赤と青が交わる場所   作:カブライニキ

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今回で、第二幕は終了となります。

いやぁ、長かったですねぇ……

後編はもっと長くする予定ですけど……

まぁ、御託を並べるのはここまでにして、第二十三話。どうぞ


第二十三話 また今度

 

 

「......いやです」

 

「嫌とかじゃなくて......」

 

全てが終わった後、俺はリツが守るセーフゾーンへ訪れていた。

 

ここにきたのは当然ナギサさんと話すためだ

 

 

「......違います......」

 

リツは小声でそういうと、俺に抱きついてきた

 

「......なんで倒れたのに、連絡入れてくれなかったんですか......」

 

「.........ごめんね」

 

「謝罪じゃなくて抱擁をください」

 

 

 

リツの腕に力がこもり、俺もそれと同じくしてリツを抱きしめる。

 

リツは身長がめっちゃ高いからどうしても胸元に埋もれるというか......

 

 

「......すぅーーー.........はぁーーー.........」

 

 

「ええい匂いを嗅ぐな嗅ぐな!今日色々あって風呂入ってないんだから!」

 

 

そう言いつつも羅衣はリツを抱きしめ続ける。

 

これはリツが離すつもりがないからこその行動ではあるが。

 

 

「いい匂いがします......お父さんの匂い......」

 

 

「だからって頭皮からはしないでしょーが......」

 

 

プラナやリツがよく俺の頭やら体の匂いを嗅いでくるが、なぜか甘い匂いがするらしい。

 

 

「......はい、オーケーです。」

 

 

しばらく抱きしめられると、リツは扉の前から退けてくれた。

 

 

「ごめんね、今度からちゃんと連絡入れるから。」

 

「......それこの前も聞きました」

 

 

小さく釘を刺してくるが、それをちゃんと聞き入れながら俺は扉を開ける

 

 

「や、ナギサさん」

 

 

俺とナギサさん、二度目の会合

 

 

 

「先、生......」

 

 

ビクッと怯えるように体を振るわせ、部屋に入る俺を凝視する

 

 

「おはようございます。そして誠に申し訳ありませんでした」

 

 

「ええっ!?」

 

 

流れるように挨拶し、流れるように土下座する羅衣。

それを見たナギサは驚いて声を上げる

 

 

「大変身勝手な行動をした挙句ナギサさんに酷いことを言ってしまいましたことをここに深くお詫びいたします本当にすみませんでした足でもなんでも舐めますのでどうかお許しを」

 

 

「あ、あし!?」

 

 

平謝りな上に変なことを口走る羅衣にナギサの混乱は深まってゆく

 

 

とりあえずナギサは土下座する羅衣をどうにか立たせ、少し前のように向かい合って話す

 

 

 

「......謝るのは私の方です。本当に、身勝手なことをして......先生の信用を裏切るようなことをして......」

 

 

「それは俺が勝手に裏切られたって被害妄想を押し付けたからですよ」

 

 

結局ナギサも羅衣に謝り、羅衣はそれを否定する。

 

 

「......最後まで、ナギサさんを信用できなかった俺の落ち度です。ナギサさんは何にも悪くない」

 

 

生徒を信用できなかった上にちょっとした仕返しまでした。

いたずらごころじゃ済まないぞポケモンじゃないんだから

 

 

「.........先生、少し遊びませんか?」

 

 

静寂を破り、ナギサは羅衣が置いていったチェスの指南書を取り出す。

 

 

 

羅衣が置いていったブラフ。

 

 

「......実は、俺も......」

 

 

羅衣は続いてチェス盤を取り出す。

 

 

 

どうやら、2人の心は同じだったようだ

 

 

 

________________

 

 

 

「晴れて補習授業部は解散ですね」

 

 

ようやく普通のルールでチェス盤が動き出す。

俺は黒。

ナギサさんは白でゲームが進む。

 

 

「......ちゃんと全員合格ですよ。俺としても鼻が高いです」

 

 

90点以上を叩き出し、無茶な試験を全員乗り越えた。

まぁ、俺は疲労困憊で寝てたけど

 

 

第三次特別学力試験 結果

 

 

浦和ハナコ 100点

白洲アズサ 97点

下江コハル 98点

阿慈谷ヒフミ 97点

 

 

 

「特にコハルさんの伸び率がヤバかったですよ。まさか30点からここまで上がるとは......」

 

 

惜しくも満点には届かなかったが、それでも高得点も高得点だ。

 

 

「......それは、喜ばしいことですね」

 

 

 

ナギサさんはそう呟いてコマを動かす。

 

 

「私の目付けは最初から違えていたようです。最初から、先生の案に従っていれば......もしくは......」

 

 

自重気味に吐き出される言葉は、ナギサさんの行動全てを否定してしまう言葉だった。

 

 

「別に誰かの意見に従う必要なんてないと思いますよ。実際アズサさんはアリウスのスパイだったんですし」

 

 

妙に動きが鈍いナギサさんのビジョップを取る。

 

「逆に俺の意見を鵜呑みにしてたら聖園さんが動いた時にどうしようもなくなってたでしょうから」

 

 

しかも結局俺は暴走して、自分の役目を全うできなかったんだから

 

 

 

「でもっ、それは、結果論で__「結果より過程を重視する教育方針でして」

 

 

ナギサさんの言葉を遮りながらも、ゲームは進んでいく。

 

 

「ナギサさんが誰よりも苦労して、誰よりも悩んだのは、俺が知ってますから。もうちょっと胸を張っていいんです」

 

 

「.........こんな私でも、ですか?」

 

 

 

「そんなあなただから、俺は友達になりたいって思ったんですよ」

 

 

そう言うとナギサさんは顔を俯かせる。

なんか羽がバッサバサしてるし耳も赤いけど......風邪か?

 

 

「......んーと、ナギサさんのいいところ10個言いまーす」

 

 

「えっ?」

 

 

「まず頑張り屋さんなところですね。」

 

 

 

羅衣式自己肯定矯正術

 

『誉め殺し』

 

基本人は褒められると気分が良くなったり、暗い気持ちが好転したりする。

 

羅衣はそれを極端に行い、励ます時、自己肯定感が低い人に対してこの方法を使っている。

 

 

「二つ目は、友達思いなところ」

 

 

「ちょっ......!?な、何を......?」

 

 

「三つ目はー、責任感が強いところ」

 

 

「ぁと......そ、その......」

 

 

「四つ目は、結構冗談が通じたりするユーモラスなところ」

 

 

「.........うぅ......///」

 

 

「五つ目は、やっぱオシャレさんなところですね。前に水族館に行った時のコートとか可愛かったですよ」

 

 

「はぅ....../////」

 

 

「六つ目は、遊びもちゃんと知ってるところ。俺がこうやってチェスできるのもナギサさんのお陰ですから」

 

 

もう言っても止まらないであろう羅衣を目の当たりにし、ナギサは恥ずかしさのあまり再び顔を俯かせる

 

 

「七つ目は〜、センスがいいところです。あのレモンクッキーの他にも、ナギサさんが贈ってくれたお菓子はどれも美味しかったですから。」

 

 

......どうしてこの人は、こんなにも言葉をくれるのだろう

 

 

「八つ目は、とても思慮深いところ。」

 

 

バカの一つ覚えみたいに、あなたを裏切って、騙したのに?

 

 

「九個目は、こんな俺と一緒に遊んでくれること」

 

 

自分も、他人も、あなたさえも信用できなかったのに

 

 

「十個目は_____

 

 

 

 

そんな、薄気味悪い私に何故______

 

 

 

 

 

 

____誰よりもトリニティのことを考えて、考え抜いたところ」

 

 

 

 

 

________________ぇ

 

 

 

 

「......本当は、苦しい道のはずなのに。それでもナギサさんは前へ進んだ。」

 

 

「誰よりも苦しいはずなのに、それを態度にすら出さなかった」

 

 

 

「誰よりも重圧に押しつぶされそうなのに、誰よりも努力した」

 

 

_____やめてください

 

 

 

「いつだって、笑顔を絶やさずに」

 

 

 

やめて、ください

 

 

 

俯いたナギサの瞳から、涙が溢れる

 

 

 

「......俺が言えたことじゃないですけど」

 

 

 

ないて、しまいます、から

 

 

 

「今はこんなことしか言えないですけど.........」

 

 

 

優しくしないで

 

 

 

「俺は、ナギサさんの味方です。」

 

 

 

そう言って、羅衣はナギサの頬から頭にかけてを撫でる。

 

 

「今度は正真正銘、貴女の味方ですから」

 

 

その手に、涙が触れることを厭わずに

 

 

 

「っぅ.........すみ、ません..........胸を......っ.........貸して.........」

 

 

 

「どうぞ。いくらでも」

 

 

 

羅衣は両手を広げ、ナギサを受け入れる。

 

椅子から転げ落ちるように羅衣の胸に飛び込み、恥も外見もかなぐり捨てて泣きじゃくる

 

 

いつだって、誰かに助けてと言いたかった

 

 

 

自分の考えを受け入れて欲しかった

 

 

誰か、話に、チェスに付き合ってくれる人が

 

 

信じられなかった

 

友達を

 

 

仲間を

 

 

 

 

 

親友でさえも

 

 

 

利用して

 

 

利用して

 

 

 

悪者を演じることしかできなくて

 

 

 

でも

 

 

 

 

「よし、よし。えらいですよ」

 

 

 

 

あまえていいんだ

 

 

 

なでてもらってもいいんだ

 

 

ぎゅっと、だきしめて

 

 

 

「うぇえぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇえっ.........!せん......せい」

 

 

 

らいせんせい

 

 

 

やさしい、おとと

 

 

におい

 

 

 

とくとく、と

心臓の鼓動が早まる

 

 

もう離すまいと、羽が羅衣に巻き付く

 

 

気づいてしまったその気持ちは、行動となって現れる

 

 

 

だいすき

 

すき

 

 

先生としてじゃなく

 

 

 

鏑林羅衣という人間が

 

 

人が

 

 

 

大好きだと、気づいてしまったから

 

 

 

 

____________________

 

 

 

「はいここぉ!人という字はですねぇ!このようにっ!人と人が支え合ってできた字なんですよねぇ!!」

 

 

「せんせー、これなんて読むんですか?」

 

 

「せんせいー、飽きたー」

 

 

「お腹すいた」

 

「眠いです」

 

 

「うぅ.........ぐすっ.........」

 

「............」ジュウカチャカチャ

 

 

羅衣が一度考えをまとめたり、装備を点検するためにシャーレへと帰還したはず

 

 

だが......

 

 

 

「......流石にまだ授業形式は早かったか......」

 

 

大体六名ほど

 

シャーレには新たな部員が増えていた。

 

 

「んー......昼近いし、飯食ったら一回休憩にすっか」

 

 

この子達は全員アリウスの生徒だ。

 

なんでアリウスを受け入れてるのかって?

 

そりゃ、アリウスにも帰りたくない、トリニティは怖い、退学もいやだ

 

って子に『シャーレに来る?』って聞いたら飛びついてきたんだよ......

 

 

戦うのは得意、でも最低限の常識は知りません

 

と言った感じの子達が六人シャーレに来てくれました。

 

あとは、トリニティに残ったり、連邦生徒会の補助を受けて新たな学園に入学したりと

 

 

行き先は様々だが、これ以上彼女らが戦わなくていいのなら万々歳だ

 

 

「......アリ.........あー......」

 

 

「あー?」

 

 

「......いや、明日の朝は何食べたいかなって」

 

 

「あの柔らかいパン!!」

 

 

「......そか」

 

 

 

......聞くのは、野暮か

 

 

 

とまぁこんな感じで俺は一度シャーレに戻りました。

 

Rabbit小隊のみんなは今遠征に出掛けているせいでいないけど......

 

 

あと、リツなんだけど......

 

 

 

________________

 

 

『残る?』

 

 

『はい、まだアリウスが攻め込んでこないと断言できる状況ではありません。だからまだ、ここに残ろうと思います』

 

 

________________

 

 

 

と、今は元補習授業部と一緒に寮で暮らしているそうです。

 

 

まぁ、アビドスの時からずっと一緒だったし、寂しくないといえば嘘にはなるんだけど......

 

 

親心としては、友達と呼べる存在ができて嬉しいな、と

 

 

 

「これ、つまみ食いするな。飯入らなくなるぞ」

 

 

「んむ〜!」

 

 

幸せそうな悲鳴をあげながら作りかけのパスタ麺を啜る『リナ』

 

 

「せんせー、『ハル』が寝ちゃった」

 

 

「マジかい......」

 

 

『ハル』を起こそうと揺らす『ユイ』

 

 

......なんか、娘がもう六人増えた......

 

 

 

......俺、まだ十五歳なのに......

 

 

 

________________

 

 

 

「......忌々しい小娘どもが......」

 

 

「あれ何してるの?」

 

 

「羅衣先生から送られてくる元アリウスの子たちの経過連絡を見て呪詛を吐いてるリツさんですね♡」

 

 

......まずいです

 

帰った時には私なんて忘れられてしまう......!

 

 

「あはは......まさか終わった後もこのメンバーで一緒とは......」

 

 

ヒフミたちはリツの寮室で座りながら駄弁っている

 

......基本飛び出していきそうなリツを取り押さえる係りだが......

 

 

 

「......終わってしまっても、お別れじゃないのは、いいことだと思う」

 

 

 

アズサは噛み締めるように呟く。

 

 

 

「.......そうですね。先生が言っていましたから」

 

 

ハナコの言葉を皮切りに、アズサは羅衣が別れ際にはなった言葉を思い出す

 

 

 

羅衣は、いつも別れの際に『また』という言葉を使わなかった

 

 

必ず、『それじゃあ』や『チャオ』なんて言葉をはぐらかして使っていた

 

 

それでも、今日は

 

 

今日だけは

 

 

 

 

 

 

『じゃあ、また今度!』

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、トリニティを後にした。

 

 

 

......うん。

 

また、会える

 

 

どれだけこの世界が虚しくても

 

 

明日友達に会わない理由にはならない

 

 

 

それに_____

 

 

 

 

「離してくださいヒフミさん!!そいつ殺せない!!」

 

 

「ひゃ、ひゃぁぁぁ......て、手伝ってくださいぃ〜!」

 

 

「あらあら、女の子どうしが抱き合って.....そういう展開も()()ですね♡」

 

 

「な、なんの話よ!?」

 

 

 

__今は、一緒にいてくれる人(友達)がいるから

 

 

虚しさも

 

苦しさも

 

 

乗り越えられる

 

 

 

エデン条約編第二章 おはようから、お別れ fin

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまでは、予定調和

 

 

 

 

 

 

 

 

この物語は、まだ終わりではない

 

 

 

 

 

 

 

次章 

 

 

エデン条約編第三章 

 

 

いつか、ここにあるはずの奇跡




これにて第二章は終了となります。

次回からは幕間をちょこっとやってすぐ後編行ってみよーですからね。

俺も張り切って書かせていただくのでどうか最後までご覧ください。


あとUAやら感想やらありがとうございますっ!!
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