「ねむ......」
羅衣はそう呟きながら会場である古聖堂をぶらつく。
まだ開始時間ではないとはいえ無防備を晒して寝るわけにはいかない。
これはシャーレの威厳にも関わる
「お久しぶりです、ツルギさん」
ぶらぶらと歩き回っていると、見覚えのある猫背の知り合いを発見。
こういう時は声をかけるのがコミュ力のある大人だそうだ。
「あ、先生......先生!!?!!?キエッ(以下略)」
......後ろから声をかけるのもダメか。
俺が声をかけるといつもこんな感じで叫ばれてしまう。
そんなに俺って変なやつかな......
......よし、今度は真上から行ってみるか
「何だ、業者か?」
「ここは立ち入り禁止だ。早々に立ち去れ」
......顔も覚えられんし
「......ここにいらっしゃるのは、シャーレの先生だ。覚えておけ」
首から下げているカードを見せる前に、ツルギさんが答えてくれた。
この人バーサーカーみたいに見えるけどめっちゃ礼儀正しい人なんだよなぁ
めっちゃ優しいし
「「は、はい!」」
「き、肝に銘じます!」
さっきまでぞんざいな対応だった風紀委員会の2人とツルギさんの後ろに隠れていた正実の生徒が怯えながらしっかり返事をしていた。
うーむ、さすがツルギさん。
その眼力だけでほとんどの相手は卒倒するぞ
「ありがとうですツルギさん。」
「あの、先生も舐められないように気をつけていただかないと......」
ん“ー耳が痛い。
俺って威厳ないのかな
「以後気をつけます。いつもツルギさんに助けてもらっちゃって......申し訳ないです」
思えば俺って結構みんなに頼り切ってるところある。
言われて漸く気づいてるようじゃ、まだまだ俺も軟弱者ってわけだ
「い、いえ、そんな......とんでもありません、先生」
いつものドスのきいた声とは打って変わって、少し上擦った可愛らしい声。
「......無理しないでくださいね」
なんとなく、今日は誰かを心配するような言葉がたくさん出てくる。
さっきからなんか嫌な感じがするのが原因かもしれん。
俺は思案しながらもツルギさんの頭を撫でる。
「ミ“ッ!???!?!?」
「あ、やべ」
その後、ツルギさんは再び叫んでどこかへ行ってしまった。
最近会ってなかったから距離感を違えてしまった。反省
『先生、少し古聖堂を見てまわりませんか?』
『お、ナイスアイデア。ちょうど暇してたとこ』
プラナの提案に従い、俺は古聖堂内の順路に沿って歩いていく。
『通功の古聖堂だっけ。』
『はい。最近まで長らく放置されていたそうなのですが、今回の調印式に使用されるとのことで大々的な修理が行われたそうです』
ガイドさながらのわかりやすーい説明でスラスラ情報が入ってくる。
こんな立派な立てもんを放置するとは......無駄遣いだな
『あくまで噂ですが、この聖堂の地下には大規模なカタコンベが存在するようです。』
『カタコンベ?』
『聖堂内に作られた共同墓地のことですね。頭蓋骨を壁に直で埋め込む方式が使われていたそうです』
『なにそれキモっ』
やはり現実には知らなくてもいい現実がたくさんあるんだな。
カタコンベとかもう思考の片隅にすら置きたくない。
改めてキヴォトスの歴史の深さを感じつつ、歩を進める。
『確か、『戒律の守護者』だっけ。ユス......ユ......何だっけ』
『ユスティナ聖徒会ですね。締結された戒律自体を神聖なものと解釈してそれを守護していたトリニティの聖徒会......』
『宗教と政治が同一化しちまってる。やっぱ長くは続かなかったか。』
古関さんがまとめてくれた資料にも、聖徒会。というよりそもそもの『戒律の守護』という方式が時代に乗らなくなってしまったのだろう。
宗教や神の存在を否定する気持ちはないが、あまりいいものとしては解釈していない。
「戒律、か」
約束事......その上位バージョン
もはや生きる上で必ず守らなければならない謂わば『タブー』
日本にもやれ禁足地、やれ五戒十戒みたいな『タブー』はたくさんあった。
どれもこれも人の思いがこびりつきすぎて呪物化してたけど
詰まるところ戒律の守護者というのは、戒律自体を護るものではなく、戒律を破る者に対しての『執行人』
「イヤーな歴史もありました、と」
信仰と狂信の違いでもあるのかな。これは
古聖堂のバルコニー的な所で時間を待っていると、快晴にも関わらず視界に影が掛かる
「......飛行船?」
『ゲヘナ学園の万魔殿が用意した新型飛行船ですね。』
「パンデモニウム......そう思うと誰とも面識が無いな」
空から登場とは、また豪華な
『どうやら各学園のトップが集結するようです』
.........そろそろか
「んじゃ、俺も一国家権力者として務めを________________
聖堂内に移動しようとした瞬間、右ポケットが震える
「マナーモードにすんの忘れてた.........リツ?」
かかってきたのは、リツからの電話。
いつもだったら重要な時は電話かけてこないんだけどな
俺は少し疑念を抱え、リツの電話に出る
「はいもすもす____『早くそこから離れてください!!!早く!!!』
切羽詰まった、というより
もはや怒号
「え、いや、どうした?」
『早く逃げないとミサイ
ブツッ
......切れた?」
スマホの画面を確認する。
電波は、圏外
さっきまでちゃんと電波があった筈
リツは何を伝えようとした?
逃げる?
一体何から_____
『____生!!先生ッ!!!』
「_____は?」
飛行船で気が付かなかった
東の方の空から、何だあれ
ミサイル?
無音
妙に昼間が明るく見える
素通りの線は?
否
堕ちてくる
“大人のカードを使う“
虚式
“茈“
ちょっと短めでサクサク進んでいけそうだな!(フラグ)