「がっ.........あっ.........」
痛い......熱い.........
感覚的に......片腕と片足が吹っ飛んだか.........
「っづ.........!」
動けるように俺は足だけを優先して復元する。
「っ.........はぁ......はぁっ......うーわ......きったね......」
きていたコートは片袖千切れ、炎のせいで血液が熱でこびりついている。
まさかナパーム爆弾の自爆特攻を仕掛けてくるとは思いもしなかった。
「クッソ......アッチい.........」
カンナの自爆特攻は偶然にも羅衣の術式の弱点を突いた。
赤血操術で生成された羅衣の血液は基本的に熱変動に耐性がない。
寒さには強いが、温度の上昇によって融点が上がればそれに耐えられない。
だからこそ赤鱗躍動とアロナシールドを貫通し、羅衣の肉体自体に大きなダメージを与えた。
「っづ......あ“......」
「カンナさん!!」
当然だが、カンナさんも瓦礫の下に敷かれていた。
「しっかり!どりゃっしゃい!」
思い切り力を込めてカンナさんに乗っかっていた瓦礫を退ける。
そのまま一気にカンナさんを引き上げ、急ぎで反転術式を投与する。
「......カフッ.........なん......で......ですか......」
「......どういう意味すか......」
「私は......もう、嫌いでしょう......?」
「んなわけないでしょ。」
「......ケホ......」
こんぐらいのことで生徒を嫌いになってたらキリがなくなる。
「よし。応急処置は終わったんでいきましょう。近くの病院まで送ります」
そう言って俺は右手を_______
「......あ、そっか右腕ねぇんだった」
「っ!?せ、先生!!早く止血を......ッ!なんで......」
「あ、あの〜カンナさん?」
もう既に血は止まっているしなんなら回復も始まっている。
「どうしよう......!どう......っ......ごめんなさい!あ“ぁっ!なんで......!私は......!ごめんなさいっごめんなさいごめんなさい.........!」
ありゃ、俺の腕が飛ぶのは想定外だったかぁ......
カンナさんは半狂乱になりながら俺の右腕を自身のスーツで強く押す。
............ちょっと、遊んでもバチは当たらんやろ。
「あ、あー痛いなぁ〜......これはカンナさんのせいだなー(棒)」
やべ、普通にめっちゃ棒読みになった
「っぁ......あ.....あ........あぁ......ああっ......あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“っ!!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ!!!」
「うわぁ!ごめんごめん!ほんとは痛くないですよ!もう再生はほとんど終わってますから!血なんて出てませんから!」
やべぇ、ちょっと遊ぼうとか思った俺がバカだった。
踏み入れちゃいけない一線を思いっきり踏み越えた。
「ごめん......なさい......っ.........こんなことになるって.........私.........」
「だ、大丈夫ですよ〜、誰だって軽傷で済みますもんね!ほら、今回は間違えちゃっただけですよ!誰だって間違いはありますか!ね?」
俺に縋り付いてカンナさんは必死にコートを掴みながら泣いている。
まぁ流石にナパーム自爆は死ぬほど驚いたけどさ。
「ほ、ほら!おんぶしてあげますから一緒にいきましょ!怪我とかちゃんと診てもらわないと!」
今度はカンナさんに背を向け、乗るように言う。
「.........ぐす......」
ゆっくりだがカンナさんは俺の背に乗る。
うん、この人体格の割に軽すぎる。
流石に左手だけだとムズイかと思ったが意外とどうにかなりそうだ。
「............ごめんなさい......」
「大丈夫ですよ。でも俺以外にはやめてくださいね。なんかのはずみに怪我しても秒では治らないんですから。」
「......はい」
「うん、素直でよろしい。」
まぁ俺の反転術式だと腕が治るのは最低でも一週間はかかるけどさ。
ま、欠損したら普通は治らないんだからめっけもんだろう。
「............私が憎くないんですか?」
「当初の問題に戻ったなぁ......だから言ったでしょ?特段俺は人を憎みません。生徒なら尚更ですよ。今回のことも、失敗として次の経験に活かせばいいです。」
「でも、腕が」
「俺ならほっといたらすぐ治りますから。ほら、カンナさんは自分の怪我の心配をしてくださいよ。あと、カイザーとの癒着と爆破した建物についても。」
「.........そうでしたね」
「案外あっさり認めますね。」
きっとカンナさん自身にも葛藤があったのだろう。
俺だったら無理だ。きっと耐えられなくて誰かにゲロる。
「......怖かったんです。」
「何が?」
「貴方に、嫌われてしまうのが」
「.........そすか」
な、なぜ......俺に嫌われようがどうでもいいと思うが......
「いつも、私を気にかけてくれて、私を案じてくれて、私と一緒にご飯を食べてくれる貴方を、失いたくなかった。」
「や、やめてくださいよ......恥ずかしい......」
こ、これは......『好意』!?ってやつっすか兄貴ィィィ!?
いや、違うか(クソボケ)
俺に嫌われたくないと言うことは『シャーレ』との関係に悪烈を生むわけにはいかないと言うこと。
俺への好意というわけではないと言うこと。
チキショー世の中クソだぜ
この男、勘違いも甚だしい。
というかここまで直接的な好意を伝えられて普通勘違いしない男はいないだろう。
_____________
「......どうする......開く気がしないぞ」
「モエとの通信も途絶。おまけに扉の外には公安局の本隊ですか......」
まずい。
私の心にありえないほどの焦燥が生まれる。
ここに本隊がいるということは、先生が突破された......?
ありえない。
でも、絶対ということもない。
大きな怪我をしていたらどうしよう。
今私がするべきことはなんだ?
どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
頭の中いっぱいにそんなマイナスな言葉が広がり、不意に立ちくらみが起こる。
ぐらりと視界が揺れ、思わず壁に手を掛ける。
その時、ようやく気がついた
腰に先生から借りたアレがあったはず......!
「ご、ごめんなさい......私がちゃんと見張ってれば......みんなに迷惑かけて......もう、私なんかSRTに入らなければ.........私なんか生まれなければ......」
「ミユ、そんなことを言わないでください。狙撃手が室内行動に慣れていないのは仕方ありません。」
そうだ、これはミユのせいじゃない。小隊長がそれに気づけない方が問題だ。
「それに、突破口も見えてきましたから」
そう言って私は腰に掛けていた先生の剣を手に取る。
「......それって」
「先生からお借りした緊急用の最終手段です。威力が高すぎるから人に向けて使わないという約束付きですが」
そしてその剣に小さなボトルのようなものを装填する。
《Special Tune!》
そして2回剣のグリップエンドを勢いよく引く。
《HIPPA HIPPAE!》
「これで扉を焼き切ります」
「無理だろ!そんな小さい獲物で!」
「いえ、先生は一度これで戦車を切断していました。この扉くらい壊せるはずです」
そしてミヤコは2人に下がるように指示し、妙にうるさい剣のトリガーを引いた。
不安も、恐怖も、全部燃やして征け________
今は、一緒に歩んでくれる人がいるのだから。
《million slash!》
ミヤコが振り抜いた剣は大きな扉を切り裂いた。
「あっづ!」
「あ、汗が......」
剣から今もゆらめく炎が私の瞳を反射する。
気分が高揚する。
今ならなんでも出来る気がする
「サキ、ミユ......今は聞こえていないかもしれませんが、モエと先生。改めて作戦を開始します。この先、指示に気になる点も出てくるかもしれませんが、どうか迷わずしたがってください」
今ならみんなを、本当の意味で信頼できる
「状況はあまり良くありません、この先幾つも困難があるでしょう。」
それでも
「.......それでもこの「クローバ」を持って.........私たちの居場所に戻りましょう」
「「......了解!」」
不安は、無い。
失敗したって構わない。
それでも、一緒に生きてくれるみんなが居るのだから
決意を新たに、私は剣を再度握りしめる
「作戦、開始」
クローバー(シロツメクサ)の花言葉。
一つ葉には『困難に打ち勝つ』『初恋』
双葉には『素敵な出会い』
三つ葉には『愛』『信頼』
……全部ミヤコちゃんですねぇ……