮官…」

 

 彼はこちらに振り返る事なくまるで背中を見ろと、"任せろ"と言わんばかりに、私の前に立ち、後方に部隊を集中させた。

 

「行き給え、それが君のなすべき事だ。この戦いで散って行った多くのニケ達は君の成功を聞いて、初めてうかばれるだろう」

 

[…はい!必ず…必ずまた会いましょう!]

 

「君に勝利の女神の加護が在らんことを」

 

 ピースメーカー指揮官が遥か後方で何かを呟いたような気がした瞬間、マザーホエールの大質量が地面に激突した衝撃が、足場を揺らした。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「指揮官、もしかして後輩にかっこいいところ見せようとしました?」

 

「オズ、私たちの指揮官は元々こういう性格だ」

 

「マスターがカッコいいのはいつものことじゃない」

 

 オズ、グリム、ゴーテルから茶化されると、流石の私でも少し恥ずかしさが出てきたので、頬を少し掻く。

 

「私の神がカッコいいから、皆さんついていかれてるのでしょう?」

 

 まるで当たり前である様なことを何食わない顔で、カーレンが言うと、茶化してきた三人が私のように頬を少し掻いた。

 

「こほん。さて、ではここからが正念場だよ___ピースメーカー隊エンカウンター」




 お疲れ様でした。
 なんとなくめちゃくちゃ最終回みたいに見えるけど、多分まだ続きます。
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