いっぱい感想欲しいな…。
ちなみに最新にチャプターのネタバレが少しはあります…。
エデンと、ピースメーカー部隊とクイーンの戦場の中間ポイントでインヘルトのメンバーはその機を窺っていた。
「あーもう、タイクツー」
「いざという時に動けるように待機するのは良いけれど、本当にその"いざという時"は来るのかしら?」
「ヨハン、あちらは派手に暴れているみたいよ。こっちは動かなくてもいいの?」
数日分の携行食料と飲み水、寝泊まりのための寝袋とテント、戦場を観察するための望遠装備をエデンから持ち出し、クイーンとピースメーカーの戦闘を観測しているハランは、ヨハンに通信を入れた。
『動きたい気持ちも分からなくないが、これは奴の考えた作戦だ。シンデレラをクイーン感知範囲外から奇襲させ、左側からインヘルト、右側からカウンターズが強襲をかける4方向同時攻撃には、シンデレラの移動時間を稼ぐ必要がある___奴はその時間稼ぎを買ってでた』
「それはもちろん承知の上よ。でも…このままでいいの?」
ハランは、"待ちに待ったクイーン戦を別の人に任せてもいいのか"と、言葉の裏に含ませた。
『良いも悪いもない、この作戦が一番合理的だ』
「合理的、ね。貴方らしくないわヨハン」
『…ヤツは限定的な未来予測が可能だ、そのヤツが我々だけならインヘルトは全滅すると、そう言い切った。そんな戦闘にお前達を率先して出すほど、私の判断は鈍っていない』
ハランは驚いたように固まると、イタズラを思いついた子供のように顔を歪めた。
「あら?それって私たちが"大事"って言っているようなものだけど、自覚あるかしら、ヨハン?」
「えー?指揮官ったら優しー」
「ふふ…」
ハランがわざとらしく周りに聞こえるように言うと、ノアは揶揄い、イサベルは満更でもないように口元を緩ませた。
『…はぁ、好きにしろ、無駄話をするようだったら通信を切る』
声だけでも居心地が悪そうにしていると伝わるハランだが、ヨハンからの信頼を久々と感じ、しばらく会話を交えてからハランの方から通信を切った。
◆◆◆
「前回の戦闘で、回収できた分のドッグタグを入れると"43"か…」
回収不能の数を入れると56人の勇敢なピースメーカー部隊の隊員が尊い犠牲となった。
ヘンネ、ウィナ、ミミ___そして、コーディリアと、デスデモーナもか…皆、優秀な戦士だった。
亡くなった隊員のほとんどが、エデンに急遽集められた新人だが、中には新人を庇おうと熟練の隊員が命を落とす光景も証言としてあり、その高潔さは新人にも伝播しているそうだ。強迫観念による悪循環にならなければいいが…。
戦闘用ナユタ達に至ってもそうだ。原作では得意の戦い方がバラバラでコンビネーションもなかったところを、部隊編成と攻撃レンジを整えることで被害をゼロには出来なかったが、それでも最小限に収めることができた。
合計1700名を超える大部隊だが、その被害は1割にも満たない。原作では2000を超える戦闘用ナユタ達も全滅するほどの戦闘だったが20分の1以下の被害だ…___いや、それにしか抑えられなかったと言った方が正しい。…やはり私は一般的な指揮官だね。
予定では、後数時間もすればシンデレラがクイーンの裏を取り、4方向同時攻撃によって、クイーンにチェックを取れる。
包囲殲滅の末、一日後にゴッデスの戦線投入でチェックメイトだ。そう、この戦争はシンデレラがクイーンの裏を取れるのを待てば良いだけだった。
「前線部隊沈黙!壊滅状態です!」
「指揮官!ビームが後方に着弾!野営地の方角です!」
「指揮官…オフィーリア分隊長の信号ロスト___分隊長権限がジュリエットに譲渡されました…」
「ビーム撹乱幕の濃度は十分なはずです!ですがこの被害は…指揮官!あのビームは一体!?」
クイーンの要塞から一つ、また一つとビームが降り注ぎ、近くにいる量産型ニケ達は軽い錯乱状態に陥っている。
オフィーリア分隊長…___しかし、悲しむのは後だ。
「要塞の改修が済んでいる…やられたね。ビーム撹乱幕散布急げ、濃度を上げろ。オズ、オールドテイルズをこちらに呼び戻してくれ」
クイーンの要塞の砲台は、昨日までの戦闘からのデータなら数に物を合わせた自動砲台だったが、ビーム撹乱幕の濃度を分析され、突き破る性能の砲台に改修を施し、初撃で補給を潰し、前線部隊を襲っている。
「指揮官!最前線に新たなヘレティックの出現を確認!自らを"アルトルイア"と名乗っています!」
アルトルイア…馬鹿な…そんなヘレティックは、私ですら
しかし今はクイーンの要塞の対処が先だ。
「ヨハン、聞こえているかな。至急エデンの槍を発射態勢に取り掛かってくれ、クイーンの気勢を削___くっ!」
ヨハンに通信を入れようとしたところで、唐突に頭に激痛が走り、戦場の真っ只中で、片膝をつく。
両目と両耳と、片方の鼻からほんのり温かく赤黒い物が垂れ落ちる。"恩寵"がまさかこんなタイミングで…。
「こんな…時に…」
最悪のタイミングだ…。ビーム撹乱幕もまだ発射していない。防御の要であるゴーテルは別の戦場に移動させている。セイレーンも到着まで少しかかる。もし、今この場にビームでも発射されたなら………。
「指揮官!」
私を呼ぶ声と共に突き飛ばす衝撃によって体がふわりと宙に浮く。
…待てッ!そんなことをするな!…私はそんなことをされるほどの人間では…。私は一般的で普通の___。
「
私を突き飛ばしたオズはこちらに向き直り、敬礼をしようと右腕が上がる前に無慈悲に上半身を熱線に焼かれる姿を…
「ふぅー間に合ったわね、指揮官様!」
[よくやってくれた、アニス。危ないところでした!ピースメーカー指揮官、お怪我は___すごい血じゃないですか!?]
オズに降り注ごうとしていたビームを横からアニスが吸収した…。燦々と輝く拡張武装スター、アニスは既に使いこなせているのか。
それに近くにいるネオンの格好も恩寵の情報が正しければ『ネオ・ネオン』になっている…。
しかし、ラピはアブソルート時代の初期の見た目に見える…。
「すまないね、危ないところを助けられた。これは…持病のようなものだ」
流石にちしかんに、"別世界のゲームの知識が頭に流れ込んでくるショックで脳が出血してます"なんて言っても信用___しそうだけど、黙っておくか。
そしてビーム撹乱幕の濃度は…今のところ問題ない。追加で濃度を上げたところ砲台の威力を上回って霧散させている。
[いえ!当然のことをしたまでです!]
なんだか、テンションが高いな…。
[それより、持ち場を離れてしまってすみません…。でも緊急事態かと思って]
「いや、そのおかげで私の部隊のメンバーは助けられた」
『う!?王子さま!血が出てる。大丈夫?』
「ヘンゼルとグレーテルはお兄さんの出血が気になると思うわ」
「私の神…またしても恩寵が…ああ、素晴らしいです」
そして近くの戦場のオールドテイルズが集結してくる…カーレンはいつも通りだね。ただ、これで守りは万全となる。しかし、一時的でも私の予想を超えてくるとはクイーンも油断ならない…。
オールドテイルズ達にたまに起こることだと説明してから、セイレーンにラピをいわゆる赤ラピ(ラピ:レッドフード)にできるか相談する。赤ラピの突破力は、おそらく必要となってくるだろう。
「ということだが、セイレーンには負担を強いることになるが頼めるかな?」
『あう!やってみる!』
ちしかんに事情を説明して、ラピをセイレーンの水泡で包み込む。しばらくすると、握り拳の腕を突き出した"ラピ:レッドフード"が姿を現した。
レッドフードの意志を継承したのだろう。片方の目から涙が流れている。
「この姿は…」
手のひらをぐっぱっと握りながら、ラピは自分のボディの状態を確かめていた。
[ピースメーカー指揮官…貴方は、何処でこれほどの情報を…?]
「ふっ、企業秘密だよ。…これは私からの贈りものだと思ってもらって構わないよ」
ちしかんは私に畏敬の念を感じならラピに話しかけた。
[ラピ、具合はどうだ?]
「状態は___驚くほど良好です」
「君の専用装備もエデンに置いてある。取りに行くといい___名を『セブンスドワーフ ゼロ』と言う」
話がなんとかまとまりそうなところで、空から太陽を覆うように影が差し込んだ。
「ほう…」
なるほど…このタイミングで来るか。
『王子さま!ヘレティックが…このままだと、接敵する!』
「蹴落としまいりますね、私の神」
「ヘンゼルとグレーテルは戦闘態勢バッチリだと思うわ」
オールドテイルズ達が臨戦態勢に入りながら、カウンターズも戦闘の意思を見せていた。しかし事情をある程度理解している三魔女は微動だにしない。
「セイレーン、カーレン、ヘンゼルグレーテル、問題ない大丈夫だよ。カウンターズはエデンに戻りラピの武器を取ってきてから、後から合流するといい」
[しかし!相手はヘレティックです!]
「君たちに助けられた手前、説得力に欠けるが、今回は大丈夫だよ。私に任せ給え」
カウンターズがエデンの方向に一時帰還したところで、空から勢いよく着地した一度会ったことのあるヘレティック、ニヒリスターが姿を現した。
◆◆◆
「よぉ、久しぶりだなピースメーカー」
「こちらこそ、久しぶりだニヒリスター。戦場で姿が見えなかったが、リリスのボディを取りにいっていたのかな?」
「チッ…相変わらず何処から情報を仕入れているんだか。まぁでも、ここで出逢っちまったら、お前らを殺すしかねぇ。愛しい愛しいオカアサマからの"命令"だからな」
今にでも銃のトリガーを引こうとしている全員を手で静止させ、ピースメーカーは一歩前に出る。
「君はそれでいいのかな?」
「なに?」
「クイーンの言いなりになってるままでいいのかな?」
ニヒリスターは内心、「良いわけないだろ」と憤慨していたが、どうしてもこうまでしてオカアサマに従っているのか、ニヒリスターは同時に疑問に思いだした。
頭を割るようなノイズに、吐き気を催す。そして送られてくるのは"戦え"という命令だけ。そんな奴に自分はどうして付き従っているのか………長い沈黙の後、ニヒリスターの頭の中でパキリと金属が砕ける音が聞こえた。
「
「あぁ、おかげさまでな」
「私の神はヘレティックすらも手懐けられるのですか?」
「勘違いするんじゃねぇぞ!これは、いわゆる共闘だ。オカアサマをぶっ殺したら、次はテメーらだ」
カーレンがニヒリスターに怒鳴られながら、ピースメーカーはやれやれと肩をすくめた。
「さて、それでは件のアルトルイアを倒しに行くとするか」
大部隊の進軍の戦闘には赤い髪をたなびかせたヘレティックが追加された。
お疲れ様でした。
原作のニヒリスターはクイーンに戦いを挑むために戦力を蓄えようと、インディビリアとトーカティブをアークから吸収して勧誘して逆に喰われた展開でしたが、この世界線では既にピースメーカーがニヒリスターの側に付いているので、アークからインディビリアとトーカティブを救ったのは、ミラーからリバーレリオにお母様からの指示であると、伝えてニヒリスターを動かしたってのが裏の筋書きになると思います。
戦力がないと、クイーンは多分地上に降りてこないってミラーの考えなので、出来るだけ戦力を確保したってところですかね。もしかして原作よりミラーがちゃんと暗躍してる?
実はオズをここで死なすかどうか迷いましたね…死なしちゃうと話が膨らまなかったと言うのもありますし、ここでちしかんが助けた方が主人公感があって良いと思いますね。
ちなみにこの小説で、最初にニヒリスターに会った時北部地帯の雪山だったんですが、原作でリリスのボディが北部の氷の中にあったとルドミラが言ってたらしいので、雪山でニヒリスターと会った必然性が上がってしまいましたねぇ。