命の器の物語(ハイファンタジー・9,500字)   作:源公子

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白様、話終わる

 6. 豆蔵さんの最後

 

「中程も死んだか。今年は寒さが特にきつかったのに、今までよく持ったもんだ。ワシの弱虫のパートナーは、昨日死んだ。ワシは運が悪かった」

 

黒ちゃんはかっとなって、豆蔵さんに怒鳴った。

 

「なんてこと言うんだ! あんた一人の命を守るために、何人の大きなカップが死んだと思ってんだよ」

 

「それももう終わる。昨晩の冷えで、ワシの小さい体は冷え切ってしまった。そこにこの日差しだ、ワシもすぐに中程と同じ所へ行く。小さいからって生き延びられるとは限らんのさ」

 

「あんたのパートナー、あの人の名前を知ってたのか」

「いや。知ってたら、とっくにこの世から冬は消えとるよ。お前さんは、ワシが自分だけ生き延びることを望んで生きてきたとでも思ったのか? ああ、冬、冬、冬。それさえなければみんな死なずに済むものを。

 

 死ぬ苦しみが、生き残ってしまった苦しみにまさるとでも思うのか? 

 生き残ると言う事は、生きてる時間の全てが苦しみに変わることだ。

 それも冬ごとに自分のせいで死ぬカップが増える。

 ワシがもう少し大きければ、誰かの為に死んで罪滅ぼしもできように。

 去年会ったあの産まれたてのでかいカップも、おおかた小さく生まれたのが申し訳なくて、生まれ変わったんだろうよ。

 

 ああ中程がうらやましい。なんでこんなに小さく生まれてきたと、どれほど自分を呪ったことか。

 だからあの人の名前を探し続けた。

 誰も死ななくて良いように、冬を無くしてくれと願うために。

 

 だがそれも終わる、ワシももう死ぬ。ワシが生き残る為に死んでいった、大きなカップ達を無駄死にさせて。これが生き延びしまった小さなカップの最後よ。悔しい、口惜しい……」

 

 パチンと音を立てて、豆蔵さんは割れて、群青色の悲しげな心が天に帰っていった。

 

 

 

 7. 黒ちゃんの願い

 

「いやだー!」

 黒ちゃんが突然泣き出した。私、あの人が泣くのを見たの初めてだった。

 

「黒ちゃん、黒ちゃん」

 私も一緒に泣きだしだ。二人ともどこにも持っていけない悲しみで、体中が涙でいっぱいになり、上になっていた私の流れ出た涙が、黒ちゃんの中に流れ込んだの。その時突然、黒ちゃんが叫んだ。

 

「助けて――様」

 

 太陽が地上に落ちてきたのかと思った。そのくらい周り中に光が溢れてた。

『私の名を呼ぶのは誰だ? 願いがあるなら言ってみよ』

 光の真ん中から声がした。

 

 だから、黒ちゃんはこう言った。

「大きくても、小さくてもカップが冬に死なずに済むようにして」

 

『その願い叶えよう。だがそれは私の望む願いではない、残念だ』

 

 そう言うと光は消えて、突然すべての雪が融けて水になり、真ん中に集まって湖ができた。

 北の山が火を吹いて煙を出し、すごい勢いで、木が湖から始まってテーブルの世界の端っこまでびっしりと覆って行った。

 木と火の使い方は黒ちゃんの心に刻みつけられていた。

 

 そして私たちは今ここにいる。パートナーはそれ以来、『あの人の名前を探す、心が一緒の二人』と言う意味に変わったの」

 

 

 白様の話は終わった。

 

 

「ああもう夜が明けたわね。さぁ、木を切って薪を作りましょう。

 お城に行く時は私も一緒に行って、オオジロに謝ってあげる。

 私に取っ手を下げられたら、オオジロだって許さないわけにいかないわ。私は名付け親なんだから」

 

 白様は、黒様の似姿に向かって笑っていました。

「私には、まだやらなくてはならない仕事があるみたい。しばらくはあなたのところにはいけないわね」

 

「そうとも」

 

 黒様の返事が聞こえたように思ったのは、もちろん空耳なのでした。

 

 

 

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