魔弾の王は戦姫と英雄譚を紡ぐ   作:自堕落無力

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六十七話

 

 ジスタート王国内のライトメリッツ公国にて客将として現在、力を尽くしているティグルはライトメリッツ内の複数の村にて作物を食べるなど被害を及ぼしていた怪物のような牡鹿を生来の狩人である血が騒いだ事で狩りに行った。

 

 そうして見事に村人や村の狩人が仕留められなかった牡鹿を狩り、窮状を訴えた村人達と村長に感謝の宴を受けたのである。

 

 ティグルはご機嫌なままにライトメリッツの公宮に帰還したのだが、エレオノーラからなんと現在、王が死に彼の遺言もあって、その座を継いだ第一王子ジャーメインと第二王子エリオットの二大勢力が内戦を行っている島国であるアスヴァールに行き、ジャーメインと密かに接触しろとジスタートの国王であるヴィクトールがティグルに要請があったと伝えられた。

 

 

 

「まあ、俺は客将の身だしジスタートには多大の世話になっている。そしてそれは今のブリューヌもだから、要請には応えるけどな。だが、どうして身内の多くを殺したジャーメインのほうなんだ? 普通はエリオット王子の方が交渉しやすいと思うんだが」

 

 ティグルが言うようにジャーメインは戴冠式の数日前に自分の弟妹たちを王宮に呼び出し、謀反の疑いがあるとして次々に殺害するという凶行に及んだのだ。

 

 その凶行から逃れたのが現在、ジャーメインと対立しているエリオットであり、そして彼とは別に第一王女のギネヴィアも凶行から逃れている。そして、ギネヴィアは現在、王都を脱出すると争いを避けて国内のどこかに隠れて暮らしているという……。

 

 なので大義名分というか、とっつきやすいのはエリオットのほうではある。

 

 

 

「ああ、我が国も最初は第二王子エリオットを指示していた。だが、エリオットはムオジネルを親交を深めているようなんだ」

 

 エレオノーラもティグルのそれを肯定しつつ、ジャーメインに切り替えた訳を話した。

 

 ジスタートにおいて今、ムオジネルは対立する可能性が高い敵国ではある。

 

 単純にジスタートがブリューヌの領地であったアニエスの地を手に入れたからである。これにより、ムオジネルは陸から攻め込もうと思ったらジスタート領を通過しなければならなくなったのだ。

 

 ただ、ムオジネルはブリューヌを海から攻めるとティグルと対立していたテナルディエ公爵が大損害を与えて撤退に追い込んでおり、陸においてはティグルが大打撃を与えて撤退に追い込んでいる。

 

 当時、内戦を起こしていたテナルディエとティグルが皮肉にも海と陸で手分けして戦い、お互いの不安要素を打ち消したからこそ、どちらも集中できたというのはなんとも皮肉な事か……。

 

 ともあれ、大損害を受けたムオジネルは現在は国力回復に務めなければならないのでまだ、攻めてくることはないが……。

 

 

 なのでアスヴァールがジスタートに協力すればムオジネルが攻めてきた際に集中して撃退に励めるが、アスヴァールがムオジネルに味方すれば西と南の二方向に敵を抱える事になるのだ。

 

「まあ、色々と理解はできるが内戦を終えた奴に任せるような案件かとは言いたいな。『銀の流星軍』を纏め上げた手腕を評価されている事ではあるんだろうが……責任重大過ぎるだろう」

 

「……すまないな、ティグル。狩りを終えて帰って来たばかりだというのに」

 

「申し訳ございません」

 

「二人が謝る事じゃない。まあ、他の国を見て勉強する良い機会だ。頑張って来る」

 

 そうして、ティグルはエレオノーラよりヴィクトール王がティグルにあてた一通の手紙と身分証代わりの二つの指輪、ジャーメイン王子への親書が入った細長い筒で蓋の部分にジスタート国王の刻印が黄金で施されているそれを受け取った。

 

 そしてやる事は密使なので夜のうちになるべく人に知られず、アスヴァールに向かう必要があるため、まず自分の部屋に戻って準備をする事にしながら……。

 

「帰って来たばかりなのにまた、お前を待たせる事になってすまないな」

 

 妻であるティッタを呼び、アスヴァールに行く用事が出来たからティグルはしばらく留守にする事を伝えた。そしてこの事はエレオノーラとリムアリーシャは知っているが、他の者には他言無用であり、ティグルが留守にしているのは王都シレジアに用事があって向かったという事で通してほしいと伝えた。

 

 

 そうして、ティッタを抱き締めながら、謝る。

 

「いえ、それだけティグル様はこの国で評価されているという事ですから」

 

 ティッタは軽く首を振りながら、言う。

 

「ティッタ、アスヴァールでの用事を終えて戻ってきたら、本格的に子供を作ろう。そろそろ良い頃合いだと思うからな」

 

「っ!! はい……よろしくお願いします」

 

「ああ」

 

 全てが終わった後は家族を設けようとティグルは伝え、それにティッタは涙を流しながらも笑みを浮かべる。そして、二人は深く抱き締め合い、口づけを交わすのであった……。

 

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