ティグルはアニエスからブリューヌ王国を侵略しようとする数万の軍勢にして本軍を率いる王弟であり、ザクスタン軍を海戦にて蹂躙し、圧倒的に打ち負かした事で『赤髭』と畏敬を込めて呼ばれる程の実力者であるクレイシュの陣に対し大胆不敵な夜襲を仕掛けた。
それにより、本営は無理であったが食糧庫に燃料庫を焼き払えたし、馬の大量解放、複数の指揮官の抹殺などに成功し大きく被害を与える事が出来たのだ。
更に……。
「ふっ!!」
『うわあああっ!?』
軍の再編成や兵站による補充などで足を止めているクレイシュの軍の伝令の抹殺や食料などを運んでいる輸送部隊を幾度か襲撃して奪ったりしながら追い詰めていった。
これにより、大きくクレイシュ軍は足を止めざるをえなくなった。
時間を十分に稼ぐ事が出来、そうして待っている間に援軍がやってきた……。
「我が名はエミール。マスハス=ローダント伯爵からお話を伺い、ペルシュ騎士団一千五百を率いて駆けつけました。これよりは貴方の指揮下に入らせていただきたい」
「我が名はリュテス騎士団のシャイエ。一千五百を率いて駆けつけました。ユーグ=オージェ子爵の要請を受けて参上した。我等、ただいまより貴殿の指揮下に入る」
援軍の要請に向かっていたマスハスとオージェにより、騎士団という心強い援軍が続々と『銀の流星軍』の援軍へとやってきており……。
「お久しぶりですティグル様、カルヴァドス騎士団のオーギュスト。二千の騎士と共にティグルヴルムド卿の指揮下に入らせていただきます」
最後に髭を蓄えた壮年の騎士であるオーギュストが温厚な笑みをもって名乗った。
「ああ、よく来てくれたオーギュスト。それに今まで苦労を掛けてすまなかったな」
「いえ、むしろ頼っていただいた事に感謝しています。テナルディエにガヌロン両公爵の悪事にも気づく事が出来、二人に私物化される事も無くなったのですから」
オーギュストに対し、ティグルは色々とテナルディエとガヌロンの動きについて探らせたり、ロランとのやり取りの仲介など様々な面で頼りまくっていたので謝る。
それに対し、オーギュストは逆に感謝を告げた。
「ティグル様、本当に立派になられましたな。ウルス様の様に……」
「それは最高の褒め言葉だ。オーギュスト。俺もお前と戦場で共に戦える事が嬉しいぞ」
「同じく」
ティグルとオーギュストは笑みを浮かべ合った。
『我らも共に戦わせてください』
「ティグル、何とかこれだけは集める事が出来たぞ」
「後は戦い方次第じゃ」
「ええ、良くやってくれました。十分です」
そうして、更にマスハスとオージェは歩兵と騎兵が合わせて三千ほどだが諸侯の軍を率いてきた。
クレイシュの軍は三万と数千であり、ティグルの軍勢は援軍合わせて一万六千ほど……やり方次第ではなんとかなる戦力差となり、そうして改めてクレイシュ軍と戦う準備を始めたのであった……。