新年最初の投稿はちょっと難産でした
ドロシーとの対談は長い沈黙の末、一人にして欲しいと話を切り出され終わってしまった。
…無理もない。100年もの間恨んでいた相手のオスワルドが、実は自分たちのファンで陰ながら助けられていたとは思いもよらなかっただろうからね。良くて無気力になるか、悪くて吹っ切れて八つ当たりのように今までと同じに振る舞うか思考転換でも起こしてしまうだろうな。
できることなら考えを変えてもらいたいと思っている時、秘匿回線から通信が入る。おや?この端末は…。
◆◆◆
「また中央政府にお忍びでの遠征ですか?指揮官」
「オズ、私達の指揮官が秘密ばかりなのはいつものことだ」
「私はマスターのそういう怪しいところ好きだなー」
「私の神、今回はどんな任務なのでしょうか?そのお考えをご教授お願いします」
オズ、グリム、ゴーテル、カーレンの少数精鋭での出撃をするときは大抵中央政府には秘密にした行動のため、もはや"いつもの事"と隊員たちには思われている。
そして今回は追加行動を想定してあらかじめ二人も連れて来ている。
「ヘンゼルは地上での作戦行動をあまりしなかったからまだワクワクする、グレーテルは休みたいと思っているわ」
「ふ…ヘンゼル、グレーテル、私の
古参寄りのオフィーリアやジュリエットといったピースメーカー隊の他の量産型達にも、知らせないことが多いが今回に限っては一応中央政府からのエデン調査中に来ているため説明は不要だ。中央政府副司令のドバンがこちらに付いているため隠蔽は容易いのが繰り返しの秘密作戦の弊害だろう。しかし動きやすすぎるのも困りものだね。
「今回は地上で活動する友人、ラプチリオンくんからクリスタルで覆われた地域を発見したと報告があり、しかもエデンからそれほど距離が離れていないため隠蔽の労力を考えての追加行動だ」
「そのクリスタル地帯には…何がいるんですか?」
「察しがいいね、オズ。このクリスタル地帯はヘレティックのなり損ない…クイーンからすれば失敗作か、不意にできたものか、理由は分からないがニケともラプチャーともヘレティックとも違う存在がいる。しかし、私が会いに来たのは別の人物だ…」
そう、このクリスタル地帯には遠く離れていないか、
「囚われの人魚姫、リトルマーメイド…カーレンの昔馴染みだね」
「セイレーン…」
「ヘンゼルとグレーテルはセイレーンに会いたいと思っているわ…」
「3人からすれば感動の再会だろうからね。だが、ひと仕事を終えてからだ」
しかし、予定が早まってしまったため運命が変わったモリーをピースメーカー隊に先んじて加入申請は通したが、本作戦に連れてくればよかったと今頃後悔している。
セイレーンとモリーの会話は美しすぎたが、あまりにも不確定要素が多すぎて未来の出来事を知っている私からすれば気が気でない。
「臨時加入のヘンゼル、グレーテルを交えた作戦行動だ。オズ、グリム、ゴーテルはいつも通りにし給え、カーレンは何かあればヘンゼルとグレーテルのフォローを頼むよ」
地中で眠っているグラトニーは現在エネルギーの温存のため休眠を行なっているのだろう。でなければ、無作為にエネルギーに食らいつく生態をしてはいないだろうし、しかもあの体積ならば移動だけでもエネルギーの消費は著しい。
ならばグラトニーを
「ヘンゼル、グレーテル、魔女のかまどを火炎にセット。"オズ"、"グリムヒルト"、"ユージーン"、コードウィッチ起動。カーレンは、ヘンゼルとグレーテルの準備まで近距離での護衛、オズとグリムヒルトはユージーンのカバー、ユージーンはヘンゼルとグレーテルが火炎を発射と同時にタワーオブプリンセスによる防御を稼働時間ギリギリまでセット…さて、それではピースメーカー隊、エンカウンター」
◆◆◆
『あう、今日は何もなかったなぁ…昨日も、その前も…明日も、何も無いのかな』
第二世代フェアリーテールモデルのリトルマーメイド…セイレーンはグラトニーに飲み込まれてから体内で広い範囲の空間を水泡技術で外と仕切りを作り広大な生活圏を確保していた。
『……う?』
水泡の天井、丁度グラトニーが何かを飲み込んだ時に上から落ちてくるであろう水泡の接触面に何かが触れ、グラトニーの消化液を水泡の内側に入れないように丁寧に穴を開け内側に入れようとする。
グラトニーがまた何かを飲み込んだのだろう。今度は何が落ちて来るだろうか、使えるスクラップや生活に役立てる食べ物、缶詰とかならうれしいな。そんなことを考えながら、セイレーンは心のどこかで
長い時間、気が遠くなるような時間を孤独のまま過ごしたセイレーンは誰かが来ることを心のどこかで期待しながら、そして淡い思いを押し殺した。
『………あう?』
しかしセイレーンは異変に気がついた。水泡の天井部分に接触した"何か"は、こちらから入れようとせずとも入ってこようと移動していた。
『もしかして、誰か、来て…』
期待をするのはやめようといつからか考えていたが、もし…もし"誰か"来てくれて、助けに来てくれるなら…そうやって無くなりかけていた瞳の光が戻ろうと来た時、セイレーンの近くに"それ"は落ちて来た。
◆◆◆
「全員無事かな?」
「オズ、損傷部分ゼロ」
「グリム、損傷箇所ゼロ」
「ゴーテル、損傷無し、でもタワーオブプリンセスがオーバーヒート、今日はもう使えないよー」
「カーレン、無事です私の神」
「ヘンゼルとグレーテルは無事よ。アトラクションみたいで楽しかったわ!」
さてと、まずは無事にグラトニーの体内に侵入できたな。あとはセイレーンがいるかどうかになるが………。
こちらをまじまじと見つめながら口を手で覆いワナワナと震えている黒い髪の緑のインナーカラーのツインテールの少女セイレーンを発見した。
「初めましてリトルマーメイド、私はピースメーカー___君を助けに来たよ」
『ピース…メーカー…?』
「セイレーン!」
『う!ヘンゼル!グレーテル!無事だったのね』
「ヘンゼルとグレーテルはセイレーンに会いたかったわ」
ヘンゼルとグレーテルがセイレーンに抱きつき、泣きそうになりながら笑い合っている。
「君も行ってきたまえ、大丈夫だ」
セイレーンに抱きつくヘンゼルとグレーテルを遠くから観察して、今だにどう声をかけようか悩んでいたであろうカーレンの背中を少し押した。
『…レッドシューズ?生きていたのね…』
「…元気そうで何よりです、セイレーン」
『よかったぁ、レッドシューズは死んじゃったと思っていたから』
「…どうして"よかった"のですか…私がセイレーンと同じ立場なら、軽蔑してもおかしく無いはずですよ…それをどうして…」
『う?シンデレラにやったこと?確かに、レッドシューズがシンデレラにやったことは許せないし、そのことに対しては私も怒っているよ。でもね、ヘンゼルとグレーテルが貴女と一緒にいるし、原因はレッドシューズだけど、侵食されたシンデレラを怖いって思っちゃってあの時寄り添えなかったから…何も話を聞かずに今のレッドシューズを否定しちゃうのは駄目だと思ったの』
カーレンは一度眼を閉じて、再びセイレーンに向き合った。
「………私は改名しました…名前をカーレン。私が引き起こした罪を償うため、贖罪の日々を送っています。私の目的は本来手に入るはずだったシンデレラの名声、オールドテイルズの功績を誰もなしえなかった地上奪還を以て物語を書き直します。今までのことはごめんなさい…許してもらえるとは思いません、でも私たちに力を貸してください」
『あう!よろしくね、カーレン』
セイレーンはにっこりとカーレンに笑顔を見せた。
「一応の補足だ。カーレンをレッドシューズと知って死の淵から甦らせたのは私だ。君たち第二世代フェアリーテールモデルのことはもちろん、オールドテイルズの存在も熟知している。これからもカーレンの蛮行を許すことは無いと約束しよう」
『う…あう…』
セイレーンがこちらに話すのをためらうようにおどおどとしている。
そうか、そういえば男性と話すのが久しぶりすぎて緊張しているのか…主人公ちしかんほど顔は整っていないが、褒める寄りの緊張をされると嬉しい反面少し恥ずかしくなるね。
しかしオスワルドと話していたような…。いや、100年も経っていたら仕方がないか。
「ああ、安心したまえ。私の部隊にも音を使う仲間がいてね、耳には特殊なノイズキャンセリング機能を持ったイヤホンを付けてあるから言霊の誤作動は問題ないよ」
『私…男の人と話すの、初めてで…あう…』
「そうか…一人の期間が長かったからね。しかし安心したまえ、今日からは、君をひとりにはさせないよ」
『…ふふ、なんだか夢で見た本物の王子様みたいな人』
「はは、王子様か…嬉しいが私は王子様というほど煌びやかでもない、一般的な指揮官だよ」
…そうとも、この世界の主人公は別にいる。主人公補正を持ち合わせ、特殊な能力を持った我らのちしかんがね。
地上奪還は成し遂げねばならないが、私がやる必要はない。どこかで私の命が潰えようとも、その意志と蓄えた戦力は彼の役に立つだろう。
私はあくまで…主人公が頭角を現すまでの前座に過ぎないからね。
『ううん、私にとって貴方は王子様みたいで、物語の"主人公"みたいだよ。だって、私が一番欲しかったものをくれたから』
セイレーンはまるで私の考えていることを読んだのか、勘なのか、しかし私はその言葉だけで救われる。
「ふ、それなら君も…私の欲しい言葉を送っているよ」
私がオズに"人たらし"と呼ばれた理由がようやくわかった気がするね。
お疲れ様でした。
セイレーンの魔性の女感は凄いですよねぇ
今のレッドシューズを見て、ヘンゼルとグレーテルが一緒にいるから何かあって大丈夫になったのかな?シンデレラの件もあったからとりあえず話を聞こうって考えつくのがセイレーンの感性だと思っていますね
まぁ、ピースメーカーの登場の仕方が上から落ちて来て多分普通に着地してるから、すごくヒーローみたいなんですよね…その一部始終を目撃したセイレーンはそれだけでもピースメーカーに脳を焼かれてそうだし、ピースメーカーが一番相手の欲しい言葉を言える人たらしだから、セイレーンの距離感が近づいてそう
そしてセイレーンもピースメーカーが引きずってそうな、『死んでもいい存在』『自分は主人公ではない』という哀愁を感じて、欲しい言葉を送るという…。
もしかしてここだけ恋愛っぽいことしてる?