『こちらRabbit1、現在の時刻は2330。只今ポイントEに到着しました。』
「2330了解」
『こちらRabbit2、現在の時刻は2330。ポイントαに到着。』
「2330了解」
『こ、こちらRabbit4、現在の時刻は2331。ポイントCに到着しました......』
「2331了解」
『こちらラビット3、ハッキングの準備完了。Rabbit0の位置情報を全て更新。これから10おきに更新予定。』
「了解」
それぞれが自ら持ち場につき、武器を構える。
羅衣は必ずヴァルキューレ公安局の本隊が通る場所で待機中。
「こちらRabbit0、現在の時刻は2332。現在ポイントβにて待機中。目標である『クローバ』を奪取次第こちらも離脱する。」
『『『『2332了解』』』』』
今回は先生としてではなく、ヴァルキューレに対する武力制裁が目的だ。
俺はカンナさんを足止めするだけでいい。
「......緊張せずに、気を楽に行きましょう。なんかあったら責任は俺が負うので。」
『言われずともわかってる。これでもSRTの兵士だ。』
「なら上々。」
サキさんの自信が、チームの鼓舞になる。
「......よし、始めるか。現在の時刻は2323。これより、『クローバー作戦』を開始する。」
それだけ言って俺は通信機の電源を切った。
この通信だけでも普通に探知されるだろうからな。
なんてったってここは敵の本陣だ。
『先生、ここからは私も最大限のサポートをします。ですが......』
「わかってる。無理はしないよ。」
『......終わったら、また一緒におやつでも食べましょう。』
「おう。わらび餅食おうな。」
軽くアロナと会話し、シッテムの箱を着ているコートの内側ポケットに仕舞う。
「......本腰入れよう。」
術式展開 赤鱗躍動
______________
「......警備が思ったより少ないな......」
『大丈夫大丈夫。先生が止めてくれてるってことだよ。』
「......だといいのですが......」
私たちは今回も先生とは全く別方向での任務だ。
「まぁとにかく、公安局の取引帳簿____「クローバー」が保管されているポイントSは地下3階。一応交通量が少ない西側の階段を使って。」
モエが手際よくマップを更新してくれる。
これがあるのとないのとでは作戦の成功率が違った。
その証拠にいつもモエのいるチームは模擬戦でかなりの生存率を発揮していた。
『......繰り返し言うけど、私のハッキングと先生のハッキングでも持つのは一時間弱。プラス、先生が敗走する心配もあるから、それから逆算して時間制限三十分が目標。それまでによろしく』
「Rabbit1了解です。」
短く会話を切り上げ、私たちは西階段へと向かった。
「......私たち、だけで」
前回の作戦も、先生の指示と異常なほどのカバーありきの作戦だった。
腕が鈍っているかもしれない。
指示をしっかりを出せないかもしれない。
私なんかがなんで。
......しっかりしろ。
あの人は言ってれた。
やれる範囲で頑張ればいいと。
ならば私は私にできることを精一杯やればいい。
「私が先導します。みんなは後ろを」
今私にできることは、みんなの小隊長であることだ。
_____________
「......こない?」
待つこと五分。本隊がこちらに向かって来る気配は全くない。
なんならちょっと寒くてブランケット羽織ってるよ。
「......あっちは成功したかな......」
成功したら連絡が来る手筈にはなっているため、特段不安はないが、ここまで静かだとなんか待ち合わせ場所を間違えた時の不安感が俺を襲う。
「よし、ちょっと建物ん中入ってみよう。」
このまま寒い室外で待機するより建物の中を探索する方が有益だ。
まぁ作戦が完璧に成功して本隊がこなければ万々歳だが、警戒するに越したことはないだろう。
「オープンドアー」
建物前の自動扉が開き、そのまま建物内に入る。
「ぐへへ......では早速物色を_______
「こんばんは先生。」
「ウヴァァ!!びっくりしたァァァ!!!」
暗闇の受付にカンナさんが座っていた。
結構ほんとにびっくりした。
「こんなお時間に何か?」
「......と、トイレを貸していただけないかな〜って......」
「トイレなら近くのコンビニにございますが。」
「......ヴァルキューレのがいいな〜って......」
「なぜ?」
「お、思い入れ?」
「ではトイレまでご案内しますよ」
そう言うとカンナさんはカウンターを跨ぎ、急に俺の手を引く。
あれ?
カンナさんの手が、震えてる。
______________
「......先生、貴方がここにきた理由はわかってますよ。」
「でしょうね。」
やっぱバレてた。
やばい(やばい)
「そのついでに言っておきますが、こちらには本隊はいませんよ。いるとすれば、たまたま南方面に移動しているかもしれませんね」
「っ.........!」
やっぱりか。
そりゃそうだ。カンナさんが俺を対策していないわけがない。
「俺たちの手の内はお見通し、すか?」
「先生が居そうな場所に私が配置されただけです。」
相変わらずカンナさんは俺の手を引いて廊下を歩いていく。
「そもそも貴方はこの件に関わるべきじゃなかった。もっと別の、私に関わらないところで......」
しきりに何かをぶつぶつと呟いている。
明らかに正常じゃない。
「カンナさ「そもそもッ!なんで貴方はRabbit小隊の処罰を受け持ったりしたんですか!?貴方が出るのは最初だけで良かったはずでしょう?なのに...なぜ......」
唐突に振り返り、俺の肩をガッと掴む。
その顔にはくっきりと隈が刻まれていた。
「......何日、寝てないんですか?」
「............わからないです......最後に寝たのが、先週?だったような、気が」
「...休んでください。」
「無理、です」
すでに限界を迎えていたのだろう。手と足が小刻みに震えている。
「これを終えないと、コノカが......みんなが......」
カンナさんの手が、そのまま拳銃のホルダーに伸ばされる。
「......お願いです、帰って下さい。」
そのまま拳銃を俺の眉間に突きつけ、トリガーに指を添える。
いわゆる指トリガーというやつで、いつでも俺を撃てる状態だということだろう。
だが
「ごめんなさい。俺たちは、帰りません」
「.........そうですか」
そして、カンナさんの指が、静かにトリガーを引いた。
「ッ!!!」
それに対し俺は敢えて防御を取らず、限界まで頭をずらして弾丸を回避する。
当然頭から血は出たが。
「さぁカンナさん、久しぶりの一本勝負ですよ」
俺の言葉を完全に無視し、ハンドガン片手に特攻してくる。
やっぱり興に乗ると書くの楽しくなるな。