赤と青が交わる場所   作:カブライニキ

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小説書くの楽しい。

自己満が形になっていくのだからなおさら


第十九話 負け戦(大人の戦い)

 

(カリカリ……)

 

静かな風紀委員会の執務室に紙の上にペンを走らせる音が響く。

 

「委員長、その......これはいつまで書けばいいのでしょうか......?」

 

反省文を何枚も書いている人物____先日問題を起こした天雨アコが対面に座っている風紀委員長の空崎ヒナに質問する。

反省文を書いてるのにまるで反省しているようには見えない。

 

「今二百枚くらいでしょ。自分で千枚書くって言ってなかった?」

 

「それはその、それくらい反省していますと言う比喩でして......」

 

委員長の前だったからって調子に乗った過去の自分を今は恨んだ。

尤も、反省文を書かされているのも自分の不始末のせいではあるのだが。

 

「口より手を動かして。」

 

キリッとした鋭い目がアコを貫く。

 

「が、頑張ります......」

 

 

そう言ってアコは再び書面に目を落とす。

果てしない作業だが、敬愛する委員長と2人っきりの時間を過ごせるのは案外楽しい。

 

 

「......そういえば」

 

ふと、先の戦いで気になっていたことを委員長にぶつけてみる。

 

「あのアビドスのホシノという方とは、お知り合いなのですか?」

 

 

「いや、実際に会ったのは初めて。」

 

 

小鳥遊ホシノ。

私も書面上では知っている。

 

ゲヘナ風紀委員会としても配慮すべき要注意人物。

 

のんびりとした目からはそんな雰囲気は欠片も感じなかった。

資料の写真から見ても別人か?と再度確認するほどだ。

 

「そうでしたか。どことなく、よく知っている方のように話されていたので......」

 

「......」

 

ヒナは軽く目を瞑る。

 

「......小鳥遊ホシノ。」

 

ヒナは、アコが見た書面からは得られない情報を語り始める。

 

 

「『天才』と呼ばれた本物のエリート。2年前の情報部の分析では、ゲヘナにとっての潜在脅威としてリストアップされていた。

ここまでは知ってるでしょ?」

 

「......はい。先日はそんな雰囲気は感じませんでしたが......」

 

 

やはり、もう一度思い出してみる。

 

「だいぶこう、のんびりした雰囲気と言いますか.........」

 

よく吐き出されるあくび、親しみやすそうな小柄な体躯。

 

常に眠そうな目。

 

とてもその情報を鵜呑みにできるかと言われれば、信じないだろう。

 

「アコ、外見で相手を判断するものじゃない。」

 

「.........でも確かに、2年前とは随分空気が違った。」

 

ヒナ自身も認めるほどに、ホシノの雰囲気はまるっきり変わっていた。

 

「元々は攻撃戦術を得意とした、かなり好戦的なタイプで、荒っぽくて、鋭い印象だったのだけれど」

 

 

短髪の桜色髪。敵意も隠していなかった。

 

 

____決定的なのは、あの目。

 

左右で分かれた青とオレンジのオッドアイ。

 

そこからは獲物を射殺さんとする眼光が常に発せられていたように感じた。

 

「......まぁそれはさておき、あの時あのまま戦っていたらきっと、いや、風紀委員会の大半が戦闘不能になったはず。アコ、あなたの早とちりでね。」

 

「それに加えて、あの場には「シャーレ」もいた。被害はそれ以上に深刻になっていたかもしれない」

 

 

そうだ。憂慮すべきは小鳥遊ホシノだけではない。

 

たった1人の戦力にイオリとチナツは叩き潰された。

 

それも傷を治癒されて。

 

 

「あの『先生』とやらも、もっと配慮すべき。」

 

 

あの戦いで魅せた不可思議な力。

 

 

本人は『術式』や『呪力』と言っていた。

 

それがなんなのかは確かめる術はないが、彼の戦闘能力が小鳥遊ホシノレベルで厄介なのは言わずもがなだろう。

 

 

「戦力の分析はしっかりと行ったはずだったのですが、そう言った情報は......」

 

「知らなかったのも無理はない。私だってあの力を見誤った。」

 

 

_____________

 

 

『不正解。「もう一回だ」』

 

 

_____________

 

 

あの時、純粋な火力勝負に持ち込まれていれば確実に負けていた。

 

 

 

「......シャーレはさておき、小鳥遊ホシノ......未だにアビドスを離れないで残っていたなんて......」

「一体何故?」

 

 

あの事件......生徒会長が死亡したあの日に退学したものだと思っていたものだけど

 

 

「おしゃべりはここまで。さっさと書き終えて仕事して。」

 

「.........はい」

 

 

 

_____________

 

 

 

場所は変わり、アビドス砂漠カイザーPMC基地に移る。

 

「アビドスが、借金をしている相手......」

 

 

「か、カイザーコーポレーションの.........」

 

 

巨大な機械の男............カイザーPMC理事は淡々と自己紹介を始める。

 

「正確に紹介すると、カイザーコーポーレーション、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事だ。」

「今はカイザーPMCの代表取締役も務めている。」

 

 

「それはどうでもいいけど、要はあなたがアビドス高校を騙して、搾取した張本人ってことでいい?」

 

 

いや、それは認めないだろう。

こいつが行ってきた契約や商売は全て合法(リーガル)のものなのだから。

 

「......ほう」

 

 

「惚けるつもりなら、撃つ。」

 

 

「はっはっは......シャーレ。随分と威勢のいい生徒ではないか。まるで主人にすら噛み付く狂犬と言ったところか?」

 

おっとこいつは許せん。シロコさんは犬ではなく狼だ。

 

 

「私の主人はあなたじゃなくて先生。噛み付く相手はあなたであってる」

 

「そうよ!ヘルメット団と便利屋を仕向けて、ここまで私たちをずっと苦しませて来た犯人があんたってことなんでしょ!?」

 

セリカさんも我慢できなくなったように理事に指を刺しながら叫ぶ。

 

「ふむ......?」

 

理事はまるで心当たりなどどこにもないように小首をかしげる。

 

その様子にまたセリカさんが言葉を投げつけようとするが、

 

「セリカさん......シロコさん......下がって......」

 

セリカさんの言葉を遮り、俺は意識を無理やり覚醒させる。

 

体がとても重いが、呪力はかなり回復した。

 

 

俺はゆっくりとホシノさんの背から降りる。

流石に生徒におぶられながらでは格好がつかない。

 

「こっからは俺話します」

 

一歩。また一歩と理事に近づく。

 

「随分と眠そうだな。ほら、手を貸してやろう。」

 

わざとらしく手を差しのべる理事の手を無視し、そのまま話し始める

 

 

「連邦生徒会所属。連邦捜査部(シャーレ)部長兼担当顧問の鏑林羅衣だ。」

 

結構長い名前だが、なんとか噛まずにいえたぜ

 

「ああ。『大人』同士の挨拶がまだだったな。カイザーPMC代表取締役の理事だ。挨拶はこれくらいでいいだろう」

 

「......先に聞いておくが、ここから生徒に危害を加える気は?」

 

「ビジネスの相手を傷物にしてどうする。我々は戦いに来たわけではない」

 

ならよし。

こいつも一応仕事人としては優秀な人間のようだ。

 

「では問おうシャーレ。貴様の生徒が勝手に私有地へと侵入し、善良なる我がPMC職員たちを攻撃し、施設を散々破壊したことに何か異論はあるか?」

 

「ない。損害賠償が欲しいのならここで準備してもいいが?」

 

「くくっ......いや、こちらとしても面白みを感じていたところだ。だが、その生徒たちには口の聞き方に気をつけさせろ。ここはカイザーPMCが合法的に事業を営んでいる場所。まず君たちは今、企業の私有地に対し不法侵入をしているということを理解すべきだ。」

 

羅衣に語るとは打って変わり、生徒には説き伏せるように語り出す。

 

 

「っ......!」

 

今にも飛び出しそうなセリカさんとシロコさんの前に腕を出す。

今こいつが言っていることはなんらおかしなものはない。

 

「さて、話を戻そうか。アビドス自治区の土地だった、か。確かに買ったとも」

 

「ああ。お前達は合法。そしてルールの範疇での商売を行なった。」

 

「その通り。記録もしっかりと存在している。」

「まるで私たちが不法な行為をしているかのような言い方はやめてもらおうか。わざわざ挑発をしに来たわけではないのだろう?」

 

神経を逆撫でするような口調、そして声でアビドスの面々を煽る。

 

なるほど。人心掌握はお手のもんってか。

 

 

「単刀直入に聞く。お前達はこんなところでいったい何をしている?そしてなぜこんな辺境の土地を買い占めた?」

 

それもまるで詐欺のような方法で

 

 

「......貴様はこの砂漠に『宝物』が埋められているという話を信じるか?」

 

 

「宝物......?」

 

まるで子供のようなことを言い出す理事に俺は少し困惑する。

 

「そんなでまかせ、信じるわけないでしょ!!」

 

「それはそう。もしそうだとすると、このPMCの兵力について説明がつかない」

 

2人は前に出つつ、ふらついていた俺の体を支えてくれる。

 

 

「ありがとうございます......」

 

「ん。」

 

「気にしないで」

 

 

結構SUN値が削られてたから助かる......

 

 

「言い訳、じゃないんだろ。この兵力はアビドスを制圧するための兵力か?」

 

 

それも違うだろう。俺を入れたとしてもこの兵力を投入するメリットが浮かばない

 

 

「......数百両もの戦車、数百名もの選ばれし兵士たち。数百トンもの火薬に弾薬。たった5人しかいない学校のために、これほどの用意をするとでも?」

 

「だろうな。この兵力は大方俺たち以外の企業、それか集団に対するものだろう?」

 

「......貴様は勘が良い。いや、頭が足りているというのか。その通りだシャーレ。君たち程度、いつでも、どうとでもできるのだよ......例えばそう、こんなふうにな」

 

 

スッ、っと静かに理事は掛けていた電話に耳を当てる。

 

「......私だ......そうだ、進めろ」

 

 

「な、なに?急に電話......それに「進めろ」って、なんのこと?」

 

 

電話を耳から離し、再び口を開く理事。

 

「残念なお知らせだ。どうやら、君たちの学校の信用が落ちてしまったそうだよ」

 

 

わざとらしく、そして他者を苛立たせるような口調で、または子供に語りかけるように理事は言葉を放っていく。

 

 

不意にアヤネさんの携帯が鳴る。

 

 

「えっと......もしもし」

 

『こちらカイザーローンです。現時点をもちまして、アビドスの信用評価を最低ランクに下げさせていただきます』

 

 

「!!?」

 

『変動金利を3000%上昇させる形で調整。それらを諸々適用した上で、来月以降の利子の金額は9130万円でございます』

『それでは引き続き、期限までにお支払いをお願いいたします』

 

「はい!?ちょ、ちょっとそんな急にどうして......!?」

 

一方的に掛けられた電話は、また一方的に切られる。

 

 

......なるほど、そうきたか

 

 

「きゅ、9000万!?」

 

 

「......くっくっく」

 

まさに悪役と言ったような笑いを出す理事。

 

「これでわかったかな?君たちの首にかけられた紐が今、誰の手にあるのか」

 

 

「......」

 

「ちょ、嘘でしょ!?本気で言ってんの!?」

 

「......」

 

シロコさんはただ何も言わずに理事を睨みつけ、対照的にセリカさんは動揺と焦りを隠しきれない。

 

 

「そうだな、九億円の借金に対する補償金でも貰っておくとしよう。一週間以内に、我がカイザーローンに三億円を信託してもらおうか」

「この利率でも借金返済ができるということを、証明してもらわねばな」

 

「そんな......!」

 

 

「どうした?また先生に支払って貰えばいいではないか。子供は大人に頼るものだぞ?」

 

理事はいい聞かせるように穏やかな口調で話す。

 

 

「それか、学校を諦めてさったらどうだ?自主退学でもして、転校すればいい。それで全て解決するだろう。ここにはシャーレもいるのだから容易いだろう?そもそも君たち個人の借金ではない。」

「学校が責任を取るべきお金だ。何も君たちが進んで背負う必要はないのではないか?」

 

 

「そ、そんなことできるわけないじゃないですか!」

 

「そうよ!私たちの学校なんだから!!見捨てられるわけないでしょ!」

 

「アビドスは私たちの学校で、私たちの街。」

 

 

「ならば、どうする?他に何か、いい手でも?」

 

 

そう問われれば、言い返すこともできないだろう。

 

 

「......みんな、帰ろう」

 

 

ついに痺れを切らし、口を閉じていたホシノが諦めたように口を開く。

 

 

 

「ホシノ先輩......!?」

 

「......これ以上ここで言い争っていても意味がない。弄ばれるだけ。」

 

 

 

___ただ静かに、ただ冷静に。

アビドスの副会長として全員に退避命令を出しているのだ。

 

「ほう......副生徒会長、流石に君は賢そうだな」

「......ああ、思い出したよ。賢そうな君と一緒にいた、全くもってバカな生徒会長のこともな」

 

 

ピクリとホシノの肩が揺れた。

 

無言を貫いてはいるが、やるせない怒りが態度から浮かんでいる。

 

最初から全てカイザーの術中の中。

ここに来たことすら後悔を覚え、その場を立ち去ろうとするホシノ____

 

 

 

 

 

 

その手を、『大人』が掴んだ。

 

 

 

 

「帰る必要はないですよ」

 

「......羅衣くんもさ、私たちを助けようとしてくれるのは嬉しいけど、これ以上は____」

 

 

「カイザー。お前は今言ったな?金利を3000%上昇させると。」

 

 

ホシノの言葉を無理に遮る。

 

「?ああ言ったさ。それがどうかしたのか?」

 

外部への連絡。

それすなわち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アロナの介入を許したということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(プルルルル、プルルルル)

 

 

「どうした?電話、鳴ってるぞ?」

 

「......」

 

 

わざとらしく。そしていつもは見せないような笑みを見せる羅衣。

 

 

「......なんだ。」

 

理事は静かに電話を取る。

 

「は?いや、なんの冗談だ......違う!待て!話はまだ............」

 

 

慌てた声で電話に訴える理事だが、その電話は理事の声を無視して切れてしまう。

 

 

「どうかしたのか理事長殿?いや、今はカイザー営業部長様と言った方が良かったっすか?」

 

 

「えっ!?」

 

「......どういうこと?」

 

突然訳のわからない事を言い出す羅衣に困惑の声を上げる2人。

 

だが今は俺と奴の戦いだ。

 

 

「貴様ッ!いったい何をした!?」

 

 

「簡単なことです。アンタを理事のポジションから追い出した。さっきのネタを使ってね。」

 

 

俺はシッテムの箱を取り出し、それをひけらかす。

 

 

シナリオはこうだ。

 

理事がアビドスをあと一歩で侵略できると確信した瞬間。そこに必ず隙が生まれる。今回でいえば銀行に信用を落とさせたまではセーフだったが、その後に預託をせかしたのが不正解だったな。

 

そしてそのネタを使い本社に揺さぶりをかけるだけで完成だ。

 

 

 

 

.........まぁほとんどアロナの、いや、全部アロナの考えだけどさ。

 

 

「はははははははは!!まさか自分から尻尾を出してくれるとは思いもしなかったよ!まぁどれもこれも優秀なハッカーがいてくれたのが良かった。」

 

煽れ。再びやつが尻尾を出すまで

 

 

「シャーレッ!!貴様ァァァァァ!」

 

「デケェ声出さなくても聞こえてるよォォォ!カイザーァァァ!!」

 

 

ははは。怒った怒った

 

 

「あ、あと」

 

その瞬間周りのPMC兵が()()に向かって銃を向ける。

ヘリや戦車も例外なく。

 

 

「その代わりと言ってはなんだけど。俺が代わりに理事やってあげるから。」

 

「っ!?」

 

 

流石の理事もさっきまでの味方に銃を向けられるとなれば、流石にその余裕たっぷりの顔も動揺で歪む。

 

まぁ機械だから表情ないんだけどね!

 

 

「てことで!さいなら!」

 

俺は陽気に片手を振り、2人に肩を借りながら基地を後にする。

 

 

「ち.........畜生がァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

前理事の魂の叫びが聞こえた気がしたが、多分気のせい気のせい。

 

 

これにて、最低(俺が)の戦いが終わったのであった。

 





はい。羅衣くんのキヴォトス生最低(羅衣くんが)の戦いはこれにて幕を閉じました。

ですが、それによってアビドスの生徒が全て救われたわけじゃないのを羅衣くんはわかってるんでしょうかね?

そろそろ番外編も出したい欲が爆発しそうです助けてください
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