テナルディエ公爵とガヌロン公爵に対して打倒するための隙を作ろうとブリューヌ王国最強の騎士団である『ナヴァール騎士団』とその騎士団の中どころかブリューヌ王国の全騎士の中で最強であるロランと話し合い、彼の戦死を偽った。
だが、それはリスクでもある。
ブリューヌ王国における最大の武威であり、他の国々の侵略に対して最大の脅威となって牽制しているロランが戦死したとなれば、今、テナルディエ公爵とガヌロンが勢力争いをしている事、両公爵に対しての対抗勢力となっているティグルの存在などブリューヌ王国が乱れに乱れているので攻め入る国が出てくる。
冬の季節の中、ブリューヌ王国の南東の国境を二万のムオジネル軍が突破し、侵略を介したのである。
その報告を『銀の流星軍』の幕営へと向かった南東の国境を守っていた騎士により、ティグルは聞いたのである。
また、今、『銀の流星軍』の軍は減少している。エレオノーラにリムアリーシャによるライトメリッツ軍が千の兵を残してジスタートへと戻ったのだ。
それはエレオノーラとリュドミラもだが、彼女たちにとっての親友である戦姫がアレクサンドラ=アルシャーヴィンの治めるレグニーツァを別の戦姫が攻めたとの事で病弱の実であるアレクサンドラを守るためという事だった。
とはいえ、リュドミラは残ってくれていて軍としては八千はいる。
「どうも、ガヌロンがそそのかした臭いよなぁ。このムオジネルの迅速な動きは……」
「間違いなく、そうでしょうね。自分の戦力の消耗を抑えながら、相手の戦力の疲弊を望めるもの」
なんとなくだが、ティグルはムオジネルの迅速な侵略のそれにガヌロンがムオジネルにロランが死んだ情報を流し、テナルディエが領しているブリューヌ南部を攻めさせたのだと推測し、リュドミラも同意した。
「二万も動かしたんだから、陸だけじゃないだろう。海に対しても船団を率いてくるはずだ」
「今のブリューヌの状況を考えれば、一気に攻めるでしょうね」
「船団についてはテナルディエが動くだろう。だが、南東国境周辺を奴は捨てるだろうな」
「間違いないわね。自分の領地を守る方が良いし、それに向こうからすればガヌロンも警戒しなければならないもの……しかし、ガヌロンも危険な手を打ったわね。自分も危うくなると思うんだけど」
「この国も滅茶苦茶になるのを望んでいるんだろうな」
「っ、流石にそれは……権力を手にしようとしているのにそんな事を望まないわよ」
「ガヌロンの今までを振り返れば、全部遊びの可能性が出てきたんだよ……ともかく、今はムオジネルだ。南東国境を守らないといけないからな。それだけの責任があるし、メリットもある」
「大きなリスクはあるけれどね」
ティグルはロランの戦死を偽り、国を更に乱した事でムオジネルに攻める機会を与えた責任を取るべく、防衛のために動く事にする。
それに防衛をやり遂げる事が出来れば南東周辺、あるいは他の貴族や騎士団から名声をえたりして仲間を増やす事が出来るようになる。
「では、マスハス卿、オージェ子爵、どうかよろしくお願いします」
『任せろ』
ティグルはマスハスとオージェの二人へ周辺の騎士団や貴族へ援軍を求めるための説得を任せたのであった……。