ティグルはエレオノーラにリュドミラの様子を見に、そして、マスハスとの事を伝えに来たジスタート王国の戦姫の一人であり、持っている竜具や本人の気質などから外交役を務める事が多いソフィーヤと出会い、様々な話を聞いた。
その話の中でティグルはブリューヌ王国にとって他国の軍を招き入れた事で平地に波乱を起こし、ブリューヌ王国の平和を乱した反逆者になった事を知る。
無論、これは病を患っているとされ、部屋に籠っているブリューヌの王であるファーロンの状態を良い事にティグルと敵対している公爵がテナルディエによる働きだというのは容易に想像がついた。
そもそもテナルディエとガヌロンこそ政争をやったり、ブリューヌ王国が領する町や村を壊滅させたり、殺害をするなどしている罪人であり、反逆者のようなものであるのだから……。
それにアルサスの今後のため、エレオノーラに従うのを決めた時点でティグルはブリューヌにとっては『反逆者』になるのも覚悟の上である。
父親であるウルス含め先祖たちに対し、ヴォルン家の名を汚した事についても罪悪感やら申し訳なさやらも抱いている。
どのみち、今更退く事は出来ないしそのつもりは無い。やり切るところまで行くしかないのだ。
「ふっ!!」
夕食と会議を済ませた後……陣から離れた場所に的を立て、八百アルシンの距離まで離れると特製の長弓に矢を番えて引き絞り、そして矢を放ち、真ん中に命中させる。
次に真ん中に突き刺さっている矢の後ろへと次なる矢を放つという継矢を行い、それ尾を繰り返した。
「……凄い、凄いわティグル……弓の腕は戦姫級だって聞いたけど本当だったようね」
しばらく、弓の鍛錬に集中していると拍手と共にソフィーヤが後ろから声をかけていた。
「お褒め頂き、光栄です。ソフィー」
「いえ、本当に貴方の弓は賞賛されてしかるべきよ。此処がブリューヌでなければもっと高い地位にだってつけたでしょう」
「それはまあ、仕方がありません。生まれた地がアルサスでしたし、弓が好きだったんですから」
残念そうに言うソフィーヤに対し、ティグルが苦笑をする。
「とはいえ、総指揮官が一人で出歩くものじゃないわ。貴方の今の状況なら特に」
「それはごもっともです。ただ、思ったより反逆者扱いをされたのが堪えたので……父から祖先が築いてきたヴォルン家の名を汚した事、アルサスの者たちに対しても影響を及ぼすような事をしたのは罪悪感もありますし」
「とはいえ、覚悟はしたんでしょう?」
「ええ、俺はブリューヌにとって大悪である両公爵を討ちます。その覚悟を決めている」
「強い人ね……エレンとミラが貴方の傍にいる理由が少しだけ分かったわ」
「それは何より」
「貴方はエレンにミラの事をどう思ってるの?」
「当然、大事な仲間であり戦友……色々含めて大切な存在だ」
「そう……ふふ、二人の事を大事に想ってくれているのが伝わってくるわ」
「ああ、大切にするし何かあれば絶対に守ってみせると誓う」
「ありがとう」
そんな話をしてティグルは弓の鍛錬を止め、ソフィーヤと共に幕営へと戻った。
そうして、翌朝……。
「若、此処から西に十五、六ベルスタからこのような手紙が……」
バートランがティグルへ手紙を渡す。
『貴殿の様々な取り計らいにより、王家の状況については理解した。その上で詳しい話を貴殿からお聞かせ願いたい』
それはブリューヌにおいて最強の騎士と称されるロランが団長として率いるナヴァール騎士団からの手紙だ。
「ここからが正念場だ」
ティグルはこの話し合いによってナヴァール騎士団らを仲間に出来るか、あるいは敵に認定され戦う事になってしまうかの正念場だと判断し、気合を入れるのであった……。