テリトアール付近にあるヴォージュ山脈の南端を拠点としていて、蹂躙しようとしていた二百の盗賊団とその首領である元傭兵のドナルベインをティグルは討伐した。
「まさか、盗賊とも繋がっているとはなぁ……」
ザイアンの兵だったものの中にはドナルベインを知っていた者がいて、その者が言うにはザイアンの父親でブリューヌ王国の公爵の一人であるテナルディエが何度か雇っていたのを見たとか。
「そうした伝手でも無いと、この甲冑は手に入れられませんしね」
盗賊団の中には上質だと分かる金属製の鎧やら兜に籠手を身に着けていた者がドナルベイン含めて十人ほどいた。リムはそれに見覚えがあり、戦神グラフを模した奇妙な紋様の刻印が鎧の内側、脇腹あたりの目立たないところを見るとエレオノーラと同じ戦姫の一人でリュドミラ=ルリエが治めるオルミュッツの物だという。
「テナルディエがオルミュッツとは長い交流があるとは聞いたことあるな。しかし、盗賊にこうした装備の提供……オルミュッツの偽兵として動かす予定だったかもしれんな」
今の時期にそれなりの腕と勢力の盗賊団、それがオルミュッツの装備を持っている事から自分に靡かない東部勢力を攪乱しつつ、制圧するための物だとティグルは予測した。
確実にテナルディエが関わっているのは間違いない。
「動かせる手が多いな、向こうは」
改めて公爵の権威に人脈の大きさを理解しつつ、百人近くの捕虜を連れつつ、盗賊団の討伐を報告しにオージェ子爵がいるベルフォルへと帰還していった。
「盗賊団の討伐を果たし、戻ってきました」
「たった数日でとはな……ヴォルン伯爵、リムアリーシャ殿。テリトアールの主として心から感謝申し上げる。故にこの老骨で良ければ喜んで力をお貸ししよう。今後、テリトアールの兵は悉くお主と共に戦う事を誓おう。近隣の貴族もお主の味方になるよう、説得しよう。見込みのある者もそう多く無いが、それでも集まれば兵の一千程にはなろう」
「ありがとうございます」
「いや、野盗どもを退治してもらったのだからこれくらいは当然の事。それにわしは王家に忠誠を誓ってもテナルディエやガヌロンの下に立つのは御免こうむるのでな。用意が整い次第、わしか、儂の息子がお主の元へ馳せ参じよう」
オージェ子爵はティグルの力になる事を誓った。そうして勝利の宴を開き……。
「ふっ……そういう事だったか、予測の範囲でしか無いとはいえ、テナルディエの権威に力、性格を考えればそれぐらいやってもおかしくは無いな」
「警戒はしながら、備えていきましょう」
「ああ……ふふ、それにしても大分実力を隠していたようだな」
「目立てば何されるか分かりませんからね」
オージェと酒を飲み交わしつつ、テナルディエとドナルベインが繋がっていた事やオルミュッツの防具を幾つか所有していた事などを報告すると何とも言えない表情を浮かべ、そうしてより一層警戒しつつ、対抗する事を決め合った。
その後……。
「帰って来たぞ、ティッタ」
「はい、ティグル様……んちゅ」
ティグルとティッタに割り当てられた部屋の中でティグルはティッタを抱き締め、それにティッタは抱き締め返すと深く口づけしていく。
「ティッタ、愛しているぞ」
「わ、私もです。ふぁ、ん、あ、ふああっ!!」
そうして、ティグルは寝台の上でティッタに対して自分の内部で感情を湧き上がらせながら、満たすべく求め交流していく。
「(前まではこんな事は無かったのにな)」
満たされているが、しかし求める欲望は変わらない。繋がるまでティッタには妹のような愛情しか抱いていなかったのに彼女の愛情に応え、繋がった瞬間に何もかもを手に入れたいという欲望を抱いている。
「ティッタ」
「ティグル様……」
男とは単純な物だと感じながらも夜が更けていく中、愛するティッタを求め繋がり続けるのであった。
その後、アルサスに戻りながらもオージェ子爵の協力も得て東部諸侯の勢力と外交をし、大なり小なり自分に協力させる事を誓わせていく。
「予想よりは味方を増やせたな。勿論、エレオノーラやリムたちの協力あってだが……ありがとうな」
「いいえ、ティグルヴルムド卿の実力に立ち回り、人柄があってこそです」
「それはどうも」
思ったより戦力を揃えられた事を喜びつつ、リムアリーシャと笑みを交わし合うのであった……。