今回は少し短めです。
「それで、ピースメーカー…さん?はどこで私らの計画を知ったわけ?」
エイブに会う前にガラスの靴を持っていなければ話が拗れる可能性があるため、先にガラスの靴を取りにステンドグラスのような飾り付けを施された道を突き進んでいく。
私としてはエイブにはやはり、シンデレラの王子様みたいにガラスの靴を履かせてあげたいと考えているからね。
「ふっ、心配せずとも君達の誰かが裏切ったというわけではない。まぁ、私の情報の出所は言えないがね」
『ねぇ、ベヒモスはレヴィとお友達なの?レヴィは元気にやってる?』
レヴィ…フォービーストの一人レヴィアタン、昔セイレーンがグラトニーの体内に飲み込まれる前に付き合いのあった友達だね…やはりセイレーンは気になるようだ。
「ああ、レヴィは元気だよ…レヴィのことをうっかり喋ったつもりは無かったが、ここまで来ると敵対しなくて良かったと心から思えるぜ、あの時に敵対していたらと考えると恐ろしいくらいだ」
『良かったぁ…レヴィ、無事なんだ』
「…その様子からして、アンタもレヴィの友達のようだな。友達の友達は友達ともいうし、私らとも仲良くしてもらいたいね」
『あう!レヴィの友達なら、貴女もいい人だと思うし!』
………一瞬の出来事だった…その鮮やかな懐柔を私はこの目で見た。
あの気難しいレヴィやモリーを懐柔しているところから、元々画面越しに感じていたが、距離の詰め方が異次元なほど上手すぎる。これを元来の性格から計算もせずやってのけているのだから、凄まじい。
「セイレーンはすごいねカーレン。私が出張らずとも解決できた気がしてくる」
「ご謙遜ならず、私の神が話し合いの場を作らなければここまでスムーズには動いていないでしょう」
「ヘンゼルはセイレーンに友達が増えてよかったと思うわ。グレーテルはセイレーンが魔性の女に見えたとも思っているわ」
セイレーンは、フォービーストというサークルクラッシャーにはならないだろうから安心できるね。
「っと、着いたぜ。大先輩の武装を拝借していたが、返すよ。それからクイーンの誕生は私らの計画の悲願だからな、頼むぜピースメーカーさん」
「安心したまえ、私も現クイーンより君達の造るクイーンに期待している。積極的に協力することを約束しよう」
ちしかんには少し無理をいうことになるが………まぁ、大丈夫だろう。
◆◆◆
シン、デレラが…待っている…。早く…目覚めさせて…あげなければ…。
書き、直す…物語を…ハッピー、エンドに…する…ために…。
「エイブ、君を探していた」
どこか…から…声が、聞こえた。周りには…私、しか…いない。私を…呼んだ、のか?…誰が…。
『エイブ!』
また…
「「エイブ」」
遠くに…同じ見た目の…ニケが、二人…近づいて…くる。
「エイブ…今まで大変でしたが、もう大丈夫です。私の責任は私が解決します!」
「誰…だ。私は…グレイブ…だ」
「いいや、君はエイブだ。
あれ…は、シン、デレラ…の。
「たす、かる。私が…探して、いると…よく、分かった、な…」
「我々は君の味方だからね。すぐに脳の復旧作業と記憶の修復を行う。無論今の君は、元の人格と統合されるが消えてなくなるわけではない。安心して思い出したまえ」
言っている…意味は…分からないが…。しかし…まるで…救世主…だな。
◆◆◆
体のあちこちがボロボロ、動力も正常に動いていないだろうに、よく今まで動けていたな。エイブの苦労が窺える。
「装置は正常に稼働しています。脳の損傷も酷いですが、私の神ほどではないですね。元の人格データはNIMPHに保存されていたものを流用、セイレーンの水泡との相性も問題ありません」
私の脳の状態がカーレンにバレている………だと…?
「ゴーテルのナノマシン修復機能が、精密性に特化しているのが功を奏していますね。あと数分もすれば、エイブも目覚めると思います」
『う…エイブ…』
「ヘンゼルとグレーテルはエイブの状態をすごく心配に思っているわ」
程なくして、エイブの体が少し揺れた。
「うう…なんだ…うる、さい…。…会話…機能が…思った…より、酷い、な」
「「エイブ!」」
『エイブ!』
ヘンゼルとグレーテルとセイレーンが起きたばかりのエイブに抱きついた。
「ヘン、ゼル…グレー、テル…それに、セイ、レーン。どれ、くらい…寝て、いた?」
「寝ていたのは数分ほど、眠っていたということなら数十年単位ですね」
「レッド、シューズ…まさか…生きて、いた…のか?」
エイブは仮面をつけた状態だが、おそらく驚愕しているだろうな。自分たちが"こうなった"全ての元凶だからね。
「おはよう、脳の具合はどうかな?」
「おかげ、さまで…気分は、悪く、ない…。前の、私が…お前を、救世主と、呼んでいたが…お前は、何者だ?」
「私はピースメーカー、アークで指揮官をやっている一般的な男だ」
「平和の、作り手…なんて、名前の、男が…普通な、わけ…ない、だろう。前の、私の、名残りとして…お前を、救世主と、呼ぶ」
どうして一般的な私を、皆壮大に扱うのだろうか…。
「敬称は別になんでも構わないよ。それより、シンデレラの起動テストをやっておきたい。一度エデンという拠点に戻り検査を終えてから、起動させる。もう少しの辛抱だが、我慢してもらいたい」
「ああ…何年も、苦労、して…来た、からな。待つのは、得意だ。レッド、シューズのことも…その時、説明、させて、貰う」
「答えられる事は答えるつもりだ。それがレッドシューズ_今は、名前を改めさせて、カーレンと呼んでいる_カーレンを復活させた私の責任だからね」
エイブは安心したのか、起こしていた上半身を元に戻した。
一度セシルに連絡したほうがいいね、シンデレラの起動テストと、エイブの修復、二人分の作業スペースの確保をしてもらわないとな。
「セシル、こちらピースメーカーだ。聞こえているかな?…セシル?」
…おかしい、エデンとの連絡が繋がらない。通信阻害のエブラ粒子の濃度は低くないが、高濃度でなければこの秘匿回線は繋がるはずだ…………まさか…。しかし、"それ"だとしたら早すぎる。
「…任務も完了した、我々はすぐエデンに引き返す。最低戦闘回数で、エデンに帰還するよ」
「私の神?」
『あう?どうしたの、王子さま?』
急いでいるとは言え、移動中に話したほうがいいな。しかし、カーレンもセイレーンも私の機微に敏感だね。
「私の予測が正しければ予想外のことが、今から起ころうとしている。
決戦は数ヶ月は先だと考えていたが、あまりにも早すぎる。セイレーンの水泡の膜が壊されていないところを見るに、エデンの近くにリバーレリオがたまたま通りかかっただけなのだろうが、最悪"GODDESS FALL"一直線だ。
…本来の計画であれば、蓄えに蓄えたあと、リバーレリオに敢えて水泡の膜を破壊させ、クイーンを誘き寄せ、一気に勝負を決める想定だったが…。
エデンの蓄えも出来ていない現状、今からリバーレリオの襲撃は回避できない。装備も施設も備蓄も足りない現状で攻城戦を強いられるとは…。
ふっ、今回ばかりは…命を賭けるしかないね。
お疲れ様でした。
ドロシーサイドの話もやりたかったですが、絶望感ある引きで終わりたかったので短めにしました。
今までトントン拍子で進んでいたのは、ここら辺で一度落としたかったからですね。今までずっと上手く行ってる展開にしたかったのはこの展開を作りたかったからなんですね。
前もった準備と蓄えで事に当たってピースメーカーがぶっつけ本番みたいなことをやらされるんですよね。