赤と青が交わる場所   作:カブライニキ

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第十六話 もう、いい

 

「ど、どーしてこーなるんですかぁぁぁぁ!?」

 

 

「にーげるんだよォォォ!!補習部ゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

 

現在の所在はすでにゲヘナ構内に入ることはできた

 

 

が、普通にトリニティの生徒がゲヘナに来るなんて普通はありえないという至極真っ当な理由で不良たちに追いかけられております。

 

 

今は条約とかでピリピリしてるからあんまり問題とか起こしたくねぇ.........

 

 

「先生、伏せて!!」

 

 

アズサさんの声を聞き、俺は咄嗟に頭を下げる

 

 

 

「『vanitas vanitatum et omnia vanitas.』」

 

 

アズサはマガジンにある弾丸とはまた違った弾丸を()()()()チャンバーに装填する

 

 

 

なんかアズサさんの力が大きくなって......!

 

アッ、これ巻き込まれ______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない先生.........」

 

「いえいえ......イデデデデ......」

 

 

普通に額に強化弾丸をぶち込まれ、軽く脳震盪が起きました。

 

痛かったです(KONAMI感)

 

 

「とりあえず近くまで来れたんじゃないですか?」

 

 

チンピラや、不良の群れを乗り越えて大通りに出ると、そっちは打って変わって物静かな雰囲気が漂っている。

 

いや、静かっていうか......

 

 

「誰もいない......?」

 

 

ハナコさんの言う通り人の影が全く見えん。

条約前だからみんな謹慎してんのかな

 

 

そう思っているとどこかから銃声が聞こえる。

さっきの場所からはかなり離れてるし、全部片付けてきたから大丈夫だとは思うんだけど......

 

 

「......俺が先導するんで、皆さんは後ろに。リツは殿を頼む」

 

 

「了解です」

 

 

俺とリツはそれぞれ自前の銃を取り出す。

 

俺はトリガーマグナム。

 

リツはLAIZA製のアサルトライフルにサブアームのハンドガン

 

 

「......おお〜」

 

ビル群を進んでゆくと、大きな架橋道路に出た。

向こう側に見える夜景がスッゲェ綺麗

 

 

「......あれは、検問?」

 

 

「ありゃ、本当だ......」

 

 

遠目から見てもわかるし、なんなら風紀委員会の制服を着た人がこっちに来た

 

 

「撃ちますか?」

 

 

「やめとけやめとけ。とりあえず話は俺がつける」

 

 

リツさんや、取り敢えず撃とうとするのやめようぜ。

 

 

 

・鏑林リツは生来のトリガーハッピー系の人間。

初めてLAIZA製の銃火器を持たせた1日で羅衣の住居が全壊。

 

 

羅衣がシャーレに住み着いている理由の一つでもある。

 

「リツが撃とうとしたら4の字固めで止めてください。」

 

実際4の字固めしても止まらないのだが、無いよりはマシだ。

 

また誰かの住居がぶっ壊れるのは勘弁だ。

 

 

 

「止まれ!ここから先は立ち入り禁止になっている!」

 

 

「そもそも今日は街全体に外出禁止令が出されているはずだ!早く戻って____」

 

 

俺はたまに風紀委員会を手伝いに来ているが、検問に来た2人に面識がない。

 

そもそも知ってるのと言えば空崎さんたちくらいだけど......

 

 

「......その制服、トリニティか?」

 

「どうしてここに......!?ゲヘナに何をしに来た!目的はなんだ!」

 

 

条約前でピリピリしているのか、俺たちは2人の風紀委員に怒声を浴びせられる。

 

正直やめてほしい。みんなのストレスになるし俺のストレスになる

 

 

「えーと確か.........どこにやったっけな......」

 

 

俺はゴソゴソとショルダーバッグから何かを探る。

 

 

「い、いえその......本当にここを通りたいだけで......!」

 

「なんの目的もなしにトリニティがゲヘナに来るわけがあるか!」

 

 

「あれー?え、無くした?」

 

 

「ですが私たちは本当に、ただ試験を受けに来ただけなんです。特に問題を起こしに来たわけではなく......」

 

「トリニティの生徒が試験を受けるために、どうしてゲヘナの自治区に来るんだ!!せめてもっとマシな嘘をつけ!」

 

 

試験を受けたい補習授業部と、自身の仕事を全うしようとするゲヘナ風紀委員。

 

そんな二組の口論を横目に、羅衣はようやく目当てのものを見つける。

 

 

「お、あったあった」

 

 

取り出したのは一枚のカード。

 

大人のカードではなく、羅衣の個人情報と空崎ヒナの判が押されているカード。

 

 

「これで通れます?」

 

 

そのカードを風紀委員に渡す。

 

「これは......ゲヘナの一級通行証!?」

 

「嘘......これって確か委員長しか発行できないんじゃ......」

 

 

『一級通行証(ゲヘナ)』

羅衣がたまにゲヘナとD.Uを通行するため、不便を無くすためにヒナが発行した通行権。

一休通行権を持っているのは天雨アコ、空崎ヒナ、鏑林羅衣の三名しかいない。

 

基本ゲヘナならどこでも通行できる。

 

 

「しかも鏑林って......もっ、申し訳ありません!!まさかシャーレの先生とは露も知らず......!」

 

 

「た、大変失礼しました!!!」

 

 

「大丈夫大丈夫〜」

 

 

と、まぁこんな感じで特にトラブルもなく橋を渡れた。

 

 

「......先生って一体何者......?」

 

「女たらしですよ。それも重度の」

 

コハルの疑問にリツが答える。

 

リツよ、その答え方はあまりの語弊があるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら、助け舟を出す必要もなかったようですね」

 

とあるビルの屋上から美食研究会の4人が橋の上を進んでゆく羅衣たちを見据える。

 

「それでこそ先生ということです。......というか_____」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そもそもバレていましたから」

 

 

 

「少し謹慎しますか?」

 

 

「いえ、美食の旅には終わりも中断もありません。」

 

 

 

全く懲りてはいない様子だが。

 

 

___________________

 

 

 

「まるでスラム街だな......」

 

試験場......つまり、ゲヘナのビル(廃墟)に到着した。

 

道中で変なショベルカーとかブルドーザーとかが追っかけてきてヒフミさんとコハルさんの三人になってしまったが、まぁ大丈夫だろ。

リツとアズサさんがいるならそこら辺が地獄絵図になるかもしれんが俺はもう知らん。疲れた

 

 

「こ、ここが試験会場......?」

 

「地図では......」

 

 

プラナに出してもらった地図ではここを表しているが、俺地図読めないから若干不安

 

というかここが間違いの方がまだ救いがある

 

 

「お待たせして申し訳ありません」

 

 

「お、リツ。大丈夫だった?怪我ない?」

 

 

「私は特に。ですがハナコさんが......」

 

 

「っ!ハナコさんに何が......!」

 

「あんな感じです」

 

 

合流したリツがおそらくハナコさんがいるであろう方向を指差す。

 

「........................ん?」

 

 

「ふぅ、こちらもこちらで大変でした♡」

 

 

リツが不穏なこと言うから怪我でもあんのかと思ったら......

 

 

なんでまた水着......?

 

 

「そ、そっちはそっちで何があったのよ......」

 

 

おおすげぇ、コハルさんがこれに対して全然動揺してない

 

成長だなぁ......ホロリ

 

 

 

______________

 

 

 

取り敢えずハナコさんに制服を着せ、俺たちは建物内に入る。

 

 

「ど、どうしてこんなところで試験を......あ、試験用紙とかどうなるんでしょうか......」

 

 

「おそらく建物内に。リツ」

 

 

俺は後ろから建物に入ろうとするリツに声をかける。

 

 

「全員が建物内に入るのはリスクがデカい。外の見張を頼む」

 

 

いつもの教室とは違い、ここではどんな妨害が入るか分からん。

俺も今日はどんな妨害が来ても良い様に装備はフルセットで来ている。

 

もちろんそれはリツも同じ。

 

「了解です。では、試験が終了したら連絡して下さい」

 

 

それだけ会話してリツは建物の外に出る。

 

「リツさん、大丈夫なんですか......?」

 

ヒフミさんが不安そうに言う。

少なからず同じ時間を過ごした友なのだから心配は当然だろう。

 

 

だが、

 

 

「大丈夫ですよ。リツは一応俺より強いんで」

 

 

「え......ええっ!?」

 

 

装備+術式全消しの状態に限るが

 

 

 

 

「......ここか......」

 

ボロボロの建物の中に何故か小綺麗な教室の様な部屋が備わっていた。

 

「......試験官も無しか......」

 

 

「いや、違う.........先生、これだ」

 

 

アズサさんが教室の隅で転がっている不発弾を発見した。

 

「L118、牽引式榴弾砲の弾頭だ。スローガンとかの散布用なのか、雷管と爆薬は取り除かれている」

 

 

「.........L118......牽引.........」

 

 

どっかで聞いたことあるな......なんだっけ......

 

 

「なるほど、L118ということはティーパーティー......つまり、ナギサさんからということですね」

 

 

ハナコさんの言葉で俺はようやく思い出した。

 

 

「アビドスの時のアレか.........」

 

 

ホシノさん奪還作戦の時、ヒフミさんが援護で投下してくれた爆雷だ。

 

 

「.....つまり、ナギサさんからのメッセージってことですね」

 

 

俺は一応慎重に弾頭を分解する。

もちろん爆発するわけもなく、中からは試験用紙と______

 

 

「通信機......?」

 

俺はナギサさんの真意がどうしても気になり、そのまま通信機の様なものを起動させる。

 

 

 

『......これを見ているということは、無事に到着された様ですね』

 

 

通信機......いや、投影機から投影されたのはナギサさんの姿。

“見ている“ということはこれはただの映像。

 

 

「な、ナギサ様!?」

 

「え、じゃあこの方が、ティーパーティーの......?」

 

ハナコさん以外の面々は驚嘆の声をあげているが、その声がただの映像に届くわけもない

 

 

『フフッ、恨みの声が聞こえてきますね。まぁこれは録画映像なので、リアルタイムに聞こえないのですが。ですので、今の私に話しかけても無意味ですよ』

 

 

相手の神経を逆撫でるような声で聞こえてくるナギサさんの声。

この世界の通信技術の高さを初めて恨んだよ

 

 

『それでは約束の時間までに試験を終えて、“戻ってきて下さいね“一応引き続きモニタリングは続けさせてもらいますので、そのことはお忘れなく......では幸運を祈りますね「補習授業部」の皆さん』

 

 

最後まで苛立ちを覚えた通信は、そこで終わった。

 

 

「......時間がありません。早く始めましょう」

 

 

俺は備え付けの教卓に座り、皆さんもそのまま試験用紙を持って席に座る。

 

 

「......では、初め」

 

皆さんへの激励の言葉でもなく、ただ淡々に試験の開始を告げる。

 

皆んなが答案用紙をひっくり返し、試験を始める。

 

全員が必死な顔で問題を解いている様子すら、今の俺には届かなかった。

 

 

......今は、こっちが気になる

 

ナギサさんが仕込んだ通信機

わかりやすく分解痕がある。

 

何か中に仕込まれてるだろう

 

 

俺はドライバーを使わずにパキッとプラスチック部分を破壊して中身を見る。

 

「......プレイヤー?」

 

 

中に入っていたのは小さな音楽プレイヤーのような......いや、単なる録音機?

 

その録音機に『構築』した有線イヤフォンを接続する。

 

 

......再生

 

 

 

『ザザッ.........あー、聞こえていますでしょうか、先生』

 

 

聞こえてきたのは少しノイズの混じったナギサさんの声

 

 

『これを聞いている......いえ、この文言はさっきも使いましたね。では単刀直入に言わせてもらいます』

 

 

『今回の試験で、徹底的に裏切り者を潰します』

 

 

思わず目を見開く。

深めに掛けていたメガネにまつ毛が擦って汚れる

 

 

『そのための『仕掛け』ももうすでに貼ってあります。ですので、そこからすぐに離れることをお勧めします』

 

 

ナギサさんの声は、冷徹でいつもより低く、一定のトーンで放たれる

 

 

『......私としても、先生に危害を加えることはしたくありませんので』

 

 

......他はどうなったっていいってか?

 

 

『......私からはこれだけになります。では先生、どうか_________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___お気をつけて』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それだけ。

 

たったそれだけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は苛立ちすらも覚えない

 

俺が覚えたのは、一抹の哀しさと

 

 

『呆れ』

 

 

 

 

 

 

 

 

カチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな考えをまとめる暇もなく、前触れなく建物が爆発した

 

 

ああ、本当に

 

 

 

 

本当に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『術式順転 『蒼』』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、いい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二次学力試験 結果

 

 

試験用紙紛失により、全員不合格




羅衣くんは怒ると激情するでもなく無表情になるでもなく、泣きます。
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