百一話
ジスタートの戦姫の一人で『
そこに短く赤い髪の十代くらいの男が倒れていた。
アスヴァール王国からジスタートへオルガにソフィーヤとマトヴェイと共に戻ろうと船で航海していた時に海竜を操るトルバランを倒すために海へと飛び込みながら黒弓にやる射撃をし、トルバランと海竜を射抜いたが海竜の抵抗の圧で気絶させられて海に沈められてしまったティグルヴルムド=ヴォルンだ。
しかし、黒弓は勿論、矢筒に普通の剣より短い片刃の剣など海の勢いで落ちてしまったのか装備品は無かった。
「ん……おい誰か倒れているぞっ!!」
「大変だッ!!」
砂浜で倒れているティグルを貝を採った釣りをするために毎日、砂浜へと足を運ぶ村人が発見する。すぐに一人が駆けつけてもう一人は他の村人の助けを呼びに行く。
「おい、大丈夫か……おいっ!!」
「ぅ……げほ、ごほ、げほ、ごほっ!!」
村人が身体を揺さぶりつつ、声をかけるとせき込みながらティグルは海の水を吐く。
村人は背中を軽く摩って海の水を吐き出していくのを様子見する。
「う、うぅん……」
そうしてティグルは呻くも目を覚まさない。
とりあえず村人達は見捨てる訳にも行かず、村へと連れて行き、手当てをした。
「っ……うう……」
『おお、目を覚ましたぞ』
手当をして二日後にティグルは意識を取り戻し、目を覚ます。
「こ、ここは……「おっと、ゆっくりだ」」
ティグルが目を覚まして勢いをつけて起き上がろうとしたので村人はゆっくり起き上がらせるようにした。
「此処はレグニーツァから離れた場所にある――村だ。君は?」
「お、俺は……う、うぅぅ、あ、頭が……」
ティグルは自分の事を紹介しようとしたが、酷い頭痛を感じたし、なにより名前が出てこなかった。
「わ、分からない……」
ティグルは自分の名前や自分の事を思い出せなかった。村人達は水で濡れていた事もあり、船旅で波にやられ流れ着き、その際のショックで記憶喪失になったのだと推測する。
だが、ティグルはもっと集中して頭の中を探り……。
「ウルス……ウルスだと思う」
頭の中でウルスという名前が思い浮かんだのでそれを名乗る。まあ、彼の父親の名前なのだが……それと自分が何処の国で暮らしていたかやこの地に流れ着くまで何をしていたかなどは思い出せなかった。
とりあえず、皆の仕事を手伝って金銭を貯め、記憶が戻る日を期待しながら王都シレジアにも向かってみれば良いという方針を出し、ティグルは命を救われた恩義もあるのでそれを返す為もあり、村人の意見に賛同したのであった……。