魔弾の王は戦姫と英雄譚を紡ぐ   作:自堕落無力

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二十一話

 

 ティグルとエレオノーラ達はオルミュッツを治める戦姫であるリュドミラと交戦する事になった。リュドミラがライトメリッツの南の国境に兵を集めたからである。

 

 テナルディエがリュドミラの名を出してブリューヌ王国の東部諸侯を牽制しようとしている事などを教えもしたのだが、彼女は兵を引かなかった。

 

 よって、交戦する事になったのだ

 

 率いる兵の数は歩兵が二千五百であり、騎兵は五百という編制で合計は三千である。

 

 秋の終わりなのでティグルにリムアリーシャや兵士は鎧の上から毛皮の外套を羽織り、更に寒さに弱い兵士は毛皮の帽子の上から兜を被り、手袋もする。

 

 ただ、エレオノーラはアリファールによる風の守りで寒さを防げるので青を基調とした軍衣と赤い肩掛け、その上から胸当てと籠手、脛当てをつけるといういで立ちだ。

 

 そうして、ライトメリッツ軍は南下し、ライトメリッツとオルミュッツの公国の間に横たわる王家の直轄地を抜ける。そうして、ライトメリッツ軍は東にタトラ山脈を望むブルコリネと呼ばれる平原に到着する。

 

「前方に敵!! 数はおよそ二千!!」

 

 秋から冬にかけてはタトラ山から吹き下ろされる風のため冷気に包まれ、雪がちらつく事もあるこの平原にて斥候から報告が届く。

 

 すると甲冑に身を固め、厚地の白い外套を羽織った歩兵の一団が現れる。鉄の林の如く槍が空に翳され、黒龍旗と白地に蒼い槍を描いたオルミュッツの軍旗がひるがえった。

 

 そうして、お互いの距離が五百アルシンまで縮められた時、空から淡い雪が静かに舞い落ちる。

 

 それを合図とするかのように両軍の角笛が鳴り響き、戦が始まった。

 

 

 

「ふっ!!」

 

「がっ!?」

 

 矢戦が行われたがティグルは長弓にて五百アルシンの距離から正確にそして素早く次々と複数の弓兵や指揮官らしき兵などを射抜いていく。

 

「馬鹿な……」

 

 オルミュッツの甲冑は中々の防御力を誇るがそれを容易く貫くティグルの剛矢にオルミュッツ軍は驚愕する。

 

 もっともティグルの放つ矢は最近、オルミュッツの甲冑をも溶かした合金製の鏃による特製の剛矢である。

 

 そうして、ティグルの存在あって矢戦にて圧されるオルミュッツ。

 

 

 

「良し、このまま行くぞっ!!」

 

 エレオノーラは号令を出し、歩兵部隊は突撃を開始する。

 

「はあっ!!」

 

 ティグルは無論、そんな歩兵たちを尋常ならざる弓の技にて支援する。

 

「ティグル、リムの援護を頼む」

 

「分かった」

 

 ティグルの超絶的な弓技の援護あって、戦況的には圧しているライトメリッツの歩兵たち。だが、オルミュッツ軍も中々にしぶとい。

 

 リムアリーシャの騎兵にて側面を突く事にする。

 

 それにティグルを同行させ……。

 

 

 

 

「はああっ!!」

 

 ティグルはオルミュッツの軍を観察しながら、なるべく指揮官を優先して弓で打ち抜いていく。

 

 オルミュッツ軍はリムアリーシャの騎兵による突撃、遠距離から放たれるティグルの弓技、歩兵の突撃もあって陣形が崩れていき、撤退を開始した。

 

「徹底的に叩くぞっ!!」

 

 そうして、ライトメリッツは撤退するオルミュッツ軍に追撃を仕掛け、甚大な被害を与えてある程度のところで追撃を止めると陣営を設置する事になったのだった。

 

 

 

 

 翌朝になると早朝のブルコリネ平原はぼんやりとした霧に覆われる。

 

 警戒して後退し、様子を見るライトメリッツだがその間にオルミュッツ軍は姿を消していて、斥候により探せばタトラさんの山道に幾つもの防壁を設置していたとの事。

 

そうして険しいタトラ山をティグルにエレオノーラは進んでみれば、リュドミラの指示によって作られた重厚な防御陣地があった。

 

 

 

 広い壕を掘り、柵を設置し、木材や石、土を固めた壁を築いてその後ろに高台を設置していたのだ。

 

「く、知っているだけあって私の竜技(ヴェーダ)の対策もばっちりだな」

 

「じゃあ、一緒にやるか」

 

 そうして、ティグルは黒弓を用意し……。

 

 

 

 

「俺とお前の力あれば、いける筈だ……頼むぞ、アリファール」

 

 ティグルは黒弓を構え、矢を番えて引き絞ると鏃に黒い光が収束されていった。

 

「まったく、ティグルでなければ怒っていたところだぞ、アリファール」

 

 弓の方へとエレオノーラはアリファールを向ける。するとアリファールは青白い光を放つ。

 

 するとアリファールから風が矢へと送り込まれ、鏃の周りに輝く気流が生まれる。

 

 黒い光を纏う矢の鏃を中心に真円を描いて広がっていった。

 

 

 

『撃ちなさい、あなたが撃ちたいものを』

 

 そして、声が弓からティグルに対してかけられる。

 

 

 

「ああ、撃ってやるさ」

 

 声に応じながら、ティグルは矢を放つ。

 

 螺旋を描く閃光が放たれ、それは次々とオルミュッツの防御陣地を破壊していったのだ。

 

「ふ、やはりお前を私の物にして良かった」

 

「だろう」

 

 こうして防御陣地を破壊したティグルとエレオノーラは当然、攻め込んでいたのであった……。

 

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