【本編完結】アークの一般指揮官   作:山吹乙女

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 お疲れ様です。

 三周年シナリオのネタバレがガッツリ入って来ますので、まだ見てない方は、すぐに見に行ってから戻ってきてください


一般指揮官のありふれた力

「ッ……!」

 

 マリアン奪還作戦中、唐突に頭部に痛みが走りたたらを踏むように頭部を押さえながらよろけた。片側の目と鼻と耳から赤く熱いものが垂れて来るがそれを手で拭う。

 なるほど………()()か…。

 

「指揮官?具合でも悪いのでしょうか?」

 

 一番近くにいた副官のオズが心配してくれるが、定期的に起こる現象なので安心してもらいたい。

 

「いや、問題ない。それよりも隊の損耗率は?」

 

「現状13%、負傷者5名、重症者0名、死亡者0名、弾薬と装備の損失が甚大です」

 

「強行軍だからな、弾薬の予備が少ないのは仕方がない。撤退を視野に入れつつ、作戦続行___おそらく向こうはあと少ししたら終了するだろう。しかし気は抜かない方がいい、改めて全隊員に安全マージンを徹底させておくように」

 

「了解」

 

 オズに指示を出し、一度肩の力を抜く。マザーホエールの増援は想定外だったが、既にマザーホエールを含め周辺のラプチャーの殲滅を確認。次のイレギュラーがあれば迷わず撤退だが、そろそろ我らがちしかんが終わらせてくるだろう。…裏に控えている"ヤツ"が必ずマリアンをクイーンに仕立て上げてね。

 

()()が来たのでしょうか?私の神」

 

 背後から現れたレッドシュ___カーレンが私の肩に手を置き、耳元で妖しく囁いた。

 

「フフ、私の神が驚いている顔、初めて見ました」

 

「…よく分かったね。いや、よく()()()()()___と言うべきか」

 

「当然です。私の神の事でしたら本人以外なら私が一番詳しいと自負できます」

 

 さらりと怖いことを言われた気がするが、カーレンは話を続ける。

 

「私の神は定期的に磁気とも電波とも取れる特殊な波長をキャッチしていたことは、研究でわかりました。波長の内容こそ解析の糸口すら見えませんが、その波長はDウェーブが発する波長と多少似てるものの別種でもっと小さく、物体や事象を引き起こすDウェーブよりも極めて小さな波長であるなら、それは映像や文章のような情報に限られる。私の神は別の世界か別の時空、何処かから流れ出る特殊な波長を___"未来と過去の情報"を、まるで神からの啓示のように受け取ることができる。まさに神の御業___恩寵と言っても差し支えありません」

 

 『驚いた』それは、私が感じた率直な感想だった。

 アークに居ても誰も気が付かず、仮にエニックですら感知そのものはしていたとしても、機器類の誤作動で片付けるレベルの微弱な波長で理解すらしないはずだが…いや、そもそも別の時空から流れ着く知識の輪郭を、情報であると理解している時点で本当に優秀だ。

 

「なるほど…よく研究できている。エニックですら知っていたとしても気にしないほどの極めて微弱な波長だったはず…。___そこまで分かっているなら隠しておく必要もないね。この事象は私の生まれに原因があり魂に起因する…と、思ってくれて構わない」

 

「やはり私の神は別世界の生まれであり、こことは別の高次元からの来訪……。素晴らしいです」

 

 某ヤンデレがしそうな顔に手を添えるポーズをカーレンがしているとインカムにシフティーから通信が入る。

 

『ピースメーカー指揮官、作戦完了!マリアン奪還作戦成功しました!!周辺ラプチャーに注意して撤退してください』

 

 なるほど…この調子なら、モダニアはマリアンの記憶を取り戻したか…。クイーン因子の活性化で、マリアンは第二のクイーンとなっているだろうか…。私の介入で一部未来が変わったか、早まったか…確認しなければいけないことは山積みだね。

 しかし、それよりも…。

 

「了解した。カウンターズが撤退しやすい様に、離れた場所でデコイを設置した後、こちらも撤退する」

 

『了解しました、それではご武運を』

 

「さて、作戦は成功したがもう一踏ん張りだ。最後まで気を抜くなよ」

 

 おそらく"彼女は"この戦域の近くにいるだろう。せっかくだ、顔見せには丁度いい機会だ。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

「なんということ…あの威圧感、あれはまるでクイーン?」

 

 アークにて行われた大規模な作戦、マリアン奪還作戦。その一部始終を作戦領域外から観察していたニケが一人いた。

 

「あのアークの指揮官に触れたことで、モダニアの"何か"が活性化し、戦闘が終了した…様に見えましたが、はてさせどうなるのでしょうかねぇ」

 

 笠を深く被ったそのニケは情報を持ち帰るためにその場を離れようとして、ふとこちらに近づいてくる一団を感じ取り足を止めた。

 

「初めまして、ナユタ。私はピースメーカー、アークで細々と指揮官をやらせてもらっている者だ」

 

 複数の部下のニケを引き連れながら、ピースメーカーは"ナユタ"と呼ばれたニケに出会った。

 

「貴方は噂に聞く、ピースメーカー…黎明卿、私のことをご存知の様ですが、こんな一介のピルグリムに何のご用でしょうか…___はて、もしやミラーですか?何故あなたが黎明卿と?」

 

 ナユタはカーレンを見て知人を見つけたように語りかける。しかし、当の本人のカーレンはナユタとは初めて会う。

 

「ミラー?___私の神、彼女は誰と勘違いしていらっしゃるのでしょうか?」

 

「ナユタ、彼女はミラーではなく実体のあるニケでカーレンという。カーレン、その事については、また後から説明する」

 

 "ミラー"とはカーレンがレッドシューズであった頃のオールドテイルズに所属していたおよそ百年前に、ラプチャーの侵食コードを作る際に自身の人格データをコピーして作られた存在であり、情報生命体である。ピースメーカー自身、ナユタが既に彼女に会ったことがあることを知らないゆえに、話が拗れることを内心危惧していた。

 そしてコホンとピースメーカーが咳払いをして、話を続ける。

 

「…ナユタ、伝える内容は詳しくは言えないが、本体に持ち帰ってもらいたい情報が幾つかある。まず一つ、近々クイーンがエデン近辺に降りて来るので、戦闘用ナユタをいつでもエデンに配置できる様に手配してくれ。二つ、アンチェインドは毒では無く万能ではないこと、クイーンに投与することは逆効果になり得る。三つ___」

 

 突拍子もない情報がナユタに降りかかり、ナユタは困惑気味にピースメーカーに待ったをかけた。

 

「少し待ってください。…貴方は何者ですか?」

 

「私は何者でもないアークの一般的な指揮官であるが…強いてあげるなら舞台の観客、傍観者とでもいうべきか」

 

 "傍観者"という言葉に反応したナユタは、怪訝そうにピースメーカーを見据えた。

 

「…それなら、何故その傍観者が演者に口を出すのでしょうか?」

 

「現実が悲劇のシナリオだからだよ。…蝶の羽ばたきが、未来の分岐になり得ると知っているかな?」

 

「バタフライエフェクト…蝶の羽ばたきという小さな現象すら、未来を変えるかもしれない、ほんの少しの差が未来を変える可能性を秘めている。なるほど…黎明卿は自分の存在そのものが、蝶の羽ばたきであると自覚していると?」

 

 前提の条件を理解したと感じ取ったピースメーカーは口元に不敵な笑みを浮かべた。

 

「素晴らしい…。限りある情報で私の意図を汲み取るとは、伊達に仙人として生きているわけではないね」

 

「この際、私の事を知っていることについては飲み込みましょう。しかし、黎明卿…貴方のその情報はどこから仕入れたものでしょうか?情報元が明確で無いなら、些か信用できるものではないですねぇ。もし"未来を知っているから"とでも言えば、信じるかもしれませんけどそんなことは___」

 

 話しているナユタの言葉を意図的に遮る形で、ピースメーカーは口を開いた。

 

「統計や分析や情報収集の類では、私の持つ情報は普通では知り得ないものであると、後々嫌でもわかってくるだろう。信じ難いかもしれないが、私は()()()()()()()()。このままいけば、リリスはクイーンとして敵となり復活する___私の考えうる限り最悪のシナリオだ」

 

「それは…本当ですか?未来を知って…それよりもリリーバイスがクイーンとして復活、しかも敵に…___少々情報を整理する時間をください」

 

「そう言うと思って、こちらも多めに時間を設けている。お互い"知りすぎている"というのも、困りものだね」

 

 静かに情報を処理しようとした時、"もう一人のナユタ"が近づいてきた。

 

「黎明卿が私に接触する万が一を見越して、本体である私が近くに居て正解でしたねぇ。"ナユタ"ここからは私が引き継ぎます、貴女は別のところをお願いします」

 

「分かりましたナユタ」

 

 合掌した"ナユタ"は、本体であるナユタに別れを告げるとその場を離れた。

 

「それでは、ナユタ。いい結末になるように___()()の話をするとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「君の研究が、ようやく日の目を見ることになりそうだよ。まさか思考転換したニケを元に戻す方法を見つけるなんてね」

 

「ふふ、研究の副産物でしたが私の神が居たから魂とも言える存在に触れられ、脳の解析が進み確立できた技術です。しかし、それには条件があります」

 

「リトルマーメイドの水泡の技術が前提の装置___ということだろう?」

 

「はい、水泡については既に失われた技術です。持ち主のセイレーンが生きてる保証も無く、生きていても居場所が分からなければ無駄になるところでしたが…」

 

「セイレーンの居場所には見当が付いている。エイブの居場所も…コールドスリープ状態のシンデレラもね」

 

「シンデレラ…私はシンデレラに許されるでしょうか?」

 

「許されなければ、君を復活させた罪を含めて私も一緒に死ぬことになるだろうね。私も死にたくはないが、その時が来るなら備えられるだけ備えて…後は彼に全てを託す。まぁ、許してもらえるように最大限努力するしかない。未来を知っていても、人の感情と女心は読めないからね」

 

「ふふ、珍しく弱気ですね」

 

「私は今まで自分を過信したことは一度たりともないよ。…さて、まずはエデンの光学迷彩技術で地上の拠点を作らなければ話にならない。クイーンが地上に降りてくる前に、セイレーン、エイブ、シンデレラの順番で回収する。残された時間は少ないよ___しかし心配する必要はない。未来は既に、我らの()の中だ」

 

「仰せのままに…私の神」




 お疲れ様でした。

 最後こんな会話してるけど、ただのハピエン厨とそのハピエン厨に脳を焼かれた光堕ちっぽくなってる人というね
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