赤と青が交わる場所   作:カブライニキ

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何回見ても日車さんの「もう一回だ」がカッコ良すぎる


第十八話 甘酸っぱい青春+デブ

 

(ドガァァァァァァァン!!!)

 

一つ目の爆発音が轟き、施設の弾薬庫が完全に破壊される。

察しのいい方ならもうわかったと思うが_______

 

 

「さっすがホシノさん!」

 

「うへへ、こっちも動きを合わせやすいから助かるよ〜」

 

言わずもがな羅衣とホシノである。

攻守を備えた耐久力の高いホシノが先陣を斬り、突破力と瞬間火力の鬼である羅衣が一気に突破する。

 

いつも執っている方法だからこそ2人の動きはシンクロレベルで揃う。

それもこれも2人が双方に絶対的な信頼をおいているからこその連携。

 

「穿血!」

 

「わっと...ごめんごめん。死角に目が行ってなったや〜。おじさんもそろそろ歳かなぁ」

 

「現役JKでしょーが!それに今のは対応できてるのがおかしいレベルでしょ!」

 

「あはは、嬉しいこと言ってくれるねぇ羅衣くんは。」

 

話しながらものすごいスピードで兵達を撹乱していく2人の動きを捉えられるものはここにはいない。

羅衣の動きをホシノがフォローし、ホシノの動きを羅衣がフォローする。

 

言葉にすれば簡単そうに見えるが、この行為には長い年月と、それこそ高い信頼を置かなければ実現は不可能の領域にある。

 

 

どんどん敵の包囲を突破していく2人を遮るように、爆炎が2人を包む。

 

 

だが、

 

 

「うへぇ〜危ない危ない〜」

「ここにもあったのか。クルセイダー14式戦車」

 

 

いかに戦車の主砲とは言ったものの、難攻不落とも言えるホシノの防御を突破することはない。

それに今は、後ろに先生(大切な人)がいるのだから。

 

 

「一気に俺が装甲を削るんで。ホシノさんは防御お願いします」

 

 

俺は掌に呪力と血を込め、薄く、そして鋭く形を変えていく。

 

「おっけ〜。じゃ、頼んだよ!」

 

羅衣の言葉を聴き、ホシノはそれを直ぐに行動に移す。

羅衣は右、ホシノは正面に突っ込み、散開する。

 

「私が耐えてる間に!」

 

ホシノの防弾盾にシールドが形成され、戦車の機関銃と主砲を全て受け止める。

 

ホシノ自身も感じているいい方向の“違和感“

 

 

(何だかいつもより体が軽い......これも先生のおかげかなぁ)

 

それが嬉しく、同時に少しの気恥ずかしさを覚える。

 

 

自分自身のポテンシャルがまるで200%まで上昇しているような感覚。

 

だがそれに不快感や不信感は無い。

あるのは謎の多幸感と羅衣が後ろにいてくれる安心感。

 

 

「『位相』 『空亹那』 『朱雀と夜明け』」

 

 

術式順転 最大出力

 

 

「『苅祓・<載>』!」

 

 

 

キヴォトスに来てから、俺の呪力は謎の力に押さえつけられるように出力も精度も低下した。

 

それこそ歌詩と証印を省略しない『最大出力』の苅祓でようやく戦車一台破壊できるくらい。

 

 

「まぁ、今回乗り切れたからいっか」

 

 

最大出力の苅祓が戦車を砲塔から真っ二つに分断し、戦車本体も爆発する。

 

 

『さ......作戦失敗!!撤退だ!撤退!』

 

「ほれほれ逃げないとあれみたいに真っ二つだぞ〜www」

 

 

はっはっは。愉快⭐︎愉快⭐︎

 

 

「先生ー、向こうも制圧したってさ」

 

「おお!さすがシロコさん達だ」

 

「なんてんたっておじさんの可愛い後輩だからねぇ〜」

 

「そして俺の可愛い生徒達でございます」

 

「ん〜?「私の」可愛い後輩だよ〜?」

 

「あれれぇ?「俺の」可愛い生徒ですよ?」

 

「「......まぁ「羅衣くん/ホシノさん」も可愛い「後輩/生徒」何だけどね/ですけどね」」

 

 

「......ぽっ」

 

「う、うへ......」

 

 

意外と言葉にしてみると気恥ずかしい。

まぁそこはお互い様だ。

 

「と、とりあえずいこっか......」

 

「......そすね」

 

ホシノと羅衣は無言で歩き始める。

 

何だかとんでもないことを簡単に言ってしまい、2人の間にいや〜な距離感が生まれる。

 

 

((いつもの俺/私じゃない!))

 

茶化し合うことはあっても純粋な好意を互いに伝えたことはなかった。

 

『ザザッ......こいつら結局何なの?』

 

 

ベストタイミングで通信が入ってきてくれて助かった。

流石にこのままの雰囲気を続けるのはかなり厳しい。

 

『ん、下手したら風紀委員会より面倒』

 

 

「アヤネさんも言ってましたけど、そのくらい統率されてるメンツなんでしょうね。心なしか戦車の装甲もいつも以上に硬かったような......どーぞ」

 

「昔の無線じゃ無いんだからどーぞまで言わなくていいんじゃない?」

 

「これは気分の問題なんです〜」

 

 

すっかり雰囲気もいつもの調子に戻り、2人は普段通りの感じに戻れた。

少なくとも表面上ではだが。

 

『何なのでしょう、この方達は.........それに、こんなところで一体何をしているんでしょうか?』

 

 

石油ボーリングでもない、それに乗じて希少な鉱石があるようにも見えない。

ではこいつらは......軍事企業がなぜこんなところに基地を?

 

いつもの如く思考は巡らないが、基本的によく無いことがあるような気がする。

 

「とりあえず一度帰って情報の整理を____」

 

 

『そ___ね____って_____!?』

 

 

撤退しようとしたまさにその時だった。

通信機に強いノイズが走り、セリカさん達の声が聞こえなくなる。

 

ありえない。

この通信機はクラフトチェンバーで作った。

つまりアロナが通信機に介入でき、基本的には通信が途切れることはない。

 

それこそ通信妨害(ジャミング)何かを受けなければ。

 

 

 

 

待て、何かがおかしい。

なぜカイザーはここまでの軍事力を持っていながらアビドスを攻略しようとしない?

 

ここもきっと本隊ではないだろう。

やり方もなぜか陰湿だ。

 

 

仮にアビドスの面々を狩りたいのならば、先に俺を潰せばいい。

だというのにこちらに充てられたのは戦車一台と歩兵のみ。

 

そこから導き出される答えは_______

 

 

『先生!大変です!さっきの部隊とは比べ物にもならないほどの戦力が......!』

 

「クソッ!!」

 

まずいまずいまずい!!

 

確かに俺たちは一手遅れた。

 

だからこそさっきの戦闘でその損失を取り返せたと妄信していた。

 

ここまで本隊の到着が早い......いや、最初から俺とホシノさんをみんなから引き剥がすのが目的か!

 

 

「アロナ!ここら一帯の通信設備と電子機器を全て破壊してくれ!」

 

『ダメです!さっきからやっているんですが、なぜか彼方側に干渉できなくて......!』

 

「ハッキング対策もバッチリってわけかよ!」

 

アロナのハッキング技術を防ぐなんて技術を、奴らは持っているのか?

 

「みんなの位置はわかるか?」

 

『それはばっちりです!』

「なら上々!」

 

最低でもみんなを連れて逃げ仰るくらいはできる。

 

「ホシノさん!」

 

「だいたいわかったよ!早く行こう!」

 

さっきまでの空気感は悪い方に一変し、緊張感が増幅されることが余儀なくされる。

 

自分の失態でみんなに何かあったら、悪い想像が脳裏を埋め尽くしていく。

 

ならば

 

"大人のカードを取り出す“

 

失態には、新しい成功で取り返すほかないのだ。

 

 

 

 

 

___________

 

 

 

「邪魔だァァァ!!」

 

 

術式順転・最大出力

 

 

“大人のカードを使う“

 

 

「『無下限・<蒼>』!!」

 

 

無下限呪術が生んだ無限の収束によって起こる青い、蒼い呪力の塊が羅衣の目の前を()()させていく。

 

 

「悪いけど今は君たちに構ってられないんだよね〜」

 

 

ホシノのショットガンも広範囲を散弾の集中砲火によって兵士たちを蜂の巣にしていく。

 

今の殺気立っている2人に触れる方が愚かと言えよう。

 

 

「アロナ、あとどれくらいだ!?」

 

『残り百メートルです!』

 

この会話も、実は50メートル毎に何回も聞いている。

それほど羅衣にとって対策委員会のみんなはかけがえのないものとなっていた。

 

 

「先生!」

 

大型のミサイルが2人に目掛けて飛来し、それを防ぐためホシノが再び堅牢な防護盾を展開する

 

「今はあれに構ってる暇でもないでしょ!」

 

 

今はあれを防いでいる時間すら惜しい。

 

俺は拍手のように手を打ちつけ、即時で血の塊を圧縮する。

 

 

「『百斂・穿血』!!」

 

初速は音速すら超える血液の弾丸がミサイルを貫き、爆ぜた。

 

いつもの羅衣ならここで『HAHAHA⭐︎汚ねぇ花火だ』なんてボケていたかもしれないが、こんな緊急事態にふざけるほど羅衣は馬鹿ではない。

 

 

「先生!見えたよ!!」

 

「ッ!!」

 

ホシノさんのいう通り多勢に無勢をなんとか切り抜ける4人の姿が見える。

アヤネさんのドローンやノノミさんの掃射で大多数を砕き、討ちこぼしをセリカさんとシロコさんが捉える。

 

味方ながら凄まじい戦闘能力だと思う。贔屓目なしに。

 

 

「伏せて!!」

 

 

今は全力で力を振う時だ。

 

 

みんなも俺の声に気付き、伏せるどころか戦闘によって形成された穴ボコに退避してくれた。

 

「話がわかる生徒で助かりますよ本当に!!」

 

 

『術式反転・赫』『術式順転・蒼』

 

 

 

 

 

“大人のカードを使う“

 

 

 

「『虚式・茈』」

 

 

 

親指と中指を二つ折りにした指を、デコピンの要領で_____弾く。

 

 

 

その瞬間、核融合のようにマイナス1と虚数がぶつかり合い、その呪力は茈に輝く。

 

無限の反発と、無限の収縮。

 

その衝突によって起こった()()()()()()()()()()()が直線的に空間ごと削り取って質量を押し出していく。

 

その光景は神秘的であり、逆に恐ろしい光景でもあった。

 

 

 

 

 

「まさに、大人のカード様様って感じだなぁ......俺の記憶にあるだけで技使えんだから」

 

だとしても流石に疲れた。

やっぱり六眼持ちじゃないと無駄な呪力の放出が多すぎる。

 

やっぱりあの馬鹿目隠しはバケモンだな。

こんなんをバスバス撃てんだから

 

 

「先生!大丈夫?」

 

1人で物思いに耽っていたところ、シロコさんが駆け寄ってきてくれる。

俺に心配してくれるなんてなんて優しいんだ。

きっと君はいいお嫁さんになるぞ

 

「とりあえず傷はないですけどへとへとですよ〜......」

 

「ん、お疲れ。ほら先生」

 

 

そう言ってシロコさんは俺に背を向けてしゃがみ込む。

 

「疲れてるだろうからおぶってあげるよ」

 

「あら⭐︎なら私も先生のことおんぶしたいです⭐︎」

 

「ノノミも疲れてる。休んで」

 

「私は元気いっぱいですよ⭐︎」

 

「隠さなくてもいい」

 

「シロコちゃんこそお疲れじゃないですか?」

 

「私は自転車で慣れてる」

 

 

さっきまで危機的状況だったというのにシロコとノノミは羅衣を取り合う。

 

 

 

逆にこれが平和か(錯乱)

 

 

「まぁまぁ先生。ここはおじさんがおぶったげるよ。」

 

ホシノも冗談半分に争奪戦にエントリー。

 

「......すんませんホシノさん......」

 

羅衣はそう言ってホシノに抱きついた。

 

大事なことだから2回言おう。

 

抱きついたのだ

 

 

「うへっ!?せ、先生!?お、おんぶだよー?おじさんもこの距離はちょーっと困っちゃうかなー......って寝てる?」

 

 

すでに二度の大人のカードの使用、さらには『茈』の使用による呪力の過剰酷使ですでに充電切れだった羅衣の意識は持つはずもなかった。

 

「ん、ホシノ先輩。先生は私が」

 

「流石に疲れてるみたいだからおじさんが背負うよ。こう見えても力は結構ある方だしさ」

 

流れるような手つきで羅衣を背負うホシノ。

 

「......それもそうだね。今は寝させてあげよう」

 

「先生も無敵ってわけじゃないのね」

 

 

セリカがホシノに背負われた羅衣のほっぺをムニムニとつつく。

 

「さっきのもきっと体を酷使することだったんでしょうね。」

 

「私たちのためにここまで頑張ってくれた。ここからは私たちで頑張ろう」

 

そう決意を固め、一度撤退しようと歩を進める。

 

 

 

 

_______が、

 

 

 

『標的を発見』

 

『再度作戦を開始する』

 

 

突然現れた大量のPMC兵が6人の行く道を塞ぐ。

 

 

「......絶体絶命?」

 

「包囲されちゃったかー......」

 

 

頼みの綱である先生を消費してしまった今、この状況を覆せるだけのカードは残っていなかった。

 

 

「あれは......」

 

 

軍用車とは思えぬほどにワックスが塗られた高級車が施設の道路を渡り、対策委員会の面々の前にとまる。

 

そこから大型のオートマタが扉を開けて登場する。

 

「侵入者とは聞いていたが......アビドスだったとは」

 

高級そうなスーツに身を包み、堂々とした面持ちでホシノたちに近づく。

 

「な、何よこいつ......」

 

先生とはまた違った「大人」の威圧感。

セリカが声を漏らすには十分であった。

 

(あいつは......)

 

 

「まさかここに来るとは思っていなかったが......まぁいい」

 

 

ホシノもまた、目の前の男と同じく先日のことを思い出していた。

 

 

 

___________

 

 

「生徒会長がいない今、副会長であるあなたが借金を返していく、ということでよろしいでしょうか?小鳥遊ホシノさん?」

 

 

全身を黒いスーツで包んだ細身の男が、不気味なマスクから目を覗かせる。

 

「それとも......私の()()を受け入れますか?」

 

___________

 

 

目の前にいた男こそ、「取引」の現場にいた男の1人であった。

 

細身の男とは、また違うようだが

 

 

「勝手に人の私有地に入り、暴れたことによるこれらの被害......」

 

「君たちの学校の借金に加えてもいいのだが、まぁ、対して額は変わらないな......」

 

その身の丈に合うように、大きな手振りで言葉を綴る。

 

「あんたは、あの時の......」

 

羅衣を背負ったホシノが、これまでにないほどの剣幕で男を睨む。

 

 

「確か、例の()()()()()が狙っていた生徒会長......いや、副会長だったか?」

 

 

(ゲマトリア......?......アロナ......)

 

『すみません先生。私も探したのですが、データベースに引っかかるものは一つも......』

 

 

呪力切れによって起こった羅衣の睡眠は、ピリついた空気を察知し邪魔されてしまう。

それでも夢うつつといったところだが。

 

「......ふむ、面白いアイデアが浮かんだ。便利屋やヘルメット団を雇うよりも良さそうだ。」

 

そう言いながら男はどこかに電話をかける。

 

 

「......お前は......誰だ......」

 

混濁した意識の中だが、目の前の男が何者なのかを把握する義務はある。

 

「......貴様が奴の言っていた「シャーレ」とかいう奴だったか......貴様が私のことを知らないとは驚きだな。」

 

薄々勘づいてはいる。

だがそれを裏付ける証拠がない

 

「だから聞いてる......」

 

 

「ふん......いくら御託を並べたところで所詮は『子供』か。」

 

そして男は仕方がないと言わんばかりにため息をつく。

 

「私は、カイザーコーポレーションの理事を勤めているものだ。」

 

 

『!!』

 

 

驚くのも無理はないだろう。

自分たちの生活を借金まみれにした黒幕が目の前にいるのだから

 

「そして君たち、アビドス高等学校が借金をしている相手でもある」

 

 

(偽装の可能性は?)

 

『それはありません。目の前にいるのはカイザー理事本人です』

 

 

 

アロナさんが言うなら間違いはないのだろう

つまりこいつは俺の目の前にノコノコやってきてくれたわけだ。

 

 

「では、古くから続くこの借金について、話し合いでもするとしようか」

 

 

 

見てろ。その丸々太った土手っ腹に風穴開けてやるよ

 




カイザー理事ってデブなのか筋肉質なのかわかんないですよね。

俺の中ではデブ判定ですけど。
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