魔弾の王は戦姫と英雄譚を紡ぐ   作:自堕落無力

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十八話

 

 ひょんな事からエレオノーラの別荘の一つである『キキーモラの館』から馬で半刻ほど移動したところにある『ロドニーク』という村へティグルにエレオノーラ、リムアリーシャ、エレオノーラとは個人的関係で言えば、犬猿の仲であると共にティグルと敵対しているテナルディエ公爵と国交を結んでいるオルミュッツ公国の戦姫リュドミラという奇妙な集団で向かう事になった。

 

 こうなったのはティグルに会いに単身、リュドミラが『キキーモラの館』を訪れたからでもある。

 

 そして、『ロドニーク』へ向かう道中……。

 

「とまぁ、そういう事ですよ」

 

「へぇ……」

 

 先を行くエレオノーラとリムアリーシャの二人の後ろを追うように移動しながら、ティグルはリュドミラと話をしていた。

 

「中々、聞かせてくれるわね」

 

「それはどうも」

 

 リュドミラは無駄を嫌う性格ではあるのだが、アルサスや自分の事について話すティグルとの雑談は思ったより、聞き心地が良かったので賞賛を贈った。それにティグルも丁寧に応じる。

 

 そうして雑談を交わしながら、ティグル達は何も無い荒野の中に建設されている大き目の村である『ロドニーク』へ到着していた。

 

 中央に大きな川が流れていることぐらいが特徴の平凡な町並みで町を囲む壁、腰の高さまでは石を積んであり、それ以上は丸太と木の柵で構成されているというもの。

 

 通りは雑草を抜いて土を固めてある程度で小石などは普通に転がっている家々の造りも素朴で気の壁に漆喰を塗り、屋根は茅葺きのものがほとんど。

 

 大通りには露店が幾つか並んでいるが、それも数えられるほどしかないというなんともない町ではあるのだが……。

 

 一つだけ普通じゃないところがある。それは井戸を掘っていたら水では無く、温泉が湧いたのだ。

 

 そのため、『キキーモラの館』と同じくらいで奥行きは倍以上あり、平たい屋根という石造りの建物にして中に浴場を三つ有する『大浴場』がある。

 

 エレオノーラによると何代か前のライトメリッツの戦姫はロドニークの温泉が好きだったようで浴場を維持する代償に税を免除したとの事。

 

 

 

『キキーモラの館』を建てたのもその戦姫との事でヴォージュ周辺の視察も兼ねてという建前を用意したのだろうともエレオノーラは言った。

 

 

 

 ともかく、ティグル達は町へ入り……。

 

「エレン、結構距離もあったから、小腹空いてるんだ。湯浴みをする前に何か食べないか?」

 

 エレオノーラが小麦の(カーシャ)の露店を見て食べたそうにしているのを見たティグルは助け舟を出す。

 

「うん、そうだな。お前がいうなら、そうしよう」 

 

「わたしはいらないわ。戦姫が露店で物を食べるなんてはしたないし……それに空腹と言う訳でも……」

 

 エレオノーラは相好を崩して頷いたが、リュドミラは憮然としながら、断った。

 

 

 

『……』

 

 しかし、リュドミラの意思に反して彼女から腹の音が鳴った。

 

「そうか、本人がそんなに要らないというなら仕方ないなぁ」

 

 ティグルとリムアリーシャはそれぞれ、リュドミラの腹の音を聞いてない振りをしたのだが、エレオノーラは愉快そうに体を震わせ、口の両端を吊り上げると露店へ向かい、数枚の銅貨を支払う事で木製の椀に粥を盛って貰って悠然とした足取りで戻ってきた。

 

 そして、わざわざリュドミラの前に立ってゆっくりと木製の匙で粥を口に運んでみせると言う大人げない事をした。

 

 リュドミラはリュドミラでその場から立ち去るなりすれば良いのだが目を細め、唇を引き結んで顔を怒りで青ざめさせながらも動かず、拳を握り締めてエレオノーラを睨みつける。

 

 

 

 

「……さてと俺も買うか、リムもいるか?」

 

「よろしくお願いします」

 

 リムアリーシャが頷くのを見るとティグルも露店へと向かい、自分の分は多く銅貨を払う事で多めに盛ってもらいながらリムアリーシャの分と二つの椀を運び……。

 

「良かったら、少しどうですか? 男だからか思ったより多く盛ってもらえたので」

 

ティグルはリムアリーシャに彼女の分の粥を渡しつつ、自分の粥をリュドミラに差し出した。

 

「そ、それならいただくわ」

 

 リュドミラは手を伸ばして碗を受け取り、粥に息を吹きかけて冷ましながら口に運ぶ。

 

「……悪く無いわね」

 

「それはなにより」

 

「この事は覚えておくわ、ヴォルン伯爵。今度、私の紅茶(チャイ)を御馳走してあげる」

 

「楽しみにしています」

 

 微笑むリュドミラにティグルも微笑みで応じた。だが、突如、エレオノーラがティグルの襟へと腕を伸ばして掴み、離れた所へ引きずる。

 

「お前、なんであんな事をする」

 

「なんでもなにも……いくら嫌いな相手だからってお前のあの行動は見ていて気分の良いものじゃ無かったからな……何事も限度はあるだろう」

 

「だからって……お前は私のものだろう。なら……」

 

「それはその通りだが、俺の主ならもっと余裕を持ってほしいんだよ。別に嫌いな相手と仲良くしろとまでは言わない」

 

「むぅ、分かった……だが」

 

「っう」

 

「あの女に粥をくれてやったのはやっぱり、気に入らない。これぐらいは許せ」

 

 エレオノーラはティグルの花を摘まんで軽く引っ張ったのだった……。

 

 その後、ロドニークの大浴場へと入ったティグル達、大浴場の中には浴場だけでなく、宿屋や酒場、露天まであって賑わっていた。

 

 リムアリーシャがティグル、エレオノーラとリム、リュドミラという割り当てで部屋を三つ取る。

 

 そうして、少し自分の部屋で瞑想していたティグルは浴場を楽しもうとエレオノーラから『戦姫専用』の浴場が貸し切りだから、そこを使えと言われたので其処に向かった。

 

 ちゃんとエレオノーラ達が脱衣所を使ってない事などを確認して衣服を脱ぎ、藤で編まれた籠に脱いだ服を入れ、扉を開けて豪華な浴場へと入る。

 

 まずは身体を洗おうとしていると……。

 

 

 

 

「ふふ、ようやく入ってきたか」

 

「……」

 

「は?」

 

 いつのまにやらそれぞれ、スタイル抜群で美しい身体を晒しているエレオノーラとリムアリーシャが浴場に入って来た。

 

 エレオノーラは堂々としつつも顔は赤らめていて、リムアリーシャは凄く恥ずかしそうにしている。

 

 ティグルは一瞬、混乱し固まった。

 

 

 

「なに、頑張っているご褒美と言うやつだよ、嬉しいだろう?」

 

「それは嬉しいが……」

 

「ともかく、ほら背中を流してやるぞ」

 

「……」

 

 こうして、ティグルはエレオノーラとリムアリーシャに身体を洗われたり、自分も二人の身体を洗ったりしながら浴槽へと共に入った。

 

 

 

 その後……。

 

「部屋を三つ取った意味ないだろう、これ」

 

「まあ、良いじゃないか。我が兵たちもいないのだから」

 

「こ、個人的なものですからね」

 

 何故かティグルの部屋にエレオノーラとリムアリーシャの二人が入ってティグルは左右からエレオノーラとリムアリーシャに抱き締められつつ、共に寝る事になった。

 

「(こ、これは寝れねぇよ)」

 

 浴場でもそうだが、エレオノーラとリムアリーシャの匂いやら感触やらにティグルは驚異的な忍耐で衝動的にでも手を出さないよう、頑張るのであった……。

 

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