【本編完結】アークの一般指揮官   作:山吹乙女

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 お疲れ様です。
 続きます。


一般的な指揮官とありふれた指揮官

 副司令官のバーニンガムは自身のデスクで通信をしていた。

 

「そ、そうだ。あのマリアンのほ、捕獲だ…直ちに___」

 

 副司令室の扉が唐突に開き、そこには三人の人影が居た。

 

「ご無沙汰しております。バーニンガム副司令、"マリアン捕獲任務"の手筈は順調でしょうか?」

 

「ピースメーカーからの知らせに半信半疑で駆けつけてみたら、貴様は何をやろうとしている?」

 

 現れたのはピースメーカーを筆頭にアンダーソン副司令と、ピースメーカーの背後に佇むドバン副司令であった。

 

「ア、アンダーソン副司令に、ド、ドバン副司令…そ、それにピースメーカー」

 

「何をやろうとしているかと聞いている」

 

 アンダーソンがバーニンガムに憤怒の表情で言い寄る。

 

「わ、私のやろうとしていることは、アークのひいてはじ、人類が勝つための行動だ」

 

「おや、人類に敵対していないヘレティックを無理やり捕まえて、あまつさえヒラいて実験することに、どんな正当性があるかと思いきや…人類が勝つためとは、お戯が過ぎますな」

 

「お、お前にも分かるだろうピースメーカー、千載一遇のチャンスなのだ。ラ、ラプチャーの弱点が分かれば、だ、第三次地上奪還作戦の目処も立つ!」

 

「地上奪還作戦が目的なら、マリアンには触れずにカウンターズの仲間と共に行動させた方が、確率は上がる。そんなこともわからないのか」

 

「へ、ヘレティックの構造が分かれば、あ、新たな装備の開発にも、繋がる。ア、アンダーソン副司令、あなたにも分かるはずだ。ピ、ピースメーカーの指揮を以てしても、今だにち、地上を奪還出来ていないのだ。い、今急がずして、いつ地上奪還作戦ができる」

 

 現在のマリアンはトーカティブの介入がなかった影響から、クイーン因子の活性化により、最短でセカンドアフェクションの状態となっている。クイーンとしての個体のマリアンを解剖することに意味そのものは確かにあるとピースメーカー自身も理解しているが、反対意見側に居る副司令が二人いても意見を変えないと感じると、ピースメーカーは切り札を投入した。

 

「仕方がない、これでは埒があきません。捕らえているヘレティック個体名インディビリアをアトラスケージ内にて活性化させましょう」

 

「ヘレティックを活性化…何を考えているピースメーカー」

 

「簡単な話ですアンダーソン副司令。現状ヘレティックが二体このアークにはいる。片やアーク内にて生活ができるほどの理性と、カウンターズという仲間がいる現状、片や休眠状態で情報が何も引き出せないヘレティック、ヒラくもバラすもどちらがいいかは明白でしょう。幸運にもインディビリアの管理にはドバン副司令が一任されている、どうですドバン副司令?」

 

「ピースメーカーの決めたことなら、私が決めたことと同義だろう。許可しよう」

 

「ありがとうございますドバン副司令。それではその実験はバーニンガム副司令に一任してもらいましょう。これでとりあえず、マリアンには手を出さない…ということでお間違いはありませんかな?」

 

 あまりにもあけすけなく、"茶番"であるとピースメーカーはバーニンガムにもアンダーソンにも見せていた。

 一介の指揮官であるピースメーカーがアーク内にて最高の権限を持つ副司令を顎で使う、その姿勢を見せられた二人はたじろいだ。

 

「あ、ああ…ヘレティックの弱点、それとラ、ラプチャーの弱点が分かるなら対象は誰でも構わない」

 

 バーニンガムは半ばピースメーカーの圧にやられていた。

 

「ピースメーカー…お前は何者だ」

 

 アンダーソンは怪訝そうにピースメーカーを睨む。バーニンガムの動きをあらかじめ察知し、数での有利を作るためアンダーソン副司令を焚き付け、現行犯で言い逃れできないタイミングで目撃させ、それでもダメなら、次の手を既に用意させてあるその手腕と副司令の一人を手懐けた人心掌握術。思い通りに動かしたという点なら、バーニンガム副司令も追加されるだろう。

 

「私はただのアークの指揮官ですよ。それ以上でもそれ以下でもありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 光学迷彩を用いた地上の楽園エデン。その楽園ではルールが幾つか設けられている

 その一つに、エデンに入るには試練をクリアする必要がある…とのこと。前回この辺りで出会ったドロシーに会えると話が早く済んだ所だが、最初に出会ったのはヨハン率いるインヘルトだった。

 

 最初に会った時は武力衝突は避けられないものかと思ったが、ヨハンにエデン入国の旨を伝えると、試練を突破するなら入国は許されるとのこと。

 

「次の試練だ。ウィルス散布を得意とするハラン、貴重な飛行能力を持つイサベル、防御能力に優れたノア、この三人を用いてヘレティックニヒリスターに対抗するためのシミュレーションをしてみろ」

 

 そして絶賛私は、エデン入り口付近で入国審査を受けていた。新星ヨハンによる脳内戦闘シミュレーション…インヘルトの三名か、私の記憶しているちしかんがやっていたものより難易度が高いな。

 

「…まずは、ニヒリスターの広域殲滅能力が厄介なので、その力を封じる。戦場を誘導できるなら、渓谷に誘き寄せたいが、無理なら岩場か廃墟付近があるならその場所を戦場とする。次に非可燃性のスモークディスチャージャーをノアに発射させ、目眩しとする。その場合のニヒリスターの行動は三つ、スモークの中での火炎放射による広域殲滅か飛行能力を用いた様子見か、飛行してからの地上に向けての広域殲滅だろう。一番確率が高いのは飛行してからの広域殲滅だが、その三つに対応できるように、ハランをイサベルに運搬させ、空中からのウィルス散布、ノアは火炎放射をハイドで防げて尚且つ地上でウィルス範囲外からの援護射撃を徹底させ深入りはさせないようにし、空中と地上からの挟撃を仕掛ける。全員にサーモグラフィー装備を準備させるとニヒリスターの熱源を感知しやすいだろう」

 

「…合格だ。こちらに次の一手を与えない動きは見事だ、ヘレティック故に破壊までは無理でも撤退には追い込めるだろう。その環境活用法は同じ指揮官として目を見張るものがある」

 

 アークで提唱した環境活用法をヨハンが知っていたか…これはエデンの試練の戦闘シミュレーションは個人的にお手並みを見たかったから…とかだろうね

 しかし意外にもすんなり通してくれそうなのは、私がアークの上層部を一部掌握して、兵力を蓄えているとどこかから情報を得ているのだろうか…私自身完全にアーク寄りではない立場だから、あわよくばエデンに引き込みたい…そんな所だろうか。

 

「かの、新星ヨハンに褒められるとは私もまだまだ捨てたものではありませんね」

 

「…その腹芸は素でやっているのか」

 

「おや、お気に召しませんかな?」

 

「ここに居るやつらはお前の本性は既に知っている、普通に喋れ」

 

 本性とは…本人の知らない本性とは一体?*1

 …まぁ、私の考えてる通りならアークに対するクーデター云々だろうか。

 

「ふ、それならその言葉に甘えさせてもらおう…早速で悪いのだが、君たちに良い知らせを持ってきた」

 

「…唐突だな___…そうか、中央政府からの任務というのは建前か」

 

 やはりヨハンは話が早くて助かる。

 

「その通り…会議室を一つ借りたい。ヨハンはもちろんのことだが、セシルにも話を通して集めたい」

 

「…セシルのことも既に知っていたか、抜かりないな…分かった。会議室Cに13:00(ヒトサンマルマル)に集合させよう」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 ヨハン、セシル、ピースメーカーの三人が話終わり、ピースメーカーは既に会議室から退室した所で、二人の間にはセシルの操るパソコンの打鍵音だけが聞こえていた。

 

「…頭の痛い話だな」

 

「ニヒリスターではなく、新たなヘレティックがエデン内部に攻め込んでくる話ですか?」

 

「それもだが___何もかもだ」

 

 ピースメーカーはこの世界で起こるであろう未来を知っていると、伝えずに起こりうる可能性を情報としてエデンに伝えていた。

 

「"エデンの槍"についてはエデンの光学迷彩だけでは、エネルギーの出力と規模に疑問が出てくるだろう、そこから推察するには理解できる」

 

「問題は衛星軌道上にクイーンがいることを知っていた事実ですね」

 

 正解を言われてヨハンが一度苦虫を噛み潰したような表情をした。

 

「エデンの槍の光学望遠でこそ確認はできないが、クイーンが宇宙を漂っていることはアークでは確実にわかっていない事実だ。なぜやつは知っていた」

 

「普通に考えるなら独自で発見した___が、最も有力ですね。私が一番気になったのは彼のバイタルです。会議室の部屋全体で監視できるように設計していますので、誤差はほとんどなく測れていますが、彼の脈拍はこれと言った異常はありませんでした…つまり嘘らしきものは彼の口から何も言っていません」

 

「クイーンが切り離された軌道ステーションを要塞化し、100年間エネルギーを溜め込んでいるだけで理解し難いが、その状態でも地上に降りてこないのはただ単に"恐怖"から来ているという荒唐無稽な話もか…」

 

 ピースメーカーの出したクイーンの情報は変わることのない確定情報であるが、その真偽不明の情報に対して嘘偽りはないと答えている事実にヨハンは頭を抱えた。

 

「それと、彼の脳の運動には目を見張るものがあります。状況把握力、知識伝達力、空間把握力は常人の倍以上の数値を出しています。並列処理能力が唯一常人の出せる範囲であるので、彼は一応人間であると判断できますね、並列処理能力も逸脱していれば私は彼を、AIか何かだと判断していました」

 

「情報の出所は独力であるという説得力は出てきたか…やつが"未来を予測した"と言っても今の私は真に受けたかもしれん」

 

「そのことですがヨハン、彼の脳には出血跡が幾つもみられました。常識的に考えると、これだけの出血をして平然と過ごしていることは異常です。今生きていることが奇跡と言っても差し支えないでしょう」

 

「未来の予測に脳の演算が耐えられず出血した…と言っているようなものか、デタラメだな」

 

「脳に高負荷が幾度となくかかっている事実は、ニケであっても物理的でない負荷で思考転換の可能性が出てくるほどです。それをNIMPHのない人間が何度も物理的な負荷に晒されては、今にも脳死の危険性があります」

 

「脳の摩耗も尋常ではないだろう…寿命が近づいているということか」

 

「高負荷に耐えられるように脳が出来ていたとしても、長くはないでしょう」

 

「やつ自身も、それには気づいているだろうな…」

 

 …ヨハンは、小さなため息を吐いた。

*1
ヨハンはアークの諸々の情報から、ピースメーカーがアークでクーデターを起こそうと力を蓄えていると考えている




 お疲れ様でした。
 クリスタル地帯探索にいって早くセイレーンを仲間に入れたいのでかなりスピーディーに進行しています。

 何気に言われたピースメーカーの秘密、そりゃ無条件で未来予知なんてさせてもらえるわけないよね…でもアニメや漫画の寿命が減ってる描写のキャラって別に物語中に亡くなるようなことはあまりないよね…
 
 ピスメ「脳を焼かれてる(物理)…。ドロシー…インヘルト…私が救ってやるからな…」
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