羅衣くんは五体満足ですよ〜(大嘘)
「おはよう、羅衣くん」
アビドス総合病院の、その一角。
虚な目をした少年の元に、1人の少女が見舞いに来る。
「あ!ホシノさん今日も来てくれたんですね!」
だがその少年も、小鳥遊ホシノが現れればパァッと表情を明るくし、さっきまでの表情などどこ吹く風だ。
「お散歩ついでにね。体、大丈夫?」
ホシノにそう言われると、羅衣は体の節々を眺める。
「......動かないっすね」
「.........そっか」
あの日、羅衣くんは突然倒れた。
私を助けてくれた日、羅衣くんの体は突然に動かなくなった。
まるで、最初から動く腕や足など、無かったように
「私にできることがあったらさ、なんでも言ってね」
原因は、『大人のカード』の荷重負荷。
なかなか教えてくれない連邦生徒会を説得するのは難儀だった。
「............」
不意に、羅衣くんが動かなくなった。
目は再び虚になり、死人のように硬直して。
1日に3回くらい、こんな状態になる。
「.........ごめんなさい.........」
誰に訊かせるでもない謝罪が、病室にこだまする。
「ごめん.........ごめん羅衣くん............」
あの日、私があんな選択をしなければ、羅衣くんはこんなことにはならなかったのに
「ごめんなさい、ごめん......なさい......ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい.........」
両目から、涙が流れる。
泣いていい資格なんて、私にはないのに
羅衣くんの一生を奪って
羅衣くんの力を奪って
羅衣くんの、全部を奪って
これ以上何を奪うの?
「.........羅衣、くん」
私はそっと、羅衣くんの頬に触れる。
暖かい。
生きてる。
そうだ、羅衣くんはまだ生きてる。
「.........私の一生で、償うんだ......」
羅衣くんの全てを奪ったのなら、私の全部を捧げればいい。
羅衣くんの手足が動かないなら、私が羅衣くんの手足になればいい。
羅衣くんが自分を守れないのなら、私が羅衣くんを護ればいい。
「うへへ......大丈夫だからね.........全部、私がしてあげるから」
羅衣くんの暖かい頬を撫でる。
私の冷たくなった指を、ほぐしてくれる。
「誰にも渡さないから」
もう誰も喪わない。
誰も、喪えない。
そんな呪いにも似た想いが、燃え続けるまで。
愛より歪んだ呪いなんてないんだよホシノォォォ!
だけど大丈夫!羅衣くんは手足が動かないだけで五体満足だし生きてるじゃないか!
それに良かったね!羅衣くんの全てを手に入れられてさ!