魔弾の王は戦姫と英雄譚を紡ぐ   作:自堕落無力

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五話

 

 

 ブリューヌとジスタートの間を南北に走る険しい山々の連なりであるヴォージュ山脈、この山脈の北西部に接しているのがブリューヌの辺境であるアルサスであり、山脈の東側に接しているのがジスタートが七つ有している公国の内の一つであるライトメリッツだ。

 

 そんなライトメリッツを治める戦姫のエレオノーラから会いたいとアルサスを治めるティグルに使者が送られた。

 

 

 

「行くか」

 

 立場的に大々的に会えないのでその件に関して連絡するとヴォージュ山脈を越えたライトメリッツ周辺に『キキーモラの館』というエレオノーラが所有する別荘(ダーチャ)への地図が返答で送られ、そこで会合する事になったのである。

 

 一先ず長弓に矢筒と矢、短剣に加えて狩人に見える格好、馬と移動には数日かかるので水と食料を用意、そうして『狩りに行く』と装ってヴォージュ山脈へと向かった。 

 

 ティグルがヴォージュ山脈で狩りをするのは趣味のようなものであり、他の貴族たちに怪しまれるような事は無い。もっともアルサスの状況を探っているような貴族は今のところ、いないが……。

 

 地図の通りに進んでいくと……街道を外れて草原を進んでいくと小さな丘の上にたたずむ二階建てで、壁は漆喰の上から黒く染めていて屋根は赤……ティグルの屋敷と同じぐらいの屋敷があった。

 

 

 屋敷近くに馬を止めると屋敷の扉前に行き……。

 

「アルサスの領主、ティグルヴルムド=ヴォルン伯爵だ」

 

 呼びかけながらノックをすれば……。

 

「私はエレオノーラ様の副官を務めるリムアリーシャと言います。武器は此方でお預かりします」

 

 ティグルより背は高く、年齢は二つか三つほどは上、艶の無い金色の髪を頭の左側で結んでおり、ティグルを見下ろす瞳は冷たい物で青と白を組み合わせて随所に金の縁取りを施した軍衣をまとい、腰には剣を納めた鞘を吊るした硬質の美貌よりも感情の乏しさや愛想の無さを印象付けられる美女で均整のとれたすらりとした身体つきに似合わない程、胸は豊かでもある女性が名乗りながら応対した。

 

 ティグルはリムアリーシャに武器を預けながら彼女の誘導に従い……。

 

「待っていたぞ、ティグルヴルムド卿……改めて自己紹介させてもらう。私は此処、ライトメリッツを治めるエレオノーラ=ヴィルターリアだ。招待に応じていただき、感謝する」

 

「私も改めて自己紹介させてもらいます。私はヴォージュ山脈の北西部に接しているアルサスの領主、ティグルヴルムド=ヴォルン伯爵だ。こちらこそ、招待いただき光栄だ」

 

 そうして、エレオノーラは立ち上がりながら手を伸ばし、ティグルはその手に応じて握手をする。

 

「それでこの会合の目的は?」

 

「ああ、ティグルヴルムド卿……貴殿の弓の腕に私は惚れた。是非とも私の仲間にならないか?」

 

 ティグルが訪ねれば、エレオノーラは単刀直入に仲間になるよう言ってきた。

 

「随分大胆な勧誘だな……条件はあるが、それさえ守ってくれるなら仲間になっても良い」

 

「条件は?」

 

「アルサスの平和と平穏を出来る限り約束してくれる事だ。私はそれで良い……いつジスタートの侵攻があるか、ブリューヌ貴族の侵攻があるか警戒するのもしんどいんだ。それに弓による手柄はブリューヌでは評価されない。なら、評価される国に付いた方が良いからな」

 

「ふふふ、良いだろう。それくらいなんとかしてみせる」

 

「ありがたい。それさえ、してくれるなら全力と忠義を捧げる事を約束するし、ヴォージュ山脈のアルサスとライトメリッツを結ぶ山道の整備も協力しよう。そちらにとって良い流通路が確保出来るのは良いメリットだろう?」

 

「確かに……流通路の確保はこちらも考えていた。良い着眼点だな」

 

 

 

「情報収集は大事だからな。とはいえ、まずは信頼関係を築くためにも同盟から始めよう……これから、私の事はティグルと呼んでくれ、エレオノーラ様」

 

「私の事もエレンで良いぞ、ティグル。親しい態度での交流もな」

 

 ティグルとエレオノーラは握手を交わし、密かな同盟関係を結んだのであった……。

 

 

 

 

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