【本編完結】アークの一般指揮官   作:山吹乙女

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 お疲れ様です!
 タイトル通りです!
 最新チャプター45〜46のネタバレが含まれます!


一般指揮官と物語の終わり

 コールタールのような黒い粘性の液体が、浮遊しているクイーンの体から堕ち、それが女性のような姿に形作ろうとしていた。

 

「クイーンが何をする気かは知らないが、手を緩めるな!」

 

 スノーホワイトの号令と共に、ゴッデス以外のニケ達も集中砲火を浴びさせる。しかし、撃ち込まれた銃や爆撃を女性は腕を一つ振り払うだけで、全てかき消してしまう。

 そして、その女性が姿を現した。

 

「あれ…は…」

 

 ドロシーが目を見開き、すぐさまスノーホワイトに目線を移す。

 

「間違いない…お姉ちゃんだ」

 

 スノーホワイトの目線の先には、ニコリと笑うリリーバイスは、手袋をはめ直すように手袋の端を引っ張っている。

 

「リリス…」

 

 戦場の最中だが、旧知の戦友がいきなり姿を現した事実から、ラプンツェルは持ち場を離れ、リリーバイスに近づこうとした。

 リリーバイスとの距離が二メートルほどになった瞬間、リリーバイスの体は、消えたと思わせるほどの速度でラプンツェルに手刀を繰り出し、ラプンツェルを両断した。

 

「………」

 

 ニケを両断したにしては、明らかに軽い感触を不思議に感じたリリーバイスは、両断したラプンツェルの残骸を確認すると、それがただの金色の粒子だったことに気がつく。

 

「危ないところだった」

 

「紅蓮…すみません、気が動転していました」

 

 リリーバイスが攻撃したのは、ラプンツェルの残像であり、ギリギリのところで紅蓮がラプンツェルを回収して回避させていた。

 

「これで分かったが、アレはリリスではなく…クイーンだ」

 

「そうだ、あのボディも脳もリリーバイスの物だが、今はクイーンの手に堕ちている」

 

 紅蓮に答えたのはニヒリスターだった。

 

「ヘレティックの嬢ちゃん」

 

「ニヒリスターだ。しかし、クイーンの手からリリーバイスを救う手立てが無いわけじゃない。とりあえず、今のクイーンを疲弊させろ、話はそれからだ___」

 

 ニヒリスターが、話し終わろうとしていたところで、クイーンは紅蓮とニヒリスター目掛けて拳を振り下ろした。避けることに成功した二人だが、クイーンのはなったただの振り下ろした拳が、地面にクレーターができるほどの破壊力を持っている事実に冷や汗を流した。

 

「とてつもない破壊力だねぇ…」

 

「…生前のリリスより出力高くなってますね」

 

 紅蓮に相槌を打ったドロシーだが、その声はクイーンからリリスに戻せる可能性を聞き、前向きになっている。

 ドロシーは羽からのエネルギー弾を連射させているが、その全てをクイーンは笑顔のまま回避した。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 クイーンとゴッデス達との戦闘を、目視では確認できない距離にいるカウンターズの指揮官に通信が入る。

 

『今、状況を確認した。私はピースメーカーだ。君たちと交戦中のクイーンだが、最初のニケ、リリーバイスの見た目に変貌した』

 

[最初のニケ…だと…]

 

「指揮官、ご存知だったのですか?」

 

 存在自体が伝説となっている名前だけが一人歩きしている最初のニケ、リリーバイスだったが、指揮官はまるで知っているかのように驚き、ラピに聞かれた。

 

[いや、あまり知らない]

 

 頬を掻きながら誤魔化した指揮官に向けて、ラピとアニスとネオンとマリアンは目を細めた。

 

『君たちの手で、クイーンを一度破壊してもらいたい。厳しい戦いとなるが、君たちなら出来ると私は信じている。現在私は動けない状態でエデンにいるため、現場の指揮は君がとってくれ、頼んだよ()()()

 

 ピースメーカーから通信が切られると、カウンターズの指揮官は手を握りしめ、決意を固める。

 

[ピースメーカー指揮官からの指示だ、私たちもゴッデスと共に戦うぞ]

 

 決意を見せたカウンターズの指揮官は、ラピ、アニス、ネオン、マリアンを引き連れて戦線に参加した。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「インヘルトにも、戦闘再開の指示を出した。カウンターズにはあの()()を流したか?」

 

 エデンの司令室で、ヨハンがセシルに問いかける。

 

「はい、ピースメーカーからの指示でしたから。でもまさか、本当に彼の録音した展開になるとは、思いもよりませんでしたが…」

 

「録音はいいが、救世主はエデンに戻っていないのか?」

 

 エイブがヨハンに問いかけるが、首を横に振った。

 

「現在奴からの連絡は何もない。こちらからの応答にも答えてこない以上、何かあった可能性がある」

 

「MIAか…」

 

 エイブは何かを考えるように顎に手を置いた。

 

「奴が心配か?」

 

「心配にならないほうが、どうかしている。救世主は実質的に私らの恩人だ。こうやって物語を描き直す手助けをしてくれたんだ。このまま死に別れになれば、寝覚が悪い」

 

「これは、気休めにしかならないが…奴は必ず生きている」

 

「願望か?」

 

「ああ、客観的考えは何一つない」

 

 理論的ではない感情的なヨハンに、少ない時間でヨハンの性格を理解していたと思っていたエイブが、意外そうに唸った。

 

「ヨハン、君にもロマンチストな部分があったんだな」

 

 ヨハンは柄にもないことを言っていた事実に指摘されて気がついて、顔を戦場のモニターに移した。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「数では圧倒できているが…」

 

「この数で戦況が拮抗しているのは歯がゆいですね」

 

 スノーホワイトの言葉にドロシーが答えた。

 ナユタの軍団はほぼ壊滅状態。生き残りは多いが、戦えるほどの戦力として考えられないほど、身体の欠損が激しい。

 ニヒリスターは、本来本調子ですらなかったところに度重なる巨大化の影響によって、エネルギー切れに追い込まれ、戦闘区域を離脱している。

 

 インヘルトのハランは機能停止まで追い込まれ戦線離脱し、イサベルは空中戦ゆえに被弾箇所は少ないが火力不足が目立ち、スポッターに徹している。防御力に優れたノアですら、武装の損傷が激しくほとんど死に体となっている。

 

 ゴッデスですら、欠損部位こそないものの、元来のクイーン戦からの連戦によって、武器弾薬の消耗が激しく継戦能力を失っていた。

 

 この戦場において、ピースメーカーの指示により、ギリギリまで温存させられたカウンターズと、戦闘人数が多いことによって攻撃頻度が少なく、疲労もないシンデレラが唯一まともに戦闘できる人員となっていた。

 

「あの、カウンターズに任せるしかないですね…」

 

 リリーバイスの体を持つクイーンは、無傷ではないがかすり傷ほどの損傷しかしていない。そのクイーンと何合も徒手空拳で抗えているラピを見ながら、ドロシーは希望をカウンターズに託した。

 

[いきなりの通信で失礼する、私はカウンターズの指揮官だ。今から君は、ピースメーカー指揮官の指揮下から、私の指揮下に移動させてもらう。私と共に戦おう、シンデレラ]

 

『良い一声ね、気に入ったわ。それで、私は何をすれば良いのかしら、カウンターズの指揮官様』

 

[私の指定する座標に10カウントの後、ピンポイントで全力の砲撃を行ってくれ]

 

『10カウント?それじゃ、本当に当たるか分からないわ。戦果を求めるなら広域の殲滅戦の方が確実よ』

 

[いや、ピンポイントで大丈夫だ。安心してくれ、私もピースメーカー指揮官ほどではないが、未来の予測は得意の部類だ]

 

『…分かったわ、じゃあ必要になったら通信をお願い』

 

 カウンターズの指揮官は通信を閉じると、ネオンとマリアンに指示を出す。

 

[ネオン、マリアン、11の方角に射撃集中。アニス、ラピの反撃の瞬間を見計らい、クイーンの足元に射撃してくれ、地面を狙うんだ]

 

 ラピがクイーンの攻撃を避け、返しのカウンターを打ち込もうとした瞬間、その攻撃を見切っていたクイーンはラピの拳を片手で止めようとした…。しかし、アニスの攻撃により、クイーンの足場を崩され、思いもよらない不意によってラピのカウンターによるフックをクイーンは腕をクロスして防御の姿勢をとった。

 ラピのフックは強烈であり、防御の姿勢をとったはずのクイーンは砂埃を出しながら後ずさる…。すると、後ずさった場所にちょうどネオンとマリアンの射撃が直撃する。

 

[1、0___今だ!]

 

『ガラスの靴フルコンタクト、いって』

 

 ネオンとマリアンの射撃で釘付けにしていたクイーンの頭上から、大質量のビームの柱が降り注いだ。

 シンデレラは、肉眼でわかるほど離れた空中に浮遊している状態だが、自分の攻撃が直撃し、大きな戦果を上げているとガラスの靴の伝える振動で伝わり、カウンターズの指揮官の腕前を既にシンデレラの中では認めていた。

 

 クイーンは口元から血を流し、負傷した箇所を抑えながら忌々しそうに周りを睨み、明確な数の有利を活かされた点から、唐突にも()()()()()()()

 

「クイーンが…逃げる…」

 

 戦場の誰かが、つぶやいた。

 

「あっ!指揮官様、クイーンが逃げちゃう!」

 

 一瞬の判断で逃走を選んだクイーンに呆気に取られていたところを、アニスの叫びでカウンターズの指揮官は我に返る。

 

[…はっ!マズイ!]

 

 クイーンを追おうと走り出そうとしたカウンターズの指揮官に、名乗りのない通信が入る。弱々しい男の声だが、辛うじて聞き取れた声の質からしてピースメーカー指揮官だろうと判断した。

 

『アニスに…エネルギーを、過剰に、吸収…』

 

 通信の主はカウンターズの指揮官にそれだけを言い終えると、ぷつりと通信を切った。

 

[アニス、どれくらいエネルギーを吸収できる?]

 

「え?えーと、多分たくさん?」

 

[よし!シンデレラ、アニスに大量のビームを一つの方向から浴びせてくれ!]

 

『…正気?でも一応指示だから、従うわ』

 

 シンデレラもクイーンを追おうとしていたが、カウンターズの指揮官の正気を疑いながらも、何か考えがあると思い、指示通りに大量のビームをアニスに撃ち込む。

 

「ふぇ?わわ!本当に撃つの!?」

 

 アニスの拳に大量のビームが吸収されていき、十秒ほどで、全身が白く輝くほどの光を発し始めた。

 

「くぅぅぅぅ、熱い…指揮官様、コレが今本当に…必要なこと…」

 

[これが、一番最善の方法だ]

 

 アニスは拡張武装スターの熱暴走による注意アラートが鳴り響く中、アニスはあまりのビームの熱により、意識を手放そうとしていた。

 

 "本番は、ここからだよ"

 

 アニスの耳元で、誰かが囁いた気がした。

 

「え…?」

 

 アニスの白く輝いた体の影響から、コアの一部が融解、拡張武装スターの一部と溶け合い融合し、安定稼働に至った。

 その一部始終を目撃したシンデレラは、アニスに対してのビームを止めた。

 

[そのー、姿はー、いったいー?]

 

 薄紫のドレスに変化したアニスを見て、カウンターズの指揮官は驚愕するも、その声は間延びしていて、よく聞き取れない。

 

「指揮官様が、何を言っているか分からないけど…多分、この感覚は絶好調の時の感覚って、分かるわ!」

 

 アニスが力強く一歩を踏み出すと、まるで干ばつ地帯の大地のようにひび割れる。

 アニスは二歩、三歩と、踏み込む中で、自分の最高速度を掴み、腕を庇いながら逃走を図るクイーンに追いつく。

 

「つーかーまーえーーーたッ!」

 

 アニスは、クイーンの庇っていた腕を掴み、目一杯力を込めて元のいた戦場の方角に放り投げた。

 空中に放り投げられたクイーンは、高速で空中に放り投げられた影響から身動きの取れない状態で空で溺れる。

 

[ネオン、今だ!火力!火力!火力!]

 

「はっ!空中だから何も心配せずに全火力を叩き込める!そういうことですね、師匠!火力!火力!火力!火力!」

 

 大質量の爆発を上げ、黒煙を出しながらクイーンは落下していく。しかし、破壊とまではいかなかった。

 

「これで決める!セブンスドワーフゼロ!貫け!!!」

 

 ラピのセブンスドワーフゼロがバーニアを噴かしながら、クイーンの上から押さえつけ、先端部分を回転させドリルにして、クイーンの腹部を貫こうとする。

 しかし、クイーンはラピのドリルを正面から受け止めようとドリルを掴もうとして___。

 

「ラピ!手伝います!これは、私の決別でもありますから!」

 

 巨大化したマリアンが空中で人型に戻り、ラピのドリルを掴もうとしたクイーンの右腕を掴み磔のように腕を伸ばし___。

 

「貴女達、本当に美しいわ。だから私も、手を貸してあげる」

 

 シンデレラが、クイーンの左腕を伸ばした。

 

「はぁぁぁ!いけぇぇぇ!!!」

 

 轟音を上げ、大きなクレーターを作り、地面にめり込まれてクイーンは完全に機能を停止させた。

 

 レッドフードが倒したアナキオールが、こうしてシンデレラとして力を貸して、レッドフードの意思を継いだラピが居たからこそ、ここにマリアンがいる。

 誰が欠けてもこの勝利は、訪れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 あの戦争、"ゴッデスフォール"と呼ばれた人類とクイーンの戦争が終了して、早くも五年の月日が経った。

 

 マリアンがクイーンとして台頭し、第三次地上奪還作戦は全地上の半分の領土を奪還して、ひとまずの成功となった。しかし、残りの半分はマリアンとは更に別のクイーンの台頭により、人類と反抗するラプチャーの存在が現れるも、奪還した地上の復興で忙しく、冷戦状態が続いている。

 

 ゴッデスフォール後、機能を停止したクイーン…リリーバイスだが、ニヒリスターの指示で私の血液を輸血すると、寝たきりの状態だが、クイーンに乗っ取られた体を取り戻し、安全を確認してからアンダーソン副司令と再会した。

 あんなにも泣き崩れるアンダーソン副司令を、私は今後見られないだろうと思い、目に焼き付けた。

 

 クイーンの支配から逃れたリバーレリオも、アンチェインドの影響で、ピナの時の記憶を取り戻し、今日もドロシーとエデンでお茶会をしているはずだ。

 

 崩壊寸前だったアークから人類を救出し、地上奪還を成し遂げたのは、私としては、ピースメーカー指揮官が居なければこんなにも大勢の人を救いながらは出来なかったはずだ…。

 しかしこの五年、ピースメーカー指揮官を見ることはなかった。全体の志気低下を憂いて、MIAとして判断されたが、彼の指揮下に居たシンデレラ以外のオールドテイルズや一部のピースメーカー部隊のニケ達も同じようにこの五年、姿を見せていない。

 

 地上奪還作戦に貢献したシンデレラと、ゴッデスフォールでの活躍でオールドテイルズ達の名前も人類史に名を刻むこととなったが、縁の下の力持ちであったピースメーカー部隊の名前は、シンデレラとオールドテイルズ部隊の名前に隠れた。

 逆にカウンターズという名前が、ピースメーカー部隊の名前と入れ替わるようにして、徐々にピースメーカー部隊という名前が日の目を浴びなくなっていった。今年産まれる子供はピースメーカーという名前の部隊を、知らずに育っていくのだろう。

 

 アンダーソン副司令は「ピースメーカーの事は心配しなくても大丈夫だろう。あいつの隠蔽能力は筋金入りだ。仮にどこかで生きていたとしても尻尾を掴める時は、全ての準備を終えて用が済んだあとだからな」と言っていた。ピースメーカー指揮官の過去の隠蔽工作にアンダーソン副司令も手を焼いていたそうだ。

 ヨハンも「ピースメーカーの事だ、どこかで生きて暗躍しているはずだ」だと、言っていた。二人とも、生きていることに何も疑いを持っていないようだった。

 

 でも、私はまた彼に会って、ずっと学んでいきたい___そう思い、未探索の残り半分の地上を秘密裏に探索している。

 

「指揮官、前方からラプチャー___ですが、敵性反応がありません」

 

 一瞬銃を構えたラピだが、すぐに銃口を下ろして、ラプチャーを眺めている。

 

「危険じゃないラプチャーって、最近なんだかちょっと可愛く見えてくるんだけど、私って変わっちゃったのかしら?」

 

「変わらない人なんて、いないと思いますよ。あーでも、トップアイドルになっても、まだ危険のある未探索エリアに付いていくのは()()()()()とは思いますけど」

 

 挑発されたアニスが、ネオンの口を両指で引っ張って、戯れあっている。やれやれ…。

 

[こら、アニス、ネオン。地上探索は遊びじゃないんだぞ]

 

「でも、変わることも変わらないことも、悪いことじゃないと思います。変われたから、クイーンを討ち取ることができたし、変わらなかったから、私がこうして指揮官と一緒にいられますし」

 

[…そうだな、マリアン]

 

「王子様、私は成長における変化なら、肯定するわ。だって貴方は、私の王子様として、完璧に成長したのですもの」

 

 私とマリアンの間に挟まるように、強引に入ってきたシンデレラは、私の腕を掴み、胸の間に挟んだ。腕がこれ以上ないくらい幸せだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 真っ白な部屋と、その部屋に合うように置かれた足のついた真っ白なバスタブには、黒い粘性のコールタールのような液体が上から滝のように流れ落ち、バスタブを満たし、零れ落ちる。

 

「それで、全身をダークマターに置換して人間をやめた感想はどう?」

 

「レヴィアタン。テセウスの船…というパラドックスを知っているかな?」

 

「えーと、確か、"その"物体を構成するパーツを全て置き換えたとして、"その"現在の物体は、過去の"その"物体と同じものであるか…みたいなものよね」

 

「その通り。パラドックスゆえに正解はないが、あえてその答えを出すとするなら、"その"物体を構成するのはパーツという外的要因ではなく、"記憶と記録"であると考えている。つまり、人間をやめたところで、私を構成するものは何一つ()()()()()()()…まぁ、脳死の可能性がなくなったのは、純粋に助かっているとは言っておこう。五年間、世話をかけたね」

 

 全身がダークマター故に、服を作ろうと思えば自分で生成できるのは便利だね。慣れ親しんだ黒スーツに中央政府の軍服___によく似たジャケットを羽織る。

 すると、勢いよく部屋のドアが開かれた。

 

『う!王子さま!もうだいじょうなの?』

 

「もう大丈夫だよ。すまないね、あの時は水泡で長距離を運ばせて、おかげで助かることができた」

 

 セイレーンからの抱きつきにより、半歩ほど後ろに下がる。

 私が倒れる寸前、セイレーンにフォービーストがいる場所まで運んでもらい、脳死寸前のところで高純度のダークマターを管理する炉に接続され、脳の治療を終えてから、せっかくだからと、ダークマターによる全身置換を行った。

 

「ああ!私の神私の神私の神!私の神が更に美しく完璧に!私の神が更に美しく完璧に…」

 

「ヘンゼルとグレーテルはやっぱりお兄さんに付いてきて正解だと思っているわ。私たちがいなくても、シンデレラがオールドテイルズの名前を人類史に残してくれたし、ヘンゼルとグレーテルはまた面白いものが見られそうでワクワクするの」

 

 ヘンゼルとグレーテルの頭を撫でながら、いつも通りのカーレンに笑いかける。ダークマターに置換したから、カーレンも私の身体を弄り放題だろう。ちょっと怖いな。

 

「やれやれ、私も黎明卿に頭を撫でられたいのですがねぇ」

 

 両手が塞がってるところに頭を差し出すナユタを見て「コピーとはいえ、ここまでオリジナルの指示を聞かなくてもいいのか?」と、隻腕のナユタに目で訴えていると、更に数名部屋に入ってきた。

 

「指揮官、ご退院おめでとうございます」

 

 オズとグリムとゴーテルが入室してくるが、代表でオズが敬礼をしながら形式張った賛辞の言葉を並べる。

 

「ああ、君たちにも苦労をかけたね。新クイーンのオンリーワンの教育と、ラプチャー達の先導、予定していた軍勢より緩やかとはいえ、中央政府相手に冷戦状態を作ってくれた。しかし我々は人類の反逆行為により、捕まれば処刑されるだろう。だから、敬礼は大丈夫だよ」

 

 人類に地上を奪還させるのはいい…しかし、ラプチャーがいなくなってしまうと、人類は奪還した地上でまた人間同士の争いを始めてしまう。

 人類に対しての共通の敵は、かならず残っていなければいけない。

 

「しかし、人類に対して反逆行為をしたとは言え、我々は()()()()()()()()()という名前を捨てたわけではない。どんな形であろうと、例え民衆が思う悪に染まろうとも、悪を以て巨悪を討つ。それが我々、平和の作り手(ピースメーカー)だ」

 

 演説をしたわけではないが、全員が癖であるかのように敬礼で返した。

 

「では行こうか、私の勝利の女神達___」




 お疲れ様でした!

 ひとまずの終わりまで書けました!

 謎時空の単発の話とか投稿するかもしれませんが、メインの方はこれで完結です!

 今までお読みいただきありがとうございました!
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