やっぱり幕間っつったらこういうイベントストーリーを差し込むのが礼儀ってもんだろ!
え?さっきまでの地獄みたいな雰囲気はどうしたって?
こまけぇことは気にしなさんな。エデン条約は長いんだから。
「これは?」
「それは違うっすね」
「うーん......こっちは?」
「それもっすね。」
「そっかぁ......」
みなさんどうもこんにちはかぶらんです。
今日はものすんごい遠くに来て発掘作業に勤しんでおります。
場所はゲヘナ学園を越え、トリニティ総合学園をも超えた辺境の地。
そこで俺は......いや、俺たちは
何故こんなところにそんなものがあるのかは全くもって分からんが、トリニティの長の一角に依頼されちゃあ断れない。
「......これっぽいな」
すでに数時間発掘及び捜索活動を行っているとようやくそれらしいものが出てきた。
「トリニティの校章......白いカバン......これっすね」
流石に1人では難しいとのことで、『正義実現委員会』から1人の生徒が派遣されてきた。
「......疲れた......」
「お疲れ様っす♪先生」
そう言って糸目の生徒___『仲正イチカ』さんは俺に缶ジュースを差し出す。
笑顔と糸目がチャームポイントの溌剌とした雰囲気を感じる人だ。
多分仕事ができる人だろう。(偏見)
「遺物発掘だけで一日近く持って行かれるとは思いもしなかった......」
テントの外を見てみるとすでに日が傾き、夕闇が空に映っている。
現在時刻5:00:12PM
これなら何とか夜までにはシャーレに帰れそうだ。
「......よし。これで最後の荷物っすね!久々にいい汗かいたっす。」
「手伝ってもらってほんとありがとうございます。仲正さんがいなかったらほんとに深夜帰りになってもおかしくなかったっすから。」
「いえいえ!先生もお疲れ様でした。正義実現委員会を......いや、トリニティを代表してお礼を申し上げるっす。」
仲正さんは軽く頭を下げ、俺に感謝の言葉を述べる。
あらやだこの子いいこ。
「あと!『仲正さん』じゃなくて、気軽に『イチカ』でいいっすよ!」
「ほほう、ではお言葉に甘えてイチカさんと呼ばせていただきましょう」
いやぁ、イケメンですなぁ。
そもそものルックスが良いのはあるが、行動一つ一つが丁寧で、それでいてストイックに仕事こなしていた。
爽やかでフットワークが軽く、そして距離が近い。
こりゃこのイケメンフェイスに囚われた少女たちも多いのでは......
「にしても......不思議っすね。ティーパーティーの1番最初の会合で使われたティーセット......これって超重要な校宝じゃないすか。よく今になって見つかったすね。」
「確かに普通ならすでにティーパーティーが発掘しているはず......それはともかく緩衝材が少ないから持ち運び注意っすね......」
少しカバンが揺れると中でティーセットがかちゃかちゃと音を立てる。
「先に大きい荷物を入れておいたんで大丈夫っすよ。うまく衣服とかが緩衝材になってくれるはずです」
俺は中身が割れたりしないよう細心の注意を払いながらティーセットのカバンを列車の車庫に入れる。
「うし、これであとは帰るだけっすね。」
帰りの列車はいろんな設備が充実してるらしいから結構楽しみ。
トリニティとここはかなり距離が離れてるから帰りは少し寝ながらいこーっと。
「てかなんでこんなもんが今になって必要なんでしょうね。普通のティーセット使えば良いのに......」
「え?先生説明されてないんですか?」
「全くもって」
「えぇ〜.........こんな大事な依頼をしておきながら説明もしてなかったんすか......ちょっと自分の組織を幻滅するっす......」
「あはは、うっそだぁ〜」
「ほんとっすよ!全く、これだから最近の若いもんは!」
おじいさんみたいな口調になるイチカさんの表情は柔らかい。
きっと、正実が好きなんだろうな。
うん、良い人だ。この人は良い人だ。
「まぁ、話を戻しますけど、ご存知の通り近々『エデン条約』という条約がトリニティとゲヘナ間で締結される予定っす。でも、トリニティ内には大きく三つに分けて組織が分裂してるっす。一つ目はトリニティ内の分派から集められた3人の生徒会『ティーパーティ』。
二つ目は救護の旗を掲げる『救護騎士団』。そして三つ目は私が所属する『正義実現委員会』。」
イチカさんは指を折りながら俺でもわかりやすいように説明してくれる。
「そんな状況で先生が遺物を発見したのは大きいと思います。「我々は由緒正しい存在」「トリニティの祖」だとアピールできるので。」
「.........つまり」
「......『正当性』ってやつですね」
......ガビーん。
俺の行いってもしかして全部ティーパーティーに利用されてた?
「実際私がここに送られてきたのだって『シャーレの先生をサポートした』って名目が欲しいからっていう下心ありきのやつだと思うっすよ」
「政治問題絡みすぎじゃない?イチカさん達ほんとに子供?」
俺がもしトリニティの生徒だとしてもそんな難しいことは気にせず悠々自適に暮らしてただろうな。
「そのお詫びと言ってはなんですが!今日一日......私が先生のお願いを何でも聞くっすよ!」
「ん?今何でもって」
「その通りっすよ!いいっすか、超レアっすからね?頼み事があるならなんでも言ってください!私は先生のためにここにいるっすから!!」
......イッケメーン。
「じゃあ今までに引き続いて片足のサポートお願いします。まだ義足が慣れてなくて。」
「はい、了解っす♩」
そう言ってイチカさんは俺のそばに立つ。
まぁ転ぶことはないだろうが、一応。
......そういえばあれからもうすでに一ヶ月くらい経っているが、足も腕もほんのちょっとしか治っていない。
欠損が少なかった足はそろそろ完全回復するが腕はまだまだ治り切る気配がない。
不思議だね。
「いやぁ〜、先生に頼ってもらえると嬉しいっすね。来てよかったです、へへっ」
軽く俺の腕に自身の腕を回してくる。
ちょっと恥ずい。
「一度ご一緒してみたくて......ツルギ先輩とかハスミ先輩.........それにマシロも、よく先生の話をしてるから。」
「.........変な話じゃないっすよね?」
「ははっ、「いい人だ」とか「一緒にいると落ち着く」とか、そんなとこっすよ。」
よかった。俺が知らないところで変態とか言われてたらマジ死ぬ。
「そう思うとイチカさんとはほんとに初対面くらいの感じですね」
たまに任務で会うことはあっても事務会話程度しかしたことがないから何だか新鮮味がある。
「そうですね。実際担当業務的にお会いすることはほとんどなかったすけど.........いつかお話ししてみたいなーって思ってたとこっすから。」
たまに見かけては「あの人イケメンだな〜」くらいにしか思ってなかった。
「別にいつでも連絡してもらって大丈夫ですよ。せっかくお知り合いになれたんですから。」
生徒の相談なんて毎日めちゃくちゃ舞い込んでくるから自分のモモトークを公開している。
「.........ふふ、それは嬉しいっすね。でも、あんまりお手間はかけたくないというか......先生は気にされないとしても、やっぱり周囲の目は違いますから。」
「「手の掛かる子」にはなりたくない、と言う話っす」
「......子供は手がかかるくらいがちょうどいいと思いますけどね。」
「それを言うなら先生も子供っすよね?」
「俺は先生だからいいんです〜」
......「手の掛かる子」か。実際問題俺が今まで担当してきた人たちもみんな手がかかってしょうがなかったけどね。
「ただ、今回みたいな機会があるなら、ちょっとだけプライベートな話でもできたらなと。」
「.........やっぱ連絡先交換しましょう。なんか心配になりますって」
「いや、流石に個人の連絡先を生徒に教えるのはやめといた方がいいっすよ。勘違いしちゃう子が増えると思うんで。」
何でじゃい。
俺の何を勘違いするんだ。
「まぁ、気を取り直してそろそろ移動の準備っすね。」
「そういえばこの列車とは別の列車でしたね。何時発でしたっけ?」
「えーと、次の次なので五時四十分っすね。しばらくホームで待ちましょう。」
そう言ってイチカさんは俺にコーンポタージュの缶を差し出す。
「ありがとうございます。ところであの列車ってどこに向かうんすか?」
「あれはトリニティの直通の便っすね。今日の夜ごろには着くと思うっすよ。」
「え?でもさっきアナウンスで『ゲヘナ行き』って.........」
「へ?」
ん?なんかおかしい。
「ちょ、ちょっと待ってくださいね。イチカさんは何時の列車に荷物を......?」
「え?そ、そりゃ五時十分の列車に......」
あ、終わった
「イチカさん、落ち着いて聞いてください。そして今すぐあの列車に乗りましょう。」
俺はとりあえずイチカさんの手をとり、列車に向かって駆け出す。
「俺が帰る便は確かに次の次であってます。でもあのカバンは俺がもってきて欲しいとナギサさんから頼まれたのもなんです」
「.........つまり」
「はい。やばいです」
俺がそれだけ説明するとイチカさんと俺は全速力で『ゲヘナ行きの列車』に乗り込む。
「間に合えェェェェェェ!」
「ウオォォォォォォォっす!!」
ギリッギリドアが閉まる前に乗り込むことができた。
だが、これは序章に過ぎない。
俺とイチカさんの呪難の。