魔弾の王は戦姫と英雄譚を紡ぐ   作:自堕落無力

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六十九話

 

 ティグルはヴィクトール王の要請で現在、第一王子であるジャーメインと第二王子エリオットが内戦を起こしている『アスヴァール王国』へジャーメインへの密使として向かう事になった。

 

 そして、エレオノーラより個人的に親密な関係にある戦姫のアレクサンドラの治めるレグニーツァへ行き、相談する方が良いと言われた、

 

 ティグルはエレオノーラの指示に従い、レグニーツァへと向かったのである。

 

 青い空の下、レグニーツァ近くの街道沿いには黄金の小麦畑が広がっており、青林檎の木が幾つもあった。時期的にはそろそろ、夏の終わりだ。

 

 リムアリーシャからは熊の人形をお守りとして、エレオノーラからも『幸運を』と書かれた銀貨をお守りとしてもらったティグルは数日、旅をしてレグニーツァ公国に入ると街道を進んで日が暮れたら、てきとうな村で食糧を買い、宿を求めた。

 

 そうして三日後に公都に到着すると公宮へと向かい、対応に来た者へとエレオノーラことエレンの手紙を渡す事で戦姫アレクサンドラとの面会の約束を得た。

 

 

 

 もっともかなり、容体は悪いようで実際に面会するまで二日待つ事になり、エレンが待つのは三日までで、それで会えなければアスヴァールに向かうよう、言われていたので本当にぎりぎりだった。

 

 ティグルは砂色の石を積み上げ、随所に白大理石を配した風変わりな外観のレグニーツァの公宮へと黒弓を預け、老いた従僕に案内されて公宮内を歩く。

 

「(中々面白いな)」

 

 灰色の壁の中に白大理石を組み込み、その配置に工夫を凝らしているなど見る者を飽きさせないようにしていた。

 

 そうしてアレクサンドラの部屋に辿り着いた。

 

 大きく開け放たれた窓からの日差しとベッドのそばにある燭台の灯りのために室内は明るい。家具は全体的に地味であり、窓際に飾られた紫苑(フリザンテーマ)の花がささやかな彩りを添えているのみである。

 

 

 

「初めまして」

 

 ベッドの上で艶の無い黒髪を肩のあたりで切りそろえ、身体に負担を少しでも与えないようにするためかゆったりとした白い服を着ている細面で驚くほどに肌は白いが美しい容姿だが、ほっそりとして痩せているのが分かる身体つきの女性が挨拶をする。

 

 厚手の毛布に包まれた膝の上に柄は白く、刀身と一体化した鍔に巧みな装飾が施され、それぞれ金色と朱色の刀身で燃え盛る炎を思わせる二本で一対の小剣であり、双剣の竜具もあった。

 

 それは彼女こそ、エレンとそしてリュドミラことミラの親友でもあるアレクサンドラの証明である。戦姫は竜具を常に傍に置くのだから……。

 

 ティグルは一礼をして室内に足を踏み入れるとベッドの傍まで歩き、改めて頭を下げる。

 

 

 

「ティグルヴルムド=ヴォルンです。エレンから、貴女の事は聞かされており、一度会いたいと思っていたので、こうして会えた事を嬉しく思います」

 

「アレクサンドラ=アルシャーヴィンです。私も一度、貴方の事をエレンから聞いていたので会いたいと思っていました。私の事はサーシャで構いませんティグルヴルムド卿」

 

「ありがとうございます。私の事も是非、ティグルと呼んでください」

 

 そう、会話をしながらサーシャに勧められた椅子へとティグルは座った。

 

 

 

「それではティグル、一つお願いして良いでしょうか?」

 

 微笑を湛えて小首を傾げる少女のような愛敬を感じさせる仕草をしながら、サーシャは言う。

 

 

 

「伺いましょう」

 

 ティグルがそう言うと……。

 

 

 

「できれば親しい友人と話すようなざっくばらんな言葉で話したい。礼儀はもちろん大切だけど、肩が凝るし緊張が続くと体に良くないからね」

 

「そういう事なら、喜んで」

 

 そうしてティグルはサーシャが差し出してきた右手を力を入れ過ぎないように優しく、右手で握り返す。

 

「うん、君は努力家なんだね」

 

「色々、ブリューヌでは大変だったからな……ところでサーシャの竜具の名前はなんて言うんだ?」

 

「『バルグレン』だよ」

 

「バルグレン、俺はティグルだ。よろしくな」

 

 ティグルはサーシャの竜具の名前を聞いて優しく触れながら、語り掛けるとバルグレンも優しい輝きで応じた。

 

 

 

「良かったら、君とエレンの出会いについて話してもらえないか」

 

「分かった」

 

 そうしてティグルはエレンとの出会いだけでなく、ブリューヌでの戦いについて話し、エレンだけでなく、ミラとの言葉を話すと……。

 

 

 

「……ふふ、そうかエレンだけでなく、ミラまで……うん、どうか僕の親友たちをよろしく頼むよ。幸せにしてあげてくれ」

 

「勿論だ」

 

 エレンとミラがティグルと男女の関係にある事を知ると驚きながらもティグルへとエレンとミラの事を親友として頼み、ティグルは頷いたのであった……。

 

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