蛇王龍 異世界を蹂躙する   作:KKKK

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は~ち~み~つ(ワールドアイテム)たべたいなぁ~。

 

 

 

 

 

 

 

 法国は数百年前にこの世界にやって来たプレイヤーが作った国である。

 

 その当時のプレイヤーが何を思ったのかは定かではない。亜人や異形に追い詰められて粗末な布切れを纏って彷徨っていた人間に同情したのか、もしくは憐れんだのか、或いは単純な好奇心であったのか、今となっては何もわからない。

 

 ただ結論としてそのプレイヤーたちは人間を手厚く保護して外敵から守り、この過酷な世界で弱者として生まれた人間たちに繁栄の道を示したことは間違いない。

 

 数を増やし、知識を与え、文化を作り、文明を起こし、法と秩序を作り、人間という種族に希望を与えた。

 

 六大神はまさに人類の守護者として奉られ、永遠に変わることのない信仰を捧げられるまでになったのだろう。例え大半の神がこの世を去り、最後に残っていた神も八欲王に滅ぼされたとしても、六大神が作り上げた教えは今日も変わらず法国に受け継がれている。

 

 朝日が差し込むと同時に敬虔な信徒たちは今日を生きられることに祈りを捧げ、夜眠る時も今日を生きられることに感謝して祈りを神々へと贈る。それは日常であり、日々のルーティンであり、一日の始まりと終わりなのだろう。

 

 誰もが感謝していた、この過酷な世界で生き残れていることを。

 

 誰もが感謝していた、自分たちを守ってくれる神々へ。

 

 誰もが信じて疑っていなかった、今日も明日も神々の加護が永遠に続いてくれることを。

 

 法国よ永遠なれ、神々に栄光あれ、人間に未来あれ。小さな子供が、老いた老人が、若い娘が、働き盛りの青年が、国を守る騎士が、国を導く指導者が、今日も変わらず祈りを捧げていく。

 

 生かされている感謝を忘れることなく、守られている感謝を忘れることなく、神々に失望されることのないように強く気高く生きることを誓いながら、ただただ祈る。

 

 それ故に法国は強いのだ。だからこそ必死なのだ。人間の救済と繁栄を国是として一致団結する事実だけはどれだけ時代が変わっても色褪せることなく継続できるようにと、戒めるように祈る。

 

 

 この祈りに嘘偽りはなく、正しく神へと届いているのだという確信が、法国をより一層、強く育て上げていく。

 

 そんな日々を積み上げること幾星霜、何百年の時を超えて今日もまた法国は神々へ祈りを捧げる。

 

 

 神よ、感謝いたします、か弱い我らを守ってくれたことを。

 

 神よ、誓います、人間を守り繁栄させていくことを。

 

 

 絶え間ない祈りは今日も明日も続いていく、それが永遠であると決して疑うこともなく。

 

 

 

 だからこそ法国は強いのだ、だからこそ法国は人類の守護者であると誇りを掲げられるのだ。

 

 

 

 

 けれどそんなことは蛇王龍にはなんの関係もなかった。プレイヤーが作った国だとか、人類の守護だとか、信仰だとか神だとか願いだとか宗教だとか、未来とか歴史だとか、そんなことは何の興味もなく、関係もなかった。

 

 

 蛇王龍にとってみればそんな歴史や時間など意味もなく、彼からしてみればそこに高純度のエネルギーがあるというだけの話であるのだろう。

 

 アーグランド評議国を通過して真っすぐ法国へ向かった蛇王龍は、その巨体を蛇行させながらあらゆる物を磨り潰して人類の守護者を自称する国へと鼻先を突っ込んだ。

 

 特になにか脅威があった訳ではない、当たり前のことだが作戦や数や戦略や駆け引きが成立するサイズではない。

 

 

 それでもだ、相手がどれだけ巨大で理不尽であったとしてもだ、我らこそ人類の守護者であるという自負と覚悟が戦いを挑ませる。

 

 

 蛇王龍が法国の都市や街や集落を蛇行と共に磨り潰す、その度に様々な妨害がなされるのがわかった。それは神官戦士が召喚した天使たちであったり、マジックキャスターの部隊であったりと、国力に物を言わせた圧倒的な数が作り上げる軍事力のなせる技なのだろう。

 

 人口大国だからこそできる層の厚さ、マジックキャスターの数も神官戦士の数も他国とは比べられない程に用意されているのだ。剣が、矢が、魔法が、雨の如く絶え間なく突き進む蛇王龍に浴びせられていく。

 

 更には英雄と呼ばれるほどの実力者を集めた六色聖典、一人一人が人類の未来を守り築き上げる為の勇士たち、そんな彼らが神々が残した途方もない力を宿した武具を身に纏い邪悪に立ち向かう姿はまさに英雄譚。

 

 

 これで勝てなければ、それはもう嘘だ。

 

 

 そんな風に己を無理矢理に納得させているのは六色聖典を纏める立場にある法国の最高議会にも席を置く「レイモン・ザーグ・ローランサン」である。

 

 彼は法国の最奥にある会議室で頭を抱えて己を洗脳するかのように、何度も何度も法国の勝利を願っていた。

 

 始まりはアインズ率いる魔導国が王国に宣戦布告をして侵略を始めた時だ。極めて高い確率でリ・エステイーゼ王国は滅びるだろうと判断した彼は、六色聖典のまとめ役の立場として何よりも人類の生存を優先することにしたらしい。

 

 王国にも捨てがたい人材がいるのでその勧誘であったり、亡命の受け入れであったりと、これからの人類に必要なことを冷静に指揮していたのだ。

 

 それが何もかもひっくり返って、既に状況は王国の滅びだとか魔導国の存在だとか、そういう次元でなくなったことを知ったのはもう半日ほど前のことである。

 

 

 漆黒聖典には「占星千里」というコードネームを持った英雄がいる。彼女は未来予知や千里眼に近い能力を持っており、リ・エスティーゼ王国と魔導国の争いに関しても観測させていたのだが、突如として大声を上げて発狂したのだ。

 

 瞼を見開き、泡を吹き、体の穴という穴から液体を漏らしながら占星千里が発狂死する直前に「世界が終わる」と絞り出した後、彼女は絶命してしまう。

 

 あまりにも不吉な予言にレイモンはすぐさま情報収集を命じて、すぐさま異変を感じ取ることになった。大地が揺れ動くという感覚初めて感じ取ったからだ。

 

 知識としてそういったことがあるとは知っていても、実際にそれを経験するのは初めてのことである。大いに困惑したのはレイモンだけでなく法国全ての民が同じように恐れたことだろう。

 

 ごく僅かな時間ならばともかく、その振動は徐々に大きくなっていくのだから質が悪い。

 

 何が起こっているのだと情報収集を命じた彼は、上がって来た報告に思わず天を仰ぐ。

 

 

「ふざけるなッ……ふざけるなぁああああッ!?」

 

 

 六色聖典の全てを、法国が誇る神官たちを、丁寧に丁寧に育て上げたマジックキャスター部隊を、この国が保有する全ての戦力を今すぐに運用しろと命じたのはすぐ後のことである。激怒しながらもしっかりとやるべきことをやっているのは、彼が敬虔なる神の信奉者であったからだ。

 

 人類を守らなければならない、法国に迫る巨大な蛇から。その思いが彼を恐怖から解き放ち動かすのだろう。

 

 幸いにも巨大な蛇はまずはアーグランド評議国へ向かったようなので僅かな時間は作れた。その僅かな時間を有効活用してレイモンは出払っていた全ての戦力を法国に戻して迎撃態勢を整えた。

 

 

 数えきれないほどの天使を召喚して、英雄部隊を配置して、神々の至宝すら議会の承認を得て全力で運用する。いっそ苛烈でやりすぎだとも思われたのかもしれないが、巨大な蛇の存在を示せば誰もが黙るしかない。

 

「勝て、頼む、勝ってくれ……あんなの見た目だけのハリボテだ、そうに違いないんだッ!!」

 

 それは最早懇願であった。そうであって欲しいという願望であった。しかし今も揺れ動く大地がすぐさま否定してくることでいつまでたっても絶望と不安が拭えない。

 

 

「神官長、漆黒聖典の準備は整いました」

 

 法国の最高議会で頭を抱えているレイモンにそう声をかけたのは艶のある黒髪が特徴的な少年である。彼こそが英雄部隊である漆黒聖典を纏める第一席次、神の力を覚醒させた神人だ。

 

 彼の背後には漆黒聖典を構成する万夫不当、一騎当千の英雄たちが立っている。人類の守護者としてこれほど頼りになる面子もいないだろうとレイモンは昨日まで思っていたらしい。

 

 そう、昨日までは、間違いなくそう思っていたのだ。

 

 

「私はここで大まかな指揮を執る、前線の細かな指示はお前たちに任せたい、できるな?」

 

「お任せください」

 

 迷いなくそう断言する第一席次のなんと頼りになることだろうか……神の力を覚醒させた神人たる彼ならば案外あっさり勝ってしまうかもしれないとレイモンは己を強引に納得させる。

 

 

「いいか、今、人類は岐路に立たされている。滅ぶか否かの岐路にだ……かつて神々が降臨する前の絶望の時代のように、我々は滅ぶかどうかの瀬戸際に立っている……わかるな?」

 

「はい、ここにいる全員が、理解しております」

 

「……」

 

 

 まだ若い第一席次であるが覚悟は決まっているようだ。ならば自分がオロオロする訳にはいかないとレイモンは表情を引き締めて、非情な命令を放つ。

 

 

「ありがとう、お前たちは間違いなく英雄だ……だからこそ命じよう、人類を守れと」

 

「はッ!!」

 

 迷いはないとばかりに漆黒聖典は敬礼をしてから戦場へと向かう。輝く神々の遺産をこれでもかと身に纏い、死地へと赴くのだ。

 

 おそらくは帰って来ないだろう、そんな予感を抱きながらもレイモンはレイモンで人類の未来を考え思う。既に議会からは軍事の全権を任せられているので、あらゆる戦略を行使するだけだ。

 

 

「神々の至宝を使いあの蛇を支配する……それしかないか」

 

 まず候補として上がるのは巨大蛇を洗脳して操ることである。法国にはかつてのプレイヤーが残した遺産があり、その中でも極めて強力なのが問答無用で相手を魅了洗脳するマジックアイテムの存在である。

 

 あれを使えば蛇を支配できるのでは? 法国の軍事を司る彼がその判断へ至るのは当然のことだろう。

 

 だが同時に、あれに果たして効果があるのだろうかという不安も拭えないのも事実だ。真なる竜王などにも通じないだろうという推測はあったのだし、あの蛇も同じではないかと思うのだ。

 

 

「いや、迷いに意味はない……やる以外の選択肢などないのだ」

 

 

 そうとも、通じるか通じないかなど考えるだけ無駄だ、やるしかないのだから。そうしなければ人類が滅びるのだ。

 

「聖女候補を全て使い潰す……人類を守るのだ」

 

 かつてその魅了洗脳の至宝はカイレという老婆が使用していたのだが、今では既に死んでしまっている。そこで法国は後継者の育成に躍起になっていた事実がある。選抜した候補者を更に鍛え上げてカイレの後継として修業させていたのだ。

 

 使えるかどうかはわからない、だが百人の候補者を使い潰してもその中の一人が使えるかもしれないという希望に縋るしかないのだろう。

 

 

 できるかできないかではなく、やるかやらないかなのだ。

 

 

 例えどれだけ恨まれようともレイモンは人類の未来の為に聖女候補たちを使い潰すことに決めたらしい。

 

 すぐさま行動に移る、今も地面の揺れは激しくなっているので時間的な猶予もないのだから。

 

 

 

「法国の総力ならばあの蛇を弱らせられる筈だ、そして漆黒聖典ならばあれを止められる、聖女候補の中にはカイレ様と同じように神々の至宝を使いこなせる者がいるし、もしかしたらあの蛇は見た目よりも弱いことだってありえる、なんだったらこの人類の危機に再び神々が降臨するかもしれん」

 

 

 

 そんな幾つもの「もしかしたら」を思いついて不安を拭わなければ彼は正気を保てないのだろう。

 

 

 不安に足を取られながらも彼は突き進む、これもあれも人類の未来の為に。

 

 

 

 

 

 そんな彼目掛けて、空から巨大な隕石が降り注いだことで、彼は永遠に不安を感じる必要はなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蛇王龍が空から隕石を降らせたのは「邪魔」だからが一番の理由であった。

 

 例えば人間がハチミツを取る為に蜂の巣を突いたとしよう、当然ながら大量の蜂が脅威に立ち向かってくるのだから、人間だってそれなりの対応をするだろう。

 

 手で群がる蜂を弾いたり、或いは殺虫剤を噴射したり、つまり蛇王龍はそれと同じことをしたに過ぎない。

 

 

 彼が求めているのは法国にあるワールドアイテムである。正確にはそれが発する膨大なエネルギーを求めている。それ以外の価値を感じてはいなかった。

 

 

 しかしだ、蛇王龍が法国の領土に侵入してすぐに、とてつもない小さな抵抗が数えきれないほどに殺到したのだ。それはマジックキャスターの部隊は放つ魔法であったり、召喚された天使たちの攻撃であったり、剣や槍や矢など様々である。

 

 別に痛みはない、痒さすら感じない、しかし芳醇なハチミツを前にして視界を羽虫がウロチョロすれば煩わしいと思うのも自然なことなのかもしれない。

 

 人間だってそう思う、蛇王龍だってそう思う……だから彼は隕石を降らせた。

 

 かつていた世界では凶星と呼ばれた攻撃手段であるそれで視界をウロチョロとする羽虫を遠ざけようとしたらしい。人間が蠅を手で払うかのように。

 

 

 一発や二発ではない、降り注いだ凶星はまさに雨の如く降り注いで法国の全てを耕す。

 

 

 滅ぼそうとか、国を侵略するとか、殺したいとか、そういった感情ではなくて、邪魔だと思ったからそうした。虻蚊を邪魔だと思ったら誰だってそうするから。

 

 第十位階魔法にも隕石を降らす魔法があるのだが、その魔法を連射しているような光景と言えるだろう。法国に降り注ぐ隕石の数は千か一万か、数えるのも馬鹿らしい数であった。

 

 

 集落も、村も、街も、都市も、全てが吹き飛び消し去られていく。そこにあった歴史も、思いも、願いや営みも、天変地異にはあまり関係がない。

 

 

 六色聖典? 戦うこともなく地面のシミになっているか瓦礫の下敷きになったか、或いは凶星の直撃か余波で蒸発したことだろう。

 

 神人? ついさっき蛇王龍に轢かれてミンチとなった。

 

 漆黒聖典? 蛇王龍には人間の違いがわからない。どう死んだかもわからないままおそらくどこかで地面のシミとなっているだろう。

 

 

 絶え間なく降り注ぐ凶星で視界を綺麗にした蛇王龍は、遂に法国の最奥に……正確にはそうであった瓦礫の山へと辿り着く。

 

 

 なにやらアンデットらしき何かがいたような気もするのだが、彼に人間と骸骨の違いはわからなかったし、巨体で磨り潰したのか凶星で吹き飛んだのかはわからないが、気が付いたら消えていた。

 

 蛇王龍は積み重なった瓦礫の上にまたもや凶星を落として吹き飛ばすと、下敷きになっていた様々な財宝を掘り出す。

 

 美術的な価値であったり、戦略的な価値など彼にはわからない。彼にわかるのはその財宝たちがそれなりのエネルギーを宿しているということだけである。

 

 特にワールドアイテムはかなりのエネルギーとなるだろう。だからこそここまで来たのだ。

 

 

「好き勝手やってくれたじゃない……おぞましい化物が!!」

 

 

 いざ実食、そんな勢いで六大神の残したアイテムへ巨大な咢を伸ばそうとした蛇王龍を妨害する者が一人、この国に残された最後の希望である神人である「番外席次」だ。

 

 六大神の血を覚醒させた彼女だからこそ降り注ぐ凶星を生き残れたのか、或いは単純に運が良かったのか、瓦礫の下敷きになっていたのだがそれら全てを吹き飛ばして彼女は駆ける。

 

 

 自分が死ねば、法国は敗北する。それはつまり人類の敗北なのだという思いが、番外席次を進ませる。

 

 

 幸福な人生ではなかった、恵まれているとも言えなかった、けれど思いも願いも希望も持っている。人類の守護者だという自負と思いは彼女も確かに胸に宿しているということだ。

 

 

「私の国を救えるのは私だけなんだ」

 

 

 覚悟を胸に、人類の怒りを思い知れとばかりに番外席次は己の切り札を発動させた。彼女が持つ六大神の武器や防具であり、かつてそれを使っていた六大神の魔法や力を行使できるという、彼女を最強たらしめるタレントを迷うことなく発動する。

 

 

 

 「あらゆる生ある者の目指すところは死である」……それはかつて人類を守護した闇の神、スルシャーナの必殺技、あらゆる耐性を無視して相手を死に至らしめる最強の攻撃であった。

 

 

 

 どれだけ巨大な敵だろうがこれなら殺し尽くせる、少なくとも彼女はそれを疑ってはいない。どんな怪物だろうと生きているのだから殺せるのだと確信しているのだろう。

 

 

 番外席次の視界が光に包まれる。爆発も衝撃もなく、ただ光が包み込む。

 

 

 彼女を中心に広がった光はあらゆる物を死へと誘う。瓦礫も、大地も、蛇も、何もかも。

 

 

 そして光が晴れた時、彼女を中心に灰の大地と化していた。かつての大神殿も、その瓦礫も、土も、文明も、歴史も、そこにあった全てが灰となって舞っていく。

 

 

「勝ったよ……私が、この国を守ったんだ」

 

 

 視界を覆い尽くす大量の灰が彼女の勝利を色濃く教えてくれる。さすがにあの蛇も死んだだろうと番外席次が確信して……次の瞬間に灰の向こうから現れた巨大な咢に彼女は呑まれて消えた。

 

 何が起こったのかはわからないまま飲み込まれて、同じように飲み込まれたツアーと一緒に消化されるだけである。それは人類最強の守護者の最後であった。最強のドラゴンと最強の人類は等しく蛇の腹に収まり死んでいくだけだ。

 

 

 蛇王龍には、どちらの違いもわからないままである。

 

 

 番外席次自身と、彼女が纏っていた武器からエネルギーを吸収した蛇王龍は、気を取り直してワールドアイテムの捕食へと向かう。巨大な咢で灰を掘り返して埋まっていた衣服を飲み込んでしまう。

 

 

 

 おぉ、これは豊富なエネルギーだな。

 

 

 

 もしかしたらワールドアイテムを飲み込んだ蛇王龍はそんなことを思ったのかもしれない。あまりにも小さくて見つけづらいが、内包しているエネルギーはかなり多い。

 

 ツアーとギルド武器、番外席次と六大神の装備、そしてワールドアイテム。それらを捕食してエネルギーを吸収した蛇王龍は、腹に広がるエネルギーを感じ取って暫し微睡む。

 

 

 まだ百年は先の話かと思っていたが、これだけのエネルギーがあれば「脱皮」できるかもしれない。そう判断した蛇王龍は、すぐさま進化と適応を繰り返す。

 

 

 かつて大神殿があった場所でとぐろを巻いて微睡んだ彼は、次の瞬間にはエネルギーを消費して暫しの眠りに付いた。すると蛇らしく脱皮を行った。

 

 

 この巨体に誤解されがちであるが、彼は人間で言えば成長期真っただ中、腹が膨れればこうやって脱皮をしてより強くより固くより大きく成長するのだ。

 

 さっきよりも強く、これまでよりも大きく、そんな願いを叶えるようにポロポロと皮が剥がれて彼は瞬く間に進化していく。

 

 最後に身じろぎすると大量の皮が剥がれ落ちて大地に転がっていき、中から新しい彼が誕生することになる。

 

 

 さっきまでの彼が子供であるのならば、今の彼は青年だろうか。

 

 

 白銀の体は脱皮したことで黄金に輝き、ただでさえ大きかった体はより大きく強靭になり、内包しているエネルギーは桁違いに増えたことだろう。

 

 

 新しい己の体を確かめるように、彼は大きく大気を吸い込んでエネルギーを解き放つ。

 

 

 それはきっと、人間にとっては寝起きの何気ない動作だったのかもしれない。背伸びをしたり、肩を回したり、そういった何気ない動作である。

 

 

 蛇龍王もまた同じだ、良い目覚めについ体を動かしたくなったのかもしれない。

 

 

 大きく大気を吸い込んだ彼はそれを吐き出すのと同時に体内のエネルギーも解き放つ。それは光り輝く光球となって放たれて遠く離れた場所まで届き弾けて消えた。

 

 

 巻き上がる巨大なキノコ雲がどれほどの破壊であったかを物語っているようだ。その下には法国と争っているエルフの国があるのだが、別に蛇王龍には何の関係がないことである。

 

 

 八欲王の子孫がそこにいたのだが、蒸発して消えたのは間違いない。そしてそんな事実すら、天変地異の化身である蛇王龍には何の意味も価値もなかった。

 

 

 

 

 こうしてこの日、人類の守護者たる法国は滅ぶことになってしまう。そこにあった歴史も思いも、天災と災害には思いをはせる意味を見出せはしない。

 

 

 

 

 

 

 あと、ついでに、法国が滅んだことで、その軍事力に頼り切っていた竜王国も滅んだ。そして竜王国を滅ぼしたビーストマン連邦も蛇王龍のくしゃみで滅ぶことになるのだが、別に語る必要のない未来である。

 

 

 

 

 

 

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