ティグルはトルバランと海竜を倒すために躊躇せずに船から海へと飛び込みつつ、黒弓の力を使って標的を射抜いた。
しかし、海に落ちたティグルは当初ではそのまま、気合で泳ぎながら浮く事を考えていたが海竜が倒れながら動いたそれで計算が狂い、海竜の尾が繰り出した圧を受けて気を失ってしまい、海の中に沈んだ。
そうして黒弓に矢筒、普通の剣より短い片刃の剣など装備品を失った状態でジスタート内のレグニーツァ領にある砂浜内に流れ着き、近くの村人に救われた。
だが、ティグルは記憶を失ってしまっており、頭に浮かんだウルスの名を口に出した事でウルスとなり、とりあえず記憶を取り戻すまで村で働きつつ、村での生活で記憶が戻らなければジスタートの王都に向かう事として生活を始める。
実際、村での生活で自分が狩人である事を思い出し、村が用意していた弓と矢を装備し、山に行って獣を狩ったりなどしたのである。
そんな中、少ししてアレクサンドラ=アルシャーヴィン達、レグニーツァと戦姫の一人であるエリザヴェータ=フォミナが領するルヴーシュに近い海域にて海賊の大軍が姿を現し、それに対してエリザヴェータとアレクサンドラが船を貸して海賊退治に向かったソフィーヤにオルガが討伐をしたのである。
そもそもにしてこの海賊たちは実はトルバランがティグル達を襲撃した後、ジスタートを荒らそうと海賊団と取引して用意した海賊団でトルバランがいなくなった事で勝手に動き出したのだ。しかして、三人の戦姫達の武威によって大半は討伐されたが逃げ出した敗残者達もいた。
「しっ!!」
ティグルはある日、村人の仕事の手伝いと戦姫による海賊の戦いを聞いてそうした生き残りの襲撃を警戒、村人を守るためについて行ったのだ。
そうして矢筒から五本の矢を引き抜き、そのまま弦に番えると身を潜ませていた海賊に対して矢を連射して海賊の額や胸を射抜いていく。
「せいっ!!」
更にティグルは舞踊るように動きながらやはり、矢筒から複数の矢を引き抜き、超速連射する事で身を潜ませていた海賊を全滅させたのである。
「見事な弓の技と体捌きでしたわ……お前の名は?」
そんなティグルに長い赤髪に凛々しく美麗な容姿、両眼は右が金の瞳で左は碧の瞳という
側近としては三十代の騎士の男であるナウムを連れ従えている。
「う、ウルスです……失礼ですが、貴女様は?」
「私はルヴーシュを納めている戦姫、エリザヴェータ=フォミナですわ。ウルス、私の瞳をどう思う? 思った事を素直に言いなさい」
異彩虹瞳はある地方では吉兆とされており、別の地方では凶兆とされている。そのせいで幼い頃から苦しめられてきたのだ。幸い、戦姫になって治める事になったルヴーシュでは吉兆扱いであったが……。
ともかく経験が経験なので自分が戦姫なので美しい物だと答える事しか出来ないと知りながら気が向いた時、人に自分の瞳の事を問いかけている。
そうして、その質問をウルスにすると……。
「猫みたいですね、昔、そんな瞳の猫を見た事があります」
率直に言うと村人達に思いっきり突き飛ばされたりした。だが、エリザヴェータは村人が緊張し、ナウムは対応に迷う中で呆然とした後にあまりに予想外なのもあってか、口元を手で押さえ、体を折り曲げて笑った。
その後、村人からウルスの事を聞くとエリザヴェータはウルスを引き取る事を告げ、こうしてティグルはエリザヴェータに仕える事になったのだった……。