蛇王龍 異世界を蹂躙する   作:KKKK

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はいワイの勝ち、なんで負けたのか明日まで考えといてください、そしたら何か見えて来る筈。ほな、ワールドアイテム貰っていきます。

 

 

 

 

 

 

 

「どうすればいいんだこれ? いや、本当にどうするんだ?」

 

 

 アインズはナザリックの玉座に腰かけて激しく発光を繰り返す。精神が一定以上に乱れると強制的にアンデットの特性で沈静化されるのだが、何度も何度も光っているということはいつまでたっても落ち着けないということなのだろう。

 

 それもその筈だ。リ・エスティーゼ王国への侵略を決めた当初はこんな状況になるなんて欠片も考えてはおらず、覚悟も準備もしていなかったのだから。

 

 そりゃこれを機に現地の戦力を釣れればいいと思ってパンドラを影武者にして動かしてはいたとも、そして思惑通りに白銀の鎧が釣れたし、なんだったらシャルティアを洗脳した憎き相手も見つけられるかもと思ってもいた。

 

 けれど、蓋を開けてみれば出て来たのはありえないほどに巨大で強力な蛇であった。

 

「冗談だろ……ワールドエネミー、なのか? いや、だがこんな奴はユグドラシルでは見なかった。まさか未発見のワールドエネミー……クソ運営がアああああ――」

 

 こんなの理不尽過ぎるだろうという思いが高まった瞬間に沈静化が起こって即座に冷静になってしまう。

 

「いや、落ち着け、この世界のモンスターであるとも考えられる。真なる竜王だったか? それなりに強いドラゴンがいるんだったか……そういうアレかもしれん、いやだからなんだよ」

 

 相手がなんであれ、どこの何であれ、だからなんだとしか言えなかった。理不尽を嘆いた所で意味はないし、不条理を訴える運営はどこにもない。

 

 どうしようもない揺るがない現実としてアレは今も暴れまわっているし、何度願っても変わることのない脅威としてそこに存在しているのだ。

 

 

 アインズはどうか消えてくれと願いながら魔法の鏡で何度目かの観察を行う、しかしそれと同時に鏡の向こうにいる蛇王龍は口から巨大な光球を吐き出して巨大なキノコ雲を作り出していた。

 

 

 その威力たるや、超位魔法と遜色はなく、寧ろ上回っているようにも見えた。少なくともアインズにあのキノコ雲を作れるだけの威力がある魔法は使えない。

 

「なんだよこれ……ウルベルトさんの大災厄並の威力は確実にあるじゃないか。しかも詠唱時間もない。リキャストタイムはあるのか? 或いはMP消費が激しいなどのデメリットもあるはずだが、他のワールドエネミーの場合は大技を使った後だけ攻撃が通じるようなギミックもあったな、似たような法則は他にもあった、そういうことなのか?」

 

 

 ここに来てアインズは致命的な認識の誤りをしてしまうことになる。仕方がないことではあるのだが、どうしても彼の判断はユグドラシルの情報や常識に偏ってしまうということだ。

 

 相手を過小評価せず、常に自分を上回る存在がいると思え、彼は部下の守護者たちにもそう言ったことがあるが、その言葉とて結局はユグドラシルの常識での話である。

 

 どこまでいってもゲーム脳なのだ、アインズという男は。だからこそ蛇王龍という存在もどうにかしてゲームという枠組みに収めようとしてしまうのだろう。

 

 自分の常識であり価値観の中心であるゲームの法則が邪魔をして、そもそも「根底にある世界観が異なる」という事実には気が付けないようだ。

 

 だからユグドラシルの法則で物を考える。どんな強敵にも弱点があって、得意な攻撃やデメリットがあって、数や戦略や駆け引きで強敵を上回ることができるという、実にユグドラシルらしい考え方であると言えるのかもしれない。

 

 そんなユグドラシルの常識が通じるのは、結局は「同じ世界観の相手」だけである。

 

 今日この瞬間、アインズはこの世界に来て初めて、恐ろしいという感情を思い知ったのだが、そんな危機感すら精神の鎮静化によって消えてしまうことになるのは、もしかしたらデメリットであるのかもしれない。

 

「まずはデスナイトなどのアンデットで相手の大技を誘発する、ある程度MPを消費させれば弱体化する、そこに火力を注ぎ込む……ユグドラシルと違ってレイドバトルの最大上限数が存在しないから、火力を集中させるという点ではこの世界の方がやりやすいな」

 

 

 彼はユグドラシル時代にギルドメンバーと共に戦ったワールドエネミーとの戦闘経験を元にシミュレーションを繰り返す。自分とナザリック、守護者などの主要戦力、そして保有しているアイテムなどを使ってだ。

 

 だがどれだけ計算しても完勝とはいかない、どれだけ上手くやったとしてもワールドエネミーとの戦いは消耗戦が大前提なのだから。

 

 おそらくはナザリックの戦力は相応に削られるだろう、アルベドなどの名前があるNPCとて失う筈だ。

 

 

 たった一匹を倒す為に、消耗戦なんて事態になった時点で組織としては敗北なのだから。

 

 

 狙うならば完勝、そしてそれができるとは思えない。

 

 

 だが、それでもやるしかなかった、この世界には運営もパッチ修正も詫び石もセーブフォルダ複製もないのだから。

 

 

 

「アインズ様、ご報告に参りました」

 

 

 ワールドエネミーとの脳内シミュレーションを何度も繰り返しているアインズの前にアルベドがやってくる。彼女にしては珍しく焦った様子なのは、相応の理由があるのだろう。

 

 

「どうした、アルベドよ」

 

「エ・ランテルが消滅いたしました」

 

「……え?」

 

「巨大な爆発が起こり消滅しました、おそらくはあの巨大蛇による攻撃によるものかと。現地に置いていたアンデットからの通信も途切れています」

 

 その報告にアインズはまたもや魔法の鏡を起動してすぐさまエ・ランテル周辺を観察するのだが、そこには黄金の鱗を輝かせて蛇行する蛇王龍の姿があった。つい先程まで法国の跡地にいたというのに僅かな時間でここまでやってきたらしい。

 

 蛇というのは筋肉の塊である、ましてや蛇王龍のスケールで考えればその瞬発力は千里など一瞬である。

 

「待て、コイツはまさかナザリックを目指しているのか? 馬鹿な、どうやってこの場所を知ったんだ」

 

 アインズが気になったのは消滅したエ・ランテルではなく、蛇王龍の進行方向であった。巨大な体を蛇行させて目指しているのはこのナザリックではないかと思ったのだろう。

 

 実際にその鼻先は真っすぐナザリックに向けられているし、ナザリックと蛇王龍の間にエ・ランテルがあったから消滅したに過ぎない。

 

「アルベドよ、外に出ていた戦力は全て帰還しているな?」

 

「はい、ほぼ全てが帰還しております」

 

 

「……よし、では今からナザリックの最優先目標にあの蛇の調査を指定する。何よりも知りたいのはその戦闘能力だ、お前ならばまずどうする?」

 

 アルベドはナザリックを統括する領域守護者の中でも特に頭脳面が優れている、戦術的思考は勿論のこと、戦略的な思考なども容易く行うことができた。

 

 一を説明すれば十から百まで理解する……尤も、妄信と同居している理解ではあるのだが。

 

「使い捨てのできるアンデット部隊をまずはぶつけましょう、相手の攻撃手段を引き出せますし、MPの消費も狙えます」

 

 アインズもそうではあるが、アルベドもまたユグドラシルの常識から抜け出ていないことにどちらも気が付いていないらしい。

 

 だがそれは仕方がないことでもある。結局、どれだけ優秀な設定でフレーバーテキストを付与したとしても、ユグドラシルの設定や法則以上の性能など出せないのだから。

 

 アルベドは間違いなく優秀なNPCではあるのだがどこまでいっても「ユグドラシルの世界観」の中でしか生きていないし、それ以上の思考など持ち合わせてはいない。

 

 

 だから、例え強敵であっても数や戦略や駆け引きでどうにかできるというユグドラシル的な結論を出してしまうのだろう。

 

 

 

「ふむ……そうだな、まずはその方針で行こうか。使い捨てのアンデットたちを地上に配置してあの蛇を迎撃する、平行してナザリックの第八層に最終防衛ラインを構築しろ、ルベドにガルガンチュア、ヴィクティム、ナザリックが運用できる戦力の全てを総動員するのだ」

 

「デミウルゴスと共有しておきましょう」

 

「そうだな、守護者たちもそれぞれ配置に付かせるのだ……相手はワールドエネミークラスの強敵であるが、ギルドでの防衛戦ならば十分に勝機はある、そうだろう?」

 

「流石はアインズ様、このような事態にも動じないその在り方、まさに絶対なる支配者のお姿かと」

 

「……そう、そうだな」

 

 アインズの思考の中には、いっそギルド武器とナザリックの資産やアイテムを纏めて全員で逃げ出すという選択肢もあるにはあった。やりたくはないし可能ならば避けたくもあるのだが、皆を失うよりはマシという判断である。

 

 ギルド武器やワールドアイテムがあれば幾らでも挽回はできるし、今ここで決戦に挑むよりは、もっと情報を集めてからでも良いのではという思いであったのだが、アルベドが、そしてナザリックの者たちが信じる理想の支配者を見る瞳が、その選択肢を遠ざけてしまったらしい。

 

 失いたくないのはナザリックの者たちからの信頼なのか、それともギルドそのものなのか、或いは意地なのか、アインズは答えが出せないまま戦いに挑むことになる。

 

「来たわね、ゴミ虫が……偉大なるナザリックを汚そうなんて、万死に値する……いいえ、決して殺さず素材の生産施設として一生飼ってあげましょう、さぞいいスクロールや武器が作れるでしょうね」

 

 

 アルベドとアインズは同時に小刻みな揺れを感じ取る、それは蛇王龍が蛇行することで生まれる地震であった。

 

 

「守護者たちはそれぞれ配置に付きなさい。まずはアンデット部隊をぶつけて相手のMPを消費させるわよ」

 

 メッセージの魔法で各方面にそう伝えるアルベドの言葉に従って、ナザリックは内包する全ての戦力を蛇王龍へ向けて戦いに挑むことになる。自分たちが敗北するなどと欠片も思っていないのは、アインズへの妄信とナザリックへの忠誠が故であるのだろう。

 

 

 これは栄光ある勝利をアインズへ捧げる為の過程、その為の戦い、誰もがそう信じて疑っていない。神を信じるように自分たちの力を疑っていないのだ……だがしかし。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 そもそも「世界観が違う」という事実に気が付いている者は、残念なことに一人もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蛇王龍にとってナザリックは蟻の巣であった。奥に膨大なエネルギーを内包した蟻の巣である。

 

 ほじくり返すには深く、侵入するには狭い、おまけに突けば大量の蟻が湧き出てきて邪魔をしてくる、そんな存在であったことだろう。

 

 法国と違って都市が広がっている訳でもないので、凶星で耕して邪魔する蟻を遠ざけることもできない。そう考えるとナザリックの地下へ地下へと広がる防衛思想は決して間違いではなかったのかもしれない。

 

 だがやはりと言うべきか「世界観の違い」はどうしようもなかった。

 

 

 深く狭い上に大量の蟻が出て来る巣穴を前にして蛇王龍がやったことは、強引に突っ込むのでも凶星を降らせることでもなく、この星との接続である。

 

 

 彼の下にある星という生命体、その血管とも言える龍脈へ感覚器官を伸ばして接続すると、彼はナザリックより更に深い位置――それこそ星の中心とも言えるエネルギーの塊から極一部を拝借して地上へと引っ張り上げたのだ。

 

 

 その結果どうなったかというのならば。

 

 

 ナザリックは星の中心から迸る巨大なエネルギーに押し上げられて、大地の隆起と共にギルドの全てが外へ押し出されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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