百話かそこらでエデン条約編を終えられると思い込んでいた俺の姿はお笑いだったぜ
「......結論から言います話す気はありません。」
「......理由をお聞きしても?」
私は先生が私の願いを拒んだ意味が分からなかった。
「......ナギサさんはそこまでして......幼馴染を疑ってまで、裏切り者を探したいんですか?」
......確かに幼馴染であるミカさんを疑うという行為は、できるだけ避けたい行為ではあった。
でも、そうでもしないとトリニティが_____
「......」
様々な感情と情報がナギサの頭を巡り、結局黙りこくって仕舞う。
「......やっぱり、こんなことやめません?たとえ裏切り者がいたとしても、俺が必ず______
「先生は」
羅衣の言葉を遮り、変に上擦ったナギサの言葉が放たれる。
「私の味方ではないのですか......?」
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俺は一体誰の味方だ?
ナギサさんの?
それともミカさんの?
それよりもっと根源的な、補習授業部の味方?
.......連邦生徒会の、味方?
分からない。
ナギサさんから放たれた言葉。
そして、見たこともない泣きそうな、怒ったような
そんな顔。
「っ“.........あ“あ“......クソ.........」
また、吐き気と眩暈。
今回は軽い発作だが、このまま放っておけばまたひどくなるかな
ああ、でも
今ぜんぶはきだせたら、きもちいい、かも
「あの、大丈夫?」
「......うっ.........?」
顔を上げると見知らぬ生徒。猫耳に黒色の制服。
......正実か?
マスクをしているせいで顔は見えづらいが、こちらを心配してくれているのが分かる。
いや、声をかけてくれてる時点で心配されてるんだろうけど......
「だい......じょうぶ.........えぐっ.........」
今の状態を見られるのは初対面の人でもちょっと無理だ。
そう思って拒否しようとするが、吐き気がえげつないせいで喉から変な音が出るだけだ。
「あー......あんまり大丈夫じゃなさそうだね。ちょっとこっち来て」
そう言って黒猫の人は俺の手を引く。
なぜか握ってくれたのが左手のせいで、その人の体温が俺の吐き気と眩暈を少しだけ奪ってくれた。
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「ングっ.........ぷはっ.........」
「ほんとに大丈夫?顔色まだ悪いけど。」
「大丈夫......だと思います......」
猫の人に手を引かれ、広場で飲み物をもらった。
「美味しいでしょ、新作のミルクティー。飲みかけだけど」
「ほほう......ミルクティーとな......あんまり飲んだことないですね」
ストローから流れてくる優しい甘さ。
不思議なことにこれを飲むとさっきまでの吐き気と眩暈が驚くほどに無くなった。
......これからミルクティーがぶ飲み生活アリかもな......
それにストローってあんまり使ったことないけどこのなんかが口に入ってる感覚もなんかいい感じが......
「あんまりずっと咥えられてると恥ずかしいんだけど......」
「うお......すいません今新しいのを......」
「あー、大丈夫。それあげるから飲んじゃっていいよ」
普通に生徒の飲みかけストローをナチュラルに咥え続けてしまった。
これは変態と言われても文句は言えねぇ
「本当色々ありがとうございます。」
「とりあえず元気になってよかった。そう言えば名前は?」
「俺は鏑林羅衣です。ミルクティーありがとうございます!」
「羅衣......ライ君ね。私は『杏山 カズサ』よろしく」
カズサさん......か。
漢字はどうやって書くんだろう......
「普通に体調悪い感じ?それなら救護に連れて行くけど......」
「これは大丈夫です。ある種の発作みたいなもんなんで」
羅衣はなんでもないようにそれを語るが、普通に発作もかなり危ないものだ。
「いや、発作も十分やばいと思うけど......」
カズサの意見は最も。
ど正論である。
そんな感じで少し雑談をしながら羅衣はもらったミルクティーを啜る。
量が半分になってきた頃に、羅衣の思考はさっきまで考えていたことを再び考え始める。
味方......味方か......冷静に考えてみればナギサさんのやろうとしていることに賛同できないと考えたのなら無理に甘やかす必要はないのではないか?
甘やかすのと味方になるのは意味が違うし本当の味方であるのなら意見に流されず曲がってしまいそうな友を無理にでも普通の流れに戻してやる者じゃないのか?
「......どしたの?」
「......あ、いや、ちょっと悩んでることがありまして......」
思考を巡らせ、そのまま黙りこくる羅衣を見かねたのか、カズサは羅衣に一歩縮める。
「よかったら話してみない?楽になるかもしれないし。」
杏山さんはまたもや俺に優しく声をかける。
なんだこの人。めちゃ良い人やん
「......えっと......じゃあお言葉に甘えて.........」
俺は呼吸をようやく落ち着け、少しずつ頭の中にあったモヤを吐き出し始める。
「杏山さんは、誰かの味方になるって、どういう意味だと思いますか?」
「急だね......味方かぁ.......誰かの心の拠り所になる、みたいな?」
なるほど......確かに最近のナギサさんは少し様子がおかしいかもしれない。
俺がたまに遊びに行った時も手土産にクソほど高い紅茶とかクッキーとかを持たされていつも帰らされる。
もしやこれは俺に見捨てられないようにするための行動......?
確か『境界性パーソナリティ障害』というのがそういう行為に及ぶ精神障害だと聞いたことがある。
そうなるともはや拠り所ではなく、一種の依存先になるということになるが......
「他には、物理的に守ってくれる人だったり、精神的に守ってくれる人だったり......結局のところ自分に対して都合のいい人のこと......?」
杏山さんも話していて何かわからなくなってきているようだが、俺はその言葉に意外な合点が合った。
「都合の、良い......」
まさか俺はナギサさんにとっての都合のいい人を演じようとしていた?
俺の行動を顧みれば、確かにそういう行動は多々あったのではないのだろうか。
ナギサさんに対してばかり優遇があったのではないのだろうか
じゃあ俺が無責任にはなった言葉はなんだ?
何が苦しい人の味方だ?
何が生徒の味方だ?
結局俺自身もナギサさんを都合の良い代償行為相手として扱って______
「でも、別にいいと思うけどね。別に誰かの依存先になることも、依存することも。結局はどっちも合意してるんだから別に他の誰かが何をいうことでもないでしょ。互いが納得してるならそれは愛というんじゃないかな」
「......世界はそれを愛というんやで.......」
「ブフッ!」
やや渋い声でそういうと、杏山さんは急に吹き出す。
ふっ、やはり唐突に差し込まれるネタはこの世界でも通ずる。
「.........愛......愛か.........」
別に恋愛的な愛ではなくとも、誰かを大事にするというのは親愛や友愛の部分に入るのだろうか
それは俺のこの行為も含まれるものなのか?
「だからさ、別にライ君が誰の味方をしようが誰の依存先になろうが、誰も何もいう権利はないんだから、どんどん味方になっていいと思うな」
「......良いんすかね?」
「別に悪いことではないんだし。あ、でも相手をわざと依存させるのはやばいかも」
そんな高等術を使える奴は逆に見てみたいね。
.....でも、確かに今までだって普通に誰かを優遇している?時は多々あった。
だってRabbit小隊とかその理論の塊よ。だって生徒のことを自分の家(シャーレ)に住まわせてるんだから。
アビドスでは銀行強盗だってしたし。
「......ふはっ、俺なんでこんなことで悩んでたんだろ」
この前自分が子供であることを自覚したというのに、また変な大人思考に染まりかけた。
そうだな。無理して誰の味方とか決める必要もないな。
仲良い人は好きだし、やらかした人には注意する。
別に今までのスタンスを崩す必要は一つもなかった。
逆になんでさっきまで吐きそうになるまで考え込んでいたのか謎になる
「わかんないけど、解決したみたいでよかった。じゃあ私は行くね」
「いやぁ、本当にありがとうございました。今度会えた時はなんか奢りますね」
そう言って俺は杏山さんと別れた。
ミルクティーくれた上に俺のお悩み相談まで付き合ってくれて......ガチ聖人過ぎる......
「.........どこの所属の人か聞くの忘れてた......」
誰の味方でも良いじゃない。
羅衣くんはちょっと大人に背伸びしすぎだね。