オーランジュ平原から北へ向かい、川を越えて更に進むと広大な葡萄畑に囲まれるようにして点在する幾つかの村の中でも大きなソーニエという村にティグルは領主としての仕事をしにいくオージェと共に向かった。
また、ティッタとルーリックの二人とグレアスト率いるガヌロン軍を戦い前に発見した斥候隊であるアラム達を連れていった。
ティッタは自分の妻でもあるが従者でもあるためであり、ルーリックは自分とティッタの護衛として……アラム達は働きの報酬として一刻だけでも町か村で休みたいと願ったからである。
そうして、ソーニエと近くの村の長達が居る集会所にてアラム達とは別れ、オージェと共に集会を行った。王都の情報を少しでも収集出来ればと思ったがそれは無理であった。
そして想定より集会が早く終わったのもあってオージェは先に帰り、ティグルとティッタは夫婦としての時間を過ごす事にする。
「折角だし、酒場に行こう。ルーリックもそれで良いな?」
「はい、ティグル様」
「お心遣い、ありがとうございます」
村の状況を知りたいなら酒場が一番であったりもするので提案し、ティッタは頷き、ルーリックは感謝をした。
そうしてルーリックの希望もあって、ティグルとルーリックは
「じゃあ、全てが上手くいく事を願って乾杯」
『乾杯』
そうして乾杯をすると食事をし、酒を飲みつつティグル達は村人や旅人も交えるなどして交流した。
因みにルーリックに良い関係の女性はいないのかと興味本位で聞けば帰った時にはどうなっているか分からないものの、ライトメリッツを発つときには幾人かはいたらしい。
そうして、話を楽しんでいると……。
「おお、やっぱりティグルさんとティッタさん、ルーリックだった」
先に自由行動していたアラム達が手に串焼きや蜂蜜酒、ジャムを塗ったパンや干した果物を持っているという思い思いに村での休憩を楽しんでいる姿を見せていた。
「あの、ティグルさん、ルーリック……ちょっと……」
アラムがティグルとルーリックを手招きしたのでそれに応じ……。
「ティグルさん、娼館に行っても良いですか?」
こそこそとした様子と声で告げた。
「こんな村に娼館があるのか?」
「ヤリーロの看板が下がってたから間違いない。流石に人数は少ないし、きれいどころもいないだろうがな。しかし安いぞ」
ルーリックは興味深げにアラムに言い、アラムは答えた。
ヤリーロとはブリューヌとジスタートで奉じられている十の神々の一柱で豊穣と愛欲を司る女神の事である。
そして、この女神の姿や名前を刻んだ看板は娼館の証でもあった。
「……お前ら、後半刻ほどで村を出る時間なのは分かっているな?」
「半刻あれば、まあなんとかなるでしょう」
ティグルの質問にルーリックが答える。彼も行く気になったようだ。
「……命令だ、俺とティッタを半刻の間、二人きりで過ごさせてくれ。その間、ルーリックにはアラム達の面倒を任せる。揉め事は絶対に起こすなよ。それとせっかく来たんだから金銭を惜しむな、後、帰りが遅くなり過ぎないように……良いな?」
ティグルは自分に力を貸してくれている日頃の感謝もあって、ルーリックたちの行動を黙認するための建前を設けつつ、娼館においては身許も健康もしっかりした者を選ぶように言った。
半刻後、集合場所は村の入り口前である事を伝えるとルーリックたちは嬉しそうに敬礼するとその場を離れていった。
「皆、もっと楽しめる場所を見つけたらしい。俺達は俺達で楽しもう」
「はい、ティグル様」
ティグルはティッタへそう言うと食事の代金を払いつつ、ティッタと共に村を回りつつ、雰囲気の良い場所で抱き締め合った。
「ティッタ、愛している」
「私もです」
そうして、深い口づけを交わしたのであった……。
その後はルーリックたちとも合流し、『銀の流星軍』の幕営へと戻れば……。
「初めまして、ティグルヴルムド卿。ポリーシャを治める戦姫にして『
豊かでありながら均整の取れた優美な肢体をゆったりとした袖と裾を持つ白絹の衣と足下まで薄緑色のスカートに包んでいる長い金髪の女性、ソフィーヤが居てティグルを見て自己紹介しながら微笑む。
「これは初めまして……アルサスの領主であり、伯爵、そしてこの『銀の流星軍』の総指揮官を務めているティグルヴルムド=ヴォルンです、俺の事も気軽にティグルとお呼びください、ソフィー」
ティグルも彼女に合わせるように微笑みながら、自己紹介をするのであった……。