番外編 ホシノ「羅衣くん……?」
「......スゥーーーーーーーーーーーー」
やばい、そういえば今日はホシノさんの当番の日だった......
見られてる、よな?
「......ね、ねぇ、なんで、黙ってるのさ......」
シャーレに散歩から帰宅し、油断してコートを脱いだのがダメだった。
バッチリホシノさんに片腕が無いのを見られてしまった。
......これ、言い訳どうしよう......
「えーっと......こ、れにはマリアナ海溝より深い訳が......」
「......訳って?」
「......転んだら取れちゃっ「真面目に答えて」ッスゥーーーーごめんなさい普通に事故で取れちゃいました」
ホシノさんの目に光が全くない。
しかもめちゃくちゃ怒ってるだろう。
この前リツを泣かせたのを忘れたのか羅衣っ!
「......れに」
「えっ?」
「誰にやられたの?」
あ、やばい。
目に光がないフェーズから一個上に上がった。
逆にホシノさんの目が爛々と輝いている。
いつものほんわかしたホシノさんは見る影もなく、今あるのはひどく冷たい声をした『暁のホルス』。
「......じこ、です」
おーっと鏑林羅衣逃げたァァァァッ!
アビドスアカツキホルスに対して逃げは悪手ですね〜
「へぇ〜、そっかぁ、事故かぁ」
全然目の奥が笑ってない笑みでこちらに歩み寄るホシノさん。
(ダァン!)
「そんな訳ないでしょ。ちゃんと目を見て話してよ羅衣くん」
「ワァ.........ワァッ......!」
な、泣いちゃった!
ホシノは羅衣を壁に押し付け、そのまま壁ドンの要領で拳を壁に叩きつける。
「それとも、生徒がらみ?」
「ハ、ハイ」
「うんうん、そうだよね。羅衣くんは優しいから生徒のために自分のことなんて考えないで行動できちゃうもんね?」
「ゴメンナサ「今は謝罪の言葉を聞いてるんじゃないの。ねぇ、誰にやられたか教えて?」
どうしよう。
真面目にどうしよう。
すごく顔が近い。
「だ、誰にやられたとかではなく、ナパーム弾の自爆特攻を読み切れなかった俺の落ち度で......」
「うん、じゃあその自爆特攻してきた生徒の名前を教えて?」
「......言えないっす」
「なんで?」
「......本当にこれは俺のせいなんです。」
「腕が千切れてるんだよ?なのに何で自分の心配ができないの?」
ホシノさんの息が、荒い。
「死んじゃったらどうしてたのさ?もっとひどい怪我してたらどうしたのさ?いくら治るって言ってもっ……怪我して良い訳じゃ、ないんだよ?」
目尻に涙が溜まり、言葉に嗚咽が混じる。
「.........いやだよぉ.........居なくならないで......っ.........」
顔を羅衣の肩に押し付けながら、涙と嗚咽の言葉を漏らす。
「怖いよ......
......震えてる。
実際俺はわかってなかったかもしれない。
俺がいなくなることで、生まれる弊害を。
死ぬのは怖いが、命を賭けることに恐怖や不安を感じていなかったのもまた事実。
そのせいで、悲しむ人がいることを勘定に入れていなかった。
「......ごめんなさいホシノさん。これからは無茶は控えるんで......今日のところは許してもらえませんか?」
背中をトントンと叩きながら優しく話す。
こんなに俺のことを心配してくれる人がいる事にむしろ感謝するべきだな、俺は。
「......本当に無茶しない?」
「本当です。花京院の魂を賭けてもいいです。」
とりあえず困った時は花京院の魂をbetすればいいってじっちゃんも言ってた。
「......今度からは私を呼んでくれる?」
「ええ。迷惑でなければ。」
ちょっとずつだが荒くなっていた呼吸は元に戻り、だんだんと強張っていた体と言葉が柔らかくなっていく。
「大丈夫。俺は死にませんから。」
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「大丈夫。俺は死にませんから。」
「......うへ、そっか......うん、そうだね」
惜しげもなく、そんなことを言う。
「じゃあこれからは危なくなりそうだったらガンガン頼らせてもらいますからね!」
「.........うん、いつでも連絡してね」
頼りにしてる、かっこいい、って言われるたびに、胸の奥と臍の下辺りがキュンと疼く。
これを友情というには些かドロドロとしていて、恋情というには少しドス黒い。
嗚呼、私だけなんだ。って
キヴォトスでたくさんの生徒達に頼りにされてる先生が、今は私のことだけを見て、私のことだけを頼ってくれてるんだ。
その事実が、私の恋心を蝕んでいく。
でも____
「じゃあさ、羅衣くん。」
「はい?」
「
それが、無性に気持ちいい。
あっれれ〜?
曇らそうとしたらめっちゃくちゃ湿度高くなったぞ?
おかしいな、窓が曇っている。