魔弾の王は戦姫と英雄譚を紡ぐ   作:自堕落無力

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二十六話

 

 テナルディエ公爵との対決に備え、テリトアールの西に幕営を設けて駐屯している形のティグルたち、『銀の流星軍』の元へとガヌロン公爵の片腕として知られるグレアスト侯爵が話がしたいと持ち掛けてきた。

 

 ティグルはまず、それを伝えてきた兵に二百アルシンほど離れた所にテーブルと椅子を用意させる事とした。

 

 テナルディエ公爵は勿論として、撤退したとはいえ、ガヌロン公爵も又、ティグルの愛すべきアルサスを侵略しようとした敵であるし、そもそもグレアストはその侵略軍を率いた指揮官でもある事をマスハスからも聞いているので知っている。

 

 そんな相手を幕営の中に招き入れるなど言語道断だ。

 

 そして、オージェ子爵の元に行き、グレアストの事について話せば……。

 

「グレアスト……あ奴が来たか」

 

 オージェ子爵は何度かグレアストに会っているので知っており、冷酷で物騒な男だとの事だ。

 

「とりあえずは話を聞いてみます。仮にも相手は候爵ですし……ろくでもない事になるとは思いますが」

 

「わしも行こう。グレアスト侯爵本人かどうか、確かめんといかんし」

 

「よろしくお願いします」

 

 そうして、オージェの言葉もありティグルは彼とそしてティグルとライトメリッツの結びつきの強さの誇示やライトメリッツ軍に不利な話をするかもしれないという疑惑を消すため、エレオノーラとティグル達の元に味方しているという話の証明にライトメリッツ側のような事からリュドミラも伴ってグレアスト侯爵との会談の場へと向かう。

 

「間違いない、グレアスト侯爵じゃ」

 

 二十代後半に見える見た目の男で貴公子然とした顔立ちで丁寧に整えられた灰色の髪、長身に似合う金の刺繍が入った豪奢な絹服を着こなした者の姿を見てオージェが言った。

 

 

 

「初めまして、グレアスト侯爵。ヴォルン家の当主ティグルヴルムドと申します」

 

「初めてお会いする、伯爵。カロン=アンクティル=グレアストだ」

 

 ティグルもグレアストも貴族としての挨拶を交わす。

 

「オージェ子爵ではないか。隠居したかと思っていたが、まだまだ元気そうだ」

 

「生憎、気楽に隠居できる程、世の中が平穏ではないものでな」

 

「せっかく、健康なまま老いる事が出来ているなら、無理はせぬのが利口だろう」

 

 グレアストはオージェの姿を見ると意地の悪い笑みにて言葉をかけ、オージェの皮肉に対し、鼻で笑う。

 

「ジスタートの戦姫にしてライトメリッツ公国の主、エレオノーラ=ヴィルターリアだ」

 

「同じくジスタートの戦姫にして、オルミュッツ公国の主、リュドミラ=ルリエよ」

 

 エレオノーラとリュドミラが自分たちに視線を向けたグレアストへ自己紹介をする。

 

「ほう、ディナントでわが軍を敗走させたという『銀閃の風姫(シルヴフラウ)』に質の高い甲冑で有名なオルミュッツの戦姫……どちらも可憐な乙女ですな」

 

 グレアストはエレオノーラとリュドミラの元へと歩んでいき、特にエレオノーラへ熱っぽく絡みつくような不快な視線を送った。

 

 

 一応、リュドミラに右手を差し出し、彼女に手を取られた後で次にエレオノーラへと右手を差し出し、手を取らせる。

 

 

「ほう、確かにどちらも戦姫と呼ばれるだけはありますな。鍛えられた戦士のそれを兼ね備えている」

 

 っ評しながらもグレアストは握手したままに己の左手をエレンの手に添えて包み込む。滑らかな肌の感触を楽しむかのように擦り合わせ、撫で回す。礼節の範囲に収まると思わせる巧妙さでやっているのでかなり悪質である。

 

 

 

「リュドミラ=ルリエ様、貴女は元はテナルディエ公爵と国交があった筈、それにエレオノーラ様も……何故、貴女たちがヴォルン伯爵に協力を?」

 

「雇われたのだ。伯爵の正義を実現するために……そして、何よりヴォルン伯爵の軍は居心地が良い」

 

「私もテナルディエ公爵より伯爵の正義が正しいと判断しただけよ」

 

「侯爵閣下、美女と語り合いたい気持ちは分かりますが、今回は私と話をしに来たのでしょう? そろそろ本題に入ってもらいたいのですが」

 

 そうして席に着かせ、ティグルは用意してきた葡萄酒を人数分、銀杯に注いで自分の分を飲み干す事で毒が入っていない事を証明する。

 

 

 それにより、グレアストは葡萄酒を飲み干し……。

 

「では、本題だが単刀直入に言おう。ヴォルン伯爵よ、ガヌロン公爵の下に付き、支持を表明しろ」

 

 

 

「(まあ、そう来るよな)」

 

 ティグルの予想通りの事を言った。

 

 一応、見返りを聞いてみれば……。

 

「ランスというネメタクムの中心都市、その陥落後、一日間の略奪の権利を与える」

 

 滅茶苦茶な提案をしたし、しかもランスを始め、それ以外の都市においても降伏すら許さずに略奪を行うと言ったのだ。

 

「そして、義務だが……」

 

 なんとグレアストはガヌロン公の傘下にある軍がティグル達の領内における村や町に食料や燃料の供出を求めたら、差し出す事、更にテナルディエ公との決戦にランス攻め、二つの戦いで先頭に立つ事という滅茶苦茶な条件を出したのである。

 

「さあ、この場で返事をしてもらおうか」

 

 グレアストがそう言い……。

 

「当然、断る。そして知らないとでも思っていたか、侯爵閣下? 貴殿は軍勢を率いて我がアルサスを侵略しようとしただろう。その時点で私にとって侯爵閣下もガヌロン公もまた、敵だ」

 

「……そうか、後悔するぞ」

 

「その言葉、そっくりお返しする」

 

 こうして、ティグルはグレアストを通じてガヌロン公にも宣戦布告をしたのであった……。

 

 

 




 アニメ版だとグレアスト、存在消されてるんですよねぇ……まあ、他にもヴォジャノーイとかも消されてますが……。
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