ちょっと遅れました。少し短いですけど許してください
「オフィーリア分隊長!敵クイーンの要塞から光学兵器の発射を確認!」
エデンより発進した先発部隊、ピースメーカー分隊のオフィーリアは、モリーを除いた新規加入を加えたピースメーカー隊員207名と、ナユタ特務隊500名を引き連れ、クイーンとその付近に待ち構える無数のラプチャーを確認した。
「ビーム撹乱幕発射!迎撃する!」
ミサイルのような発射体をクイーン上部の浮遊要塞に発射すると、ビームはミサイルを破壊し、中から緑色の煙幕のような粒子を上空に滞留させ始めた。
煙幕の中に入り込んだクイーンから発射されたビームは、緑色の煙幕の中で乱反射し、先発部隊に被弾することなく空中で霧散する。
「ボスの用意したビーム撹乱幕の効力を確認!十分な性能です!」
「ボスの授けてくださった新兵器は、常に敵の上を行く!それは例え相手がクイーンであっても同じだ!我々はボスの神の如き___前方、ラプチャー群に紛れて人影を確認…ヘレティックの可能性が高い!ヘレティックとの接触は避けろ、我々では命がいくつあっても足りないからな!」
「了解です!オフィーリア分隊長」
オフィーリアの分隊はラプチャー群との対峙前に、円を描くように陣形を広げた。
「パターン10、クロネウィングフォーメーション展開!展開完了後、射撃開始とする!」
◆◆◆
「オズ、先発部隊との通信は?」
「ダメです。高濃度のエブラ粒子の影響から、通信途絶!」
妙だな…出立前の戦場でのエブラ粒子の濃度は基準値だったはず…。なるほど、"奴"はこちら側に来たか…。
出来ることならシンデレラの方に来ていて欲しいところだったが、仕方がない、我々で対処するしかないか。
「前線部隊との合流後、対ヘレティック戦用意。おそらく前線部隊はインディビリアと交戦中だ、急ぐよ」
「インディビリア…懐かしい相手ですね」
「ああ、懐かしくて涙が出そうだ」
乱戦に強いインディビリアを今は相手をしたくないのだがね。もし相手取るなら、包囲殲滅でエブラ粒子散布範囲外から相手に何もさせずに消耗戦に持ち込むしかない。
しかし…それは"以前までなら"、と付く。
「セイレーン、前方に水泡を射出、威力は無くていいよ。交戦区域内到達後、ラプチャーだと判別できる個体に限り、言霊による停止命令」
『う!』
「ヘンゼル、グレーテル、戦闘区域内の遥か後方に高威力グレネード射出、前線部隊と交戦中以外の後衛ラプチャーを退け時間を稼ぐ。名前は任せるよ」
「名付けも任されたわグレーテル」
「それじゃ、とびっきり強そうな名前がいいわヘンゼル」
「それならもう決まっているわグレーテル」
「「反物質爆弾!」」
ヘンゼルとグレーテルの声が重なり、緑色の粒子を纏ったグレネードが遥か彼方に打ち出された。
「カーレン」
「ええ、存じています私の神」
カーレンは私の意図を読み取り、
元々、カーレンの専用武装アルブレヒト&デューラーには飛行能力を持ち合わせていなかった。純粋にアークの技術力が追いつかなかった事が最たる理由だが、エイブの知恵を借りて私てずからカーレンの武装をアップデートさせた。
後々に飛行ユニットを増設させる設計だったため、時間はかかったが三日もあれば完成する。そうして私の考えうるすべての要素を詰め込んだカーレンの専用武装は、名付けるなら『サモトラケ』だね。
「空からの状況報告を頼むよ」
『ええ…凄まじい力です私の神…この力があればヘレティックを超越する事も…いえ、それ以上の___』
「ふっ、感想は後から聞かせてもらうよ」
ラプチャーとの融和…限定的な融和なら私にも考えがあるが、まずは目先のクイーンだ。あのクイーンを討ち取らない限り、我々人類に勝機はない。
しかし、このクイーン戦まで私の体が保つかどうか…。いや、考えるのは後だね。
◆◆◆
「前線の数、減少中!___ッ!死傷者も…出始めました…」
オフィーリアは部下の報告に逡巡しながらも、怯みそうになった右手に再びグッと力を加え、銃を構え直す。
「…怯むな!なんとしてでもこの前線は抑えなければならない!」
『出してしまった。初の死傷者を私が出してしまった』。オフィーリアはそうして、煮え切らない考えを頭を振りながら無理矢理にでも思考を動かす。
「面制圧数を抑え、弾幕の圧を強化する!密集隊形!パターン04ヘッジホッグフォーメーション!」
ピースメーカー分隊が次々と半円状の密集隊形をつくり、被弾を少なくしていたところ、弾幕を掻い潜るように一体のイレギュラーが密集隊形に突っ込んではその一つを沈黙させていく。
「固まってくれてありがとうございます。お陰で処理が容易いですよ」
「ヘレティック…インディビリア…」
他のラプチャーとは隔絶された存在、ヘレティック。その一体であるインディビリアが前方で陣取っていた陣形を次々と崩して回る光景は、最早蹂躙と言って差し支えなかった。
「ぶ、分隊長___ご指示を…」
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
オフィーリアの息は浅く、そして荒く、目まぐるしく変化していく光景に脳の処理が追いつかず、こんな存在にどうやって立ち向かうべきなのかと、答えが出せずにいた。
「分隊長!」
オフィーリアは強く呼ばれた声で我に返ると、目の前に影が差し掛かっていた。
「貴女が、この部隊のリーダーのようですね?」
蹂躙を繰り返したインディビリアは息一つあがらず、首を傾げながらオフィーリアの首を片手で掴みながら宙に上げた。
「ぐっ…がぁ!」
「部隊のリーダーの死体を晒しておけば、士気は下がるでしょうか?」
インディビリアは尻尾から伸びる高周波ブレードをわざとらしく振動させると舌なめずりをした。
「まぁ、いずれにしても手間の問題ですね。こんな戦争早く済ませばいいだけですから」
オフィーリアの身体を、インディビリアが切り裂こうかとしたその瞬間、インディビリアの視界には前方から来る大群を捉え、その手と尻尾が止まり警戒した。
インディビリアは直感的に、ここで手に掴む人質を処理する隙を晒すとかえって面倒なことになると思い、人質は人質のまま生かす選択をした。
前方から来る大群の先頭が土煙を上げながら、それでいて戦場でもよく通る声で言葉を発した。
「すべての生物は自分より優れた何者かを信じ、盲従しなければ生きていけない」
遊撃に徹しているナユタ達の爆発や銃撃が飛び交う戦場だが、驚くほど静かに、それでいて存在感の放つ男が戦場を闊歩する。
「そうして信じられた者は、その重圧から逃れるために更に上に立つ存在を求め、上に立つ者は更に上に信じるべき強者を求める」
硝煙の臭いを漂わせながら、砂埃が晴れた戦場には一見するとこの場では似つかわしくない切れ長の目をした優男然とした指揮官、ピースメーカーの存在をインディビリアが感じ取った途端、インディビリアの顔は誘導されるようにピースメーカーに向けられた。
ニケですらない、丸腰の人間がラプチャーとニケの戦争に最前線でニケ達を引き連れているという事実と胆力に、インディビリアは目を見開き、その男、ピースメーカーに困惑した。
「そうして全ての王は生まれ、そうして全ての___」
しかし、困惑は興味へと変わり、インディビリアはピースメーカーの顔の辺りまで挙げられた人差し指に注目していた。
「…神は生まれる」
至る所で繰り広げられている戦場の中で、この一瞬、インディビリアの中で時間がゆっくりと動いていると錯覚するが、実際ではわずかな時間で、自分を負かした怨敵を今までの肝の据わり様と、カリスマ、そして直感からくる気づきで導き出し、咆哮する。
「ピース、メーカー!」
ピースメーカーに駆け出そうとインディビリアが手に掴んだオフィーリアの首を離した次の瞬間、インディビリアは空中から高速で飛来したカーレンの着地によって『グシャリ』と音を立てて沈黙した。
「まだ、私を信用するなよ、ピースメーカー部隊諸君___信じる神が誰なのか、今教えよう」
お疲れ様でした。
インディビリア「え、なんだこの指揮官…こわ」
まぁ戦場の前線で悠々と演説してたらそりゃ怖いよね…。でもインディビリア相手に自分自身を囮として出てくる演出をしてるから、マジで胆力すごいと思う。
ちなみに今回のインディちゃんも囮に惑わされて倒されるという天丼オチ、インディちゃんを倒すならやっぱり天丼オチだね。
ナユタ達は多分好き勝手やってもらった方が戦果を出しやすいから、遊撃隊としてあちこちで暴れてるんじゃないんですか?先発と後発の違いで交代を使って休めるタイミングを作ってるくらいは連携してると思うけど