赤と青が交わる場所   作:カブライニキ

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な、何で評価ついたのに総合評価下がったんですか……(困惑)


第九話 水音が急かす

 

「こんな時間にどちらまで?」

 

 

「......なんだ、先生か」

 

俺はいつも通り夜の散歩に出かけようとしたところでいつもの装備を身に纏ったアズサさんと出会した

 

 

「今日の見回りをしようと思っただけ。」

 

 

「にしては随分と思い詰めた表情ですね」

 

 

連続徹夜続きの俺が言えたことではないけど

 

「......よし。俺も見回りついて行きますよ」

 

 

「......もう遅いから寝た方がいい」

 

 

「結局朝まで起きてるつもりだったんで、暇つぶしに付き合ってくださいよ」

 

 

そう言って俺は無理矢理アズサさんの後ろにつく

 

 

「......わかった」

 

 

意外にも素直に同行を許可してくれた。

まぁ、やましいことはないだろうしな

 

 

「トリニティは暖かくていいですね。夜とかも散歩しやすいですし」

 

 

「先生が住んでるところは寒いの?」

 

 

「朝布団から出ることを躊躇うくらいには」

 

 

静かな夜の闇の中、2人分の足音と杖をつく軽い音が響く

 

 

「......時にアズサさん、アズサさんは『楽園の存在証明』と言う議論をご存知ですか?」

 

 

「......ああ、5番目のやつか」

 

 

うん、やっぱりだ

 

 

「確か、キヴォトスに昔から伝わっている7つの古則。そのうちの五つ目が『楽園に辿り着きしものの真実を、証明することはできるのか』......そんな感じだったか?」

 

 

「正解です。逆にピッタリすぎて吃驚なくらいですよ」

 

 

アズサさんは、やはり黒確定

 

エデン条約を知らないと言ったのも嘘で間違い無いだろう

 

転校生といえど大きなイベントなら学校から何らかの掲示が出るはず。

 

その証拠に他のみんなは全員知っていた

 

 

そして、時たまアズサさんから放たれる『vanitas』と言う言葉

 

会話の節々に現れる軍用用語

 

 

 

「つまり、誰も証明できない楽園は存在し得るのか......と言う禅問答みたいなものです」

 

「結局は答えの無い問いだから」

 

 

そして、この言葉を知っていると言うことは

 

 

「......『百合園セイア』......知らないとは言わせませんよ」

 

 

「.........誰のこと?」

 

 

「現ティーパーティホストであり、サンクトゥス分派の生徒会長。」

 

 

確実にセイアさんに会っている

 

 

「俺も最近知り合ったばっかりなんですよ.........まぁ、夢の中だけど

 

 

 

「......わからない。この話はただ、どこかで聞いた記憶があるだけで.........」

 

 

アズサさんの手が、震えている

 

だがその手にはしっかりと銃が握られており、その目からは闘志が消えることはない

 

 

 

「.........そ、すか。すんません、俺の思い違いだと思います」

 

 

「......大丈夫」

 

 

 

そしてその無意味を意味する言葉は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリウスの文書からしか見られなかった

 

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

「わぁっ!水が入ってるー!」

 

 

「この前掃除したばっかですからね。」

 

 

「あはっ、ここに水が入ってるのなんて久しぶりに見たなー。もしかしてこれから泳ぐの?それともみんなでプールパーティー?」

 

「まぁ、勉強がひと段落したらって感じですけど」

 

 

みんなが自習している時間、俺は来客によりプールまで来ていた

 

 

「わっ!冷たーい!」

 

 

まぁ、この学園の生徒会長の一角なんだけどさ

 

 

「で、今日はどのような要件ですか?聖園さん」

 

 

「......えへへ、先生は上手くやってるかな〜って」

 

 

聖園さんは可憐な笑顔を浮かべ、無防備に俺に近づいてくる

 

「にしてもナギちゃん、随分入れ込んでるみたいだねー。こんな施設まで貸し出しちゃって」

 

 

「実際だいぶ助かってますよ。勉強の方も順調ですし」

 

 

聖園さんと俺はプールサイドに座り込み、そのまま話を続ける

 

 

「ところで、合宿の方はどう?遠いのを良いことに、何か楽しそうなことしてたりしない?例えばみんなで水着でプールパーティーとか!」

 

 

「プールパーティ好きすぎでしょ。生憎そんな空気でも無いんですよ、みなさんかなり真面目に取り組んでますから」

 

 

「......むー......なんかそっけないなぁ......」

 

 

聖園さんが表情をコロコロと変える様子を見つつ、早く本題に入るように促す

 

 

「......そこまで警戒されちゃうのは心外だな〜......私こう見えても繊細で傷つきやすいんだよ?」

 

 

......だとしたら俺の目が節穴と言うことになるな

 

「そりゃ申し訳ない。俺もストレスには弱い方なんで似てますね」

 

「あはっ!先生も言うて子供だもんねー」

 

まじでその表情どうやってるんだ

目がくの字になっているぞ

 

「ところでここ、食事とか大丈夫そ?何か美味しいものでも送ろっか?ケーキとか紅茶とか」

 

「紅茶はあんま好きじゃなくて......それと、前置きは結構ですよ。」

 

 

目に見えて長い前置きを置かれるのはあまり好きじゃない。

 

どちらかというと思いを一気にぶつけられた方が気が楽まである

 

 

「......あはは、ごめんね〜......じゃあ、本題に入るとしよっか?」

「あっ、ちなみに私がここにいることについて、ナギちゃんは知らないよ?見ての通り付き添いも無しの単独行動!」

 

「知ってますよ、ナギサさんが知ってたら連絡入れるでしょうし」

 

 

「えっ?先生ナギちゃんの連絡先知ってるの?」

 

「?まぁ......」

 

 

「珍しー......ナギちゃんて滅多に人と連絡先交換しないんだよ?」

 

 

.......社交性があるように見えたけど結構引っ込み思案か?

 

 

「.......本題に入るけどさ......先生、ナギちゃんから取り引きとか提案されなかった?」

 

 

「......取り引き?」

 

 

俺は聖園さんの言葉をしらばっくれる

 

しらばっくれるのと嘘をつくでは違いがあるから俺の『縛り』には抵触しないはず......多分

 

 

「例えば、そうだなぁ.........「トリニティの裏切り者」を探してほしい、とか」

 

 

......おーいナギサさん、あんたの目論見一瞬で見破られたぞ〜

 

 

「......サレテナイヨ」

 

羅衣の目は泳ぎに泳ぎまくり、声は裏返っている

 

これで見破られないわけもなく、ミカはため息をつきつつ話を進める

 

「......ふぅ、やっぱり。ナギちゃんったら、予想通りなんだから......」

 

 

 

次々に聖園さんから浴びせられる質問をどうにかのらりくらりとかわしつつ誤魔化す

 

ごめんよ聖園さん。秘密は守らなきゃダメなんだ

 

 

「一応提案は受けました。こんな問題をナギサさん1人に負わせるのは流石に憚られましたから」

 

 

何度か遊んだりしてわかったけどあの人かなり抱え込むタイプだ。

しかもそれを他人に少しも見せないからタチが悪い

 

「へえ〜......そっかそっかぁ......先生は『シャーレ』の専属なのに......ナギちゃんは幸せ者だねぇ」

 

 

俺自身、誰かに一定の味方であり続けることは避けたかったが、俺だって人間だ。誰かの味方でありたいと思うのも俺の勝手だろう

 

......先生としては失格だろうけど

 

 

「......でも、補習授業部も絶対に助けたい。裏切り者共々、全員でハッピーエンドを目指さないと」

 

 

「......じゃあさ、先生は誰の味方?」

 

 

......それを問われると苦しくなるからやめてほしい

 

 

「......生徒の味方......と言ってはいるんですけど、多分俺は苦しい人の味方なんですよ」

 

 

「苦しい人?」

 

 

「ナギサさん然り、他の学園の生徒会長さん然り、俺は自分で抱え込んでしまったりする人をどうしても放っておけないんです」

 

 

 

どうしても、過去の自分に重ねてしまうから。

 

「随分先生らしからぬことじゃない?」

 

 

「確かに誰かの味方であり続けることは、『先生』にはあるまじき行為だとは思っていますよ」

 

 

俺だってできることなら全てを信用してこれから歩む生徒達を支えるだけに留めておきたいとは思っている

 

 

だが、俺は誰かに全てを任せると言う行為自体を忌避しているせいで、心の底から信頼を置けない

 

 

「信頼、信用......その言葉はとても危うく、美しいものです。」

 

 

「......先生は、誰かを信用しないの?」

 

 

 

ミカは訝しむ

 

話によれば『先生』はいついかなる時も生徒を信用できるような『大人』という側面が強かった

 

 

だが、今目の前にいるのは信頼を『危うい』といった少年

 

 

「......これは持論でしかないんですけどね.....」

 

 

 

 

まるで、霞んだ

それでいて全てを焼き殺さんとするその赫い瞳孔

 

 

 

 

 

「他人を全て信頼して、共に歩く________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泥舟に、乗せてしまうんですよ」

 

 

 

 

 

 

羅衣の声に力が籠る

 

それは贖罪か、または呪いか

 

どちらにせよその声には憎悪に近い何かが発現している

 

 

 

「一歩間違えれば、他人の信頼は愚か、自分の信頼すら失う.........そんな、初めから沈没を前提とした___泥舟に」

 

 

だからこそ羅衣は助けられる人間を決め、味方である人間を決める

 

 

何度も言うが羅衣は大人ではない

 

この世界に来てしまった、ただの弱い『子供』でしかないのだ

 

 

誰かを無条件で信頼できるような心の余裕も、覚悟もない

 

 

「......ひねくれたガキなんですよ。ただの達観して、世の中を決めつけた、ガキ」

 

 

この世界に来たことを、何度呪ったか

 

『あの時死ねなかったことを、何度恨んだか』

 

 

無力を呪う自分と、一瞬でも『自分はできる』と感じた自分

 

そしてどうしようもなく、この世界が好きな自分

 

そんな己に違和感と気色の悪さを同居させた。

 

 

だからこそ羅衣は信頼しない

 

信用できない

 

 

 

 

 

 

 

信頼してしまったら、己の愚かさがバレてしまうから

 

 

 

 

 

 

「......そっかぁ......先生も、ちゃんと子供なんだね」

 

 

「なんなら聖園さんより年下ですよ?」

 

 

「にしては精神年齢高いと思うけどなぁ〜」

 

 

目の前の少年がさっきまでの調子に戻り、自分が想像していたよりもずっと人間らしい少年に好感を抱いていた

 

 

「あ、あのさ......つまり先生は、誰の味方でもなくて、誰の味方でもあるってことでしょ?」

 

 

「まぁ、そう言うことになりますね」

 

 

 

 

 

 

「じゃ、じゃあさ!先生は一応、私の味方にもなってくれる.........って考えても良いのかな?私も一応この立場とはいえ、生徒に変わりはないんだけど......」

 

 

少し慌てたようなミカの表情をキョトンとした様子で羅衣は見つめる

 

 

「.......俺なんかでよければ」

 

 

さっきまでの達観したような表情から打って変わって、くしゃっとした笑顔をこちらに向ける少年

 

 

「.........わーお.........これはナギちゃんが堕ちるのもわかるかも......

 

 

 

自分の親友がこの少年にゾッコンな理由も少し理解できてしまう

 

 

大人のように威圧感がなく、理論よりも感情で動く。

 

その姿はまさに『子供』

 

 

「......でもさ、それってさっきも言った通り誰の味方でもないってことでしょ?それを額面通りに受け取るのもちょーっと難しいかもね...」

 

 

 

「......そりゃそうっすよね」

 

誰の味方でもない、そして誰の味方でもある羅衣はそれこそ危うい

 

手を返せばどんな相手にでも敵になりうると言うこと

 

 

「だからそのまま受け取るんじゃなくて、私から先生に取引を提案させてもらおうかな」

 

 

「......まーた取引すか......」

 

 

だが、ミカから提案されたその取引の内容は、羅衣が今1番確信を持ちたい内容でもあった

 

 

「トリニティの裏切り者......それが誰なのか教えてあげる」

 

 

「.........なるほど」

 

 

その内容との等価交換ってやつか

 

 

「多分先生はもうわかってると思うけど、まだ踏ん切りがついてないんでしょ?」

 

 

「......そもそも何でそれを.....」

 

 

「......このお話はすごく複雑に絡まってて、今全部を説明することはできないの。」

 

 

 

空気が悪いわけではないが、明らかに羅衣の警戒の色が強くなる

 

 

 

「......その裏切り者の名は_________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『白洲 アズサ』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........やっぱりかぁ〜......」

 

 

 

 

いや、実際黒確定だとは思ってたけどさ......

 

やっぱりもう敵じゃなくて友達としてしか見れなくなっている

 

 

夜の見回りが異常に多いこと。

これは大方仲間との定期連絡だろう

 

 

.........どうする

 

 

 

ナギサさんに報告するか?

 

 

 

......それだとどんな手を使うか分からない

 

 

「こっちももう知ってるかもしれないけど、あの子は随分前にトリニティから別れた分派......『アリウス分校』出身の生徒なの」

 

 

「......アリウス......」

 

 

 

古関さんに解読してもらった資料にも大量に出てきた『アリウス』と言う言葉

 

 

「うーん.......よく考えると「生徒』ってよんで良いのかわからないんだけどね」

 

 

 

「.........学校自体が機能を失ってる感じすか......」

 

 

「......うん。それのせいで何かを学ぶ機会を失ってしまった生徒.........それってもうさ、『生徒』って呼べるのかな?」

 

 

 

「......そもそも、これを俺に教えた理由ってなんですか?」

 

 

 

それが1番謎だ。

 

この事実を知ったなら俺じゃなくてナギサさんに言えばいいのに......

 

 

 

「......ふふっ......良い眼だね、本当に。期待しちゃうな」

 

 

「.......俺が行きつかない高度な次元の話してます?」

 

 

「あはっ、単純にキレーな目だなって思っただけだよ」

 

 

......綺麗な目......か。

初めて言われたな、そんなこと

 

 

英梨とか五条先生は六眼とかそれに近しいもんを持ってたから目が綺麗っていっつもナンパされてたなぁ......

 

 

「あれこれ誤魔化しても仕方なさそうだし、端的に言おっか」

 

 

......狙いはなんだ?

 

俺の権力?

 

それともアズサさんの身柄か?

 

 

 

......今はどちらとも失う訳には行かない

 

 

そう思い俺は一応腰のビートクローザーに手をかける

 

 

もちろん、バレないように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......先生に、あの子を守ってほしいの」

 

 

 

 

 

 

 

「......はえ?」

 

 

 

 

 

 

 

エデン条約編第一章  『罅割れ』

 




羅衣くんの眼球は黒色で、ユウカみたいに瞳孔だけが赤色になっております


とまぁ、羅衣くんの身体的特徴を皆さんに教えたところで第一章終了でございます

えー、この小説が生まれてからはや二ヶ月。
まさかここまで見てもらえるとは思ってもみませんでした。

評価や感想もたくさんいただき、今年も清々しい気分のまま終われそうです

皆さんも年末はニコニコ動画でブルーアーカイブのアニメを一気見し、周年のガチャに備え、今回のイベストを読み込んでください。

ついでに年末年始で上げる羅衣くんの誕生日回もぜひみてやって下さい。


それでは良いお年を〜


ちなみにヒナちゃんが出るそうですよ
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