魔弾の王は戦姫と英雄譚を紡ぐ   作:自堕落無力

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二十話

 

 ロドニークからの帰り道、ティグル達はテナルディエ公爵が放った優秀な七人の暗殺集団である『七鎖』の待ち伏せにあった。

 

 実際、『七鎖』は優秀だ。ティグル達の同行を探り、森に潜んで鋼糸を張り巡らせる罠まで仕掛けたのだから……。

 

 もっとも狩人としての超感覚を有するティグルによって事前に察知され、弓によって遠距離から一方的に射抜かれてしまったのでどうにもならなかったようだが。

 

 とはいえ、一人だけでも生き残り、逃げおおせたのは中々の物であるといえる。

 

 そうして、リュドミラと別れてティグルとリムアリーシャはアルサスに帰還し、エレオノーラは兵の準備などのため、ライトメリッツに帰還した。

 

 その数日後、オージェ子爵からティグルへと手紙が二つ送られてきた。

 

 一つの目の手紙はオージェの直筆のものである。

 

 内容は『ヴォージュ山脈を越えようとしていた怪しげな旅人を捕らえたのだが、テナルディエ公の使いの者らしい。この者が持っていた手紙をお主の元へ送る故、見て欲しい』というものだった。

 

 そして、二つ目の手紙の内容は……。

 

 

 

『エレオノーラが兵を率いてブリューヌへ向かったら、当初の計画通り、手薄になったライトメリッツを直ちに攻めてほしい』

 

 テナルディエ公爵がリュドミラに対して宛てたものであった。

 

 この手紙を持った者は盗賊団が掃討された後、野盗の残党がいないか目を光らせて探っていた時に見つかって捕らえられたとの事だが……。

 

 

 

「まあ、わざとだな」

 

「その可能性が高いですね」

 

 

 ティグルとリムアリーシャはわざとこの手紙がティグル達に渡るように仕向けたのだと察した。

 

 オルミュッツ公国はジスタート王国の南西部に位置し、北上して王家の直轄地を通過すればエレオノーラの治めるライトメリッツに達し、西に歩いていけばブリューヌ王国との国境線代わりともいえるヴォージュ山脈に辿り着く。

 

 最短距離でリュドミラの元へ手紙を届けるならばテリアトールからヴォージュ山脈を経由するのは間違いでは無いが、テナルディエ公爵の味方でも無いオージェ子爵の領地を通るなど普通に愚かな行為である。

 

 現に捕まっていて手紙も渡ってしまった。

 

 

 

 

 だからこそ、そもそも内容を分からせるための行為だと察した。

 

 東部諸侯に戦姫が味方にいるのはティグルだけでない事、そしてオルミュッツが動く事を警戒させるための一手だ。

 

 更にエレオノーラに対しての牽制にもなる。

 

 本当はオルミュッツの偽兵としてドナルベイン達を動かす事で更にテナルディエが戦姫と繋がっている事を証明しつつ、牽制の効果を強める策略だったのだろう。

 

 そして、この手紙が来て少しするとエレオノーラが使者を通じて急遽、ライトメリッツに来るよう言ってきた。

 

 なんとリュドミラがライトメリッツの南の国境近くに冬に備えた訓練という名目で歩兵二千を集めているとの事だった。

 

 

 

 

「利用されているのは分かっているだろうに……リュドミラめ」

 

「まあ、関係の長さもあるからそう簡単には辞める訳にもいかないんだろう。テナルディエが有する財力も権力も大きいしな」

 

 テナルディエに義理立てするリュドミラに対し、エレオノーラは毒づき、ティグルは感想を述べる。

 

「一応、手紙は送ってみよう」

 

 そうしてリュドミラにテナルディエがリュドミラに送った手紙をそのまま、送りつつテナルディエはリュドミラを利用しようとしている事を強調する。

 

 暗殺集団や盗賊団を使うような者に利用されるな、こちらに敵意が無いなら兵を下げてほしいと二度ほど使者をリュドミラに送った。

 

 だが、リュドミラはティグル達の要請を拒絶したのである。

 

「やるしかないな」

 

「丁度良い、どちらが戦姫として上か分からせてやりたかったところだ」

 

 こうして、ティグル達はリュドミラと交戦する事になったのだった……。

 

 

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