こっからは俺の主観がどんどこ入っていくので、気に入らなければ俺の分身を置いておくのでそれにどうぞ。
「せ、先生って普通にすごい人だったんだ......」
「まさかあんなにあっけなく理事を倒すなんて思わなかった。」
砂漠からの帰り道、羅衣に肩を貸した2人はさっきまでの出来事を反芻できずにふわふわとした感覚を持っていた。
それはそうだ。自分たちを長年苦しめていた問題をああもあっけなく解決するとは夢にも思っていなかったのだから。
「私もすっごくびっくりしました!先生の口調が変わったところとかカッコよかったですよ⭐︎」
「なんだか呆気なすぎて気持ちの整理がつきませんね......」
各々の感想は様々だが、『大人』としての羅衣を目の当たりにし、その光景に圧倒されたのは共通のようだ。
「.........羅衣くん、ありがとう。私は怖くて逃げることしか頭になかったよ。なのに羅衣くんはあんなに堂々と____」
「.........こ、怖かったァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「.........うへ?」
突然緊張の意図が弾けたのか、羅衣が砂漠のど真ん中で大声を上げる。
「本当にあいつでっかいし!演技バレてたらどうしようかと気が気でなかったですよ!!そもそも俺だってまだガキなんですからもうちょい手加減してくれてもよかっただろあのデブ!!」
突然いつもの調子で騒ぎ出す羅衣にみんなはさっきとは別の意味で困惑を浮かべる。
「えっと......つまり」
「ん。さっきのは演技だった。」
「やっぱシロコさんにはバレてましたか......」
「うん。くっついてたら手の震えくらいわかる。」
「えっ!?私は全然気づかなかったけど......」
「セリカはまだ未熟だから。私は先生のことならほとんど知ってる。」
「まぁ五日間一緒に徹夜した仲ですしね」
「......な、なんか敗北感......」
羅衣もすっかりいつもの調子を取り戻し、軽く疲れたような表情を浮かべる。
「......えっと......とりあえずありがとね羅衣くん。」
「逆に俺にできるのはこれくらいしかないんで......」
「そんなことないです!この状況を打開してくれたのは先生なんです!」
「はい⭐︎そんなに自己評価低くなくていいんですよ?」
2人は羅衣を持ち上げ始める。
「先生は私たちが奪われたものをすべて取り戻してくれた。本当にありがとう」
「そうよ!よくわかんないけど私たちを約束通り助けてくれたじゃない!」
「そうだねぇ。おじさんもイライラしてたから羅衣くんが代弁してくれてすっごくスッキリしたよ〜」
「......そっすね。俺も必死こいて演技した甲斐があるってもんですよ」
さっきまでの獰猛な笑みとは裏腹に、羅衣の年に合った可愛らしい笑顔をシロコたちに向ける羅衣。
「......先生。その顔は私だけに見せた方がいい。何処の馬の骨かも知らない女に食べられる。」
「へ?」
「うへ......先生って結構鈍感だよねぇ」
「それは同感。」
「なんでですの」
その後、誰が羅衣をおぶっていくかで再度揉め、結局ホシノが背負うことに決まったのであった。
(これで。全部終わったのかな......)
だが、ホシノの胸中には不安と疑念がこびりついたまま。
それはまた、羅衣も同じ。
________________
「初めまして、と言った方がいいでしょうか。『先生』」
「......なんだお前」
いつもの散歩がてらのパトロールでアビドスの街並みを歩いていると、なんか気持ち悪いやつに声かけられた。
敵意はないが、こちらを探るような嫌な視線がまとわりつく。
「おいこらまず名を名乗れやまっくろくろすけ」
「これは失礼しました。私は『黒服』。元来の名ではないのですが、とてもユーモラスで気に入っている字名でしてね」
「わかった。まっくろくろすけ。ところでジブリ作品からはみ出たやつが俺になんの要だ?」
悪いけどこっちを研究品扱いするやつに対する礼儀は持ち合わせていない。
パッと見なんかを研究してる研究者ってところか。
白衣も着ていないし、そんな風貌でもないのに俺は奴を『研究者』と判断した。
「......自己紹介は結構です。私はあなたのことをよく知っているのでね。.........連邦生徒会長が呼び出した不可解な存在。」
「あのオーパーツ「シッテムの箱」の主人であり、連邦捜査部......それかカイザーPMC理事、と言った方がよかったですかね?」
「俺のストーカーかなんかか?」
「くくっ......そうかもしれませんね.........立ち話もなんです。こちらへどうぞ。」
「俺友達から変なやつについて行くなって言われてるから帰るね」
そう言って俺はその男に背を向ける。
なんとなく、あいつに関わると碌なことが起こらないような気がする。
「小鳥遊ホシノ。」
その男の口から吐き出された名は、俺が今1番気になっている問題だった。
だから、反応を示してしまった。
_____________
『これって......』
『ん、全部ホシノ先輩の字。』
シロコさんが机に広げたのは、ホシノさん直筆の退学届だった。
『......ホシノ先輩が何を考えてるのかは、私にもわからない。カバンを漁ったのも、多分バレてる』
わからなかった。
あのホシノさんが?
おっとりとした雰囲気で場を和ませてくれるホシノさんが?
みんなのまとめ役のホシノさんが?
『......様子を、見ましょう』
______________
だからこそ......いや、これは言い訳にしかならない。
俺は黒服の男について行った。
「あなたを過小評価するものもいるようですが、私たちは違います」
黒服は事務所のような部屋のデスクに腰掛けると、そんなことを言い出した。
「......まず、はっきりさせておきましょう」
「何をだ?」
「私たちがあなたと対立するつもりはないということをです」
意外な言葉だった。
てっきり俺のことを狙っているかなんかだと思い込んでいたが、そうではないらしい。
「むしろ協力したいと考えています。」
「協力?」
「そう。私たちの計画において、いちばんの障壁になりうるのはあなただと考えているのです。」
黒服は続け様に言葉を結ぶ。
「あなたが行使する不可解な力......そして全てを塗り替えてしまうほどの『カード』......」
まずいな、
「私たちにとってアビドスなんて小さな学校は、全くもって大した問題ではありません。ですが先生、あなたの存在は決して些事とは言い難い。敵対することだけはできるだけ避けたいのですよ。」
「......まっくろくろすけ、お前らは一体何者だ?」
こいつが何を企んでいるのかはわからん。だがこいつの他にも厄介な奴らがいるってことはわかった。
まずは情報を仕入れなければ何も始まらない。
「......おっと、そういえば本格的な自己紹介をしていませんでしたね。」
「私たちはあなたと同じ、キヴォトスの外部のもの......ですが、あなたとはまた違った領域の存在です......」
「ですから_____」
「そう殺気立つのは早計ですよ」
こいつはどこまで知っている?
俺がキヴォトス外の人間であることも知られている。
多分だが、俺の出自についても知っているだろう。
戦闘準備は、しておいた方が良さそうだ。
「私たちは観測者であり、探究者であり、あなたが思う通り、研究者......名を『ゲマトリア』と名乗っております」
「......」
俺は静かに呪力を練り、黒服を睨み続ける。
「あなたと同じ、「
『先生、危険です。』
(わかってるよ)
頭の中に、アロナの声が響く。
「つまり、俺を仲間に引き入れるために、接触を図ったってところか」
「その通り。どうですか?
「はっきり言うぞ。お前らと手を組むつもりは微塵もない」
俺は正面切って黒服の提案を突っぱねる。
「......左様ですか......」
黒服は残念そうに肩を落とし、背もたれにもたれかかる。
「真理と秘義を手に入れられるこの提案を蹴ってまで、あなたはキヴォトスで何を追求するつもりなのですか?」
「......知りたいだけだ。」
俺は黒服に背を向ける。
「一体何を?」
扉を開け、黒服に向き直る。
「俺がここにいる理由を。」
「......クックック......そうでしたか......」
「それと」
扉に手をかけながら、黒服に顔を向けずに話す。
「ホシノさんに何かしたら、殺すだけじゃすまねぇぞ」
「......心に留めておきましょう.........先生。『私たちも』あなたを見ていることを、お忘れなく。」
「.........」
黒服の言葉を聞き流し、俺は事務室を出た。
「......小鳥遊ホシノさんの件については、もう手遅れでしょうが」
羅衣くん小話 『ァ麌◽️●ェ』
「______に_____移植して_____」
「妹の方は_________それで」
「死なせるわけにはいかない」
「………生きて________」