赤と青が交わる場所   作:カブライニキ

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第二十二話 万全を期す

 

座標が割れました。場所は____」

 

 

アビドス砂漠。

 

 

「随分遠くに連れ去られたわね.........」

 

シッテムの箱の画面を教室のモニターにミラーリングし、アロナが割り出してくれたホシノさんの場所をマッピングする。

 

なんでまだ教室にいるのかというと、アヤネさんにバチコリ怒られたからだ。

 

さっきまでもうイケイケムードだったのにアヤネさんが『なんの準備もなしに特攻を仕掛ける人がどこにいますか!!』ってさ。

 

なので今は準備の時間。

時間があるかと言われれば、ない。

だからこそ入念に準備し、完全試合(パーフェクトゲーム)で勝利しなければならない。

 

「多分ですけど、今回はカイザーじゃなくて砂漠のオートマタとかドローン、無人兵器が俺たちに攻撃を集中させるはずです」

 

「......数が多いね。」

 

 

モニターにアロナがリアルタイムで敵の数を表示してくれる。

 

「それにホシノ先輩に近づけば近づくほど密度も大きいですね。どうやっても私たちをホシノ先輩に近づけないつもりでしょうか......」

 

 

この量を片付けながら行くといえば、一部でも骨が折れるだろう。

 

俺の領域だってここまでの範囲を掃討できるほど万能ではない。

 

「なので、今回はゲヘナ風紀委員会と便利屋68(シックスティーエイト)に協力を要請します。」

 

横でアヤネさんが補足を追加してくれる。

流石に1人で説明するには俺の説明力が足らなすぎる。

 

「プラス、これです」

 

俺は腰にかけていたメカニカルな剣を手に取り、みんなに見せる。

 

「それは?」

 

 

「ミレニアムサイエンススクールのエンジニア部に依頼し、俺の知識をもとに制作してもらった『ビートクローザ』と言う武器です。」

 

ミレニアムまで行くのは骨が折れたが、その代わりに俺がずっと憧れていた特撮の武器を作って貰えたのだからOKだ。

 

「正式には広範囲制圧剣戟型高周波ブレードと言いますここは俺のロマンテストに出るのでしっかり覚えておいてください」

 

やっぱりクソ長い名前の武器はロマンに溢れているな。

 

 

「こいつで俺がいつもみたいに突破口を開き、そっからは時間勝負。」

 

「ホシノ先輩の囚われている場所はパスコードが一定時間で切り替わる仕様で、再び先生がハッキングで調べられるのは24時間後......」

 

「それまでに、ホシノさんを助け出します。」

 

 

作戦概要をざっと話す。

意外と情報量が多いが、これが1番の最善策。

 

つまり、脳筋ゴリ押し戦法こそ最強。

 

 

「.........わかった。私たちは何をすればいい?」

 

書類に目を通したシロコさんが妙に据わった目で質問してくる。

やったねホシノさん。説教役が1人増えたよ!

 

 

「シロコさん達に頼みたいのは、斥候です。」

 

「斥候?私たちが建物に入るんじゃなくて?」

 

「そうですよ。人数が多い方がいいんじゃ.........」

 

確かに今回は団体戦だ。

建物の中に突入するとしても、人数は多い方がいいだろう。

 

 

「今回は俺も全力で行きます。俺が使う『領域展開』は確かに強力ですが、効果範囲が広いせいで最大出力を出した時に皆さんも巻き込んでしまうんですよね.........」

 

 

俺の領域展開 『血華領獄』は効果範囲内を無差別に『穿血』と『苅祓』が降り注ぎ、酸素を使用してあらゆる物体を『錆びさせる』と言う効果を持っている。

一応効果対象を決めることもできるが、それは最大2人が限界。

 

 

それを鑑みた上で、万全を期す作戦を、アロナが考えてくれた。

 

 

「そして、地図からもわかる通り、ブロックを東西南北で分け、その各所を制圧するのがゴールです。」

 

モニターに映っていた地図が四つのブロックに分けられる。

 

「つまり今回の作戦は、先生がホシノ先輩を助けに行く......と言うことですね?」

 

「YES!皆さんには申し訳ないですけど、ホシノさんは俺が必ず助けます。」

 

普通ならみんなも連れて行きたいが、今回ばかりは俺も『先生』としての俺でいく。

 

「決まりね!それじゃあホシノ先輩を助けに行くわよ!!」

 

セリカさんの一声をきっかけに、みんなは席を立つ。

 

 

 

「じゃあ俺は便利屋とゲヘナに行ってきます。みんなは準備を」

 

『了解!』

 

 

 

もどかしいが、今はホシノさんを助けることだけを考えよう。

 

__________

 

 

 

_____暗い。

 

____闇い。

 

 

冷たい。

 

 

『この世界とはまた違った複雑に絡まった『神秘』......いえ......彼の世界では『呪い』と言った方がわかりやすいでしょうか』

 

 

あの時の会話が、私の頭に響く。

 

 

『っ......!!先生に何をするつもりだ!!』

 

『クックック.........私は彼に興味を持ったのですよ。あの不可思議な力.........そしてそれはあなた方の『神秘』と対を成す存在.........これほどに興味深い研究対象はありませんよ.........』

 

 

質問に対しての返答がなっていない。

あいつは何を考えている?

 

羅衣くんに何をするつもりだ?

 

わからない。

 

こいつの考えが。

 

 

『それこそ......『暁のホルス』......キヴォトス最高の神秘を保有したあなたを諦めてもいいほどに......』

 

 

思えばあの時にはもう鎌をかけられていたのかもしれない。

 

 

『.........どうです?私と契約を結びませんか?『暁のホルス』であるあなたが、私の実験に協力するか......それとも......』

 

『すべてはあなたの選択次第ですよ?』

 

 

 

......これでいい.........全部私が選んだことだ。

 

 

そうは思っても________

 

 

 

「.........やっぱり.........寒いなぁ.........」

 

 

みんなに相談すれば何か選択肢が増えたかもしれない。

 

なのに私は一言もなしにみんなの前から消えた。

 

 

先生の手紙に、あんなことを書いた。

 

「はは.........めんどくさい女だなぁ......私は.........」

 

 

 

これからどれくらい、生きるんだろう。

 

これからどれくらいで、死ぬんだろう。

 

 

考えても考えても止まない静寂が、肌を指すように痛かった。

 

 

_________

 

 

 

「はぁ?風紀委員長に会いたい?ゲヘナの風紀委員長に、そんなに容易く会えるとでも思ってるのか?」

 

「おうおうあんた柴大将の店吹っ飛ばしたこと俺まだ覚えてんもごご」

 

「大きい声でそう言うことをいうなバカ!!」

 

なんでだ。イオリさんに当たり前のことを言ったら口を塞がれたぞ。

これが圧政ってやつか。さすがイオリさん汚い。

 

 

「はぁ......そうだな......そんなに言うなら、土下座して私の足でも舐めたら.........」

 

「キッショ。」

 

「こっ......こいつ......!」

 

 

おっとすみませんキッショと出てしまいました。

 

 

「足を舐めろとか、性犯罪者かな?」

 

「なんなんだよお前!私だけにきつく当たりすぎじゃないか!?」

 

「だって俺嫌いな人はとことん嫌いだから......」

 

「先生としての義務とか責任とか無いのか!?」

 

「そんなものはない」

 

 

俺は結構根にもつタイプなんだ。

 

 

「なんだか楽しそうね?」

 

お、委員長さんのご登場だ。

なんか疲れてそうだし目元のクマも酷いが大丈夫だろうか。

 

「い、委員長......?」

 

「私に会いたいならアポでも取ってくればいくらでも会えるでしょう?」

 

 

「あいにくそんな時間もなくて......」

 

「......事情はわからないけど。言ってみて、私に何をして欲しい?」

 

 

小柄な体躯から放たれる。『最強』の風格。

 

でも俺はそれがハリボテの上に立っているように見えてならない。

 

 

「単刀直入に言います。委員長さんに協力を申し出たい。」

 

「そう。具体的には?」

 

「砂漠のゴミ掃除......とでも言っておきますかね。」

 

 

委員長さんは俺の話を頷きながら聞いてくれた。

 

「ごめんなさい先生。こう見えても私は今忙しいの。風紀委員の戦力を『シャーレ』に貸し出すくらいはできるからそれじゃダメ?」

 

「ん“〜......正確にはそれで大丈夫なんですけど.........俺はどちらかと言うと委員長さん自身に俺を知ってもらいたくて......」

 

「......どう言うこと?」

 

俺は後頭部をかきながら理由を説明する。

 

ほとんどアロナのかんぺだけど。

 

「詰まるところ委員長さんに借しを作りたいんですよ。」

 

「私に借りを作らせたいわけじゃなくて?」

 

ヒナは目の前の男が何を言っているのかわからない。

 

シャーレのポジションからしたら私に借りを作らせたいはず。

なのに自分が借りを作りたい?

 

普通の取引でもこんなことをする者はいないだろう。

 

 

「俺が今回風紀委員会に力を借りたっていう事実も取れますし、今度は委員長さんが俺をどっかのタイミングで使える。」

 

「つまり先生は私との相互協力の形に落ち着かせたいってことね。」

 

「そゆことです。」

 

 

交渉としては上々。

 

 

だが、

 

 

 

「足りないですよね?」

 

 

ギブに対してテイクが成り立たない取引はもはや交渉でもないってアロナが言ってた!

 

ここは俺の貯金全部崩すレベルで覚悟決めないと。

 

「指と頭。どっちがいいですか?」

 

 

(なんかこいつめっちゃ恐ろしいこと言い出したぞ!?)

 

イオリはもはや羅衣を異常者を見るような目で見始めた。

 

実際異常者に近いことをしてるんだから仕方ない。コラテラルダメージってやつさ(間違い)

 

 

「......はぁ......わかったわ先生。私の降参。風紀委員長空崎ヒナの名の下に、連邦捜査部シャーレとの相互協調関係を築くことを約束するわ。」

 

 

「え?いいんすか?」

 

「先生が生徒にそんなに気を張らなくていい。」

 

「あんま距離感わかってないんすよね......」

 

近すぎると嫌われるだろうし、遠すぎると先生として冷たく感じるだろう。

結構板挟みなんだよね。俺

 

 

「じゃあ俺はこれで!」

 

「ええ。気をつけて。」

 

結構重要なことしたらしいけど今はとにかく時間が惜しい。後日またわらび餅でも持ってお詫びにこよう。

 

 

 

 

「空崎さん!ちゃんと睡眠は取ってくださいね!きつかったらいつでも呼んでください!!」

 

 

「えっ?あ、ちょっと____」

 

 

引き止めようとしたが、彼はものすごいスピードで行ってしまった。

 

......空崎さん、か。

 

 

案外悪い響きでもないかもしれない。

 

 

________

 

 

 

「おっしゃぁ!!いくらでも食っていいですよ!大将!餃子追加でェ!!」

 

「あいよ!」

 

アビドス郊外の街並みの中、屋台として蘇った新生柴関ラーメンで声が響いた。

 

 

「こ、こんなに食べていいんですか?私なんかが.........」

 

「ほらほら!この前のお礼も含めてるんでジャンっジャン食べてくださいね!ハルカさんも遠慮しないで!」

 

「そうだよハルカ〜。せっかく先生がこんなに奢ってくれるんだから食べなきゃ損だよ?」

 

「え、えっとじゃあもう一回替え玉を......」

 

「ね、ねぇ先生!味付けたまごもう一回トッピングしていいかしら?」

 

「ああ!おかわりもあるぞ!!」

 

「じゃあ、私もうずらの卵と海苔を......」

 

「私は炒飯追加で〜!」

 

 

________

 

 

「ではこれより食べた分働いてもらう!!」

 

「な、なんですってェェェェェェェェェ!!?」

 

「だろうと思ったけどさ......」

 

「遠慮しないで食べてよかった〜⭐︎」

 

 

新しく開店した柴関屋台で便利屋のみんなをご馳走し、そのお礼に働いて貰おうかぐへへ

 

 

「もちろん依頼料はしっかり払いますよ。相場の五倍ほど......」

 

「その依頼、受けるわ。」

 

うん、陸八魔社長がチョロインで安心した。

 

 

「社長、ちゃんと考えたほうが良い。」

 

「わ、私はアル様のなさりたいことのお供をさせていただければ、じ、地獄の底だっていきます!」

 

 

「大丈夫よカヨコ課長。」

 

 

陸八魔さんは自身たっぷりそうな顔でカヨコさんたちに向き直る。

 

 

「これはビジネスパートナーである連邦捜査部シャーレの正式な依頼......つまり」

 

「つまり?」

 

 

「またとない名を売るビッグなチャンスってこと!!」

 

 

ペカーっと光りそうなくらいの笑顔でそう言い放った陸八魔さん。

あの笑顔だけでお金稼げそうな気がするのは俺だけだろうか。

 

 

「ところで先生!その依頼の内容は!?」

 

「アビドス砂漠のオートマタの足止め。それをお願いしたいです。」

 

 

その依頼に対し、ムツキさんが1番に反応する。

 

「......それだけ?」

 

相場の五倍の依頼金を支払うにしては、今度はギブが成り立っていない。

 

 

「油断はできませんよ〜?何せ()()()通しちゃいけないんですから。」

 

 

さも難しいように言う羅衣だが、便利屋の面々の実力を鑑みればぬるい仕事も良いとこだろう。

 

 

____________

 

 

 

「本当に緩い仕事だったわね......」

 

 

積み重なるは大量のオートマタそしてドローンの残骸。

 

確かに量は多かったが、逆に言えばそれだけだった。

 

「先生はもう終わりましたかね......」

 

「さぁ......でも、私たちが終わったってことは、もうそろそろ先生も終わるってことだから。」

 

 

「くふふ......やっぱり先生はわからない人だね〜。」

 

 

「まぁそんなことはいいじゃない!今日は報酬でパーっと焼肉でも行きましょうか!!」

 

 

東ブロック 制圧完了。

 

 

 

______________

 

 

 

 

「......はぁ」

 

『オートマタ及び防衛システムを確認。一個大隊の規模です、委員長。』

 

「わかった。準備して。」

 

 

北ブロック ゲヘナ風紀委員会 銀鏡イオリ 火宮チナツ 通信にて天雨アコ 風紀委員長空崎ヒナ  現着。

 

 

「どうして私もここにいるんだ......」

 

 

(イオリはともかくなぜ私まで......)

 

 

突然連れて来られたイオリとチナツは混乱しながらも武装を構える。

 

 

「まだ風紀委員の仕事も残ってるし、手早く片付けよう。」

 

 

『せっかく委員長が反省文の代わりに、と言うことにしてくれたんですから、愚痴はそこまでにしましょうね?』

 

 

風紀委員『最強』は身の丈以上のLMG 終焉:『デストロイヤー』 を機械達に向ける。

 

 

「ここで全軍止める。誰1人として先生には近づけさせない。」

 

デストロイヤーの銃身に紫色の神秘が込められる。

 

「行こう」

 

 

その合図と共に、ヒナは引き金を引いた。

 

 

キヴォトス内では、ヒナしか得られなかった、()()()()()

 

 

 

「『終幕:イシュ・ボシェテ』」

 

 

 

 

『標的を確認排除を_____』

 

 

 

(ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!)

 

 

 

もはや銃弾とは評し難い弾丸が一個大隊レベルのオートマタ達を______

 

 

 

「第一陣殲滅。アコ、次は?」

 

 

『......全滅です。』

 

「?」

 

『オートマタ......全滅しました......』

 

 

ヒナもこれで終わりとは思わず、少し拍子抜け感を感じた。

 

他3人は言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

北ブロック 僅か十三秒で制圧。

 

 

_______

 

 

「じゃあ皆さん!準備OKですか?」

 

「ええ!睡眠もバッチリ取ったし完璧なコンディションよ!」

 

「はい⭐︎お菓子も補給もたっぷりです!」

 

「ん。準備万端」

 

「私の方も、アビドスの古い地図を全て最新化しておきました。先生のに教えていただいた座標を、今一度確認します。ホシノ先輩は旧カイザーPMCの第51番地区の中央あたりにいるはずです」

 

「俺が(アロナが)考案した1番安全なルートを案内します。さぁ、ホシノさんを奪い返しに行きますよ!!」

 

 

「はい!ホシノ先輩救出作戦......!」

 

全員が緊張と、そして怒りを携えながら

 

 

「「「「「開始!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「......そうだったな。」

 

「忘れてたよ......ダメになったんなら、またやり直せばいい。」

 

「大事なのは、ラーメンを食べに来てくれる人の方だ。だよな、先生」

 

お客さん(生徒)がいる限り、(先生)は消えない......そう言うもんだ。だから......」

 

 

 

 

「行ってこい対策委員会。」

 

 

 

柴店長は、人知れず6人にエールを送った。

彼らが歩いた先に、必ず明るい未来が訪れることを信じて。

 

 

 




羅衣くん小話『行ってらっしゃい』


「ほら英梨、ハンカチ持ったか?」

「持ったよ〜」

「最終決戦前だってんのに呑気なやつだ……」

「私は見てるだけだもん。戦うのは先生」

「……負けるかも知んないだろ」

「それでもだよ。」




「私は、お兄ちゃんの愛があれば不滅だから。」




「……お前は黎明卿か」


「あはは、じゃあ行ってきます!お兄ちゃんはよわっちいからあとできてね!」


「一言余計だ!」



英梨は扉を開ける。


「英梨!」


「んー?」



「行ってらっしゃい!」


「……えへっ、いってきます!」

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