十三話
ブリューヌ王国の勢力図を百とした場合、現在政争を繰り広げているテナルディエとガヌロンの両公爵がそれぞれ三十五、他の貴族は残りの三十に属する事になる。
そしてこの三十の内、二十は騎士団であり、王都や国境、国内の要衝を守る者たち全てを合わせた数だ。中立の立場を取っている諸侯など残りの十でしかない。
つまり、ティグルがテナルディエとガヌロンに本気で対抗するなら最低でもこの三十からなるべく多く味方につけたり、最低でも両公爵に味方させないようにする必要があるのだ。
ティグルは現在、テナルディエとガヌロンに対抗するためと称して自分が治めるアルサスからブリューヌ王国の東部諸侯の何割かと同盟を組んだ。
だが、当然足りない。
まず、これよりは自分がジスタート王国の戦姫の一人にしてライトメリッツの長であるエレオノーラと手を組んだ事についてブリューヌ王国に対して反逆を企てているものではなく、自分の領地を壊滅させようとした両公爵に対抗するためのものだと残りの東部諸侯、そして中立の立場である他の諸侯たちにも正当性を訴えた上で両公爵に対抗するため、力を貸してもらわなければならないのだから……。
そんな中でマスハスに自分が書いたザイアンとの戦についての書状を王宮へと送り届けに行ってもらい、エレオノーラは一度、ジスタート王に事の経緯を報告するために旅立っていった。
そして、ティグルはエレオノーラによって、補佐に付けてもらったリムアリーシャと共にバートラン他、アルサスの兵、『どうしてもついていきたい』と申し出た妻のティッタに戦での勝利で仲間にしたテナルディエの兵、そしてルーリックやアラム達ライトメリッツ兵たちと共にまずはマスハスから勧められたテリトアールを治めるユーグ=オージェ子爵の元へ仲間になってもらうために向かう事になった。
因みに兵数としてはそれぞれの軍から募った精鋭による百だ。
オージェ子爵はティグルの父であるウルスとマスハスの共通の友人であり、ティグルも一度、小さい頃に挨拶をした事があるし、ウルスが亡くなった後も使いの者を送ってくれたのでその時に礼を言いに行った事もある。
ともかく、ティグルはヴォージュ山脈の南端があるテリトアールのベルフォルの町へと向かい……。
「よく来た、ティグル。いやヴォルン伯爵……久しぶりだな、そして聞いたぞ、結婚したそうだな。そこの少女かな?」
質素な部屋にある飾り気の無いベッドにて人の良さそうな笑みを浮かべた老人が体を起こしながら言う。
「はい、妻のティッタです」
「初めましてオージェ子爵様。ティグル様の妻、ティッタです」
ティグルが紹介をする事でティッタは改めた自己紹介をした。
「状況が状況だが祝わせてくれ、おめでとう、ティグル、ティッタ」
『ありがとうございます』
オージェからの言葉にティグルにティッタは礼を告げた。
「しかし、オージェ子爵。どこかお体でも悪いのですか? もし悪いのなら、日を改めても」
「なに、ちょっと怪我をしただけじゃよ。息子が遠くにいてすぐには帰れないのもあって、周りが大げさに安静にしろ、体を労われというのでな……それでそちらがジスタートの戦姫殿かな?」
「すみません、紹介が遅れました。彼女はリムアリーシャ、戦姫エレオノーラ=ヴィルターリアが信頼している副官でライトメリッツ兵たちの指揮官です」
ティグルに苦笑とため息を吐いたオージェはリムアリーシャの方を見たのでティグルは紹介し、リムは無言で一礼するとオージェも会釈を返した。
そうして、今までの話をすれば……。
「ああ、やはりお主は只者ではないと思っておったよ。いずれ両公爵を相手取るかもとな……それに東部諸侯の何人かを仲間とし、ジスタートの戦姫をも仲間としてみせた。ふふ、これならば十分、渡り合えるじゃろう」
「では、力を貸していただけますか?」
「この老骨の力で良ければと言いたいところじゃが、実はこちらも今、余裕が無いのだ」
ティグルが苦々しい表情を浮かべたオージェに質問すれば、ヴォージュの山々に今、盗賊団が居座って暴虐を働いているとの事。
当然、盗賊団を討伐するべく、兵を率いて向かったが開戦して少しするとわざと撤退する事でオージェと彼が率いる兵を、矢や石、土砂などの罠を仕掛けた場所へと誘き寄せ、そのまま罠によって、撃退されてしまった。
盗賊団は大体であるが、二百程だがドナルベインという元傭兵が頭領になっていて、戦い慣れた者の実力を発揮してみせたのだ。
「では、その盗賊団は俺たちが掃討してみせましょう」
リムアリーシャにも目配せして頷くそれを見るとオージェへと盗賊団の討伐を引き受ける事を告げたのだった……。