魔弾の王は戦姫と英雄譚を紡ぐ   作:自堕落無力

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八十話

 

 ティグルとマトヴェイにオルガはアスヴァール王国の第一王子であるジャーメインに会うため、王都へ向かう道中に一泊するために村へと立ち寄った。

 

 しかし、その村でジャーメインの兵士だという者達が暴虐を働くのを見たので村人たちが敵視されないように村人をティグルはマトヴェイに縛らせたうえで自分とオルガで対処をした。

 

 その後、逃げた兵士たちが再び徒党を組んで村へと復讐に来る可能性もあるので街道に面した村の出入り口で待機する事にした。

 

 そんな中、オルガは自身がジスタート王国内の公国の一つであるブレスト公国を治める戦姫であるオルガ=タムだと明かし、こうして三人は絆を深めたのである。

 

 しばらく待機していると月が高く昇り、空は夜の闇に包まれる。ティグル達は焚き火を用意し、囲みながらそれぞれで見張りをするようにした。現在、オルガが外套と厚手の毛布に身をくるんで横になっていた。

 

 毛布はなんと数人の村娘が少し前にこっそり持ってきてくれた上、パンやチーズの塊も用意して少し離れたところに置いてくれた。

 

 村を助けた事に感謝を示してくれたのである。

 

 それに嬉しさを感じつつ、周囲を伺っていると……。

 

 

 

「二人だけか……」

 

「随分と夜目が利きますな」

 

 ティグルは遠くから三つの松明の火が近づいてくるのを見、更にその明かりを元に二人の男であるのを確認した。

 

 当然、マトヴェイはティグルの夜目の凄まじさに驚いた。

 

 

 

「鍛えたからな」

 

「……それだけじゃ無理だと思う」

 

 ティグルが答えれば、オルガが気配を察知したようで起き上がりながらティグルへ言う。

 

 

 

「いやいや、暗闇の中で月や星の明かりを頼りに動く訓練を長年、続ければ結構夜目は効くようになるぞ」

 

 話している間にも松明を持っている者達はティグル達へと近づく。

 

 そして、三つの松明のうち二つが動きを止めた。一つだけが闇に揺らめきながら近づく。

 

 

 

「悪いが、そこで止まってくれ」

 

 ティグルは言いながら、弓を構えて矢を番えた。

 

「こっちは二人だ。武器は置いていくからそこまで行かせてくれないか?」

 

「ゆっくり来いよ」」

 

 そう、ティグルが言うと二人の男がゆっくり近づいて来た。

 

 一人は短い金髪と透き通るような碧い瞳の若者の男で日に焼けている顔が鋭く引き締まって凛々しく、視線に覇気と好奇心があり、中肉中背ながら甲冑姿が良く似合っている。

 

 もう一人は若者よりいくらか年長で痩身な男、灰色の長い髪を紐で無造作に束ねており、面長で細く鋭い目は狐を思わせる。

 

 

 

「異国人の使者と言うのは、お前達の中の誰だ?」

 

「俺だ。名前はティグル」

 

「俺はタラード=グラム。こっちの痩せてるのは部下のクレスディルだ」

 

 ティグルが名乗れば若者の男が自分と部下を自己紹介する。

 

 

「ジャーメイン王子の元で常勝を謳われるタラードとは貴方の事か?」

 

 ティグルが問うとタラードは自分の名が異国に広まっている事を喜んだ。

 

 

 

「ティグル殿、ジャーメイン殿下へいかなるご用件で会うのか、伺ってもよろしいですか?」

 

「その前にあなた方の地位はどの程度のものなんだ?」

 

「俺は百騎長だ、はっきり言って対して偉くないな。だが、自分で言うのもなんだが顔の広さには自信があるぞ。まともな用事ならジャーメイン王子にかけあって、二日か三日後には会えるようにしてやる」

 

 ティグルの質問にタラードは明朗快活な言動で答えた。

 

 

 

「それは嬉しいがはっきりさせておきたいことがある。この村を襲ったジャーメイン王子の兵を俺はこの弓で射倒したんだが、それについてはどうする?」

 

「そういえば、礼がまだだったな……アスヴァールに住まう者としてこの村を救ってくれた事、悪党を減らしてくれた事を感謝する」

 

 タラードはクレスディルと共に真剣な表情をつくり、足を揃えて姿勢を正すと頭を下げ、ティグル達へ礼を言ったのであった……。

 

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