ティグルはオージェ子爵の領主としての仕事を手伝う形でソーニエという村へと向かった。
ソーニエにてこの村付近の幾つかの村長も交えて会合をした訳だが、それは予想よりも早く終わったのでオージェ子爵は早く帰ると言い、彼のご厚意からティッタと夫婦としての時間を過ごした。
そうして、『銀の流星軍』の幕営に帰るとエレオノーラにリュドミラの二人と同じ戦姫の一人でポリーシャを治めているというソフィーヤ=オベルタスがいた。
ともかく一同は総指揮官用の天幕へと場所を移す。
「それでソフィーはどうして此処へ……エレンとリュドミラに会いに来たってだけじゃないですよね?」
「戦姫としての仕事としてはティグル、貴方の事についてブリューヌが何も言ってこないので私がブリューヌ王の考えをお伺いしてくる事になったの、それとヴィクトール王から二人の様子を見て来いとも言われたけれどね」
ティグルの問いにソフィーヤはエレオノーラが飼っている幼竜のルーニエを両手で抱えながら応じる。
因みにルーニエは本竜的は不服なのか、色々と諦めた様子で項垂れていた。
「いつ頃の話だ?」
「今から大体一カ月前よ」
「貴女も大変よねソフィー、陛下も貴女ばかり働かせずとも良いのに」
「ブリューヌの情勢を考えると仕方ないわ。それにわたくしのザートなら取り上げられにくいもの」
ソフィーヤはエレオノーラの質問に応じると、次に頭を軽く抱えるリュドミラの質問に自分の側に置いてある先端に見事な装飾を施した円環を据え付け、青い宝石をあしらった黄金の錫杖を見ながら言った。
「ソフィー、ブリューヌの王宮でどのような返事を頂けたのでしょうか。良ければ教えてください」
「そうね……貴方に話すのは少々心苦しいのだけど、結論から言うと、良いお話はいただけなかったわ」
ソフィーヤによればブリューヌのファーロン王は病を患っているため、謁見は叶わなかった。由に宰相のボードワンと話をしたのだという。
そうして、エレオノーラを通じてティグルに伝えて欲しい事があると言われた。
その内容とは他国の軍を招き入れるというティグルの行動は平地に波乱を起こし、平和を望む国王陛下のご意思に背くものであるという事、いかなる理由があろうとも看過できないので王家はティグルに叛意ありとみなした。反逆者として認定し、領地を没収し、爵位及びブリューヌ人として与えられている全ての権利を剥奪する事、正道に戻る意志が残っているのなら、直ちに軍を解散し、単独でニースを訪れ、改めて陛下の裁きを待つべしとの事であった。
「とうとう、反逆者か……まあ、そうなるよな」
「ティグル、気にするなよ。どうせテナルディエ公が働きかけたのだろう。形だけのものに過ぎん」
「そうよ、分かってはいたけど本当にテナルディエ公は手段を選ばない外道だわ。反逆者はテナルディエ公のほうよ」
「分かっているよ、エレン、リュドミラ。ただ、家名に泥を塗っちまったのは申し訳ないなと思っただけだ」
いざ、言われてみるとティグルは亡くなった父親であるウルス他、一族の者の名や功績に泥を塗ってしまった自罰の意識から意外に精神に衝撃を受けた。
そんなティグルをエレオノーラとリュドミラは気遣う。
「……いずれ、ティグルヴルムド卿自身にも王宮から使者が来るとは思うけれど、詳しい事は私より、ローダント伯爵から聞いた方がいいのではないかしら」
「マスハス卿をご存じなんですか?」
まさか、マスハス卿の名が出てくるとは思わなかったので質問した。
「そちらを先に話すべきだったわね……ニースで知り合ったの、一旦オードへ戻ってから、兵を連れてティグルヴルムド卿のところへ向かうという話を聞いたから、丁度、エレンたちの様子も見なきゃいけなかったから同行させていただいたの……それで近くまで来たから、私だけ先に来ることにしたの。明日の昼過ぎにはローダント伯爵も此処に着くと思うわ」
「お伝えいただき、ありがとうございますソフィー」
「こちらこそ、丁寧な礼をありがとう」
ティグルはソフィーヤに対して頭を下げて礼を言うとソフィーヤは頷きながら、微笑むのであった。
そうして、ソフィーヤもマスハス卿が来るのを待つため、この幕営に滞在する事となったのであった……。