アスヴァールの第一王子であるジャーメインに会うため、アスヴァール王国内を旅しているティグル達は立ち寄り、一泊しようとした村がジャーメイン王子の兵に襲われていたのでその兵の指揮官に副官や多少の兵を討ち取る事で逃走させた。
そのため、逃走した兵たちが再び報復のために村に戻る可能性を考えて街道に面した村の出入り口で野宿しながら様子を見る事にした。
するとやって来たのは兵士たちでは無く、ジャーメインに仕える者であり、出陣する戦は常勝だと謳われている百騎長のタラードとその部下のクレスディルであると名乗った。
二人はティグルがジャーメイン王子に会うためにいる事を聞き、それがまともな用事ならばジャーメイン王子に掛け合う事を約束した。
その前にティグルはタラードに村を襲ったジャーメインの兵を幾人か射倒した事を告げればタラードとクレスディルはティグル達に感謝し、礼儀を尽くした。
なんでも賊紛いの事をする者は多く、タラード達も減らそうと動いていはいるが従えているジャーメインが野放しにしているので次から次に出てくるのだそうだ。
「減らすってのは、具体的に何をしているんだ?」
「まず説得して、それで言うことを聞かないなら賊として扱う」
「そうか、随分とあっさり話すんだな」
「勿論、誰にでもこんな話はしない。体を張って異国の村人を守ったあんたの行動に敬意を表すればこそ、本音を語ったんだ」
ティグルの苦笑に対し、タラードは真剣な顔つきで答えた。
「それはどうも……だが、自分の身を守っただけとは考えないのか?」
「それが本当なら、あんたたちはとっくにここから姿を消すだろう。だが、こうして村の出入り口に居座っていたのはあるかもしれない報復から、村を守るため。違うか?」
「御明察だ……最後に聞かせてくれ、俺達がこの村を襲った兵を追い払ったのは今日の昼なんだがどうして、こんなに早く来れたんだ?」
「幸運な偶然だな。治安維持のためにバルベルデ周辺を巡回しているんだが、この近くを通りがかったときにあんた達が追い払った連中に話を聞いたんだ。あいつらにとっては災難だっただろう」
ティグルの質問にタラードは笑みを浮かべながら答える。
「それで結局、兵たちはどうした」
「隊長や副官が生き残っていれば処罰したが、とりあえず五、六人ずつの組に分けて農奴扱いで辺境の村に送った。一年間、まっとうに過ごしたら罪を許す事になっている」
「妥当な対応だと思う……分かった、タラード殿、貴方を信用しよう」
そうしてティグルは身分の証明となる二つの指輪を荷袋の中から出して、タラード達に見せる。
「俺はジスタート王国の使者だが、公に名乗れる立場じゃない」
「間違いありません、ジスタート王国の印章です」
ティグルが言うと指輪を観察したクレスディルが断言した。
「分かった、それじゃあこの村の件について話を聞くという名目でバルベルデまで来てもらおう。ティグル殿はそれで良いか?」
ティグルは一度、オルガに視線を向け彼女が無言で首を縦に振るのを見ると……。
「よろしく頼む」
ティグルは頷き、そしてタラードへ右手を差し出した。
「任せろ」
タラードはティグルの出した手を掴み、そうして握手を交わした。
その後、夜明けを待つとタラードは村長や兵による被害を受けた村人達に会うと詳しく事情を聞き、村への補償を約束する。
こうして、タラードとクレスディルと共にティグルは村を発ち、バルベルデへと向かうのであった……。